INTERVIEW

鈴木青が放つ、目の前の影を柔らげる光の歌

MUSIC 2021.09.29 Written By 柴田 真希

平成生まれのシンガーソングライター・鈴木青(すずきじょう)。2018年から年に1作のペースで作品を作り、渋谷の老舗ライブハウス〈La.mama〉を拠点に精力的なライブ活動で邁進してきた。その中で出会ったパンクバンド・MINAMISの楽器陣をサポートメンバーに迎え今年10月にリリースする3曲入りEP『EVERYDAY IS A NEW DAY』は歌詞の普遍性をサウンド面からも押し上げ、ポップスとしての完成度を創出した。記憶に残るフレーズと歌いたくなるメロディは、彼が幼少期からMr.Childrenを歌っていたというエピソードを思い起こさせる。10月15日(金)に開催する初の自主企画では、高校の時から一つの目標としていた爆弾ジョニーとの2マンライブを実現するなど、着実に歩みを続けている。

「こんな時代だからこそ好きなものを好きと言えることできたら素敵だぜ」

「届かなくてもいいさ自分を誇れるならいいさ 好きな歌を歌うのさ夜はいつか明けるだろう」

“フィルライト”

鈴木に対面すると、20代半ばのステージに立つ青年には珍しく、自分を知ってほしい気持ちとは縁を切り、彼自身がただ自分が好きな歌を直向きに届けようとしている姿が見えた。生活に根ざしつつも鈴木青の私性を引き離した彼の歌は、聴き手が自分ごととして感じることができる余白のある表現が魅力だ。そうやって「好きなものを好きと言えることできたら」と歌う彼の言葉だから、聴き手は自分の「好き」を抑えていたことに気がつく。そして誰にも理解されない自分だけの「好き」を持っている人は惹き付けられるのだろう。「目の前の人の世界を変える歌を歌う」そう語る彼は、遠くまで届かなくとも目の前の観客や身近な人に真っ直ぐ光を届ける。その光はメインライトのように強くないが、影を柔らげ、その下に隠れていたものを見せてくれるような、控えめで優しい“フィルライト”だ。

 

彼がその表現に辿りつく過程には、不器用な情熱のサーモスタットとしてある時は焚き付け、ある時は冷静な視点を与え、ある時は掬い上げた〈La.mama〉のプロデューサー・河野太輔の存在があった。時に怒りほどの反発を覚えながらも河野の問いかけに日々応えるようとする彼を目にすると、周りは力を貸したくなるのだろう。そんな人々を貪欲に巻き込み加速し続けて、気がついたら仲間が増えていた。そうやって得た仲間と、目の前の人を想う気持ちでまた歌を歌う。その連続で、これからも進む先で出会う人の目の前を少し明るくしていくのだろう。そんな道中に立ち会った。

「世間知らずだった少年時代から自分だけを信じてきたけど

心ある人の支えの中で何とか生きてる 今の僕で」 “Everything(It’s you)” Mr.Children

〈La.mama〉に初めて出た夜、怒りの衝動から生まれた曲“平成”

──

昨年の夏、〈La.mama〉の無観客配信ライブに出演されていましたよね。そのときに鈴木さんの存在を知りましたが、最初に出演されたのはいつですか?

鈴木

2018年の5月です。一人で活動を始めて、3ヶ月後ですね。始めは下北沢の〈DaisyBar〉で弾き語りを2〜3本やって、5月に初めてここに出ました。当時、自分にとってホームみたいな場所を増やしたいなと思っていたんですけど、まさかこんなに自分の活動の中心になるとは全然思ってなかったです。

──

他にもたくさんライブハウスがある中で、どうしてここだったんですか?

鈴木

Mr.Childrenが大好きで、両親いわく3歳から歌っていたんですけど(笑)YouTubeで昔の動画とか漁っていると、ここでやっていた映像がたくさん出てくるんですよね。

──

かなり昔の動画まで掘ってますね!ミスチルのどんなところに惹かれてましたか?

鈴木

桜井さん、圧倒的じゃないですか。SNSがない時ならではの、繋がれないからこその孤高感というか。そういう存在に憧れている部分があるんですよね。音楽活動をする上で、自分が小さい頃から聴いていたり、感じていたものを自分の中で変換して出している意識なので、ずっと聴いていたミスチルがインディーズの時に出ていた〈La.mama〉のステージには絶対に立ちたいと思っていたんです。単純に憧れていたんですよね。

──

ミスチルもそうだし、THE YELLOW MONKEYやスピッツも出ていたライブハウスですね。

鈴木

僕も聴いていたそういうモンスターバンドが育った場所ということは、絶対何かあるだろうな、って思っていました。自分もその何かに触れたい気持ちがあったんだと思います。それで直接電話したらプロデューサーの河野さんが出て「音源を送ってほしい」と言われたので送りました。結局、送った音源を聴いたのか分からないんですよね。というか多分聴いてないんですけど(笑)後日メールが来て、次の5月に出させてもらうことになりました。

──

それで初めて出てみて、どうでしたか?

鈴木

精算のとき、河野さんから「本気で音楽やっていく気ないでしょ」ってコテンパンにされましたね。当時大学4年生だったので、周りはみんな就活とかしていて、自分にもまだ他の道があるというような甘えとか迷いがあったんだと思います。それも全部見透かされていて。そこで自分の中に稲妻が走ったというか、価値観が一気に変わりました。「このままじゃいけない」って感じて翌朝作ったのが“平成”です。

──

今回のEPにも収録されている曲ですね。

鈴木

今回のはバンドでちゃんとした音質でレコーディングしました。サブスクに上がっている弾き語りの音源は、作ったその日に録ったものなんですよ。クリックも聴かずにギターをめちゃくちゃに弾いて、おじゃる丸が持っている笏みたいな、スタンドに立てて使う「コンデンサーマイク」っていうのがあるんですけど、それをハンドマイクにして歌って。あと普通は破裂音とかを吸収するポップガードっていうのをマイクのところに付けるんですけど、それを付けたらしっくりこなかったので、外して歌って(笑)

──

めちゃくちゃなことしてますね!

鈴木

自分にもそうですけど、河野さんに対しても、むかついたいたんですよね。「言いやがった、このやろう」みたいな。だから「絶対今すぐにこの熱いものを表現しなきゃだめだ」と思って録りました。その精算の時に、河野さんからMINAMISの存在も聞いたんですよ。

チャンスを一つも逃さない執念で掴んだ、憧れのバンドのツアー帯同

──

MINAMISも〈La.mama〉を拠点にしているバンドですよね。2019年にはMINAMISのツアーに帯同されて、今回のレコーディングにも参加されています。鈴木さんにとって重要な存在かと思いますが、そこまでの関係になった経緯を教えていただけますか?

鈴木

河野さんに「頑張っているバンドがいるんだよ」っていう話をされて、家に帰ってすぐ聴いたんです。“アイ”って曲のPVを観て「めっちゃいい!」と思って掘り始めて。そしたらある時渋谷のスタジオで見かけて、内心めちゃくちゃ興奮しました。「うおー!MINAMISだ!」って思って。

──

〈La.mama〉じゃなくて、スタジオで初めて会ったんですね。そこで声をかけた、と。

鈴木

それが……全然興味ないフリをしました(笑)小さいプライドなんですけど、自分の中で、対等に挨拶できると思うまで挨拶はしない、と決めていたんです。それを河野さんに話したら「挨拶しろよ」って言われました(笑)

──

河野さんの言う通りです(笑)では初めてMINAMISと話したのはいつだったんでしょうか?

鈴木

2018年の11月、路上ライブ帰りです。ちょうどMINAMISも同じ日に渋谷で路上をやっていたんですよ。自分が三井住友銀行の前で、彼らが〈MODI〉前で。

──

数分の距離ですよね。

鈴木

そうなんです。挨拶しに行ったら自分のことを知っていてくれて、「君が鈴木青か!」って言われて。今思うと、河野さんが僕のことを話してたんでしょうね。すごく気さくなお兄さんたちで、優しいな、って思ったのを覚えています。ターニングポイントだったのは2019年4月、MINAMISのライブにゲストボーカルで参加した時です。その時たまたま、ライブの直前にボーカルの南雲さんがインフルエンザになっちゃって。

──

大抜擢ですね。

鈴木

そうなんですよ。ちょうど前日に自分が〈La.mama〉でライブだったんですけど、SEがかかってステージに上がったら、目の前に南雲さん以外のMINAMISの3人がいて、驚きました。でも観てもらえるのはうれしいので、全力でライブをして。終わった後片付けてたら、ドラムの篠原さんに「ちょっと話あるんだけど、上、いい?」と呼ばれて、「締められんのかな?」って思うじゃないですか(笑)そしたら「明日歌ってくれないか」って言われて。

──

すごく急ですね。それから練習したんですか?

鈴木

すぐスタジオに行って、1時間くらい歌って歌詞を覚えて〈La.mama〉に帰ってきて、また4人でリハーサルをやって……もう突貫工事ですよね。情熱だけでした。

──

南雲さんのご指名だったんでしょうか。

鈴木

いや、その日、知り合って5ヶ月くらいで初めてライブを観てもらったんですよね。初めから誘おうとして来たわけじゃなくて、ライブを観て決めたって言ってくださったので、そこで音楽仲間として認めてくれたのかな。あのライブがなかったら、一緒にツアー周ることもなかったと思います。

──

お話を聞いていると、〈La.mama〉に来てから目まぐるしい日々ですね。

鈴木

ここに来てなかったら、と思うと、ぞっとしますね。それくらい日々刺激を受けていますし、色んな人に恵まれていると常に感じています。〈La.mama〉がオープンした日が5月10日で、Mr.Childrenのデビュー日でもあり、奇遇にも自分が大好きだった伊豆大島のおじいちゃんの命日でもあるんです。だから導かれたと思っています。それでMINAMISと一緒にツアーを周ったときの僕の家の車のナンバーも「0510」で“ラママ号”にしました。

“平成”に引き続き「怒り」から生まれたナンバー“フィルライト”

──

ここに来る前の音楽活動についても聞いていきたいです。ソロ活動は2018年の2月から開始されたということですが、その時鈴木さんは大学生ですか?

鈴木

当時は21歳で、大学3年生ですね。

──

周りは就職活動を始める時期ですよね。

鈴木

そうですね。でも僕は大学3年くらいで既に音楽をやるって決めていて、当時新しくバンドを組もうとしていたメンバーでイギリスに行ったんですよ。色んな音楽に触れようと思って。でも帰ってきてこれから活動を始めようというときに、ドラムが「ゲームを作りたい」と言い出して(笑)イギリスから帰ってきてすぐに解散しました。

──

旅行中、思うところがあったんでしょうか……。

鈴木

「ゲームが好き」とずっと言っていたんです。ベースの子は今では中学校の先生になって、ギターは新しく別のバンド組んで。それぞれがそれぞれの道で頑張っていることは誇りに思います。

──

それぞれの道に進んだんですね。その時やろうとしていたバンドは、どんな音楽だったんですか?

鈴木

THEE MICHELLE GUN ELEPHANTみたいなガレージロックをやろうとしていました。みんなパンクとかガレージにすごく憧れた時期で。尖ってましたね。イギリスでバンド名を考えたんですけど、21歳の発想で、「ヘッドラッシュジャンキーズ」っていうダサい名前でした(笑)

──

その感じ、分かります(笑)それでバンドが解散して、一人で始めたと。

鈴木

はい。「これは就職かな?」って思ったんですけど、それでも音楽がやりたかったので大学3年生の秋くらいからソロの曲を作り始めて、2月に活動を開始しました。

──

ソロになって初めて作った曲は、どんな作品だったんですか?

鈴木

“蒼き日々”っていう曲です。当時感じていた自分の鬱憤を街の騒音みたいな音で表したくて、間奏でフリー音源を漁ってぶちこみまくりました。若気の至りですね(笑)それが入っているEPの曲は2年前くらいにここで久々にやったとき、河野さんに「昔の曲、全然良くないね」って言われて、〈La.mama〉に来て音楽性もがらっと変わったんだな、って気づいたので“蒼き日々”以外はもうやらないですね。

──

〈La.mama〉に来て先ほどの話でも出た“平成”ができて、2019年9月に『極東最前線』、その約1年後に『フィルライト』とコンスタントにリリースされていますね。自分は“フィルライト”がそれまでの鈴木さんの表現と少し違うと感じました。

鈴木

“フィルライト”はMINAMISのツアーで何回かやった時、河野さんが「あれはいい曲だね」って言ってくださって。MINAMISもそういってくれるので、「あ、そうなんだ」と思いました(笑)自分の中でそういう曲だという感覚はあまりなかったんですけどね。もしかしたら想像している以上にエネルギーを持っている曲なのかもしれないです。

──

自分も非常に好きな曲です。思ったことを直球で歌っているような表現ですよね。

鈴木

ボイスメモに録音していたときの題名が……「衝動」でした(笑)多分そのとき、うまくいかない自分か何かに怒ってたんだと思います。だからその鬱憤としたものを詰め込んだのがこの曲です。すげぇださいけど(笑)

──

すごいタイトル(笑)“平成”ができたときもそうですけど、怒りからいい曲ができますね。

鈴木

怒りって一番のエネルギーにもなると思うんですよね。だから自分の怒りをその衝動のまま表現したものが、みんなにも共通しているときが最強だと思うんです。いい曲っていうのは、聴いてくれた人が、自分の生活に置き換えたときに救われるような曲だと思っていて。ヤマさんっていういつも撮ってくれているカメラマンの方が2番の歌詞から勇気をもらったと言ってくれたんですよ。そうやって思ってもみなかった受け取り方をしてくれるのが、一番嬉しいですね。

──

鈴木さんの歌は、「鈴木青の話を聞かされている」という気持ちにならないし、聴いている自分のことだと思える表現ですよね。

鈴木

ありがとうございます。目の前の聴いてくれる人たちに鈴木青の背景が見えるんじゃなくて、曲がいいと思ってもらえたらそれでいい。聴いてくれた一人一人が自分の生活に置き換えたときに、「あぁ、こういう時あるな」と思ってくれるのがベストですね。

世界は変えられないけど、目の前の人の世界を変える歌を

──

それは今回『EVERYDAY IS A NEW DAY』でこれまでより成功しているように感じました。再収録された“平成”のアレンジも、衝動をそのまま収録したのではなく、人に伝えることを意識した表現になっていますね。

鈴木

最後の語りの部分なくなりましたからね。今回はMINAMISの高坂さんのギターソロが良すぎたのでそれを生かして、元々語りだった部分に入ってますね。

──

そういった部分で今回からレコーディングに参加されたMINAMISの3人の影響もあるかと思いますが、いかがでしたか?

鈴木

最初の一音を出しただけで、音がでかくて「うおー!でけー!」と思いました。それですごくワクワクしたのを覚えてます。この間〈DaisyBar〉ライブをしたとき、以前からある“幸福論”っていう曲を演奏したんですけど、それもすごく楽しくて。

──

楽しそうでしたね!4人それぞれ楽しんでいるのが観ていても伝わりました。

鈴木

積極的にアイデアを出してくれるんですよね。僕より長く活動しているし、自分たちのバンドをやりながら3人それぞれ違う音楽を好きだから、アイデアの引き出しの数が豊富なんですよ。”平成”のギターソロの部分もそうですけど、「ありがてぇ!」と思いながら3人と活動しています。もう、日々勉強ですね。

──

引き出しという面では、鈴木さん自身も〈La.mama〉に来て音楽性の幅が広がったのではないかな、と思っていました。昨年SNSで弾き語りの動画をあげていましたよね。そこで歌っていたラッキーオールドサンやAnalogfishには、ここで出会ったんですか?

鈴木

まさにそうです。ラッキーオールドサンはMINAMISのドラムの篠原さんが好きなんですよ。だから一緒に周ったツアーの車でずっと聴いていて知って、歌詞とかいいなって思って。ツアーの車で聴く曲もいいですよね。Analogfishは〈La.mama〉によく出られていたので、気になって。“抱きしめて”っていう曲を歌いました。

──

色んな音楽を貪欲に吸収されていますね。

鈴木

〈La.mama〉に来てから確実に色んなジャンルを聴くようになりました。前は食わず嫌いしてたんですけど、そしたら河野さんに、「嫌いなものが増えていくと暮らしにくいから、好きなものを増やせばいい」って言われて。もちろん自分のルーツじゃない音楽もたくさんありますけど、曲を聴いたときに、何か一箇所でも好きなところを見つけようと意識するようになりました。きっと自分が好きな音楽に正直に活動されている方々の曲だから、響くんですよね。

──

それは鈴木さんの歌にも通じる部分だと思います。今作は「触れられない時間のなかで、もう1度“日常”というものを考え、想い、歌ったEP」ということで、ここを拠点に活動し始めた鈴木さんの気持ちの変化も織り込まれているように思いました。

鈴木

1曲目の“make it ~日常~”は、過去の自分と、〈La.mama〉とか、色んなものが合わさってできたので、歌っていて色んな時の情景が思い浮かぶ曲です。Aメロは高校2年生のときに思い浮かんでいたし、タイトルは5〜6年前からありました。サビの「繋ぐ」っていう言葉は、〈La.mama〉がコロナ禍で立ち上げた『CONNECT 20▷21』というプロジェクトを思って入れましたね。

──

3曲通して聴いて、色んな時期に作った曲なのかなと思いました。

鈴木

そうですね。“make it ~日常~”は昨年末、“Step by Step”は一番新しくて、今年の春にできました。昨年末から今年にかけて「明るい曲を作る」というルールを自分で決めて曲を書いてたんですよ。みんなが暗い今だからこそ、明るい曲を作ることに意味がある気がして。それでできたのが“Step by Step”です。

──

「向かい風は強い方が高く飛べるって知った日」という部分、いいですね。

鈴木

あれは河野さんの言葉です(笑)精算で、「青とかMINAMISの音楽は流行の音楽じゃないけど、もしもヒットしたときに、流行っているものより上に行くよね。向かい風の方が、飛行機も高く飛べるよね」って何気なく言っていて。昔は別の曲でこの言葉を使っていたんですけど、今回この曲に入れました。「世界は変えられないけど、目の前の人の世界は変えよう」っていうのはMINAMISともずっと言っていることで。

──

それはリスナーの鈴木さんにとって音楽が、そういう存在だったからでしょうか?

鈴木

音楽にパワーをめちゃくちゃもらってきたし、それこそ自主企画に出ていただく爆弾ジョニーには、学生時代すごく助けられました。爆弾ジョニーも、難しいことは全然歌ってないけど、聴くと、忘れていたことを思い出させてくれるんですよね。仕事で疲れて余裕がないとき、「人に優しく」って言われると、「そうだよな」って思うじゃないですか。だから自分も、世界を大きく変えるっていうよりは、電気のスイッチをパチッとつけるような、気付きを作りたいですね。

みんなを悲しみのない場所へ、連れて行く

──

自主企画で爆弾ジョニーを誘った経緯もお聞きしたいんですけど、今回が初めての企画ですよね。

鈴木

これまでは〈La.mama〉のイベントに呼んでいただいていたんですけど、今年は自主企画を一つのステップとしてやりたいと河野さんともずっと話していて。曲も溜まってきたので開催に踏み切りました。自主企画をやるなら無理でも絶対に爆弾ジョニーを誘うと高校の時から決めていたんです。

──

それほどまでに鈴木さんにとって大きな存在だったと。

鈴木

高校2年生の時、クラスメイトの女の子にCDを渡されて、どハマりして。それから人格形成において大切な時期にずっと聴いていたので、これまで8年間、ずっと友達にも「俺、絶対爆弾ジョニーと対バンする」って言ってました。

──

高校生の時から気持ちが変わってないのはすごいですね。

鈴木

ほんっっとに好きなんですよ。でも憧れで終わらせたくないと強く思っていて、一昨年の年末、〈La.mama〉のカウントダウンで対バンさせてもらったとき、挨拶しました。緊張して全然喋れなかったんですけどね(笑)MINAMISのベースのはむざさんが、ライブ前にりょーめーさんに「一緒にツアーを回っていたやつがSEに爆弾ジョニーの曲を使ってました」って言ってくださったんですよ。そしたらその日、爆弾ジョニーがセットリストを変えて、1曲目に僕がSEにしている“かなしみのない場所へ”をやってくださったんです。

──

それはかなりうれしいですね!お話を聞いていると、鈴木さんの情熱に周りにいる人たちがどんどん巻きこまれて、力を貸してくれているような感じがします。

鈴木

10月15日の対バンは〈La.mama〉に来てなかったら絶対実現してなかったと思いますし、クラスメイトの女の子にCDを渡された瞬間から、本当に色んなものが繋がるな、と思っています。音楽続けてよかったと思うし、この場所に来てよかったなと思うし、そういったことの連続ですね。

──

10月15日『Freedom[ned]』どういう日にしたいですか?

鈴木

様々な制限はありますが、イベント名の通り、みんなにとって気持ちを解放する、“クソ自由”な日になったらいいなと思います。ライブハウスはみんながそれぞれが持ち寄った、これ以上なく悲しみが集まった、悲しみの果てみたいな場所だと思っているので、そのさらに先は悲しみがない場所なんです。だからそこにみんなを連れていくのが、自分のやることですね。爆弾ジョニーにはすごく感謝しているからこそ、ぶつかり合いたいです。少しでも観てくれる人に驚きとか、そういうものを与えられたらな、と思います。

──

楽しみにしています。一つ目標を達成したとも言えると思いますが、これからの活動の目標はありますか?

鈴木

これがゴールでもないので、この点をまた線にできるように、自主企画も続けていきたいし、いい曲をたくさん作ります。今回MINAMISの3人とレコーディングをしたらすごく楽しかったので、音源もコンスタントに作っていきたいですね。音源だと地元の友達とかも「仕事に行く時、毎日聴いている」と言ってくれたりするのがうれしくて。ライブとか音源に触れてくれた人の目の前の世界が少しでも変わるような曲をこれからも作りたいですね。

写真:一色華

EVERYDAY IS A NEW DAY

アーティスト:鈴木青
仕様:CD / デジタル
発売:2021年10月15日

 

収録曲

1.make it ~日常~

2.Step by Step

3.平成

 

「当たり前だった日常が奪われ、多くの悲しみで包まれた生活。
何度心をへし折られても立ち上がる人々。
変わることなく移り変わっていく季節。

触れられない時間のなかで、もう1度“日常”というものを考え、想い、歌ったEPです。」

『 Freedom[ned]』

 

日時:2021年10月15日(金) open 17:20 / start 17:50

会場:渋谷La.mama

東京都渋谷区道玄坂1丁目15−3 プリメーラ道玄坂 B1

チケット:前売:¥2,500(1drink別)
イープラスにて発売中

出演アーティスト:

鈴木 青(BAND SET)
爆弾ジョニー

 

Twitter:https://twitter.com/SUZUKI_JOU

HP:https://suzukijo.wixsite.com/mysite

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