INTERVIEW

カタチを変えて巡り合う、CuBerryと音楽のルーツたち

「大人になったらバンドをすると思っていた」と話すのは、CuBerryのKanacoとYuiko。姉妹である二人の父親はkoba-yang。京都のロック黎明期のバンド村八分の再結成時の正式メンバーであり、LUCKY LIPS、現在はCRACKS&RABBITSやDUSTでも活動中のギタリストだ。そんな二人が従姉妹でありベースのSueと、映像やアートワークを担当するSetsukaと一緒につくり出す音楽は、可愛い中にもキラリとした闇がインクルージョンされている。彼女たちの音楽ルーツとなった場所と今、再び出会うことで見えてきたのは、自ら音楽を奏でることでカタチを変えてつながった新たな関係性だった。

MUSIC 2021.12.01 Written By 乾 和代

姉がギターを、妹がドラムを選んだ理由

Yuiko

小さい頃から私も大人になったらバンドをやるんやろなって、思ってました。

Kanaco

やるやらない、っていうのはあまり考えたことがないかも。

Yuiko

やりたい!というよりは、夢というほど遠くない感じで、「大人になったらやること」みたいな。

そんなふうに無邪気に語る、姉のKanacoと妹のYuiko。3つの歳の差を感じられないくらい姉妹は仲がいい。小学生の頃は月1回、家族で父親のライブを観に〈磔磔〉へ足を運んだ。Kanacoが中学生になる頃にはお互いに好きな音楽を共有し、ライブを一緒に見に行くなどしながら日々を過ごす。そして気づけばKanacoがギター、Yuikoはドラムとそれぞれ別の楽器を手にとることになる。

Yuiko

6年生の時に〈西部講堂〉でお父さんのCRACKS&RABBITSのライブを観たんです。フロアライブで、ドラムを叩く川本真太郎さんを初めて後ろから見て「かっこいい!」って思って! その時まで私、お姉ちゃんみたいにギターを弾くんかなぁと考えてたんですが「ドラムやりたい!」と感じて。そうしたら中学に入る前に、お父さんが西院のスタジオ〈ハナマウイ〉に連れて行ってくれて、いきなり即興みたいなのやらされたんです(笑)。その時に、お父さんが「ちょっとやってみぃ」って言って、スティックとスティックケースと練習パッドを買ってくれました。お父さん、自分と違う楽器をやってくれたのがうれしかったみたいです。

CRACKS & RABBITS カラー 2010.02.10 at 京都磔磔

Kanaco

あの時のお父さんのうれしそうな顔、忘れられない。

Yuiko

お姉ちゃんがギターを弾き始めたのは小学校6年生?

Kanaco

中1かな?プリシラ・アーンがすごく好きで、ギターを始めたんです。私は逆にお父さんに教えてもらうのがイヤで、お父さんが東京に住んでいた時にこっそり始めたんですよ(笑)。ギターのことちょっと聞いたら、(お父さん)ギター離さなくなっちゃうんで(笑)

Priscilla Ahn - Dream

──

2人が一緒にバンドをすることになったのは?

Kanaco

私が大学1回生の時に、京都市立芸術大学に入ったんですが軽音にオリジナルバンドがいなくて……。京大軽音は父が元々いたし、面白いバンドがいっぱいいるかなと思って入ったんです。その時にドラマーがいなかったので、ドラムがうまかった妹を誘って組んだのがCuBerryの前のバンドswimmees。

Yuiko

私は高校生だったんですけど〈西部講堂〉に出れそう、っていう下心もあって入りました(笑)。CRACKS&RABBITSのライブも見たし、父親と、家ですっごい昔の〈西部講堂〉のBO GUMBOSの映像を一緒に観ていたんで、どんな場所かは知ってて。

Kanaco

そこで父のライブも観たことがあって。あと、本日休演は京大軽音に入る前から知っていて、すごく好きなんです。

Yuiko

2人とも高校の部活以外でやる初ライブが〈西部講堂〉。〈磔磔〉とは違う、めちゃくちゃ憧れてた場所で初ライブできるっていう。

Kanaco

すごかったね。めちゃくちゃ響くんですよ。〈西部講堂〉の音になる。

ライオット・ガールとの出会いは五条

そんな彼女たちがCuBerryとして活動する中で大切なテーマとしている「フェミニズム」。その考え方の核となっているのが“Riot Grrrl(ライオット・ガール)”だ。パンク・シーンでの性差別やライブ会場での暴行事件などをきっかけに、1990年代初頭にアメリカのワシントン州オリンピアで端を発したムーブメントである。音楽やファンジン、アートなどの活動を通じてフェミニズム思想を拡げていった。Rが3つ連なる象徴的な綴りは、フェミニストがwomenに含まれるmenというワードを性差別だと見なし“e”の綴りを“y”にしてつくった“womyn”(“women”の意)に倣ってつくられたものだという。彼女たちは、なぜこの思いに賛同するようになったのだろうか。その思想に出会うきっかけとなったのが、当時〈五条モール〉にあった〈Violet And Claire〉で店主をし、女性DJグループTwee Grrrls Clubの代表でもあるsumireである。

──

Kanacoさんが高校生の時、当時、〈五条モール〉内にあった雑貨店〈Violet And Claire〉を訪れたことがきっかけで今につながるようなアーティストのレコードも買うようになったそうですね。興味が広がった理由はなんだったんでしょうか?

Kanaco

〈Violet And Claire〉のガーリーでDIYな感じや(店主の)sumireさんに憧れて。彼女もTwee Grrrls Clubというライターやアーティストが集まったDJグループで活動されていたんです。これまで知らなかったカルチャーというか、こんなに可愛くてDIYなインディーポップやロックな音楽があるんだって知って……。今まで、私、父親くらいしか日本でロックバンドやってる人いないと思ってたので。

Yuiko

それは思ってた!

Kanaco

こんなに可愛いものが好きっていう気持ちを肯定してくれる音楽があるというのが衝撃的で。そういう文化を知ったお店でした。

いつも座っていた客席から、自分たちのステージへ

彼女たちが父親以外の音楽に触れるようになったきっかけがもう一つある。「こんなかっこいい音楽があるんだ!」と衝撃を受けたのは『みやこ音楽祭』で出会ったNOKIES!やあらかじめ決められた恋人たちへ。そして、KanacoはceroやYOUR SONG IS GOOD、YuikoはOKAMOTO’Sやグッドラックヘイワを聴くようになり、自らの意志でライブハウスに通うように。ついには自身のバンドを結成し、ライブハウスで演奏するようになる。彼女たちの母曰く、小さな頃から折り紙はライブのフライヤー、実は物心つく前から父親のライブを観に行っていたという。LUCKY LIPSで出演していた父親がライブで投げたピックを拾いにステージに上がったこともある〈磔磔〉との関係性も彼女たちの成長とともに変わっていった。

──

最初に〈磔磔〉で観た、記憶にあるライブって覚えていますか?

Yuiko

私、ぜんぜん記憶にないですね。中学生になるまでは、〈磔磔〉に行くのは基本お父さんのライブしかなかったんです。物心着く前から〈磔磔〉でライブを観ていたので、それが当たり前すぎて最初に見た記憶のあるライブっていうのがなくて……。

Kanaco

幼稚園くらい?LUCKY LIPSとネコグルマがよく対バンをしてたのをよく覚えてます。お父さん普段と違うなーって。

Yuiko

それがいつとかはわかんないんですけど、小学生の時はお父さんすげーかっこいいっと思ってて、「お父さん、バンドやってんねん」ってめっちゃ自慢してました(笑)

Kanaco

その時、毎月LUCKY LIPSがやってたんですよ。

Yuiko

座敷の前の角のところが小林一家の定位置。もう、本当にヘビーユーザー。だから、あんまり「これを覚えてる!」っていうのが出てこない。

──

自分でチケット買って〈磔磔〉で観たアーティストはいますか?

Kanaco

はじめて観にいったのはOKAMOTO’S。

Yuiko

座敷の前の角のところが小林一家の定位置。もう、本当にヘビーユーザー。だから、あんまり「これを覚えてる!」っていうのが出てこない。

──

今までと感覚は違いました?

Kanaco

全然違いましたね。〈磔磔〉はやっぱりすごい場所なんやって思いました。身の回りの人だけじゃなくて、全国的なミュージシャンも出る。

Yuiko

しかも、私たちがめちゃくちゃ好きなバンドマンが、めちゃくちゃ出たいと思っている場所に、私たちは昔から行ってる、という変な感じもあって。大きくなってから〈磔磔〉のすごさがわかりました。音楽はお父さんのバンドくらいしかないって思ってたけど、こんな世界あったんやって。

──

CuBerryも〈磔磔〉でライブしてますが、どのようなタイミングで出演したんですか。

Yuiko

活動しはじめて1年くらい、岡村詩野さんのイベント『Botanical House』の2回目に行った時に、本日休演を観て「やっぱり、〈磔磔〉に出たい!」って思って。終わってから店長の浩司さんに音源を渡しに行ったんです。面識はずっとあったんで「ライブしたいんですよ」って言ったら「いつする?」って言ってくれて。こっちがビックリするぐらいのペースで、その場で話が進んでいきました。小さな頃からずっと来ていた憧れの場所やし「企画でやらせてもらえたらうれしいです」って言ったら「誰とやりたいですか?」と聞いてくれて。その日、出演していた本日休演に出てもらうことになりました。その後も、結局3、4回ライブをさせてもらって……。

Kanaco

実は1stアルバム『ニューストーリー』のツアーの時に〈磔磔〉でライブする予定でしたが、コロナの影響で2回飛んでいて。

Yuiko

やっぱり〈磔磔〉でライブする時はいつもと違う気持ちになる。いつも本気やけど、ちょっと違うスイッチが入るというか……。

Kanaco

思い入れはありますね。次にやるなら気合いを入れて、CuBerryが成長してから出たいなって思ってます。

Yuiko

〈磔磔〉はやっぱり、何回出ても次も呼んでもらえるように頑張ろうって、ずっと目標にし続けている場所です。

CuBerryの音楽性の転換地

小さな頃、〈磔磔〉や〈拾得〉のようなライブハウスで出会った大人たち。今では、そんな彼らと同じアーティストとして対バンをするなど新しい関係性で出会い直している。その中でもCuBerryの1stアルバム『ニューストーリー』の制作に大きな影響を与えた人物がAUXのギターボーカルで現在、伏見区にあるMusic&Bar〈Annie’s Cafe〉で音響を担当している森島映だ。

Kanaco

〈Annie’s Cafe〉には、AUXの森島さんがいるって噂を聞いて行ったんです。おしゃれなんですが、怪しげな感じ。造りが面白くて、ステージのところだけ吹き抜けみたいになっていて、ロフトみたいな2階のスペースがあったり。でも、めちゃくちゃ音が良かったんです! 森島さんにも久々に会って、早速CuBerryでライブに呼んでもらいました。その時森島さんがすごく熱い思いで「〈Annie’s Cafe〉を昔の〈西部講堂〉みたいにしたいんや」というような話をされていて……。本当、自由にライブをやらせてもらえるんです。

Yuiko

「試すんだったら、なんでもここでやっていいよ」って。CuBerryが初めてワンマンをやったのもここで、その時も映画流したり、ベースのSueちゃんがハープを弾いたり……。

Kanaco

全然うまくないんですけど、DJイベントやらせてもらったり。映像のSetsukaちゃんの企画で京都市立芸術大学の先生と一緒に『アート×サイエンス×ジェンダー』っていうテーマで講演会もしました。

──

他に、どんなことを試しましたか?

Kanaco

CuBerryは、私のソロから始まっているんで、弾き語りというか、優しい、やわらかい感じのポップな曲が多かったんですけどしばらく経って、『ニューストーリー』の制作中にちょっと違うなと思い始めて……。本当はもっとライオット・ガールみたいな感じでやりたいと思っていたんです。でもシャウトやパンクっぽいことは自分に合わないなと。性格的にも違うし。その時森島さんが「CuBerry、ニュー・ウェイヴやったらええんちゃうか」って言ってくれたんです。そういえば、好きやけど、やろうと思ったことはなかったなと思って。まず、Delta 5(デルタファイブ)の“Mind Your Own Business”をカバーしたら、すごくしっくりきて。新しいことをやらせてもらえる、挑戦しやすい場所だった。

Delta 5 - Mind Your Own Business

Yuiko

編成が変わったり、なにか新しいことに挑戦する時はいつも〈Annie’s Cafe〉だったと思います。

Kanaco

なんでも受け入れてもらえる感じがあって、CuBerryが変わった場所ですね。

振り返ると、彼女たちはあたり前のように音楽をつかみ取れる距離で京都の音楽カルチャーに触れていた。しかし今、それを意識的につかみ取り彼女たちは自身の音楽に昇華しようとしている。コロナの影響で〈磔磔〉のライブは中止になったが、今度、彼女たちがあの場所でワンマンをする時にやりたいと思っている野望がある。それは、あの磔磔名物のアーティスト看板を自ら塗り上げること。もちろん、可愛く、ちょっとダークに。もうペンキの用意はできているそうだ。彼女たちがこの街と再び巡り合ったことでつながったニューストーリーはまだ、はじまったばかりだ。

CuBerry

京都発、アートユニット/ライオット・ガール・バンド。Kanaco(作詞作曲、Gt/ / Vo)、Yuiko(Dr)、Sue(Ba)、Setsuka(映像、VJ、作詞)。バンドメンバーは、二人姉妹と従姉妹のスリーピースで構成される。

五条モール


旧 五条楽園にある、元お茶屋を改装した小さなショッピングモール。現在は、101号室〈呑処 えでん〉、203号室〈Choki-Loni〉204号室〈Gang from far far away〉が店を構えている。雑貨店〈Choki-Loni〉ではCuBerryのグッズの購入もできる。

京都市下京区早尾町313-3

磔磔


1947年に酒蔵を改装して喫茶店としてスタートした木造のライブハウス。奥には畳の座敷スペースがあり、階段を登って2階が楽屋スペースだ。アル・ブラッサードをはじめ壁にはこれまでステージに立ったアーティストの看板が掲げられている。2021年で47年を迎えた。
京都市下京区富小路仏光寺下ル筋屋町136-9

Annie’s Cafe


伏見区深草にあるライブバー。AUXのギター・ボーカルである森島映が音響を担当している。お酒の種類も多く、地下に広がる空間で、アナログレコードが鳴り響くバーとしても営業。実験的なブッキングも多く、DJイベント、ライブイベントも楽しめる。
京都市伏見区深草下川原町51-4 B1F/B2F

西部講堂


1937年に建築され、1963年に現在の京都大学吉田キャンパス西部構内に移築。1970年の大晦日徹宵ロック・コンサートをきっかけに、音楽イベントが開催される。1972年には、今も残る象徴的な三ツ星が屋根に描かれた。現在も不定期にイベントなどが開催されている。
京都府京都市左京区吉田本町

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