REVIEW
You are so Claire
qoomol
MUSIC 2022.04.26 Written By 柴田 真希

『ミッド・サマー』に通じるアンビバレンスな芸術性

Claire=フランス語で明るい、淡い、明瞭といった意味。英語で“so”と強調しておきながらフランス語で言う皮肉なニュアンスは、一筋縄ではいかないサウンドを持つこの楽曲にしっくりくるタイトル。さて、その一筋縄ではいかなさとは?

 

Spotifyはこちら / AppleMusicはこちら

漂う空気のようなシンセと独り言のような落ち着いたボーカルが、控えめなギターのリズムに乗せられたドリームポップ調で始まる。そのまま夢心地な世界を作るのかと思えば、ドラムとベースは安定感よりも気怠げな不完全さを持ち合わせており、ただ心地よさだけを追求したいわけではなさそうだ。それは複雑に重なるギターとコーラスのアンバランスさと、語弊を恐れず言うならば、少し後味悪い尾を引くような楽曲の終わり方にも現れている。相反する気体が混ざったり混ざらなかったりする不純な空気の中で、どうにか息をするような難しさが癖になるのだろうか。気づくと薄い酸素の中で何度も繰り返し聴いてしまう。

 

2021年3月に突如Twitterで結成を発表した大阪の4人組バンド、qoomol。今のところリリースしている楽曲はこの1曲だけであり、ライブも数えるほどしか行っていない。しかしこの1曲に現れている、ただ心地よいだけが芸術の美しさではないという姿勢には共感ができる。またこれからの作品にもその姿勢が見られるとしたら、意外性と驚きを求めて追いかけてしまうだろう。

 

花に囲まれた目から涙が出ているアートワークからはアリ・アスター監督『ミッド・サマー』(2019年)の世界を否応なく想像する。あの映画では白夜の明るさと狂気の気味悪さが同居し、互いに引き立てあっていたが、“You are so Claire”の芸術性はそのアンビバレンスな中毒性と近いところにあるのかもしれない。

qoomol

 

2021年3月に大阪で結成したインディー/ドリームポップバンド。

Twitter / Instagram

WRITER

RECENT POST

REVIEW
鈴木青『始まりはいつもこんなポップス』 – 灰ではなく、炭になる燃え方を
COLUMN
【2023年1月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト
COLUMN
【2022年12月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト
COLUMN
【2022年11月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト
INTERVIEW
一人きりでの宅録を突き詰めた先で開いた、オーケストラの彩り – 高知在住SSW・ハナカタマサキ『Sm…
COLUMN
【2022年10月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト
COLUMN
【2022年9月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト
INTERVIEW
照らされるんじゃない、輝くんだ – 加速する「BRIGHT PUNK」バンド MINAM…
COLUMN
【2022年8月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト
REVIEW
50 pears『Wave Biograph』 – バンドは、小さな波が集合して生み出す大きな波
COLUMN
【2022年7月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト
REVIEW
くぐり『形』 – 解放を志向し、現世を超越した存在となる
COLUMN
【2022年6月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト
REVIEW
雨が降って虹が出るまで、ミュージカル映画のような23分間 – ソウルベイベーズ『Soulbabies…
COLUMN
【2022年5月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト
INTERVIEW
肩書きを外した“人と人”の交流 ーー『逆光』須藤蓮監督が見つけた、地に足ついた宣伝の原理
REVIEW
かりんちょ落書き“海が満ちる” – 灯台の光のように、目的地を照らす歌
COLUMN
【2022年4月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト
COLUMN
【2022年3月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト
REPORT
みらんとLIGHTERSーー“猫”映画の公開記念イベント・ライブレポート
INTERVIEW
【第一回】音楽のラッピングーーグラフィックデザイナー・TYD™️(豊田由生)
INTERVIEW
京都の〈外〉から来て5年、確信とエラーで進む空間現代の現在地
INTERVIEW
アーティストが集まる理由ーー代表・番下さんに聞いた、bud musicが描くフラットな関係性
INTERVIEW
鈴木青が放つ、目の前の影を柔らげる光の歌
REVIEW
crap clap – ノスタルジー
COLUMN
今、どんな風が吹いている?|テーマで読み解く現代の歌詞
COLUMN
「あなたはブサイクだから」の呪い|魔法の言葉と呪いの言葉

LATEST POSTS

INTERVIEW
年鑑 石指拓朗 2022-世田谷ほっつき歩き編

シンガーソングライター石指拓朗の一年の活動を総括するインタビュー『年鑑 石指拓朗』。2018年に開始…

REVIEW
鈴木青『始まりはいつもこんなポップス』 – 灰ではなく、炭になる燃え方を

等身大の歌詞と力強い歌で聴いた人の背中を押す、東京を拠点に活動するシンガーソングライターの鈴木青。2…

COLUMN
【2023年1月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「大阪のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シーンを追…

COLUMN
【2023年1月】今、京都のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「現在の京都のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シー…

COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #6

ANTENNAライター陣の近頃おもしろかったもの・ことを週替わりでざっくばらんに紹介する、『ANTE…