【ボロフェスタ2015 Day2 / Underground stage】NOT WONK / FLUID / ゆーきゃん
■NOT WONK
北海道の小牧より駆け付けたのは、要注目中のNOTWONK!90年代初頭にUKより生まれた“メガ・シティー・フォー”に影響を受けているという男性3人組バンドが彼ら。手元を凝視してしまうかのようなテクニックを次々と魅せるサウンドにまず圧巻されたと思ったら、油断は禁物。あまりにサラっと、違和感なく次々と、英詞を歌い上げるGt/Vo 加藤に思わず見とれてしまう。
とにかく彼らがまだ20代前半なことが信じられないほどの風格に圧倒された。さらにはその若さをエネルギーに変えるかのようにフロアを熱狂させているのも印象的であった。終盤ではステージからマイクスタンドを観客側に降ろし、会場の一体感をメンバー自らが歓迎している様子。声を上げ、手を挙げ、気付けばクラウドサーフィングまでもフロア内では生まれていた。観客は終始楽曲はもちろんのこと、ライブという“瞬間的な非現実の空間”に心通わせていることが伺える。
全曲終わった後、その場に居合わせた人々が自然と「熱い〜!」と口にしていた。本気でこのライブが盛り上がりをみせた証拠だろう。そして、「みんなが何もかも忘れて楽しみたいんだよ!」というような、この場に居合わせたオーディエンスの想いが伝わる光景を生んでくれたスーパーヒーローが確かに此処にいた。
(Text:稲本百合香)
■ゆーきゃん
ぎゅうぎゅうの地下ステージ。でも空気はゆったりとしていた。「引っ越して今は富山県にいるんですけど、今日だけは言わせてください。上京区上七軒からきました、ゆーきゃんと申します。」そう言って”サイダー”をやさしくおだやかに指の腹で奏ではじめた。二日目のこの時間のゆーきゃん……間違いなくボロフェスタは終わりのはじまりを今辿り始めた。ドラム、ベース、エレキギターを迎えてのバンドセット。ゆーきゃんは木の色をしたテレキャスターを抱えている。地下ステージは演奏が始まってからもじわじわと空間を埋められつつあって、ゆーきゃんのその涼しげなふるまいや楽曲とは裏腹に熱気に満ち満ちていた。優しい小さな声の持ち主は、想像通りエレキギターを撫でるその指も優しい。ぼんやりとした柔らかいアンサンブルが広がっていく。”空に沈む”ではサポートGt.のキヌガサ(from myletter)のしとやかで抒情的でストリングのようなギターが泣かせてくる。蒸し暑い部屋の中で少し汗ばみながら聴く”マドラグ”。目を閉じるとあの喫茶店の店内風景と香りが浮かんでくる。優しくて懐かしくもあり、どこかさみしい「ぽつん」とした気持ちになる。ゆーきゃんの近くの人々だけでなく、京都のいたる所にひそむ沢山の人々の想いの寄せ処となっているだろう名曲に違いない。
最後の曲を演奏する前にぽつりぽつりとボロフェスタへの想いを語りはじめる。「すっかりいろんな人の力を借りるようになって、自分の抱える比率が年々小さくなっていく」と語るゆーきゃんは少し寂しそうにもみえた。彼がこれまで作り上げてきた11年間をちゃんと知っている人間の方が少ないのであろうが、それでも彼が高らかに口ずさむハミングに何かを見出そうと目を凝らしてしまう。あなたと同じものをみたいと思う人間が、一体どれほどいるものか。
(Photo:岡安いつ美)
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