これはもはやバンドではない! 新時代のわんぱくカルチャー・コレクティブ集団 少年キッズボウイの元へ全員集合!
ANTENNA読者のみなさんに、インディーシーンで活躍する素晴らしいアーティストをなるべく早くご紹介したい。今回は、結成からわずかなライブ活動にもかかわらず、東京を拠点に存在感を増しているバンド・少年キッズボウイを紹介します。
2020年コロナ禍の東京に誕生した、古今東西の音楽が好物のわんぱく集団「少年キッズボウイ」。アキラとこーしくんの男女混声ボーカルや、きもすの自由で解放感溢れるトランペット、ビブラスラップやタンバリンなどの打楽器も取り入れたポップな楽曲が多くの人を魅了し、Spotify公式「キラキラポップジャパン」などの人気プレイリストやTokyo FM『Skyrocket Company』のパワープッシュにも選出され、フジテレビ系列の音楽番組『Love music』にも出演した。そして2023年6月28日には新曲“なんてったっけタイトル”を配信リリースするなど、周りを巻き込みながら竜巻のような旋風を起こしている。
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そんな少年キッズボウイの大きな魅力の一つは、影響を受けてきた楽曲のフレーズを巧みに引用する、こーしくん(Vo)を中心としたメンバーのソングライティング&アレンジ力だ。“海を見に行く”の歌詞の一部はHilcrhymeの“春夏秋冬”、“だってTAKE it EASY”の最後の効果音は細野晴臣&イエロー・マジック・バンドの“東京ラッシュ”、“最終兵器ディスコ”にはアニメ『カウボーイ・ビバップ』(1998年)の主題歌・シートベルツ“Tank!”のフレーズ、“南池袋セントラルパーク”のイントロはThe Style Councilの“My Ever Changing Moods”……など、挙げ出したらきりがない。外資系CDショップや中古レコードショップが急激に増えた時代に盛り上がったのが渋谷系なら、サブスクリプションが台頭して世界中の膨大な楽曲が聴けるようになった環境に生まれたのが、少年キッズボウイだ。
とはいえ単に“渋谷系の再来”と標題するのは早計だ。当時と比べて、音楽というジャンル、そして渋谷という都市部に限らず、触れられる文化の選択肢が膨大に増えている。レンタルビデオ店でDVDを借りなくても配信サービスで好きな映画を鑑賞できるし、古着屋の数も増えて品揃えも豊富、ネットで服を探すこともできる。コーヒーだって、昭和の喫茶店の深煎りコーヒー以外に、世界各地の豆を取り寄せて、個人でも焙煎に挑戦できる時代だ。アパレル店員や映画館のスタッフ、元カフェ勤務などの経歴を持つメンバーたちは、そんな現代の恩恵を存分に受けた個々の興味関心を、バンドのTikTokやTwitter、YouTubeなどで惜しげもなくシェアする。GB(Dr)は現役の服屋として私服について熱く語り、コーヒーマニアのきもす(Tp.)はコーヒーのドリップのコツを語っている。少年キッズボウイは、職業も年齢も趣味趣向も異なるメンバーが、音楽という共通の欲望を投入するために集合している。
しかし少年キッズボウイは単に様々なポップカルチャーから影響を受けた、ハッピーな音楽好き集団というだけではない。もう一つ彼らに注目しておきたい側面は、メインソングライターであり少年キッズボウイの魂ともいえるこーしくんの、John Lennonや忌野清志郎が繰り返し唱えたことにも通じる愛と平和への渇望だ。コロナウィルスという共通の敵を持った世界は一体となれるかと思いきや、戦争が始まってしまった現在。いくつかの楽曲に登場する「小惑星」という表現には、争いが絶えない地球を冷静に俯瞰する姿勢が現れている。さらに2022年末から2023年にかけてリリースされた2曲では「戦争ゲームを止める兵器がぼくにもあれば」(“ぼくらのラプソディー”)「オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ / ウォー・イズ・オーバー」(“最終兵器ディスコ”)と、直接的に反戦を露わにしている。
そしてこーしくんの意思に共感してか無意識か、緩やかに集まったメンバーによって一つのコミュニティを形成しているのが、今の少年キッズボウイの様相だ。活動休止中のテツ(Ba)をメンバーとしてそのままクレジットしていたり、楽曲のストーリーを漫画化する裏メンバー的な存在がいたり、彼らにとってのバンドとは「音楽を演奏する者の集まり」からすでに拡張し始めている。YouTubeの生配信で視聴者から「メンバーになりたい!」というコメントが来たときに「入っちゃう?(笑)」と答えていたが、実際に今年加入した服部(Ba)は、メンバーのサークルの後輩でもありながら、ファンでもあったという。単に楽曲やライブを介した関わりを超えて、「自分も参加したい」と思わせる親しみやすさを持っている。ライブのSEとしてフィンガー5の“学園天国”を選んでいることからも分かるように、まだ何者でもなかった学生時代同様、誰もが平等に参加できる場所を作っているのだ。
愛と平和の実現という一つの意思のもとに、好きな音楽で集まる。それでいて変幻自在な少年キッズボウイのあり方は、新時代の“カルチャー・コレクティブ”と言っていいのではないだろうか。音楽でもメンバーのファッションでもはたまた漫画でも、何か一つでもピンときたそこの読者、少年キッズボウイの元へ全員集合!
少年キッズボウイ
ぼくらは、わんぱく。少年キッズボウイ。
楽しく素敵なサムシングを求め続ける7人組バンド。
日夜、秘密基地で悪だくみをして、
泣いて、笑って、美味しいご飯を食べてぐっすり眠る。
ぼくらは、わんぱく。少年キッズボウイです。
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WRITER
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97年生まれ、みずがめ座。中央線・西荻窪→小田急線・成城学園前。ANTENNAのほかMusicmanなどで執筆。窓のないところによくいます。
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