【SXSW2020私ならこれを見る:高田 和行】Shygirl:UKでも最もホットなスポットとされているサウスロンドン出身のフィメールラッパー
コロナウィルスの影響でキャンセルが決定したSouth by Southwest 2020(以下:SXSW)。彼らが掲げる「The show must go on」の精神にのっとり、ライティングワークショップ(音楽編)の受講生が注目していたアーティストのレコメンド記事を掲載します。
アメリカのテキサスで行われるSXSWは、その年の音楽の動向が現れると言われるのは有名な話だ。今年も地元のアーティストを中心に国内、ヨーロッパ、アジアから尖ったアーティストが集結している。その中でもひと際目立つ存在がShygirlだ。
ヒップホップなのか、それともテクノの一種なのか?一聴するだけでは区別がつかない。少しきつめの高音と、しっかりと効いている低音、その真中で淡々と歌う彼女。似ているアーティストを挙げるとすると韓国出身で今はアメリカを中心に活動をしているYaejiか。Yaejiを初めて聞いた時と同じように、「これが今の若者の捉え方か」と感じたが、音楽はYaejiよりも黒く、悪く、明らかに不良の音がする。ポップスの要素は少なく、むしろアンダーグラウンドなクラブミュージックの一種であるベースミュージックの要素を強く感じる。それもそのはずで彼女の出身は、UKの中でも最新のホットスポットとされているサウスロンドンである。
彼女の楽曲は、UK発祥のベースミュージックである、グライムやツーステップ、ジャングルといったジャンルのリズムが垣間見れる。しかし、単純に異なるジャンルをミックスしたような楽曲というよりは、全く新しい音楽として捉えられると思う。
新しさだけではなく、抑えるべきポイントはしっかりと抑えているのも彼女の楽曲の特徴である。それは低音だ。DJ目線でいうと、クラブプレイをするために迫力のある音が出る条件の1つに低音がある。最近のクラブミュージックの中には敢えてなのか低音が抑え目な楽曲も多い中、彼女の楽曲は低音がしっかりと出ており、クラブプレイにも耐え、既存のベースミュージックとも相性が良い。これまであるようなジャンルで括ることはできないということでは異端な存在である彼女の楽曲は、実はクラブミュージックという一面では正統派であることを印象づける。プロデューサーであるSega Bodegaの手腕により生み出された斬新なトラック、そしてそのトラックに飄々と違和感なく乗りラップする彼女。これが”今”の音楽なのか。
近年、ロックやポップス、ブラックミュージックやテクノなど単純なジャンルでくくることのできない音楽がリリースされ、特に若者に支持されている。彼女の音楽はまさに”今”ど真ん中な音楽ではないだろうか。SXSWのステージにおいて、彼女の音楽の持つインパクトは、音楽のジャンルや国籍を超え、きっと大爆発を起こしてくれるだろう。実際、すでにオープニングアクトに大抜擢されており、事前の期待も十分である。このステージを機に、きっと2020年目を離せないアーティストの一人になるに違いない。
寄稿者:高田 和行
プロフィール
IT社員として勤務する傍ら、DJ激として京都を中心に活動する。DJはJAZZを感じるクラブミュージックを緩急気ままにジャンルを自由に繋げるスタイルである。
Blog:https://gekitak.com/
Twitter:https://twitter.com/geki_tak
You May Also Like
WRITER
-
地域に根ざした世界中のインディペンデントな「人・もの・こと・場所」をおもしろがり、文化が持つ可能性を模索するためのメディアANTENNAです。
OTHER POSTS