INTERVIEW

【第一回】音楽のラッピングーーグラフィックデザイナー・TYD™️(豊田由生)

裸で貰うプレゼントと、綺麗なラッピングがされたプレゼントでは中身への期待が大きく変わってきます。ジャケットは、アーティストの想いや音楽から様々な要素を感じ取ったデザイナーや写真家、イラストレーターがその音楽のためだけに用意した、特別なラッピングのようなものです。

MUSIC 2022.01.31 Written By 柴田 真希

人と音楽の出会いや関係性を拡げるジャケットを作る人は、アーティストの意向を訊いて表現に落とし込む、親身な相談役であり翻訳家でもあります。作品が生まれるまでの道筋はきっと相当険しいものの、あまり明らかにされることがありません。デザインの意匠について話を聞くのは野暮かもしれませんが、この連載ではあえて、その作品ができるまでの試行錯誤の過程と、作家の音楽との向き合い方、アーティストとのコミュニケーションを辿ることで、音楽とジャケットのよい関係性の一例を探索します。

 

初回のゲストは昨年までSonoSheetのギタリストとしてステージに上がりながら、今ではグラフィックデザイナーとしてステージに上がる人を陰ながら手助けしているTYD™️こと豊田由生さん。ナードマグネットやいちやなぎ、さとりモンスターのジャケットなどTHISTIME RECORDSの作品を多く手がけ、ジャンルに縛られずにアーティストの魅力を汲んでそれぞれに合った形に編み上げるジャケットデザインが魅力です。

 

一方でHOLIDAY!RECORDSや〈新宿Marble〉クラウドファンディングのグッズデザイン、地元・茨城で開催される『GFB(つくばロックフェス)』のメインビジュアルを担当。多くの人に親しみやすくも一捻りあるイラストを基調に、手触りのある温度感の作品を生み出しています。どれも共通してSNSでも目に止まり、ひとまず手にすると日に日に愛着が増していくスルメデザインです。その味わい深さの秘密は、バンド時代を過去に持ちアーティストと同じ熱量で作品に深入りできる地盤と、自らが心惹かれたバンドのライブに通ったり、アイドルにものめり込んだファンとしての経験にありました。

TYD™️ (豊田 由生)

 

グラフィックデザイナー、茨城県出身

Tubicビジュアルデザイン学科卒業

茨城県内のデザイン事務所を経て、現在は都内の制作会社に所属。

2021年9月まで宇都宮のバンドSonoSheetのメンバーとして活動。バンド在籍時の経験を生かし、現在はTYD™️としてバンドやアイドルグループ、イベントのグラフィックデザインから企業のロゴや商品パッケージなど、幅広い領域で活動中。

 

https://tydyki.myportfolio.com/

ジャケットを手掛ける原点は自身のバンド・SonoSheet

──

デザインのお仕事をやろうと決めたのはいつですか?

TYD™️(以下豊田)

高校時代にやっていたバンドの企画イベントのために、フライヤーを作ったことがきっかけです。ちょうど就職するか進学するか決める時期でもあったので、将来はデザインの方面に進むのもいいなと思って、専門学校に2年間通いました。

──

ではきっかけも、バンドが関わっていたんですね。

豊田

そうですね。小さい頃に絵を描いたりはしていたんですけど、実際に仕事として意識し始めたきっかけは、バンドだったと思います。でもその前にデザインに触れる原点があって。

──

どのような原点ですか?

豊田

父親が大工をやっているんですけど、昔はパソコンもなかったので手描きで図面を描いていたんですよ。だから父の立面図を真似して、自分も方眼紙に真っ平な家を描いていました。変わってますよね(笑)。奥行きのある風景画を描くより、ぺたっとした図面を描く方が好きで、それはデザインをやるきっかけの一つになっていたと後々思いました。

──

建築にまつわる図面を描くことと、デザインに興味を持つことの間にはもう一つ距離がある気がするのですが、どのように繋がっている感覚でしょうか?

豊田

家を建てることと、フライヤーやジャケットをデザインすることは出来上がるものが違うだけで、過程は一緒の部分が多い気がするんです。家は「こういう風に住みたいからこれくらいの広さが必要」とか「こういう雰囲気にしたいからこの素材を使う」という視点で組み立てます。フライヤーやジャケットを作るときも「こういう人に届けたいから雰囲気は明るめにする」「色は青を基調にする」と決めていて、どちらも目的を適えるためのアプローチを土台から作る点が同じなんですよね。

──

大工になろうとは思わなかったんですか?

豊田

特に家業を継ぐ話もなかったですね。父親と同じことをやっていると気づいたのも、デザインの仕事を始めてからなんですよ。自分の人生設計はどうもロジカルに組み立てられなくて、その時「やりたい!楽しそう!」と思うことをやって、後々振り返って「これがやりたかったんだ」って気づくことの繰り返しですね。

──

ではデザインの道に進まれて、初めてジャケットを手掛けられたのはどの作品でしょうか。

豊田

昨年まで在籍していたSonoSheetのEP『秒速340メートルの青』(2018年)が最初です。デザインの制作会社に勤めながら、この作品をきっかけにジャケットのデザインも請け負うようになりました。

──

フライヤーもジャケットも、ご自身の作品が始まりだったんですね。SonoSheetでいえば『シングルアゲイン』(2020年)は短冊形で特徴的ですが、実際に8cmシングルでリリースされたんですか?

豊田

いえ、配信だけなんです。バンドのルーツである90年代をイメージして8cmシングルのジャケにしたのはこだわりですね。配信のジャケットだけなのに8cmっぽくするなんて、他にやっている人は多分いないと思います(笑)。一度プリントアウトしたものをスキャンして最終的に仕上げることで、当時の質感がちょっと出たんじゃないかな。

SonoSheet『シングルアゲイン』(※提供写真)
──

90年代のJ-POPジャケットっぽさもありつつ、SonoSheetの青いイメージも保たれたデザインですね。

豊田

イラストは、ボーカルのユウキさんに描いてもらったんです。3週間だけ付き合った彼女さんと行った水族館でマンタを見る彼自身の絵で、最初は嫌がられたんですけど、楽曲の温度感を伝えるには曲を書いた彼がイラストを描くのが一番だと思ってお願いしました。楽曲がエモーショナルなのにジャケットを僕が整えすぎてしまうと、中身と温度差が出てしまうんですよね。だから彼自身が描いたラフなイラストを活かして、あえてきれいなデザインはしませんでした。曲をちゃんと聴いてもらうために余計なことをしないよう意図した点では、最新作の『君滲む青』(2021年)もそうですね。

──

そこまでの判断と提案ができるのはメンバー同士で、楽曲への深い理解があるからですね。

豊田

とはいえ他のアーティストさんのデザインを手掛ける時も、楽曲を聴いて自分個人として想像したことからアイデアに落とし込んでいくので、提案を受け入れてもらえると嬉しいです。アーティストさんに応じて、どのくらい介入して整えるのか、みたいなことはいつも考えていますね。

ヒントが隠されたナードマグネット『DETENTION』のカセット

──

SonoSheetのデザイン以外にも多数の作品のジャケットを手掛けられていますね。ナードマグネット『DETENTION』(2021年)のお話も伺いたいです。まずどういった経緯で依頼が来たのでしょうか?

豊田

ナードマグネットの『そうふくしゅうツアー』にSonoSheetも出る段取りが進んでいたんですけど、会場でナードが新曲のカセットを発売するということでTHISTIME RECORDS※の社長から依頼されました。ちょうど自分がSonoSheetを引退する直前だったのは偶然か意図してか分かりませんが、このタイミングでできてよかったと思います。

※ナードマグネットの所属レーベルで、SonoSheetのHUNGRY OVER RECORDSも同社内のレーベル

──

このカセットがリリースされた時点ではデザインについて「ここで説明しちゃうと面白くない」とSNSで投稿されていました。このタイミングで改めてお聞きしたいんですが、このデザインにはどんな背景があったのですか?

豊田

マスタリング前の音源と併せて楽曲についてもらった情報は、好きなバンドのフロントマンが亡くなってしまった内容を歌っていること、タイトルは「居残り」という意味、っていう内容でしたね。あとは「海外っぽさ」「写真っぽい表現」というポイントもありました。色の指定は特になく、カセット本体は納期に間に合う透明色を選んだくらいです。それで曲のルーツを辿りつつ、どうやってジャケにするか考えました。

──

最初はどのくらいの案を作られたんでしょうか。

豊田

一度にたくさん案を作るというよりも、作っては打診しての繰り返しでしたね。選ばれなかった案を今日は持ってきました。最初に思いついたのは「教室で、3人が去った後の椅子」です。そう、亡くなったバンドマンが3人いたということも聞いていました。

制作時のアイデアメモ。「3」から想起したイラストが並ぶ。
──

これもいいですね。どうして採用されなかったんですか?

豊田

『僕は知らない』(2020年)ですでにソファの表現を使っていたんです。椅子だと近すぎるから新しい案を考えることになりました。そこでナードマグネットの曲の元になっているドラマ、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』とか『13の理由』とかって学園物だし、タイトルの「居残り」にも学校っぽさがあることに気づいたんです。

──

たしかに『CRAZY,STUPID,LOVE』(2016年)や『透明になったあなたへ』(2019年)も学園っぽいイメージがあります。

豊田

サウンドとミスマッチにならない表現を考えながら歌詞を辿っていると、「みんなとっくに帰ったよ」っていうキーワードが出てきて学校からの帰り道を連想して、スクールバスを思いつきました。海外っぽさもありますよね。そこから素材になる写真を感覚的に選んで、バスの後ろをトリミングしたのがこだわりです。このバスは亡くなった3人が乗って去ったバスで、自分だけそこに乗れていない、というストーリーが曲とリンクするので、この案で決まりました。

──

すぐには意味に気づけない、一捻りした表現ですね。

豊田

瞬時に分かりやすいことも大事ですけど、それよりも自分で紐解いていく余白を残すことで、作品をゆっくり探究して楽しめるのもいいな、と思っていますね。「どうしてバスの後ろ側なんだろう?」と思うじゃないですか。色んなヒントを置いておくことで、たとえばライブのMCで曲が作られた背景を聞いたときに「あのジャケットってこういう意味か!」って解ることがある。noonblanc『スーパーカー』(2021年)もささやかにヒントを仕込んでいます。

noonblanc『スーパーカー』(※提供写真)
──

時間をかけて作品を楽しめるデザインですね。この赤い糸で表現されているのは、東京タワーでしょうか。

豊田

そうです。歌い出しの「東京に出てから」っていうフレーズとギターからくるり“東京”へのオマージュを感じたんです。だから彼女たちのくるりへのリスペクトを込めて、『ベスト オブ くるり / TOWER OF MUSIC LOVER』(2006年)のジャケットの京都タワーから連想した、東京タワーにしました。その上で歌詞の中の二人の関係性を赤い糸の絡みで表現しています。タイトルとは直接関係ないんですけど、辿っていくとストーリーが見えるようにしました。

ファンの一人として没入することで生まれる熱量

──

どちらも楽曲のストーリーをデザインに落とし込んだ作品ですね。違ったアプローチで作られた作品についてもお聞きしたいのですが、アイドルとバンドでは考え方に違いはありますか?具体的にはさとりモンスターの『SATORI MONSTER』(2021年)の背景について伺いたいです。

豊田

これはリード曲“ハレルヤ!”のテーマ「連帯、家族、チーム愛、家族愛」を踏まえつつ、1枚目のアルバム『さとりパイオニア』(2020年)との繋がりも欲しいという要望があったんです。それでパッケージの内側に使った写真は、前作のジャケットで写していなかった部分という設定で撮ってみました。前作のある曲の、4人の手元が絡み合う振り付けを捉えています。その振り付け自体がチーム愛や連帯を想起するので、テーマを踏まえて前作からの繋がりも作ることができました。

──

前作から応援しているファンが気付くと嬉しいですね!ファンに寄り添った視点を感じますが、豊田さんご自身もアイドルのファンをされていたことがあるんでしょうか。

豊田

実は中学校から高校の始めにかけて、地元の友達とAKB48にハマった時期がありました。みんながバンドをディグる頃、アイドルばっかり聴いていましたね。アーティストさんと距離を置いたフラットな視点でデザインするのも大事ですけど、「なぜか持っていたい」ような愛着をもってもらえるジャケットにするためには、僕自身がそのアーティストさんに没入してファンの一人として届けたいと思っています。

──

アーティストに没入して作るとはどういうことか、もう少し詳しく伺えますか?

豊田

数値として客観的に売れる理屈で組み立てる部分ももちろん大事なんですけど、それと同じくらい、感覚的にいいと思ったことも取り入れるようにしているんです。たとえば『SATORI MONSTER』のジャケットに使用したメインのカットは当初予定していた構図ではなくて、空き時間に撮っていた写真の中から直感的に「これがいい!」と思ったものを選びました。「ジャケットの写真がバンドっぽくていい」という投稿をSNSで見かけたときは嬉しかったですね。まさに彼女たちのバンドっぽさを表現したかったので、「伝わっている!」と思いました。

──

ご自身がファンと同じくらいアーティストに没入しているから、感覚的にいいと選んだものが、自然とファンにとってもいいと思うものになっている、ということですね。

豊田

さとりモンスターもナードマグネットも、今まで作った人たちも、ジャンルを問わず自分がめちゃくちゃ好きになったから自然と熱量がこもりました。作品には曲を作った人の気持ちとか、その曲を披露するまでの練習に向き合った苦労、ライブハウスの人たちの想いや、サポートする人たちの想いが詰まっていて。それと同じように、僕もデザイナーとして「好きなアーティストさんの曲を届けたい」っていう気持ちを凝縮して放ちます。そうやってたくさんの人の想いで作られた作品は、理屈ではなくちゃんと届くと思うんです。その届くための一つの要因に、自分のデザインもなっていきたいです。

LOSTAGE・五味の影響――目の前の人に深く届ける

──

「なぜか持っていたい」ジャケットを作る一方で、配信シングルのジャケットもさとりモンスター『Almighty!!』(2021年)などいくつか手掛けられていますね。CDやカセットのような実物のない、配信ジャケットならではの特徴はありますか?

豊田

印象のスピード勝負なところがありますね。CDやカセットのように、さりげないこだわりを仕込んだ曖昧な見せ方だと目立たず埋もれちゃうんです。さとりモンスターからは、プレイリストに入って並んだときにちゃんと印象に残るデザインをお願いされました。だからインパクトがありつつ、目指したいイメージは保つようにしています。

さとりモンスター『Almighty!!』(※提供写真)
──

ジャケットってある種、プロモーションの要素も必要ですよね。そういった部分にはどのように向き合っていますか?

豊田

もちろん売り上げも大事かもしれないですけど、それよりもアーティストの意志を尊重して、作りたいものを作って届けたい人に届けられるのが幸せです。西片梨帆さんの『彼女がいなければ孤独だった』(2020年)を作ったときも、数値的なゴールを決めるのではなく、彼女自身がちゃんと満足することを目指して、かなり細かくやりとりしていきました。「今までファンでいてくれた人に届けることが、いろんな人に届ける最善のゴール」っていうのがアルバム自体のテーマでもありましたね。僕自身も、音楽はまずは数人に深く届くところから始まっていくと考えています。

──

その考えを持つようになったきっかけがあるんでしょうか?

豊田

それはLOSTAGEの五味岳久さんの影響です。LOSTAGEはCDを独自の流通で販売しているんですよね。ライブ会場と五味さんが奈良でやっている〈THROAT RECORDS〉とそのオンラインショップという、限られた場所だけで買えるんです。それでも数千枚は売れていて、狭い範囲でも深く届けることで広がっているんですよね。これまでCDショップとかに広く流通するものの恩恵はもちろん受けていたんですけど、五味さんが自分の信じられる範囲で人に届ける姿はかっこいいなぁ、と思っています。

──

ライブハウスで目の前のお客さんのことを考えて演奏する、ということ自体がそうですもんね。

豊田

そうですね!目の前の人に向けて届ける、その繰り返しで広がっていくんだと思います。たくさんの人が関わる仕事で分業をしていると、最終的に手にする人の顔が見えなくて、窓がない部屋の中で仕事をしている気分になったりもするんです。

──

『風の絵手紙』という活動を始められると昨年SNSに投稿されていましたね。「誰かのたいせつな人やモノを小さな絵にして残していくという活動」ということですが、これもそういった考えでしょうか。

 
 
 
 
 
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TYD™️(@tyd_yki)がシェアした投稿

豊田

姉夫婦の子供が生まれて、似顔絵を描いたんです。その時に喜んでくれた二人の顔を見て「自分が求めていたのはこの温度感かもしれない!」と思って考えました。自分もなるべく間に人を介さず近い距離でものを届けたいし、五味さんのそういった考え方を僕もデザイナーとして目指したいと思っています。

「思い出の表紙になるもの」を作りたい

──

最後に、豊田さんがご自身が手掛けたもの以外でお気に入りのジャケットを教えていただけますか。

豊田

一番好きなのはBoyish『Sketch For 8000 Days Of Moratorium』(2014年)ですね。ドリームポップとかシューゲイザーっぽい曲たちもすごく好きで、今でも聴いています。HOLIDAY!RECORDSさんのTwitterで流れてきた曲がよくてずっと聴いているうちに、このジャケットもいいな、と思うようになって、今ではこのポスターが欲しいくらいジャケットも好きです。

──

つまりジャケットそれ単体というよりも、楽曲も含めてこの作品が好きなんですね。

豊田

ジャケットだけでは完結しなくて、曲があって、それにまつわる自分の体験もあってこそ好きな作品になるんですよね。CDを買った20歳になりたての頃、このアルバムを聴いてよく自然の中に遊びに出かけてたんです。春から夏になる瞬間のきらきらした時間とか、さわやかな瑞々しい感じとか、その時期の記憶と楽曲がすごくリンクしてるんです。ジャケットも含め、アルバムと自分の思い出が一緒に残っていて、ずーっと好きです。

──

よく聴いていた時期の感情を思い出す手がかりとして、長い期間、大切に聴かれていますね。

豊田

そうですね。それで思い出した当時の記憶の中にずっと居続けちゃいます。

──

長い間所有して聴き続けている点で「ゆっくりと探究して楽しめる」デザインを心がけているお話にも通じる部分だと思いました。

豊田

ずっとそばに置いてもらえるものを作りたいのかもしれないです。自分自身、曲を買って聴いて、そこで完結していないじゃないですか。しばらく時間が経ってジャケットを見て当時を思い出して、また聴いて。イベントのフライヤーもそうなんですけど、今はデザイナーを挟まなくてもクオリティが高いものが作れるのに、わざわざデザイナーを挟む意味を考えていたんです。そしたらある時お客さんに、「イベントのフライヤーはその日にあった出来事の表紙になるんですよね」と言われて。その日を思い出すきっかけになるものを作る役割っていいなと思いました。だから言い方を変えると「思い出の表紙になるもの」を作りたいってことなのかもしれないです。

──

フライヤーもジャケットも、曲や思い出と一緒に記憶に残りますね。今後やってみたい音楽の仕事はありますか?

豊田

レコードのジャケットは作ってみたいですね。CDやカセット、配信用の小さいサイズでしかまだ経験がないので、もっと大きいものは未知で興味があります。それも去年LOSTAGEのレコードを買って、わざわざレコードで聴くのもいいな、と思ったのがきっかけですね。

──

多大な影響を受けていますね!

豊田

ずっと影響されています。五味さんはご家族もいらっしゃって、バンドもやって、お店もやっている。イラストの活動もされているし、去年はクラフトビールまで作っていて(笑)。またそれを地元の奈良に根ざしてやっている。僕も地方出身でイラストや表現をしている人間として憧れです。

──

豊田さんも地元、茨城の『GFB(つくばロックフェス)』のメインビジュアルやグッズを作られていたりしますね。

(※提供写真)
豊田

東京に住みながらもなるべく地元に還元する動きはしたいので、GFBは熱を入れる仕事の一つになっています。フェス主催の伊香賀守さんも、地元で大規模でなくとも直接手の届く範囲のことを守って続けていて、五味さんと同じ姿勢を感じます。それで伊香賀さんを信頼して集まってくる人がいるから続けることができて、茨城内外の音楽と触れ合う機会になっているんですよね。

──

どういった経緯で一緒にお仕事をされるようになったんですか?

豊田

小さいイベントに遊びに行ったり、SonoSheetを通して面識はあったんです。それで僕が茨城の出身だと認知してくれていて、運営を地元の人で回しているので任せてくれるようになりました。

──

やりたいお仕事が身の回りからどんどん広がっていますね。

豊田

その時気持ちが動いたものにとっついた後で「これがやりたかったんだ」って気づくことの繰り返しなんですけどね。めちゃくちゃ感覚的な人間なので、「楽しそう!」って思うものをやった結果、偶然好きな人と仕事できるようになったり、新しいことに出会うことばっかりです。だからこれからも感情で動く部分を大事に、活動していくのだと思います。

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