愚直ながらも、手法を変えて人生を肯定し続けるバンドの1曲
2022年に結成した大阪発のスリーピースバンド、ここで生きてるず。このバンドの1st EP『人間爆破』(2022年)、そして今年7月にリリースされた配信シングルである本作を聴いて、彼らは「名は体を表すバンド」だと感じた。
ポップ・パンク、パワー・ポップ、メロディック・ハードコアをミクスチャーさせた軽快でカラッとしたロックサウンドではあるが、彼らはまず失意的な状況を歌う。例えば“かみのこ”だと才能がある者に勝てない自分という視点で歌い、“地球型時限爆弾”では冒頭で「例えばこの星が核廃棄物で出来ていたら、生き急がなきゃね」と歌われる。彼らはそのような状況に対して、失意を持つ者の側に寄り添い、同時にサウンドが持つ勢いのよさと、オリュウワタル(Gt / Vo)とイシザキツカサ(Ba / Vo)のダブルボーカルの力強さで、それでも「ここで生きていく」とポジティブな方向性へと持っていく。
“彗星ミサイル”もテーマにあるのは「ここで生きていく」である。だが今までの楽曲と大きく違う点は歌詞をほぼ変えずに、失意的な状況からポジティブへと変化させようとしている点である。序盤では大切な人との別れをオリュウワタルによるギター弾き語りで感傷的に独唱し、その後バンドサウンドとなりゆったりと「それでも生きていかなきゃ」というメッセージを歌う。そして後半、サウンドがポップ・パンク調のサウンドへと変わり、コーラスも入り明るくパワフルに冒頭と同じ歌詞が歌われる。すると「失意」であった歌が、サウンドの華やかさや力強い歌声とあいまって別れを受け入れ「ここで生きていく」と前に進む歌へと変化する。
忘れらんねえよ、SEKAI NO OWARI、ゲスの極み乙女、ずっと真夜中でいいのに。など名が体を表すバンドは多々いるが、それらはバンド名に含まれる要素をテーマとして楽曲を作っている。ここで生きてるずは、要素としてではなくメッセージとして楽曲に自分たちのバンド名を入れ込む。わかりやすく言えば「結論として『この世界で生きていく』というメッセージになる楽曲とは?」というお題に対して、様々な角度から回答を出しているのが、ここで生きてるずなのだ。
同時に彼らにとって「ここで生きていく」というテーマは何度もメッセージとして使うくらいに魅力的なものであることもわかる。紛争、格差、自殺など暗いニュースが賑わす現代社会において、「ここで生きていく」というのがポジティブに暮らしていくための何よりの答えだと信じているからだ。だからこそ、手段を変えてしつこいくらいに何度も同じメッセージを私たちに投げかけている。私たちがこの世界で生きていくと希望が持てるその日まで。達観をせず愚直で純粋に自分たちのメッセージは届くと妄信するその姿勢こそ、ここで生きてるずのアイデンティティなのだ。
彗星ミサイル
アーティスト:ここで生きてるず
仕様:CD / デジタル
リリース:2023年5月30日
彗星タイムカプセル
アーティスト:ここで生きてるず
価格:¥2000(税込)
販売:ライブ会場限定
内容
“彗星ミサイル”のCD
彗星タイムカプセルのしおり
キラステッカー
宇宙缶バッジ
思い出のかけら(チェキ)
ここで生きてるず
(L→R) イシザキツカサ / ソルジャー☆ヨウスケ / オリュウワタル
地球をひっくり返すバンド
好きな食べ物は、唐揚げと冷やし中華です
あと犬も好きです、ハトは嫌いです
Webサイト:https://ikiteru9999.ryzm.jp/
Twitter:https://twitter.com/ore_omae_ku
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関西インディーズの水先案内人。音楽ライターとして関西のインディーズバンドを中心にレビューやインタビュー、コラムを書いたりしてます。
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