表層を観測する
指触する界面 / 2021年
スマートフォンと人間との関係性の考察を、漂白した写真などで表現するアーティスト・大越円香の個展『表層を観測する』が、京都東山の〈KUNST ARZT〉にて9月12日(日)まで開催されている。
アートアワード丸の内で展示された「もちゆくもの(2020)」は、大越の出身地であり、少子高齢化という逼迫した問題を抱える秋田県能代市を撮影したものだ。衰退していく街の風景を、スマートフォンで撮影、インクジェットプリントした後に、酸化力のある漂白剤を用いてインクを剥ぐというマイナスのペインティングを施している。日常風景がいびつに歪んだ作品からは、彼女の危機感と焦燥感が伝わってくるようだ。
「人間の身体は、いつまでスマートフォンを従属的立場に置いておくことができるのか」と大橋は問いかける。記録も共有も簡単に出来るようになり、現実と仮想空間を頻繁に行き来できるようになった今、私たちの意識が存在する場所や他者との関わり方も変化してきたのではないだろうか。「自己と他者との共存」を探る本展、ぜひ注目したい。
アーティスト・ステートメント+展覧会コンセプト
スマートフォンの「触れるという行為」から
作品制作をすることで現代のスマホと
人間の間で起こる「自己と他者との共存」を
テーマに制作を行う。
体における表面としての皮膚、
インターネットの表面としてのSNS、
そしてそれをつなげるメディアに興味を持つ。
今日、スマートフォンは誰もが持つデバイスとなり、
日常の事柄を写真や動画などで記録すると
同時に、SNSを通し瞬時に
世界中と共有することができる。
画面を操作する際の「指触」をトリガーとする
スマートフォンの機能は、従来の皮膚の機能を超え、
現実空間と仮想空間を接続するための
新たな感覚となりつつある。
人間の身体は、いつまでスマートフォンを
従属的立場に置いておくことができるか。
自律的に考え、反逆する可能性すら持っている
「第二の皮膚」との共存において、
意識はどこに存在するのか。
現実空間と仮想空間の境界、小さな画面を
舞台として起こっている「自己/他者」の行方を
見極めつつ、他者との共存可能性を
探ることを制作のテーマとする。
INFORMATION
日時 | 2021年9月7日(火)~ 2021年9月12日(日) |
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会場 | KUNST ARZT(クンスト・アルツト) |
出展作家 | |
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地域に根ざした世界中のインディペンデントな「人・もの・こと・場所」をおもしろがり、文化が持つ可能性を模索するためのメディアANTENNAです。
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