ベルマインツの“流星タクシー”を聴いたとき、私は「何となく」このバンドにはフリッパーズ・ギターやキリンジに近いものがあると感じた。しかし『透明の花ep』を聴いて「何となく」といった曖昧な感情が「間違いなく」に変化した。私は確信する。ベルマインツはフリッパーズ・ギター~キリンジに引き継ぐ、2人の作家が価値観を共有し、華麗なポップサウンドを演奏するバンドの最先端にいると。
ベルマインツといえば神戸・大阪を中心に活動するインディーズバンドである。2012年秋に盆丸一生(Vo / Gt)と小柳大介(Vo / Gt)の2人のシンガーソングライターによりベルマインツの前進にあたるポップス・ユニット、ミートボールズを結成。その後2018年にベルマインツに改名し、2019年には前田祥吾(Ba)が加入。同年にはシングル『流星タクシー / ケセラセラ』をリリースし、ポップネスでキラキラとしたサウンドとボーカル2人のクリアで華やかなコーラス・ワークが活かされた作品を提示。そして2019年10月にリリースされる彼ら初のEP作品『透明の花ep』でも、そのコーラスワーク、キラキラとしたポップサウンドがいかんなく発揮されている。
表題曲“透明の花”(M1)はギターのクリーン・トーンにフリー・ソウルのエッセスを凝縮。一抹の寂しさを感じさせる歌詞で発揮されるコーラス・ワークは清々しい一陣の風を私たちに届ける。
同じく盆丸が作曲した“Compete”(M2)ではThe Libertinesのような胸躍るようなロックンロールに乗せて、好きだった人と見た星空を、床に散らばった金平糖に見立てて、淡い思い出をカラフルに演出する。本作のラストを飾るのは”夜霧のしわざ”(M4)。歌詞はベルマインツのもう一人のソングライター小柳が担当。夜霧に包まれた彼女と僕のドラマティックな情景を90年代のオルタナティブ・ロックのような重みのあるギターにのせ、少しぶっきら棒でがなりながら歌う盆丸が印象的な曲だ。
こうやって楽曲を聴いていくと、ベルマインツは1つのジャンルを突き詰めるのではなく、シティ・ポップも、ロックンロール・リバイバルも、オルタナティブも、J-ROCKも、J-POPも、枠組みを関係なく摂取しては自身のサウンド作りに活かしていることがわかる。そして小柳、盆丸の歌声が楽曲に乗ると、ジャンルの壁関係なくベルマインツの音楽になる。また歌詞に関しては分業ながらも「君と僕」の恋の物語という点で共通しており、歌詞のリアリティー・ラインもどちらか一方が強いアクを出すことなく、両者が歌詞のリアリティをベルマインツとして共有しているところからも、バンドとしての理念を持って活動しているということがわかる。同じ価値観を共有する小柳と盆丸、多分どちらか一人が欠けてもベルマインツにはならない。そういう意味ではこのバンドは2010年代のフリッパーズ・ギターまたは兄弟でやっていた頃のキリンジの再来といっても過言ではないだろうか。
作品情報
アーティスト:ベルマインツ
タイトル:透明の花
発売日:2019年10月23日
価格:¥1,000 (税抜き)
収録曲
01.透明の花
02.Compete
03. あぶくだま
04. 夜霧のしわざ
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WRITER
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関西インディーズの水先案内人。音楽ライターとして関西のインディーズバンドを中心にレビューやインタビュー、コラムを書いたりしてます。
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