イ・ランが3rdアルバム『オオカミが現れた』をリリース
韓国のシンガーソングライター イ・ランの3rdアルバムが、ついにリリースされた。名作『神様ごっこ』から5年、一時は制作も途切れていたが、今年8月には「ある名前を持った人の一日を想像してみる」などいくつかの曲が先行リリースされ、いよいよ今回発表を迎えた。
『オオカミが現れた』と題された新作には、昨年にデジタルで発表した「患難の世代」や、近年のライブ・パフォーマンスでも重要な役割を担ってきた曲も含め全10曲を収録した渾身のアルバムとなっている。
コミック作家、映像作家、イラストレーター、エッセイストなど幅広く活躍するイ・ランは才女、マルチタレントなどの枕詞で語られることも多い。ただ本作を聴くと、彼女にとって重要なのは、表現の手段ではなく、心に宿った感情をいかに真摯に伝えるかなのだ、と改めて感じる。天性の見立てによって選ばれた音と言葉が、嘘偽りも誇張もない結晶のような作品を生み、リスナーの心を揺れ動かすのだ。
1曲目は性の多様性とフェミニズムを支援する合唱団オンニ・クワイア(Unnie Choir)が参加する「オオカミが現れた」から始まり、「患難の世代(Choir Ver.)」をブックエンドにして挟み込むような構成からも、自身をフェミニストと称し、生きづらい世界に問いを投げ続ける彼女の強い意思を感じざるをえない。現代において女性が素直な感情を吐き出すことは、ときにヒステリックに受け取られ良く思われないこともあるだろう。そんな中で、イ・ランが日記のように綴る怒り、問い、喜びは、私たちに感情豊かに生きる勇気を与えてくれる。
現在のところデジタル配信のみとなっているが、近日中にCD / LPでのリリースも予定されているとのこと。フィジカルで手に入れたい人は、続報を心待ちにしてほしい。
オオカミが現れた
アーティスト名:イ・ラン
カタログ番号:SDCD-051
レーベル:スウィート・ドリームス・プレス(Sweet Dreams Press)
デジタル配信開始日(含:サブスクリプション):2021年8月23日
価格(Bandcamp、Minna Kikeruほか):¥1,500(アルバム)、¥150(曲)
登録プラットフォーム:Apple Music、Spotify、iTunes、Amazon Music、Bandcamp、Minna Kikeru、レコチョク、OTOTOY、YouTube Music、music.jp、mora、KKBOXほか
曲目
1. オオカミが現れた
2. 対話
3. よく聞いていますよ
4. 患難の世代
5. パンを食べた
6. 意識的に眠らないと
7. 何気ない道
8. パクカン・アルム
9. ある名前を持った人の一日を想像してみる
10. 患難の世代(Choir Ver.)
作詞・作曲:イ・ラン
プロデュース:イ・ラン、イ・デボン
演奏:イ・ラン(ボーカル、アコースティック・ギター)、イ・デボン(ベース、アコースティック・ギター、ウクレレ、コーラス、ピアノ、エレクトリック・ギター、シンセサイザー)、イ・ヘジ(チェロ、ピアノ)、ユ・ヘミ(コーラス)、キム・ヨンフン(ドラムス)、メ・ジウク(ベース)、カン・ジョンホ(ドラムス)、チョン・ジュンヨブ(ウクレレ、シンセサイザー)、オンニ・クワイア(合唱)、廣川毅(コーラス)
録音:イ・デボン、チュン・ハクジュ
ミックス:イ・デボン、大城真
マスタリング:大城真
イ・ラン(Lang Lee / 이랑)
韓国ソウル生まれのマルチ・アーティスト。2012年にファースト・アルバム『ヨンヨンスン』を、2016年に第14回韓国大衆音楽賞最優秀フォーク楽曲賞を受賞したセカンド・アルバム『神様ごっこ』をリリースして大きな注目を浴びる。その他、柴田聡子との共作盤『ランナウェイ』、ライブ・アルバム『クロミョン~Lang Lee Live in Tokyo 2018~』、デジタル・シングル「患難の世代」、7インチ「ある名前を持った人の一日を想像してみる/イムジン河」を発表。さらに、エッセイ集『悲しくてかっこいい人』(2018)、コミック『私が30代になった』(2019)、短編小説集『アヒル命名会議』(2020)を本邦でも上梓し、その真摯で嘘のない言葉やフレンドリーな姿勢=思考が共感を呼んでいる。
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地域に根ざした世界中のインディペンデントな「人・もの・こと・場所」をおもしろがり、文化が持つ可能性を模索するためのメディアANTENNAです。
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