ボロフェスタ2014 day1-Underground Stage,Bee-low Stage編-
Amia Calva
地下ステージ1バンド目、記念すべきトップバッターは両日出演の京都のオルタナティブバンドAmia Calva。挨拶もそこそこに”retro”が始まった瞬間、部屋中耳鳴りのような音が響き渡り振動していて、垣間見える焦燥感がひしひしと感じ取れた。急速な盛り上がりというよりはお客さんも含めしっとりと、だが確実に手に汗握るような演奏をしていく。彼らの魅力は音のきれいさだけに収まらない。きれいだけれどどこか傷だらけのような、すこしおちゃらけた現実主義のような、独特の渋さと矛盾感が存在していた。
「夜まで楽しんでください。また明日 屍のようなあなたたちと会いましょう」ほがらかなMCの最後にそうVo.堤が告げると、最後の曲”#0624”が始まり、始まった瞬間にさっきまでのゆるい雰囲気はどこへやら。演奏中に会った緊張感が駆け足で戻ってきたようにみえた。両日出演ということもあってか、いつものAmia Calvaと違ってこの日の彼らは続きが存在する終わり方、それも中途半端なものではなく、次回予告が入るようなアクトだった。(text:うえこ)
【Bee-low Stage】Hi,how are you?
玄関はいってすぐのロビーで始まったのは、ギターに鍵盤というシンプルな構成の京都の男女二人組Hi,how are you?だ。大ホールへの入り口を塞いでしまいそうなほどに、演奏が始まる前から多くの人がステージ前に待機していた。
「電車のうた、歌います」と1曲目を歌い始める。なんだか日常の一コマ一コマを丁寧に切り取ったような『毎日のありふれた特別』を歌っていく2人であるが、そのとき客席で彼らの演奏を見ながらお母さんにポテトをあーんしてあげる女の子の風景が、まるでHi,how are you?の曲の中に紛れ込んでしまったみたいだな、なんて思えた。Gt&Vo原田は「一曲一曲……噛み締めてやってます。」と少し照れ隠し気味の表情で話すが、この日も甘酸っぱいショートなソングたちをまるでひとつひとつパッキングしているような愛おしさを感じる演奏だった。
最後はピアノの入った軽やかだがしっとりしたナンバーでおわり……と思われたが、ボロ側がもう一曲出来るようにGOを出してくれたので、タイムテーブルの押しにも負けずもう一曲。「こういうボロフェスタ、愛してます。」との言葉を残し、またもやすこし照れ隠しの笑顔で締めくくった。(text:山田和季)
noid
地下ステージ2番手のnoidは爽快で心地よい風を金沢から運んできてくれたようだ。一音目がなり始めた瞬間にそれを確信する。ギターのアンサンブルとポップな音の粒を降らせるシンセサイザー、そして少しけだるそうな声が合わさると極上のポップスが完成。ぎゅっと心をいきなり鷲掴みされた気分だ。
「金沢と京都って意外と近いんで!」という言葉通り他県からやってきたような気張りは一切なく、まるでホームグラウンドでライブをしているような余裕すら彼らには感じられた。「ずっと出たかった」と念願叶ってボロフェスタに出演した彼らは確実に京都の人々の心にすっと入り込むことに成功したような盛り上がりでライブは終了。再びの来京を心待ちにしたいと思う。(text:岡安いつ美)
folk enough
壁一面ピンク色の地下ステージにバンダナを口に当て現れたのは、福岡出身、結成17年目のfolk enoughだ。folk enoughにしか生み出せないオルタナティヴロックが、暗い地下ステージに鳴り響く。フロアはいつのまにかダンスフロアへと変わり、最前列にいた小さな女の子も握った拳を高々とあげる。folk enoughの音楽は、ずるい。だって、思わず体を揺らしてしまうようなリズムと音色がずっと続くのだ。5曲目では、Ba.Sibata TakeshiとGt.Inoue Shuichiが楽器を手放し、出番を控えたN’夙川BOYSのマーヤLOVEが、ギターを弾くという展開へ。その日、その場でしか見ることのできない編成というのは、ライブの醍醐味であろう。folk enoughの音楽は、いつだってfolk enoughだ。彼らにしか作り出せない音と空間は、とても特別なものとなった。(text:アンテナ編集部)
ゴーグルエース
お揃いのストライプスーツでばっちりキメた盛り上げサーフロック番長、ゴーグルエースのお出ましだ。昭和歌謡バンド、サロメの唇からBa.水のさとしを迎え布陣は完璧。”KAREN”のギターリフが鳴りだすとたちまちステージに潮の香りが充ち満ちた。”ごめんねゴーゴーガールずるいよツイストボーイ”のタイトなドラムと絶え間なく動くベースラインの絡み、そしてどこまでもキャッチーなギターリフが生み出す必殺グルーヴに応えるように、力尽きるまでツイストしまくるフロア一同。Dr.エミーリーのコーラスも冴えている、そして映えている。久しぶりの京都公演ということで披露した、1stアルバムからの一曲”洋ナシはいかが?”では昭和歌謡のエッセンスをむんむんと漂わせ、ラスト”ハイキング・ツイスト”では「ヤッホー」のコールアンドレスポンスで会場が一体となった。(text:高石瑞希)
【Bee-low Stage】漁港
写真を見て訳がわからない人がいるかもしれないので説明すると、彼らは浦安魚市場に現役勤務している、フィッシュロックバンド・漁港だ。漁食啓蒙活動が注目を集め、メジャーデビューも果たしているれっきとしたミュージシャンである。ことあるごとに「魚食えよ!」とオーディエンスにすりこみ、彼らの使命である漁食啓蒙にも余念がない。
ラストの“鮪”では船長・森田釣竿が突然腕と同じ長さくらいの包丁を片手に姿を消す。もう終わり?と思った瞬間、Bee-lowステージ後方からサーフボードに乗り、築地から仕入れたというマグロの頭ととともに彼はステージ上に戻ってきた。そこから始まったのはマグロの頭部の解体ショー!そう滅多にお目にかかれる光景ではないので目を丸くして見つめる人や、口をあんぐり開けたままの人が多数。そんなオーディエンスを見てしてやったりな表情を森田は浮かべていた。鮮やかにマグロをさばく姿を見て、本当にこの人魚屋さんなんだよな……としみじみ感じさせられた。その場でさばかれた新鮮なマグロはその場で競りをし、見事3000円で落札。そのお金は東北ライブハウス大作戦に寄付されるそうだ。
魚とロックの融合。誰もなし得ていない道を猛進する姿を見て、これこそが最強のエンターテイメントだと心底思わされたショーであった。(text:岡安いつ美)
ぐーたら狂
ド派手な化粧にちょっとおっかない風貌、そんな彼らはぐうたら狂。初っぱなからフロアに侵入してくるVo.松本、それに加えて地響きの様な楽器隊の音圧にフロアはすでにぶっ飛ばされてる模様だ。まだまだ夕暮れ時だというのにKBSホールの地下ステージは徐々に怪しげでカオスティックに様変わりしていく。
ここにはもはや秩序なんてない。熱を帯び蒸し風呂のようになっていくフロア。いや、もはやフロアやステージなんていう区別はこの瞬間にはなかったような気がする。演者はフロアまで出てきて思い思いに叫び、演奏し、それに対するかのようにオーディエンスも叫び、拳をあげる。それら全てによってこのぐうたら狂のライブが完成されていく。
「面白くないのは誰のせいだろう」歌の中で彼らはそう叫んだ。内に秘めたる不満を放ち、狂気として表現していく。それこそがぐうたら狂なのかもしれない。終始熱を帯びたライブは演者が歌い、オーディエンスは聞く。そんな概念をどんどん覆していくものであった。(text:アンテナ編集部)
valva
飾らない、気取らない、でもすでにギラギラしてる、そんないつもの感じでvalvaのスタートだ。その特徴的な声は勿論魅力的なのだが、目の当たりにするととても艶っぽいVo/Ba松尾の歌い方も非常に印象的だ。「やぁvalvaです」文字にすると面白味も特にない挨拶なのだが、なんというか彼の口から声が出るだけでたまらなく嬉しくトロンとしてしまう、そんな声の持ち主だ。
“DANCE” “LAN LAN LAN” “sylvain sylvain”と続き、このあたりからフロアの温度が上がっていく。この日は「サイケポップ」の「ポップ」要素強めの選曲が目立っていたのだが、ここで観客のボルテージをさらに跳ね上げさせたのが”vivivi!レターズ”であった。クセのある、かつクセになるポップさとストレンジさが絶妙なバランスで兼ね備えられている、まさに針の穴を通すようなギターのメロディ。その不思議な空間に酔いしれたまま、スローテンポの”ANA A KEY”へと落ちていく。くらくらしそうな程スローな空気を溜め込んで、爆発するように曲の後半には加速していく。直線的な加速ではなく、ぐるぐるぐるぐると狭いこの部屋の中を巨大な渦が加速していくような、すべてを吸い込んでカラフルなブラックホールになってしまいそうな、そんなライブであった。そう、valvaを一言で表すならば鮮やかな渦である。(text:山田和季)
【Bee-low Stage】ゆーきゃん
ボロフェスタにとって、欠かすことのできない存在となったSSWであり主催のひとりであるゆーきゃん。今回はバンドセットでの登場だ。日も暮れ秋の寒さを感じる18時半、彼の姿を見るために多くの観客がBee-low stageへと詰め掛けた。そんな観客たちに富山県で作られているお酒”立山”を振る舞い始める粋なサービス。MC土竜の挨拶が終わり、音たちがゆっくりと刻み始められた。1曲目は、”サイダー”。秋の夜に、夏の暑い暑い日々を思い起こさせ少しセンチメンタル。彼の囁くような歌声は、却って人の耳を惹きつけていき、ざわついていたBee-low stageが、ひっそりと静かになる。彼は「僕が居なくてもボロフェスタやなあ、と。それが何より嬉しいです。」と言うが、ボロフェスタを愛する誰もがゆーきゃんのことを愛しているのは間違いないだろう。彼がいないボロフェスタを想像すると、なんだかやっぱりさみしい。そんなさみしさを引きずりながら、ラストの曲を迎える。ゆったりと時間が流れていたような気がしていたのに、気づけばあっという間だ。メンバー紹介のあと”エンディングテーマ”が演奏された。優しくもしっかり心を支えてくれるような強さをもった彼の歌は、ゆっくりと、しかし着実にエンディングへと向かい、静かに幕を閉じた。(text:アンテナ編集部)
宮武BONES
SEに乗せて「あの鐘をならすのは俺たち」と大胆なことをいい登場したのが宮武BONES。1曲目からファンキーなベースに奇妙な楽器隊のリズム、それに甲高い声でラップを乗せていく。ぶち上がるしかなかったライブだったが、その曲終了後に機材トラブルが発生。本人達もお客さんもノリたかったところでノれなかったせいか、いまいちテンションが上がりきらない。それでもしつこくしつこく繰り返されるワンフレーズ、それに乗るラップ。熱を思い出してきたボロフェスタアンダーグラウンドステージ。彼らが“団地”を披露している時にはもう先のトラブルなど忘れ、ステージからフロアへとテンションが伝染していっていた。
アンダーグラウンドステージのテンションが最高潮に達したとき、Vo.亀山がTシャツを脱ぎ捨てフロアにダイブし、言葉にならない言葉を叫んでいた。トラブルに苛まれながらも最後には彼らの形、彼らのやり方を示すことができたのではないだろうか。その証拠に終演後も叫び声ともとれる歓声はしばらく鳴り止まなかった。(text:アンテナ編集部)
NATURE DANGER GANG
現在、巷で有名となっているNature Danger Gang(以下、NDG)がボロフェスタの地下ステージに登場。正式メンバーの全容は明らかとなっておらず、頻繁にメンバーが変わるという。出番前、彼らのライブを見ようと駆けつけた観客たちですでにフロアは埋め尽くされ、熱気は十分だった。30分ほど押して始まったNDGのライブは、ただ一言、カオス!という言葉がぴったりだ。今回のメンバーは、 MCが5人、サックスとパフォーマーが一人ずつという構成。メンバーはダイブやら踊り狂うやらやりたい放題にフロアを荒らしていく。どこからがステージでどこからがフロアなのか、全くわからない。この混沌さが、NDGなのだ。自らがまずリミッターを外し、そして観客のリミッターをも外しにかかる。いつの間にか、美女一人がハイレグ姿になっていたり、焼きそばを食べ始めていたり、目を離すとなにがなんだかわからなくなるほどだ。なにが正解でなにが不正解かもわからないこの地下ステージは、現代を表しているみたいだ。公の場では、伝えきれない狂気は、ライブでないとわからない。予想をはるかに超えてくる感動と一体感があなたを待っています。(text:アンテナ編集部)
ワンダフルボーイズ
本祭1日目アンダーグラウンドステージのトリを飾るのは、もはやKBSホール地下の主ワンダフルボーイズ。今年一番最初にボロフェスタ出演が決定したのがこのワンダフルボーイズだったそうだ。そんなワンダフルボーイズはこの地下のステージが大好きで、僕らはワンダフルボーイズが大好きだ。
人懐っこく、ユーモア溢れたしゃべりをするKey./VoのSundayカミデ。彼はメンバーに鈴木雅之のようなギターを要求したり、ソロを無茶ぶりしたりとやりたい放題。そんなむちゃくちゃな彼らが変わったパフォーマンスをするだけのバンドとして終わらないのは確実な演奏力、そして音楽に対するまっすぐな姿勢があるからだろう。その音楽と彼らの人柄が重なってかワンダフルボーイズは老若男女多くの人に支持されている。事実この日も会場には幅広い年代の人がいた。
狭くパンパンに詰まったステージとフロアを行ったり来たりするSunday。アーティストだけでなく会場全体でこの瞬間をつむぎ、ライブを作り上げていく。まさにDIYフェスボロフェスタの真髄を見たような気がした。 当然のように起こったアンコールではいまやインディーズを飛び出して全国的な名曲と言ってもいい『君が誰かの彼女になりくさっても』を披露した。サビは会場全員で大合唱。ここにはお客さんを含めて最高な人しかいなかった。最後にSundayの言葉を借りるなれば、「君らのその汗ダイヤよりも……あれやから」私にもここにいる人達全員がダイヤよりもあれに見えた。(text:アンテナ編集部)
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地域に根ざした世界中のインディペンデントな「人・もの・こと・場所」をおもしろがり、文化が持つ可能性を模索するためのメディアANTENNAです。
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