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くるりの未発表曲、解凍。新作『thaw』4月15日より先行配信、5月27日CD発売

MUSIC 2020.03.19 Written By 乾 和代

3月から4月にかけて開催される予定だったくるり2020ライブツアー『特Q』。しかし新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、3月14日に公演中止がアナウンスされた。そのニュースと同時に、急遽発表されたのがくるりの新作『thaw』リリースの一報である。

 

ついに本日、3月27日にその全貌が明らかになった。

 

『thaw』と名付けられたタイトルどおり、1997年から現在までにレコーディングされるも世に出ることなく眠っていた作品たちが、時を経て“解凍”されて一枚のコンセプト・アルバムになる。まずは、4月15日に11曲が先行配信され、5月27日にはさらにボーナストラックとして4曲を追加した全15曲の未発表音源が詰まったCDがリリースされる。

 

『thaw』

 

 

<収録曲>

 1.心のなかの悪魔

 2.鍋の中のつみれ

 3.ippo

 4.チェリーパイ

 5.evergreen

 6.Hotel Evropa

 7.ダンスミュージック

 8.怒りのぶるうす

 9.Giant Fish

10.さっきの女の子

11.人間通

 

<ボーナストラック>

12.Only You

13.Wonderful Life

14.Midnight Train(has gone)

15.ヘウレーカ!

 

2020年4月15日先行配信スタート

(iTunes Store およびApple Music, LINE MUSIC, Spotify 他)

 

2020年5月27日CD発売

VICL-65396/\2,700+税
(全国のCD ショップ、EC サイトにて)

現時点では、収録楽曲がいつ頃録音されたのかすべてが明らかにはなっていないが、中には少しその様相がわかっているものもある。”チェリーパイ”はオリジナルメンバーである岸田繁、佐藤征史、森信行による3人体制の時に録音されたもの。“怒りのぶるうす”、“Giant Fish”、“さっきの女の子”、“人間通”の4曲は、2006年7月にリリースされたベストアルバム『ベスト オブ くるり / TOWER OF MUSIC LOVER』の初回限定盤に収録されていた未発表音源だ。“心のなかの悪魔”、“鍋の中のつみれ”は、2009年6月に発表された『魂のゆくえ』制作時のアウトテイク。“鍋の中のつみれ”は、2008年の年末からこの『魂のゆくえ』発売までの間にライブで何度か披露されていたので、記憶に残っている人もいるのではないだろうか。

 

そして“ippo”は、2011年3月11日に発生した東日本大震災をきっかけに、くるりに加入した吉田省念、田中佑司、ファンファンの3人と岸田と佐藤の5人体制で録音された作品である。今回のニュースによって私の記憶も解凍されたようで、この曲を初めて聴いた日のことを想い出した。日付もちゃんと覚えている。新しいメンバーが正式加入する前の2011年4月18日だ。今は移転してしまったが、当時京都の堀川北大路に店を構えていた汚点紫(しみむらさき)というカフェにて行われたアンプラグドのライブ。ステージのような段差もなく、畳が敷かれた小さな部屋で岸田と吉田はアコースティック・ギター、ファンファンはトランペットを片手に座り、田中は小さなスネアとシンバル、そして佐藤は立ち姿でアコースティック・ベースを弾いていたと思う。5人で作ったというこの新曲”ippo”は、思いもよらない災害に見舞われた人々を鼓舞するようなストレートな歌詞と節まわしが印象的で、直感的に、今この瞬間だから聴くことができる曲なのだろうと思った。きっとそんな思いから、当時の私は一部だが歌詞を書きとめたのだ。(何度も頭の中で反芻しながら書いたものなので、実際のものと相違があるかもしれないが、そこはご容赦いただき、リリース時にご確認いただきたい。)そして、そのメモにはこのように書かれていた。

“降ってこい 降ってこい 降ってこい

雨なら なんぼでも 降ってこい

そりゃあ 一度や二度なら負けません

それ なんぼでも なんぼでも 降ってこい”

生きていると、思わぬ雨降りの日もやってくるが、晴れの日もやってくる。思い返せば、東日本大震災が起こった次の日に予定されていた京都・磔磔でのライブは電気を使わないアンプラグドで行われた。2016年9月18日に行なわれた京都音楽博覧会では、台風による大雨でフェスの最後を飾る彼らのステージが中止になるも、配信という形でその日披露するはずだった楽曲を一部ではあるが演奏してくれた。今回の突然の新作リリースもそうだ。いつも彼らは、その時にできることを音楽にして私たちへ届けてくれている。岸田曰く、「惜しくもアルバムから外れてしまった、アウトサイダーたちが揃った」というこの一枚。どんな曲たちに出会えるのか、春がやってくる頃を、若葉が美しくしげる頃を、楽しみに待ちたいと思う。

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