EVENT

木村華子 個展 『[    ]goes to Gray』

ART PHOTOGRAPH 2021.09.23 Written By アンテナ編集部

フォトグラファー・現代美術家として注目を集める木村華子の個展が、10月17日(日)まで京都の〈KAGANHOTEL〉にて開催中だ。本展は、現在開催中の国際写真芸術祭『KYOTO GRAPHIE2021』のサテライト企画「KG+2021」への参加プログラム。今年で9回目を迎える「KG+21」で紹介される新進気鋭のアーティストに、毎年注目している人も多いのではないだろうか。

今回の展示では、アーティストの展覧会企画やPOPUP、プロデュースやマネジメントなどを場所を持たずに運営してきた芸術レーベル・keshik.jpの黒田純平がキュレーションを担当。国際アートフェア『UNKNOWN ASIA』で、2018年にグランプリ、 レビュアー賞5部門、審査員賞4部門を受賞した作品「SIGNS FOR 【 】」シリーズを見ることができる。

街中の何も描かれていない白紙のビルボードを被写体にし、青いネオンライトが施されている。メッセージを持たない看板は、パンデミックという未曾有の危機から、いまだに明確な答えがないグレーゾーンにたたずむ社会を映し出しているようだ。「意味が有ること / 無いこと」というメッセージが込められた作品は、現代社会を生きる木村自身が大事にしている考え方を表している。今回の企画では、彼女の価値観を鑑賞者も体験できる仕掛けが施された体験型の展示になるということだ。

KAGANHOTELの内観

会場となる〈KAGANHOTEL〉は、京都中央市場にある野菜卸の女子寮兼倉庫をリノベーションして、宿泊施設、飲食店、ギャラリーが併設された滞在型複合施設だ。カフェまたは宿泊利用の場合は無料で鑑賞できるということなので、ゆっくりと過ごす計画を立てるのもいいのではないだろうか。

展覧会ステートメント

今、世界が混乱している。そう言われてまず思いつくのは現在私達の日常を奪う「パンデミック」だろう。2019年の終わりと共に発生され、またたく間に世界を脅かしているCOVID-19は2021年の今も終息の目処がつかないままだ。

 

そんな誰もが想像しえなかった非日常が起きている中、我々が生活をしているここ日本でも同じことが言える。政府の対応により、今までの当たり前の生活を自粛し感染被害を拡大しないように行動するもウイルスの猛威は止まらない勢いだ。そんな状況の中でも社会は回り続けており、我々は生きている。

 

この状況を変える手立ては、誰しもが「正解」を持っており、「不正解」を持っている。まるで、どちらでもなく、どちらかであるような「グレーゾーン」の中にいる感覚のようだ。これは、我々が生きている社会の中で常に存在しており、無意識の中で生まれる事象でもある。これまでに出会った対象や現象も、最初は答えや名前などなかった。それらを認識ができるようになったのは、先人達が生み出したものを我々はバイアスという名のレイヤーを重ねているからだ。

 

しかしそれらを用いても、対象や現象に対して意見はバラバラに生まれ、結果的に認識は、グレーゾーンに入ってしまう。まるで、対象の周りには白と黒の線が集合し灰色で覆われているようだ。

 

木村華子は、その言葉にならない現象と向き合い作品を制作している。普段は商業カメラマンとして生業をしているが、この時代に生まれた自身の立場と社会を重ねながら表現活動を行っている。近年は街中の、なにも描かれていない白紙のビルボードを被写体にし、青いネオンライトを施したシリーズ “SIGN FOR [ ]”で、「意味が有ることと無いこと」というメッセージ性を込めた「時代のポートレート」とも言える作品を発表している。

 

木村はコマーシャルとして写真を扱いながらも、アーティストとしても写真という手段を選んでいるが、本人は2つの立場を肯定しながら活動している。これは、グレーゾーンに木村自身が滞在し今の時代と共存して生きていることを表している。

 

“SIGN FOR [ ]”は我々にとって「救い」でもある象徴なのだ。

 

本展では、会場であるKAGAN HOTELの地上と地下のスペースを使い、 “SIGN FOR [ ]”シリーズを展開する。
この二極化された空間に、別々に展示された同じシリーズの作品を鑑賞し終えた後、あるアンケートを答えてもらうことで、本展示のゴールでもあるグレーゾーンに到達するだろう。

黒田純平 / keshik.jp

Hanako Kimura | 木村華子

1989年、京都府出身。大阪市在住。同志社大学文学部美学芸術学科卒業。
大学卒業後、商業フォトグラファーとして雑誌や広告などを撮影する傍、自身のライフワークとして作品制作を開始する。
主に「存在する/存在しない」などの両極端と捉えられている事象の間に横たわるグレーゾーンに触れることをステートメントの中心に据え、時代性を内包したコンセプチュアルな作品を展開する。
近年は写真を主軸とした表現に留まらず、立体作品、コラージュ、インスタレーションなども手がけている。

http://hanako-photo.sakura.ne.jp/
instagram https://www.instagram.com/hanako_kimura/
Facebook https://www.facebook.com/HanakoKimuraPhotographer/

INFORMATION

日時

2021年9月17日(金)〜2021年10月17日(日)
11:30〜17:00
※期間中の金・土・日・祝のみ開場

会場

KAGANHOTEL
京都府京都市下京区朱雀宝蔵町99

入場料

¥500
※カフェまたは宿泊利用の方は無料でご覧いただけます。
※ご宿泊の方は曜日にかかわらずご覧いただけます。室内にも設置希望の方はツインルームもしくはトリプルルームをご予約いただき、備考欄にてお知らせください。

出展作家

木村華子

キュレーター

黒田純平

イベントページ

https://kaganhotel.com/ge/hanako-kimura1

お問い合わせ

https://kaganhotel.com/contact/

WRITER

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