
「自分たちが面白いことが一番面白い」この二年間の活動の変化を、踊る!ディスコ室町Vo.ミキクワカドに聞く
二年前、あなたはなにをしていたか覚えていますか?きっとこの二年間で生活にも様々な変化があったのではないだろうか。大学を卒業した人、転職をした人、恋人ができた人。バンドは生き物、人が集まって活動しているバンドはもちろん、二年という時間で色々なものが変化している。
踊る!ディスコ室町が2018年4月にニューシングル『NEW CLASSIC DANCE NUMBER』を配信リリースをするということで、アンテナではこの”二年間の変化”をテーマにVo.ミキクワカドにインタビューを行った。彼らは2ndミニアルバム『新しいNEWネオ室町』のリリースや、フジロックへの出演が二年前の2016年、それから約二年間、彼らはどのように活動を重ね、変化してきたのか。そしてその先になにを見ているのか。
インタビュアー:堤大樹
踊る!ディスコ室町
(L→R)Ba.山田トノ / Tamb.モチヅキ・タンバリン・シャンシャン / Dr.伊藤おわる / Vo.ミキクワカド / Gt. まこまこまこっちゃん / Gt.クマ山セイタ
プロフィール
京都の6人組ファンクバンド。
『京都は上京区、室町通り、武者小路を下がったところ、アパートディスコ室町の420号室からやってきたファンキーでグルーヴィな男たち。』
略歴
2012年6月:結成。
2013年3月:1stアルバム『DISCO MUROMACHI 420』リリース。
2015年3月:1stフルアルバム『洛中にてファンク』リリース。
2015年6月:RO69JACK 2015 入賞。
2016年7月:2ndミニアルバム『新しいNEWネオ室町』発売。
レコ発ツアー「素晴らしいGREATブラボーTOUR」を開催。ツアーファイナル、東京・TSUTAYA O-nestにてSCOOBIE DOとツーマン。
同年、FUJI ROCK「ROOKIE A GO-GO」ステージに出演。
2017年6月:京都の老舗CLUB・METROにて主催するパーティー『どDEEP部』スタート。
2018年4月:シングル『NEW CLASSIC DANCE NUMBER』リリース。
バンド結成当初にやりたいと思っていたことは、一旦出し切ってしまった
何故ファンクをやっているのかとか、結成の流れについては他のインタビューでも聞かれていたので、今回は前回リリースやフジロックへの出演があった2016年以降に変化したことを中心に話聞きたいなと思っています。フジロックへの出演と言えばバンドをやっていればみんな憧れる場所だと思うんだけど、なにか周囲の反響とか変化はあった?
実はあんまり変わらなかったんです(笑)。フジロックに出演できたことは、信じられないくらい最高の経験でした。でも出演後、良い意味でも悪い意味でもマイペースな自分たちの活動スタイルは変化してなくて。それよりも、メンバーが大学を卒業して仕事を始めたりと、生活面での変化の方がバンドへの影響は大きかったかもしれません。
どんな風に変わったんだろう?
実は、今回の新譜リリースに先駆けて、過去の音源のをサブスクで配信をスタートしたんです。そのタイミングで過去の音源を改めて全部聞き直してみたんですけど、今とテンションが全然違っていて。バンドを始めて5〜6年、結成当初僕はまだ大学を卒業するくらいで、やっぱり当時と比べると多少大人になったのかなと思いましたよ。なんていうんだろう、その頃の空気には〝迷いのないアホさ〟があるんですよね。
”踊らないベイベ”はMVも、すごいテンションだよね。最初に見たときはそのテンションの高さに驚いたのを覚えてる。
それから純粋に年を経ったのもある。それに実は結成当初はバンドを続ける気もなくて、だからとにかく「面白いことをしたい」って思いだけで活動していましたね。それから継続していくうちに、やりたいことは一旦出し切っちゃったのかなと。
これまで流通にものせてなかった『DISCO MUROMACHI 420』っていうアルバムがあるんですけど、大学の部室で集まってそのままのテンションで作ったような作品なんですよね。いま思えばその雰囲気は作ろうと思って作れるものではないものだったなとも思うんですが、それからメンバーもまるっきり変わって、バンドが純粋に音楽をやるための集りに変わってきた。時間が経ち、メンバーも変化するなかで、自分たちらしさっていうものが変わってきたようにも思います。
継続する気がなかったっていうのは意外な感じがする。どんな見せ方が今はぴったりきているんだろう?
いままでの作品は、部室で集まった仲間たちというようなムードが軸になっていたような気がします。〝ファンクバンド〟と名乗っているバンドにはいろんなスタイルがあると思いますが、〝部室のファンク〟っていうのも面白いんじゃないですか(笑)。
でもいまのぼくらはちょっと雰囲気が変わりつつあるなって思ってて。いままでもやっぱりライブでのパフォーマンスが自分たちの良さを一番出せる場でした。経験も少しずつ積んできた今、作った楽曲をライブに持っていくんじゃなくて、ライブでの雰囲気を楽曲に持ち込みたいって考えたんです。それがいまのぼくらの軸になってるのかもしれません。
ライブの在り方へと意識が向いていく中で、みんなの内面に火を点ける起爆剤になる曲を作りたかった
それがどDEEP部みたいな自主企画のイベントの開催にも繋げっているんだね。
どDEEP部:踊る!ディスコ室町主催のイベントタイトル
そうですね、特に今回リリースした楽曲はイベントとは密接です。昔、(アメリカに)『ソウル・トレイン(1971-2006年)』って番組があったんですよ。ディスコナンバーがたくさんかかるなか、黒人たちがめちゃくちゃかっこよく踊り狂っている様子を流す番組です。あの番組の雰囲気をこそが”NEW CLASSIC DANCE NUMBER”でイメージする光景なんです。
番組にはたまにゲストでジェームス・ブラウンとかスライ&ザ・ファミリー・ストーンみたいな有名ミュージシャンも来て、生演奏をしてれくるんです。みんなライブを見て「わーっ」て盛り上がるのかなと思ったらそうではなくて、自分のダンスに各々陶酔しているんですよ。それって普段ライブハウスではなかなか見ない光景ですよね。
ライブを見に来るオーディエンスではなくて、自らが踊る主役になっているってことかな?
そうです。ミュージシャンが先導して、それにオーディエンスが応えるんじゃなくて、自分たちが表現する側になる。音楽は起爆剤にすぎなくて、自分たちの爆発を思い思いに起こす。「踊らされずに踊る」って歌詞にもあるように、みんなの内面に火を点ける起爆剤の曲にしたいなと。実は今までの楽曲って、進行がちゃんと”A・B・サビ”みたいにあって、体裁は歌ものだったんですよね。でも今回は歌詞もすごく少なくて、サビらしいサビもない。メインにはホーンのリフを据えてやっています。
確かにこれまでの楽曲とは毛色が違うよね。
これまでは特に、ブラックミュージックを聴かない人にとってどんな風に聞こえるかも考えながら、日本のロックやポップスの文脈で聞いてもおもしろいものを作ろうと意識していました。いまももちろんそこに面白さを感じているんですが、それ以上に「自分たちが面白いことが一番面白い」っていう考えに変化したかもしれません。
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仕事を通じて気がついた仏教とファンクの共通点、「あなたにも価値があるように、私にも価値がある」
WRITER

- 編集長
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26歳で自我が芽生え、とうとう10歳に。「関西にこんなメディアがあればいいのに」でANTENNAをスタート。2021年からはPORTLA/OUT OF SIGHT!!!の編集長を務める。最近ようやく自分が持てる荷物の量を自覚した。自身のバンドAmia CalvaではGt/Voを担当。
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