山下和也個展『私たち / behind our perspective』
日本画家であり東洋絵画修理技術者として活動する山下和也による個展『私たち:behind our perspective』が、12月13日(金)から12月29日(日)まで、烏丸御池駅近くのGallery PARCにて開催される。
目には見えない「気配」のようなものを、淡墨とほんの僅かな筆致、余白によって表現する罔両画(もうりょうが)を中心に構成される本展では、ロラン・バルト、フィオナ・タン、森 鴎外、土方巽などの、会場に配される「テキスト」がもうひとつの重要な構成要素として扱われている。そこでは作品とテキストが、鑑賞者によって直線的・平面的な関係のみならず、立体的な関係性へと展開されていく。
作品と鑑賞者によってつくられたパースペクティブ(空間、視座)を鑑賞者自らが泳ぎ漂い、作品の中に自らを発見する時に立ち上がる、個人や国、時代を超えた「私たち」をぜひ体感してほしい。
会期中の12月21日(土)には、アート・メディエーターのはがみちこを聞き手に迎えたアーティスト・トークも開催される。こちらも併せて注目だ。
Text(山下和也)
「私たち behind our perspective」
私たちとは誰のことなのか? 私とあなたを含む複数の人たち。たとえばコミュニティ。家族とか、人間とか、日本人とか。あるいは多面性を持つ複数の私という存在、つまり複数の私。私はまだ知らない私に生きている限り出会うことがある。それは遠い過去であったり、見知らぬ他者の想いであったり、今この瞬間や未来であるかもしれない。見知らぬ誰かの中に自分を発見することはめずらしくない。自分の探していた言葉を誰かがすでに的確に言っていたりすることもよくある。それはもう一人の私に出会っているのではないか。展覧会のタイトルを決めるとき、私と私の作品の背景にある多層の奥ゆきやつながりをどのように云ってみようか、内面的なミクロなものから概念的なマクロなものまで……。
個人的な事だが、私は私の存在について知るための手掛かりとして日本や日本文化に半ば強迫的に関心を持ち、そのなかで日本画に出会った。しかし、当時の私にとって日本画に日本は見つけられず、代わりに大野一雄の捉えがたい存在に日本を直感的に見出した。当時私は17歳だった。自分にとって最も身近であるはずの足元さえ、何も知らない未知の世界であることに唖然とした。日本とはなにかという問いが、私とはなにかという問いに擦りかさなってきた。そこで古典についてもっと学ぶべきだと考えて、大学で古典絵画の模写に取り組むこととなる。古典に向き合う時、それは過去の他人事ではなく、私ごととして一度とらえ直さなければならない。それはかつて誰かのつくったものであるが、その誰かのこころに寄り添い、思いをかさねる想像力がなければ入り込めない。その想像が、私ごととしてなにか共感できるとき、それは時を越えて人間同士のつながり、他者のなかの私を発見するのでしょう。
この展覧会では時代も国も様々な他者の言葉に出会います。私が偶然出会ったそれらの言葉も、他者のなかの私の一部(私たち)かもしれません……。
展覧会のタイトルは鑑賞者に一番最初に投げかけるメッセージだと思います。タイトル「私たち behind our perspective」は、展覧会構成の一部であり、展覧会全体や作品の鑑賞体験についても残響してもらいたい言葉です。なぜ、私たちなのかということのperspective(視座、空間)も個々に違っていて良いと考えています。その向こう側(behind)について考えて貰いたいですし、解説をするとすれば個々の作品の解説をしてゆかなければならないでしょう。
山下和也 YAMASHITA Kazuya
日本画家、東洋絵画修理技術者
1978年大阪生まれ。神戸市塩屋在住。京都嵯峨芸術大学研究生修了。2016年まで国宝修理装潢師連盟、(株)坂田墨珠堂にて文化財修復に従事。2017年、SunSui.設立。2018年~C.A.P.メンバー。同年、See Saw Seeds Effectプロジェクトにてフィンランド(トゥルク)で2ヶ月滞在制作。おもな展覧会に2019年『うつろう光、しずかな影』(LightsGallery / 名古屋)、2017年『水墨画 ー 淡墨と余白の美』(無印良品グランフロント大阪店 / 大阪)、2016年『松風』(雅景錐 / 京都)など。
日時 | 2019年12月13日(金)〜12月29日(日) 11:00〜19:00 月曜日休廊 / 金曜日のみ20:00まで |
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会場 | |
料金 | 入場無料 |
関連企画 | アーティスト・トーク 12月21日(土)16:00~17:30 予約不要・入場無料 山下和也 聞き手:はがみちこ(アート・メディエーター) |
お問い合わせ | Gallery PARC(正木・村田・岡田) 〒604-8165 京都府 京都市 中京区 烏帽子屋町 502 2F〜4F TEL:075-231-0706 FAX:075-231-0703 MAIL:info@galleryparc.com |
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はろーべいべーあべです。フェスティバルとクラブカルチャーとウイスキーで日々をやり過ごしてます。fujirockers.orgでも活動中。興味本位でふらふらしてるんでどっかで乾杯しましょ。hitoshiabe329@gmail.com
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