『海のない街』のリリースから4年、Amia Calvaがこの度2017年に新しいCDを出すと聞いていたが、3曲入りシングルCDとは正直驚いた。現在CDという媒体で新作をリリースする事をムーブメントとして敬遠する傾向にある中、シングルとなるとますます珍しい。彼らはそんな世の潮流に合わせた事をするようなタイプではないだろうから妙に納得は出来る。とはいえ、先日もハローホークが同じく素晴らしい内容の3曲入りの新作CDを出したばかりで、媒体としてのCDへの信頼は現場で活躍する人からは、まだまだ高いのだろうか。かくいう自分も、好きなバンドの音源は必ずジャケットのあるCDで欲しい。
今回はそういうリリースでの立ち回りと、新作の実際の音を聴いて今後への気迫を感じた。
今作を初めて聴いた時の印象は音が非常にシンプルだ。
1曲目の”warui hito”。you&me song的な歌詞の内容からして悪人という意味ではなく、多分いじらしい女の子のことを歌っているかと思う。<鳥のよう>とリフレインする部分と相待って、鳥が大きく翼を羽ばたかせているようなゆったりとしたギターストロークが気持ち良いサウンドで、Gt/Vo 堤の歌詞も、歌声もとても切なく真摯に響く。アルバム中、最もキャッチーで抑揚のあるサウンドだがそれに騙されはいけない。
キラキラしながらもぼやけていた輪郭は次の曲ではっきりする
2曲目の”△”は中でもシンプルな音の印象が一番強い。ギターは最小限の味付けなので、ベースとドラムの安定したグルーヴが際立つ。Pinbackのような削ぎ落とされた感じの気持ち良さを想像してもらいたい。それを3分でドラマティックに盛り上げることもなくさらっと終える感じが潔くて個人的にハマった。特に、曲の後半にベースとドラムになる所は少しニヤッとしてしまう。この部分だけ延々とループさせてremixとか出来るのでは……なんて思ってしまった。とにかくリズム隊がかっこ良すぎるので、これから聴く皆さんには是非、低音がよく出る環境で聴いて頂きたい。タイトルからbloodthirsty butchersを想起したが、関係はあるんだろうか。
そして最後の3曲目は今回のシングルの表題曲でもある”King of Gol”。歌詞の内容がもう堤君らしく、客観的に自身のバンドを鼓舞するような力強い曲。Amia Calvaの曲は不思議で、途中から始まってるようなメロディがとても魅力的でハッとさられることが多い。それはGt.ノズエの独特なギターの絡み方によるものが大きく、フリーキーでありながら整合されている。この曲はライブではまだ観たことがないのだが、ギタープレイが随所に光っていて、後半は特にその絡みを想像しながら聴いてしまった。今までのAmia Calvaに最も近いながらも次のAmia Calvaを予見させる曲と言えるだろう。
それにしても短い。つまり、アルバムはもちろん出すんだよね?ということを言いたいのであって。もうそれは色々想像しちゃうでしょ、こんなの聴かされたら。
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地域に根ざした世界中のインディペンデントな「人・もの・こと・場所」をおもしろがり、文化が持つ可能性を模索するためのメディアANTENNAです。
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