音楽とグラフィック
東京・白金の〈OFS gallery〉にて『音楽とグラフィック』が6月18日(金)から7月25日(日)まで開催されている。
レコードジャケットのグラフィックは、その音楽性だけではなく、その時代の思想・芸術・デザイン・ファッションなどの文化的背景が含まれている。
アンディ・ウォーホルがプロデュースした「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」のデビューアルバムはポップアートそのものであり、ザ・ビートルズの「サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブバンド」は英国のポップアートの巨匠ピーター・ブレイクが手がけたことで知られている。
レコードジャケットという表現メディアがクリエイションの可能性を広げ、アーティストやデザイナーはそのフレームの中で傑作を生み出し、自らの作品性を打ち出してきた。
音楽がデジタル化され、そのイメージを伝える手段が小さなアイコンひとつの表現に集約される現代において、その一方で世界中でアナログレコードの人気が再燃し、売り場は再びグラフィカルな立ち上がりを見せている。
本展では日頃、音楽に親しむグラフィックデザイナー6名がSpotify (音楽ストリーミングサービス)で自分のプレイリストを作成し、アイコンとなるグラフィックを制作。それを元にして音楽とデザインのイマジネーションを独自の見解でヴィジュアルやツールに落とし込み自由に表現する。
※公式サイトより
独自のテーマで作成した Spotifyプレイリストにアイコンとなるグラフィックを制作し、それを元に自由なビジュアルとツールで表現することで音楽とグラフィックの関係性について様々な視点を提示する本展示。
参加するグラフィックデザイナーは音楽に親しみのある大原大次郎 / 加瀬透 / 汐田瀬里菜 / 竹田美織 / 矢入幸一 / 矢後直規の6名。加瀬透は当メディアでもレビューを掲載した中村佳穂の新曲 『アイミル』のジャケットを手掛けており、矢入幸一は邦楽インディー専門通販サイト「The Domestic」のメインビジュアルや、ナードマグネットのグッズイラストでも知られている。会期半ば、筆者も伺った。
中でも印象に残ったのは、竹田美織の『Chamber Music For Greenery』。“外出のままならない時代、室内で植物とともに聴く音楽をセレクト” したとのことで、Sam Gendel や Green-Houseなど耳馴染みのよいアンビエントな楽曲が並ぶ。外出ができない世情もあれば、梅雨で外に出るのが億劫な今の時期に心地よいと感じるのは、人が一人で家にいるときは植物のように素朴な精神状態だということかもしれない。竹田の展示の横には開いたドアがあるが、透明の板が嵌め込まれており、外に出ることはできない。外の植物と作品を同時に見ることを意図しているのか、あるいはドアを挟んで反対側にある汐田瀬里菜の作品『DOORWAY』を意識してのことか興味深い。
参加作家のうち加瀬透 / 汐田瀬里菜 / 矢入幸一 / 矢後直規の4名が参加したインスタライブが〈OFS gallery〉の Instagram でアーカイブ公開中。デザインのツールと流行について、作品を発表する「恥ずかしさ」と音楽、クライアントワークについてなど話題は多岐に渡り、1時間たっぷりと現役のデザイナーの生の声を聞くことができる。
会場では作品の展示、グッズの販売の他、本展示に併せて東京・田園調布の珈琲とレコードと観葉植物の店〈STILL PARK〉がセレクトしたレコードとコーヒー豆を販売中。会場に足を運び、音楽とグラフィックの関係性について視点を広げてジャケ買いをするのもよいだろう。会場へ足を運ぶことが難しい人は、オンラインショップでグッズを購入できる。会期は7月25日(日)までとなっている。
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WRITER
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97年生まれ、みずがめ座。中央線・西荻窪→小田急線・成城学園前。ANTENNAのほかMusicmanなどで執筆。窓のないところによくいます。
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