REPORT

乾和代が見たボロフェスタ2021 Day5– 2021.11.6

20周年を迎えた、京都のフェスティバル『ボロフェスタ』。新型コロナの影響もあり、2年ぶりとなった今年は、2週連続6日間に渡って開催されました。2014年から毎年ライブレポートを掲載してきたANTENNAでは今年も編集部あげての総力取材!全6日間の模様を各日1名のライターによる独自の目線で綴っていきます。本記事で11月6日の模様をハイライト。

MUSIC 2021.11.15 Written By 乾 和代

台風クラブ/KING BROTHERS/クリトリック・リス/羊文学/アイアムアイ(配信のみ)/KONCOS/ZAZEN BOYS/SuiseiNoboAz/yonawo/jizue/ワンダフルボーイズ/ボギー/BiSH。6日(土)のチケットがソールドアウトしたのも頷ける、この魅惑のラインナップ。この日のタイムテーブルを眺めただけでも、これまでの歴史を塗り替え今どのような景色をみせてくれるのかという主催者の期待ともいえる思惑を感じずにはいられない面子だといえるだろう。そんな思いを肯定するように、ボロフェスタのパーティー・ナビゲーターを務めるMC土龍も、ボロフェスタの20周年を記念し発刊された冊子内のインタビューでこのような発言をしている。

“何より大事にしているのは、「ストーリーがあるかないか」ですね。(中略)人気かどうか以前に「京都でいま頑張ってるバンドってなんだろう?」って枠を確保して、人と人の繋がりのストーリーを、ボロフェスタという場所で具現化している感じですね。”

一体、どのように具現化されるのだろうか。この日紡がれるだろうストーリーを見届けるために、秋らしい青空が広がり、ちょっと冷たい風が吹く丸太町通りを歩きながら〈KBSホール〉へと向かった。

終演まで冷めない熱を灯した、台風クラブによるプロローグ

音楽的にも振り幅が激しいこの日のトップバッターを務めたのは地元京都のバンド台風クラブ。真っ赤なライトに照らされて石塚淳(Vo / Gt)のギターをかき鳴らし、はじまったのは“火の玉ロック”。山本啓太(Ba)と伊奈昌宏(Dr)のリズム隊が加わり、リズム、ブルース、ファンクを体現するようなビートが鳴り響き、ホールを彼らのサウンドで満たしていく。2016年から5回目の出演となる今回のステージ。「学祭のような雰囲気がいい」と話す石塚がおうち時間のテーマソングと言い放ち、披露したのは“ホームアローン”。リズムにのって跳ねるように歌う姿からも、この場所に帰ってきた喜びがひしひしと感じられる。この曲は、石塚がコロナ禍にGilbert O’Sullivan(ギルバート・オサリバン)の“Alone Again”を原曲の内容を一切見ずに日本語カバーしたというものだが、その歌詞には制約だらけの毎日への鬱屈と明けない夜はないという希望が込められていた。

 

まだすべてはいつも通りではない。フロアにビニールテープで引かれた枠線が象徴してるように、私たちが楽しめるスペースは限られている。でもこの久しぶりの時間を思いっきり楽しもうというかのように、どんどんと3人のグルーヴは熱を帯び、“へきれき”、“野良よ!”と曲が進むにつれてBPMをあげていく。「帰り道のテーマソングをやります。みんな覚えていてくれ!」という石塚のMCでラストに演奏されたのは“まつりのあと”。曲が終わる瞬間には、ギターを弾きながら高く飛び上がりこのステージに幕を下ろした石塚の姿は、最後までこの熱が冷めることなどないだろうと言っているようで、見事にフロアに熱気と爪痕を残して次のステージへとバトンをつないだ。

京都へ届けられた、祝祭のミュージック

ボロフェスタのステージに上がるのは、もちろん地元のアーティストだけではない。今年は残念ながら出演キャンセルとなってしまったクリープハイプのように、京都のライブハウスやアーティストたちと関係性を築き上げてきた全国各地のバンドやシンガーソングライターが集まるフェスでもある。京都到着は朝の5時。下北沢のライブ後に弾丸でやってきたKONCOSもそんなバンドの一つだ。「僕の中で大事な大事なフェス」と開始早々のMCで古川太一(Key)がこの場にいる観客にうれしい言葉を投げかける。そして「30分ノンストップKONCOS!」という古川の宣言通りに“Palette”、“All This Love”、“Magic”と立て続けに演奏していく。時にキーボードを弾きながら、時にベースを片手に、踊り、歌い、境界線なんてあったかなと思わせるくらいステージぎりぎりまで身を乗り出して、この場所に立つ喜びを観客に向かってぶつけていく。古川の掛け声に、観客が突き上げた手を左右に揺らす。ふと、隣をみると土龍も気持ちよさそうに観客に交じってリズムに体を委ねていた。“月待つ島まで”では、トロンボーンとアルトサックスが加わり祝祭感が増す。

 

そして、ラストに披露されたのは、コロナ禍にリリースされた“I like it”。佐藤寛(Vo / Gt)が“愛することだけが 悲しみのカウンター”と歌う。制約がある今も、愛することで出来ることはある。一昨年は柵がなかったというサイドステージ。触れ合う瞬間はなくとも、ステージにもフロアにも境界線なんかなく愛が溢れていた。彼らがステージを去ったあと、ステージ袖でスタッフに古川が声をかける瞬間を目撃した。「いい音だったよ」と笑みを浮かべながら話す姿に、アーティスト、観客そしてスタッフという垣根を超えてフェスを創り上げているんだと感じずにはいられなかった。

そんなKONCOSのステージから、バトンを渡されたのはZAZEN BOYS。飄々とステージに現れると、サウンドチェックから“Honnoji”を演奏。フロアに集まった観客をじらすように「また来年会いましょう」なんて嘯く。リハが終わるもそのまま居座り、向井秀徳(Vo /Gt)がマスクを外し「MATSURI STUDIOからMKタクシーを10台連ねてやって参りました、ZAZEN BOYS!」とお決まりの口上でライブのはじまりを告げる。2011年から数えるとこの日がZAZEN BOYSとして4回目となるボロフェスタ。1曲目の“Cold Beat”から鋭く切り込むようなドラミングで松下敦(Dr)がソロを叩き、MIYA(Ba)もそれを受けて気持ちよく髪を振り乱しスラップでベースソロをきめる。対照的に吉兼聡(Gt)はビートに合わせて大きく体を揺らすことはなく淡々とギターを奏でる。京都らしい言葉を交えた遊び心を感じる向井の曲紹介とともに曲が進むにつれ、4人が生み出すひとクセあるグルーブに体を揺らしていた観客も手拍子などで彼らの演奏に加わっていく。

 

“Weekend”のギターソロでは、そんな観客の熱気もあってか吉兼が体を折り曲げ激しくギターを弾いていたのが印象的だった。途中のMCでは「久方振りのボロフェスタに参加できてうれしいです」と話していた向井が、この日のラストナンバーに選んだのが“半透明少女関係”。向井のギターリフで声は出せなくとも、会場が湧いているのを感じた。向井の口から発せられる「らっせー らっせー」「ええやないか ええやないか」「わっしょい わっしょい それそれそれ」コールアンドレスポンスはなくとも感じる一体感。MATSURI STUDIOから京都へとどけられた極上の祭囃子には、彼らの演奏が終わる前からフライング気味でフロアから拍手が沸き起こり、絶えきれず漏れた声もホールに響いていた。

今だから実現した。かけがえのない光景

まずは、誰もがその暴れっぷりを期待しただろうクリトリック・リス。12時50分にGREEN SIDE STAGEに「友達を呼んでいいですか」と彼のスタッフでもあるあいどんを連れて、不気味な被り物を被って登場。お客さんに「被ってください」と言われてもらった代物だそうだが、「こんなん被れるか」と言いながらも被ってくるところが彼らしい。観客からのサプライスを自身のライブに盛り込んでいくスタンスは、いつもとなんら変わらない。聞き覚えのあるメロディが印象的な“BUS-BUS”からはじまり、観客の注目をぐっと集める。彼の熱量は汗となり、歌声となり観客へ向けられ、フロアの面々も片手を上げて応える。“バンドマンの女”の見せ場でもある“あんたの中に出した”というフレーズには絶妙なエコーがPAによりかけられ客席からは拍手が沸き起こった。“エレーナ”では、ステージの後ろに描かれた女性をエレーナに見たてて呼びかけ、観客に背を向けて真剣に言い寄る場面も。全力のパフォーマンスは最後まで途切れることはなく「36か37やった。ボロフェスタに出たのは」というつぶやきから彼が歌うという道に進んだ原点を歌った楽曲‟1989”へとなだれ込む。ボロフェスタが原点であるとでもいうように声を張り上げ歌う。彼がステージから飛び出ることは決してなかったが、見えない何かを飛び越えたかのような一体感が会場を包んでいた。

今回のボロフェスタでは、ライブが後半に差し掛かるとフレディ・マーキュリーに扮した土龍のロックンロールな合図で、次の出演者へ向けてメッセージが書かれたくす玉が割られる。この日「地下ステージ代表」という言葉を掲げられ、地下ステージからメインステージに踊り出たのがワンダフルボーイズだ。毎年大トリとバッティングするタイミングで、御開帳するステンドグラスにも負けないくらいキラキラとしたパーティー・チューンで地下に集まった観客を躍らせてきた彼ら。初っ端に演奏された‟Just Sunrize”から、ホールのサイズなんか関係なく天井に届いているんじゃないかと思うくらい、ニーハオが弾くベースのビートにのって林未来彦が気持ちよさそうにアルトサックス・ソロを吹き放つ。Sundayカミデ(Vo)がMCで、4回メジャーデビューしているなんて話をしていたけれど、メジャーもインディーも、メインステージも地下ステージも関係なく今を楽しむという気概が6人の演奏から感じられる。これまでと変わったのは、いつものコールアンドレスポンスが手拍子になったぐらい。次回もこのメインステージでといってもいいくらいのホールの盛り上がりをよそに、Sundayカミデは「来年45歳の時には、地下ステージで」と告げていたのは、地下ステージ代表としてまたあの場所で出来ることがあるとこのステージで見せたのではないだろうか。

トリ前のホールのサイドステージの真ん中には、今日はないロビーステージを思い起こさせる椅子がひとつ置かれていた。右手を挙げて「ただいま」と登場したのは、福岡から夜行バスに乗ってやってきたというボギーだ。くす玉割りで土龍も使っていたお馴染み“We Will Rock You”のメロディにのってアコギを叩きリズムをとりながら替え歌的な感じで歌詞を載せていく。観客は手拍子と足拍子で合いの手を入れる。曲間も流暢なMCが観客の笑いを誘っていく。そして‟バカになりましょう”の演奏前には観客に「バカな人、手を挙げて」と尋ねて挙手を求め、離れていてもフロアとの交流は忘れない。

 

そんなボギーが金八ならぬボギ八先生に扮して、これまで観客と一緒に肩を組んで輪になり、胴上げをするという、彼のステージのフィナーレを飾る曲が海援隊の名曲‟贈る言葉”だ。この場所で過去に何度も披露してきたこのパフォーマンスもこの状況でオッケーなのはヘッドバンキングだけ。シンガロングも肩を組むのも、もちろん胴上げもできない。でも、できることはあるとも言いたげにスタッフを舞台上に呼び込み、アコギが入っていただろうギターケースに服をかぶせていくと、そこに現れたのはボギー人形。ボギーが“贈る言葉”を歌いながらこの人形と肩を組むと、観客はエアーで肩を組みながら一緒に揺れる。クライマックスの胴上げでは、観客が手を空に突き上げるのに合わせて、人形が高く高く宙を舞う。この日主催者に「ステージからくれぐれも出ないように」と言われていたのが、KING BROTHERSとクリトリック・リスとボギーだという。最終的に誰一人ステージから出ることはなかったが、最後の最後でボギー人形だけがステージを軽々と飛び越えていった。それは「ステージから出る出ないなんて関係ねぇ。俺らの前に柵なんてねぇ」とでも言っているようで、実際にMCで彼が言っていた「悪いことも多いけど、コロナのおかげでいいことあったよ」という言葉が頭をよぎった。ああこれこそが、今しか見られない光景なのだと思えてならなかった。

BiSHと観客とスタッフと。横並びで創り上げたフィナーレ

「全員が一緒に横並びで最高のものをつくるのがボロフェスタ!何年も連続で出てもらっている、ボロフェスタと彼女たちのストーリーを見届けて」という土龍の言葉で舞台に登場したのはBiSH。彼女たちが2015年にデビューをしてから、毎年このボロフェスタに出演し、成長目覚ましい姿を見せてくれていた。ピアノの速いパッセージに乗ってはじまったのは‟しゃ!!は!!ぬあ!!ああ。死!!いてぇ。”ペンライトをもった清掃員と称される彼女たちのファンの姿も見られたが、会場の後ろから全体を眺めるとライトを持たずとも懸命に彼女たちのパフォーマンスに手を挙げて応える人の多さに圧倒された。途中に2度ほどMCを挟むも、息つく暇もないじゃないかというくらい、ストイックに歌い踊る彼女たち。今日のクライマックスは思いもよらぬ場面で訪れた。‟STAR”の大サビでセントチヒロ・チッチが‟何者にもなれない僕叫ぶ 伝えたい温もり”と歌うところで暗転。‟不確かな君との夢 僕歌う”というタイミングでゆっくりと幕が開き、ステンドグラスが今日一番輝いているといっても過言ではない彼女たちの頭上に現れる。本編のラスト1曲を残すこのタイミングでのご開帳は、彼女たちは紛れもないボロフェスタにとってのスターであることを伝えているかのようで、息を飲まれた。

 

そんな演出に応えるかのように「ここにいるすべての人とボロフェスタに愛を込めて」という言葉とともに披露されたのは“ALL YOU NEED IS LOVE”。スローテンポな曲調がドラムを合図にアップテンポに変わると彼女たちに合わせて観客も腕を上げる。ステージ上では笑顔で6人が肩を組む。その様子を観客だけでなく、仕事が終わったスタッフやさっきまでステージに立っていた演者も役割を終えたサイドステージに集まりこのステージを見つめている。まさしく、アーティストも観客もスタッフも横並びでこの場を作っているという瞬間を目の当たりにしたのだ。確かにそこには、制約を糧にボーダーを越えていく今だから出会えたストーリーがあった。この体験が忘れられなくて、またこの場所に戻ってきてしまうのだろう。そんな私の思いを見透かすように彼女たちはキラキラの輝きの前で“サラバかな”を歌う。そう“サラバかな そりゃないな”。こうしてネバーエンディングストーリーは続いていくのだ。

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