the coopeez newbalance tour @京都MOJO ライブレポート
彼らの見つけたニューバランス
「馬鹿にされてもコケにされてもしぶとく続けたい」と公言しているバンドthe coopeez(以下coopeez)。そんな彼らがどのような節目をむかえるのか確認したくてツアーファイナルワンマンへと足を運んだ。
2002年に結成し、しぶとく活動を続けて今年の5月に2ndフルアルバム『newbalance』をリリース。3ヶ月に及ぶツアーのファイナルということからか、ずっとcoopeezを見守ってきたであろう歴戦のファンや、『newbalance』から彼らのファンになったであろう若い女の子など沢山の人が集まっていた。そんな幅の広いファンたちに見守られて早くもあたたかい雰囲気が会場には漂っていた。
定刻から10分ほど遅れてメンバーが登場し、大きな拍手がメンバーに送られる。それと同時に『newbalance』の一曲目の“イントロダクション”をVo.藤本が叫び、そのまま“ヒント”へと突入。お客さんのテンションをのっけからあげていく。
coopeezの素晴らしいところは、非常に音の大きいバンドにも関わらず藤本の歌う歌詞が耳にすっと入ってくるということだ。“ヒント”で繰り返し「ここには誰もいない」と歌っていたが、満員の京都MOJOを見て藤本はなにを思ったのだろうか。
その後は“途中の人”、“クイズ”と新譜から立て続けに演奏。特にリード曲のひとつである“途中の人”はイントロが始まった瞬間に観客から歓声と拳があがり、バンドメンバー以上にお客さんもこのライブを楽しみにしていたことが伺えた。
それまでの雰囲気をがらっと変えたのは“恐竜人間”である。この日初めてのMCをここで挟み、「Do you like meat!?」と藤本がお客さんを煽りまくる。これまでのロック調のエイトビートから一転、藤本はギターを置いてまるでラッパーのように振る舞い、Ba.山本のベースがウォーキングしファンキーな楽曲へと変化する。この曲を聴いているとcoopeezがただのロックバンドではなく、様々なジャンルから色濃く影響を受けていることがわかる。音楽そのものに造詣が深く、この楽曲だけに関わらずメンバー全員が実に器用に様々なリズムを弾きこなす。
その後MVにもなっている“カレーとライス”や、“大人の階段“など新旧織り交ぜていくつかの曲を披露。途中で結成以来はじめてだというバンド紹介をしたり、演奏中に藤本がメンバーにキスをしたりと非常に和やかな雰囲気でライブが進んでいく。
私のcoopeezが好きなところはコーラスワークの美しさだ。メンバー全員の前にマイクが用意されており、メンバーの声質ごとに使い分けている。山本と、Dr.森田のリズム隊はコーラスでもかなりの存在感を放っており、“オンナノコ・ネバーギブアップ”ではいかんなくその力を発揮していた。隣で見ていた女性がじっと聞き惚れていたのも実に印象的であった。
この日のために作ってきたという新曲や、coopeez最初期のナンバー“僕らのサーカス”が演奏されるなど、全てのファンが満足するセットリストだったように思う。最後はアンコールに応えて1st アルバムから、“本当のAボーイ”、“イキザマ NO CHANGE”の2曲が演奏された。“イキザマ NO CHANGE”では藤本がフロアにマイクを移動して暴れ回り、それに呼応するかのようにオーディエンスも踊り狂う。マイクをスタンドから落とすもお客さんに持たせて歌うなど、フロアが一体となり大盛況のうちにこの日のライブは終了した。
藤本の歌はとても前向きだ。しかし以前coopeezを聴いて抱いた印象は、非常に内向的と言うか、彼ら自身に対して言い聞かせている部分が強いということだった。だが今日のライブに関して言えばそんなことは全くない。終盤のMCで藤本が、「ニューバランスなんて見つからなかった。それでも誰かの役に立ちたい」と言っていた。これまで沢山の苦労があっただろう。彼ら自身の求めるハードルの高さから、納得するラインになかなか到達できず悩むことも多かったはずだ。その上でみんなの為にやると覚悟を決めた彼らは確実にひとつ上のステージにあがった。そんなことを思わせる2時間だった。
途中のMCで「来年には新しいアルバムを出したい」と言っていた。これからもしぶとく活動を続ける彼らに注目していきたいと思う。
WRITER
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26歳で自我が芽生え、とうとう10歳に。「関西にこんなメディアがあればいいのに」でANTENNAをスタート。2021年からはPORTLA/OUT OF SIGHT!!!の編集長を務める。最近ようやく自分が持てる荷物の量を自覚した。自身のバンドAmia CalvaではGt/Voを担当。
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