COLUMN

「働きながら音楽活動をする」トークイベント② -小川保幸(DEEPSLAUTER)-

MUSIC 2017.06.30 Written By アンテナ編集部

※こちらの記事は先日東京で行われたイベントレポートの寄稿となります。

第2回目は、DEEPSLAUTER / 株式会社ヴィカーナ 代表取締役社長の小川保幸(おがわやすゆき)氏のトークをお伝えいたします。

 

バンド活動と仕事を両立させつつ様々な刺激を受けながら、2007年にアメリカツアーを行い、2014年には起業を果たした小川氏。

 

今回のトークでは、現在に至るまでどのような活動をしてきたかをお話いただきました。

働きながらバンド活動はできるの?への回答

どっちもやろうぜ、そして続けようと、という感じですね。

 

本日は、具体的な部分は上杉さんやダイ(鳥居氏)が話しているので、何故、今の仕事にたどり着いたのか?みたいな話を中心に、トークセッションで具体的に話す事ができればと考えてます。

 

DEEPSLAUTERは今年で結成して17年目のメンバーが35歳前後のバンドです。「ちゃんと仕事しながらバンドやらない」と意思疎通した事はなく、自然とみんなそれぞれが仕事を始めて、そして集まってライブをしたりレコーディングしたりしてます。

 

最近メンバーの一人が転勤になっちゃって。ライブも月に1本できるかな、ぐらいなんすけど、それはできるときにやればいいだけの話だし、できないときに無理してやる必要もないと思ってるし。残った三人で曲作ってデータやりとりして、新曲のアイディア膨らませていこうぜ、ということもできますし。

 

「自由に」「力を抜いて」最近は活動をしております。自分にとってバンドは、自分の周りを囲っている肉付けされたようなモノが近く、「生活の中にある普通な事」って感覚なので、「辞めようぜ」なんて話した事も無いですし「頑張って続けようぜ」とも無いです。

 

小川氏追記:殴り合いの大喧嘩で数回解散の危機があったのを思い出しました (笑)

 

ここにいる皆さんもがっつり働いていらっしゃると思うので「とにかく続ければいいのでは?」とお伝えしたいです。

ライブハウススタッフとレコード屋時代

2001年、19歳の頃、生まれ育った地元小岩にあったライブハウス「小岩eM SEVEN」で時給650円でアルバイト入社しました。学校行きながら。

 

何故、ライブハウスで働こうと思ったか?ですが、高校生の頃から自分はプレイヤーではなく音楽の裏方を支えたいと考えてました。音楽に携われることはなんだろうか?と考えて自然とライブハウスに興味を抱くようになりました。また地元というのもあり、シーンというと大袈裟ですが、自分の生まれた街を裏方で盛り上げたいという野望みたいなのはありました。

 

小岩は東京の端っこにあるので、新宿からは40分くらいかかってしまいます。どんなに自分たちが面白いともう企画を組んでも中々お客さんの動員には直結しなかったのが悩みでした。「もしかしたらライブハウス以外の面白い、集まれる場所があったら、そこに人が集うのかな?」と思い、2006年にライブハウスの下の階にレコード屋さんを始めました。

 

この会場(Salon de Zuppa)の1/5ぐらいのスペースだったんですね。そこは、直接バンドマンや海外のレーベル、それこそENDZWECKの宇宙さんがやっているレーベルなどと直接取引きをさせていただいたりしてました

フィラデルフィアで受けた衝撃

たまたま、2007年ごろ、DEEPSLAUTERでアメリカに行く機会が訪れるんですよ。

 

「海外でライブをやってみたい!」というのは、バンドをやっている方なら一度は考えると思います。メチャクチャ行ってみたい!先輩のENDZWECKもツアーしていたけれど、実際どうやってやってるんだろう?ということをずっと考えてました。

 

時代的に「MySpace」が流行していた頃、影響を受けたり好きなバンドのページはないかな?と探していたら、DEEPSLAUTERが影響を受けた「Guyana Punch Line」を発見する事ができました。90年代では考えられませんが、直接コンタクトを取って見ました。「日本に来ない?」と。

 

しかし、彼らは既に解散済みでしたが、話を進めるとボーカル以外のメンバーでTHANKGODというバンドをスタートさせていると知りました。彼らから「このバンドで日本に行ってもいい?」という相談を受け是非是非!と。THANKGODは知名度が皆無だったため「それならsplit*1出そうぜ」「splitだけじゃなくて日本とアメリカでツアーしようよ」という感じになり、我々は念願のアメリカツアーを決行する事になりました。

 

ライブハウスにいて、レコード屋さんを始める中で、やはり地元のバンドや自分たちがかっこいいな!と思う国内のバンドをもっと世に広めたいという夢を抱いて居ました。だけど、具体的にどう動いていけばいいのだろうか?と、現在、小岩にあるライブハウスBushBashのオーナーカッキーと常に考えて居ました。

 

ネットが「普通」になっていく時代だったので、フィジカル以外にも伝える方法はあるだろうな……と。どうすればいいのだろうか?と考えていく中で、自分がアメリカツアーで行ったフィラデルフィアの街でとある青年と出会う事がありました。

 

その青年は日本の事を勉強している方で、「日本の若者はこんな音楽が好きで、漫画や本、映画が好きなんでしょ?」という話をしこたましてきたんですね。

 

その時、彼が求めているような回答が全くできず、本当に自分は無知なクソ野郎だなとショックを受けました。帰国してからもそこがひっかかってました。

就職活動と起業

今まで「日本の音楽の素晴らしさ」みたいな物を小岩に集まる人たちへ一生懸命伝えていたにもかかわらず、自分の経験値の少なさ、考え方の小ささを気づきいたんですよね。アメリカから帰った翌年の2008年に、DEEPSLAUTERのみんなと「もう少し音楽を広める事ができるような人間にならないと、俺まずいとおもうから転職するわ」みたいな事を伝えて、初めてのジョブチェンジを経験するってわけです。

 

自分の中で会社を決める基準を作りました。「様々な業界の人と出会えるであろう営業職」「伝える力、重要性に気づけるであろう広告業界」「ツールとしてのインターネット」という軸で。3ヶ月間くらいガッツリ転職活動してみました。

 

たまたま渋谷にある広告代理店へ転職する事ができたのですが、上司になる人も蓋を開けたら音楽好きでバンドをやっている方でした。それが26歳の頃。

 

で、右も左もわからない業界に飛び込んだので、「とにかくやるしかない」みたいな気持ちで、ガンガン行こうぜという感じでやっていたら、MVPだったり新人賞だったりと獲れるようになって。「あっ、これバンドと変わんないな」みたいな感じだったんですね。

 

通信販売の会社を担当する機会が多く、そこで学んだ経験を活かし2011年に通信販売やメディアを運営する会社へ転職しました。会社の売り上げを伸ばすプロモーション・マーケティングの会社で20〜30人規模のベンチャーです。

 

そこでマネジメントなど、前職では体験できなかったことを学び、より初心で考えていた事をチャレンジできる場所へ行こうと決心し起業しました。

 

3年前、2014年に会社を始めた流れです。まだまだチャレンジ続行中。

 

ちなみに、我々の会社「株式会社ヴィカーナ」は、社訓を「止まったら死ぬ」というのを掲げてます。

 

「ヴィカーナ」は、「ビビっと感じる何か」の略なんですよ。何かを感じてほしい、というのを常に考えながらやっています。

株式会社ヴィカーナについて

最近、バンドを通じて知り合った友人たちから「ヤス、最近なにしてんの?」と多く聞かれます。この機会に何をしている会社なのかを紹介させてください。

 

私の会社は、コンシューマー向けにスマートフォンアプリの企画・開発・運用を行ってます。

 

アプリを紹介するメディアアプリや、看護師の求人に関するアプリ、sawagiというインストバンドのウニちゃんがデザインしたキャラクターが触れる天気予報アプリや漫画アプリなどをリリースしています。

 

どのアプリも、企画からリリースまで2週間ぐらいですね。僕らは「作ってどんどんアップデートしていこうぜタイプ」の会社なんで。そこは大きい会社だと経験なかなかできない。

 

クライアントワークも多く行ってます。外部の企業と一緒に、サービスを育てていきましょうよと行った形で、SNSアプリのブランディングや、ユーザーを増やしていく施策、某音楽会社からデビューする新人アーティストのマーケティングなんかも行ってます。最近は某オンラインショップのリニューアルもしました。上杉さんやダイの所属されている会社のプロモーションのお手伝いもさりげなくやったりしてます。

 

ヴィカーナが大きく分けて2つの事業を行なっていて「自分たちのサービスをやっていこうぜ!」と「外部の会社と何かやっていこうぜ」というような取り組みをしてます。本当は自分たちのサービスをもっと注力したいので「1週間で企画を10本出す」みたいなノリで、バンドでいうところ「1週間で新曲20曲作ろう」みたいな感覚でやってます。

DEEPSLAUTERってバンドやってます

TSUTAYAではオルタナティブの棚に陳列されてる。これ超嬉しいんですけど、DEEPSLAUTERってバンドをやってます。

 

毎週末、日本中のどこかで、たった20分間のライブのために、ひどいときは往復20時間とかかけて移動して、笑われようが、話題の人に出会おうが、「弾いてない」ってよく言われるんですけど僕、弾いていないといわれようが、飛び跳ねて筋肉痛になる。ハードコアバンド、痛いっすよね。筋肉痛で動けなくなろうが、みんなが待っていてくれるし、そこには、仲間たちがいる。

 

僕が考える結論が何なのかというと、働きながらバンドってできるのかっつうと、どっちもやろうぜと、そして続けようと、という感じですね。

スタッフ募集中!

最後に、うちの会社、スタッフ募集中です!

 

いま13人の会社。うちの会社、社訓が「止まったら死ぬ」なんですね。成長していくしかないんですよ。そのためには、規模も大きくしていきたいし。

 

ライブハウスなどで相談を受けることも多いんですね。「ヤスさん、仕事ってどうしたらいいんスかね?」みたいな。20代のバンドマンから相談受けることが多い。バンバン相談してほしいし、アドバイスできるなら僕らの経験値から言えることもあるんで。

 

ぜひとも、お願いしますという感じですね。

*1:2組のバンドが数曲ずつ曲を出し合い1枚のCDを出すこと。昔はレコードの表と裏で2組がそれぞれ録音していたため、「分かれる」という意味で「split」と呼ぶようになった。

第一回はこちら

「働きながら音楽活動をする」トークイベント -上杉隆史(Endzweck)-

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