COLUMN

【2024年11月】今、京都のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

MUSIC 2024.11.22 Written By 乾 和代

「現在の京都のインディーシーンってどんな感じ?」

「かっこいいバンドはいるの?」

 

「今」の京都の音楽シーンを追う、この連載!今月も今聴いておきたい注目のアーティストを紹介していただきます。

 

紹介者は以下の方々です。(五十音順)

  • 京都GROWLY 店長:安齋智輝
  • livehouse nano 店長:土龍

京都GROWLY 店長:安齋智輝の注目のGROWLYスタッフ(前編)

もうすぐ閉店を迎える〈GROWLY〉、これから愛のあるイベントが目白押しです。オススメアーティストを紹介するコーナーではありますが、とても選びきれないので最後の〈GROWLY〉スタッフを2回に分けて紹介したいと思います。

■金澤
〈GROWLY〉のサウンドを決定づけたPAボス。遅刻は絶対にしない13年でした。ニヒルで冷静な彼もグッドミュージックが鳴ればPAブースでノリノリに。そんな音楽一筋で、アーティストの出したいサウンドを的確に導き出す能力は間違いなく京都随一。このビルの壁には彼のサウンドが刻まれてるのです。あまりにも多くの時間を〈GROWLY〉に費やしたので、これから子煩悩を存分に発揮し、家族と過ごす時間が増えてくれれば、と切に願ってます。

 

■秋
言わずと知れたシーンを牽引する兄貴分。叩き上げの照明とPAのスペシャリストです。そのカリスマ性とは裏腹に、行き届いたホスピタリティと気配りで誰よりも仕事もできる心から信頼できる人。〈GROWLY〉という歴史は彼無しでは作られなかった。棘と優しさを両極端に持つ秋とはずっとここで働きたかったです。これからもNo Funという希望の音楽、いや哲学を誰よりも応援したい。

 

■むらぴー
いつかのビルフェスのスタッフで来てた時に、うちのスタッフになれって口説きまくった。本当に細かいところまで見ていて、訪れる人すべてに愛を持っていて、楽しむことができるってすごいこと。〈GROWLY〉が愛されたのは彼女の力が大きいと思います。ホールスタッフから制作、経理、事務、FOODまでなんでもこなすオールマイティなできる女。大好きな鶏肉を毎年駐車場で焼いてあげたかったです。

 

■三輪
絶対言ってこなさそうなタイプだと思ってたのに、ここで働かせろって言ってきた予想を裏切る熱意の持ち主。ふわふわしてるように見えてしっかり者で、まだスタッフとしては長くないものの飛び級で社員へ。制作やホールの仕事で全体を見据えながら急成長するその姿に、将来の〈GROWLY〉を背負う人間だと思いました。正直で音楽への探求心にも溢れ、一番僕の話相手になってくれた。DJもドラムも飛躍中。リスペクトできる弟分です。

 

■しょうへい
スタジオスタッフをメインにしながらも、ホールや照明までこなすテキパキ兄さん。一日の大半をドラム叩いて過ごしているストイックさと情熱は、すごすぎてほんと尊敬。たくさんのドラムサポートをこなし、〈GROWLY〉への出演者としても多大に貢献してくれました。誰も見てない、やらないとこまでやってくれる仕事人な面が実は最高。助けられました。ただ、普段はクールだが、飲みすぎるとあからさまに壊れて漫画みたいになるとこがとても愛せる。

 

■磯島
〈GROWLY〉の視覚的な面を完璧に作り上げてくれた照明の職人。いつもとても控え目で自信なさそうな感じですが、その感性と曲理解は天才的で、ハッとする彩りで魅せてくれました。誰よりも努力家で誰よりも音楽が好きなのは実はみんな知ってる周知の事実。奇跡的な巡りあわせで長い期間〈GROWLY〉でいっしょに働けたことは誇らしい。料理の話や映画の話、ゲームの話、音楽以外にもたくさん終演後に飲みながらできたのは良い思い出です。

 

■小椋
SuperBackのドラムとして随分前から出演してくれ、ひょんなことから野外出店でいっしょになり口説き落としてスタッフへ。持前のファニーさと柔らかさでたくさんの人から愛され、バーに欠かせない存在でした。今は引っ越してシフトインしてませんが籍は残してます。それくらい〈GROWLY〉のアイコニックなナイスキャラ。仕事も抜群にこなしてくれましたが、サッカーやBBQなど個人的にたくさん外でも遊んだ。同じくNo Funでも並行して活動してるので、京都を離れても変わらずヘラヘラしてて欲しい。

 

■安東
ホール、とりわけバースタッフとしてスペシャルマン。安東がいるとバーフロアの色が華やかに変わります。〈GROWLY〉でも断トツの音楽フリークで、いつも飲みながら、踊りながら訪れる人たちと交流を先陣切ってやってくれました。Redhair Rosyのドラムに限らず、様々なサポートを様々なパート、作曲までこなすポリバレントなミュージシャンですべてがハイレベル。ライブハウスにおいてのこんな逸材はいねえぞ。出会った時にロン毛で金髪汚いわーっていってほんとにごめん。来てくれてよかった。と、こんなスタッフたちとやってました。

翌月へ続く!

残りの時間もよろしくお願い致します!

安齋智輝

京都GROWLYの店長です。

元和菓子職人です。

お菓子も音楽も手間暇と愛が必要、がモットーです。

livehouse nano 店長:土龍の注目アーティスト

山田亮一とアフターソウル

山田亮一は言わずと知れたロックンロールという音楽の上で至上の言葉を紡ぐ詩人。過去にソングライティングとエレキギター・ヴォーカルを務めたバンド、ハヌマーンやバズマザーズの支持層に未だ神格化するかのごとくフォローされ続けるミュージシャン。その山田が2024年夏より新バンドでの活動を開始、それが山田亮一とアフターソウル。

 

ハヌマーン、バズマザーズの休止の理由は彼自身の精神的な疲弊によると聞く。僕自身彼との付き合いは長いが、表向きのデンジャーでミステリアスな色気がファンを翻弄するが、それは彼のサービス精神によるものだと思っている。作品の内容の素晴らしさは彼の才能によるもので間違いないが、彼の立ち居振る舞いの魅力は、目の前にいる人間を楽しませなくてはならないという強迫観念にも似たそれによるものだ。その絶対的な存在でいなくてはならいという彼の鋭利な思考と、実は人に最大限に気を使い目の前の人間を大切にしようとするとても温かい人間くささに乖離が生じ、自分でコントロールできなくなったのだろう。

そう、山田亮一は目の前にいる人間のことが大好きだ。

 

そんな彼が、今まで最も彼本人らしくいることができるバンドが山田亮一とアフターソウルだ。

 

彼自身が開催したオーディションにより集まったメンバーたちは、そもそも彼の音楽と言葉が好きだ。そこに亮一は今回甘えてみた。全て自分の志向による音楽の制作ではなく、このメンバーと一緒に演奏して生まれるものがあるはずだと信じ甘えて、制作を楽しんでいる。そんな風に思える。今までのバンドメンバーを信頼してなかったわけでは絶対にない。が、山田亮一が山田亮一という作家・ミュージシャンとして強い存在であり続けることにエネルギーを相当割いてきたのは事実だろう。しかし、今回は、過去作含め自分の作品に絶対的な自信をもちながら、その作品たちをもっと素晴らしい音楽に仕上げてくれよな!力を貸してくれよ!とお願いしている。あの亮一が。

 

本当は弱い。弱いから、助けてほしい。好かれたい。だから優しくなる。山田亮一はそもそも優しい人間。彼の人生の中でそれが最もそれが表面に現れている。パンクはいつだって弱者に寄りそう優しさに溢れてきた。山田亮一の本当のパンクが、今、始まった。

X(旧Twitter)

@buzzmothersymd

山田亮一とアフターソウル 出演イベント:『きっと君は来ないなんて決めつけるもんじゃない』

日時

2024年12月25日 (水)

open 19:00 / start 19:30

会場

livehouse nano

出演

山田亮一とアフターソウル / ポンツクピーヤ

料金

前売り ¥4,000(共に+1drink)

チケット

11月25日(月)18:00~e+にて一般発売開始
※先行受付は終了

土龍

1976年京都府生まれ。
二条城の東側にある全国でも稀に見る小ささのライブハウス、livehouse nanoの店長兼音響兼照明兼制作兼雑用。毎年秋には仲間と共にロックフェスティバル「ボロフェスタ」を主催。派手好きの単純思考のパリピの一種。

livehouse nanoではドネーショングッズをオンラインストアにて販売中。新グッズも日々入荷中!

https://livehouse.thebase.in/

Youtubeチャンネルでは無観客ライブも日々開催しています。ぜひチャンネル登録を!

https://www.youtube.com/channel/UCV904VJscUg3jr9guSXf_-w

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