REVIEW
Empire Builder
Laura Gibson
MUSIC
2018.08.23
このレビューは、計8枚のアルバムから、中心に配置した1枚のアルバムのバックグラウンドを紐解く、ki-ft・アンテナ共同企画【3×3 DISCS】のレビューの中心となる1枚です。
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ふたつをつなぐノスタルジーという面影
真夏のプールに反射する太陽光のようなキラキラとしたギターリフ、少し憂いをまとった少女の面影を残す声。過ぎ去った時間に思いを馳せる、そんなノスタルジックな思いにかられるHomecomingsの「Songbirds」。慣れ親しんだ場所、大切な人の隣。そこから旅立つときに、人はこのような気分になるのだろう。
アメリカのオレゴン州出身のSSWであるLaura Gibson。彼女の「Empire Builder」にも「Songbirds」と同じようなノスタルジーを感じる。2004年に自主制作したEPをきっかけにポートランドで活躍。表題曲である「Empire Builder」は故郷から渡ったニューヨークではじめて作成された彼女の5枚目のアルバムだ。この新天地で、彼女は怪我や火事により楽器や書きためた歌詞を失うという災難に遭う。苦難を乗り越え生み出された本作は、前作よりもシンプルな楽器編成で、彼女の朴訥ながらも憂いとあたたかみを感じる歌声が印象的だ。ガタゴトと列車が枕木を進む音を思わせるイントロは、彼女が新天地へ旅立つときに乗り込んだ長距離列車エンパイア・ビルダー号を彷彿させる。「Songbirds」ではメトロノームが使われているが、イントロの音が記憶を巻き戻す引き金のようで、これらの曲が生まれた背景は違えども、どこか似た面影を感じてしまうのだ。
第三回【3×3 DISCS】:Homecomings『Songbirds』を中心とした9枚のアルバム
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WRITER
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奈良県出身。京都在住。この街で流れる音楽のことなどを書き留めたい。
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