【SXSW2020私ならこれを見る:今岡 陽菜】Pom Poko:ノルウェー出身、北欧のジャズ名門校トロンハイム音楽院の出身の4人組バンド
コロナウィルスの影響でキャンセルが決定したSouth by Southwest 2020(以下:SXSW)。彼らが掲げる「The show must go on」の精神にのっとり、ライティングワークショップ(音楽編)の受講生が注目していたアーティストのレコメンド記事を掲載します。
正直、できることならオースティンに行って色んなバンドが見たい。私は、3年前の2017年に、おとぼけビ〜バ〜のドラマーとして一度SXSWの音楽ショーケースへの出演経験がある。その時自分のライブスケジュールの合間を縫って気になるアーティストやショーケースを見にオースティンの街に繰り出した。昨年3月はBethsとblack midiに注目していただけに、もどかしい気持ちで日本で過ごしていた。
そして今年はPom Pokoというバンドが出演する。彼らは『MUSIC ON, WORLD OFF』という曲を木村カエラに提供をしているので中には既知の方もいるかもしれない。
私がPom Poko知ったのは昨年の秋。自分が普段聞いている音楽のデータに基づきAIがおすすめの音楽をまとめ、毎週作られるSpotifyのプレイリスト、Discoverly Weeklyの中に、彼らの『My Blood』が入っていた。イントロの数秒を聴いたときに可愛らしいと思ったが、その後の展開で私は見事にひっくり返った。マスロック、あるいはポストパンクでも、サイケデリックロックでもある。音の重なりがどこにも偏らず本当に心地良い。だからポップ要素も含んだニューウェーブなのかとも思ったが、それでは腑に落ちなかった。ヨーデルの存在も思い出すし、何故か彼らの音を聞いて温泉にも行きたくなる。とにかくたくさんの情報が4つの楽器から次々と耳に入ってくる。
それでも確実に言えるのは、奇妙にも見事に完成されたサウンドであるということだ。アルバム『Birthday』を一通り聴きながら、彼らの経歴を眺めた。
Pom Pokoはノルウェーのバンドで、北欧のジャズの名門校トロンハイム音楽院の出身メンバー4人で構成されている。楽器はボーカル、ギター、ベース、ドラムが一つずつ。バンド名の由来はなんとジブリ作品『平成狸合戦ぽんぽこ』らしい。
彼らのミュージックビデオ一つ一つを視聴するだけでもアートに相当な敬意を示しているとは感じられるが、音楽を専門的きちんとに勉強したうえで、日本のアニメ映画にインスパイアされてバンド名にもしているのだ。
そしてヨーデルを一つの参照点としてバンドサウンドに取り入れているのにもこのバンドの可能性を感じることができる。ブラックメタルの聖地とも呼ばれるノルウェーと、スイス・ドイツ周辺で育った伝統音楽ヨーデルの関連性は薄いかもしれないが、音楽院で培われた知識と経験がPom Pokoの音楽性と発想をより柔軟にしているようにも考えられるのだ。
温泉に行きたくなった…と書いたのは、もしかすると、北欧のサウナ文化と日本の温泉の親和性なのかもしれない。元来、北欧のサウナ文化は全裸混浴、家庭用も普及しているらしい。日本の温泉も、家庭の湯船も、入浴して悲しくなる人はまずいないだろうし、心身ともにリラックスができる。その要素もPom Pokoにはある。
さらに付け加えると、ボーカルのラグンヒルの歌声は日本の平安時代に発展した雅楽に通じるものもある。声質でフラッフィーに聞こえる一面からは讃美歌にもアクセスできるのだけど、そこから想像していくと、まるで十二単を身に纏っているような重厚さも兼ね備えている。
ここまで、いくつ音楽ジャンル名を挙げただろうか。正直、もっと多くのエレメンツがあるし、そうなるとさらに多層的な解釈が必要だ。したがって結局、百聞は一見にしかず。是非Pom Pokoのパフォーマンスに注目してほしい。
寄稿者:今岡 陽菜
プロフィール
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地域に根ざした世界中のインディペンデントな「人・もの・こと・場所」をおもしろがり、文化が持つ可能性を模索するためのメディアANTENNAです。
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