私たちがバンドを続ける理由。シゼンカイノオキテが語る、15年間と今について。
歌詞に共感は要らない
シゼンカイノオキテのコーラスは同じ言葉を繰り返したり、3人で合唱のように歌ったりするのがユニークなポイントですね。
同じ言葉の繰り返しはここ数年のブームですね。流行りとかあるじゃないですか。最近こういうフレーズが多いよなとか。ただ3人で歌うのは北海道のwasというバンドに影響を受けました。歌はキャッチーなんですけど「このエネルギーはどこから出てくるの」と思うくらい力強くって。
吾妻さん、花田さんは表記としてはコーラスではなくボーカルになっていますよね。
メンバー全員、歌詞とか共有して歌えるので、そういう意味ではコーラスより意味があると思ってボーカルと表記してますね。あと字面的に面白いかなって。
字面が面白さを自分たちのCD に織り込みたかった理由ってなんですか?
こだわりが半分くらいなんですけど、こうやって引っかかるじゃないですか。「なんでボーカルなんですか?」って。そういう所に面白さを感じるタイプなんです。
歌詞もそういう印象が強いですよね。
私たち練習では歌う場所しか歌詞を教えてもらっていないんで、レコーディングの時に「こんな歌詞なんだ、すげぇ!」と毎回思いますね。
歌詞は基本的に全部自分が経験したことをもとに書いていますが、何があったかは全然わからないくらいまで分解してます。例えばM04の”七戒”だったら、引っ越し屋のバイトをした時に7階に集まったのが全然仕事ができない人で大変だったことがあって「What’s going on 7th floor?」(7階で何が起こっているの)というのはそういう意味だったりします。
分解して歌詞にするというのは先程の「引っかかりを作る」と関連してますね。
直接的なことを直接的に表現するやり方もありますが、僕はそれが出来ないので。なるべく淀んだ状態にしないと面白いものは出来ないかなと。
でも人によっては誤読されることとかもあるとは思うんですが。
それはむしろ嬉しいくらいです。ただあんまり政治的な見方をされたら少し嫌ですが、そういう要素も僕は排除してるんで。そもそも歌詞に共感はしてほしくないですね。
共感は要らないですか。
要らないですね。そもそも僕は人の歌詞に共感しないし、直接的な表現ほどその人の気持なんか全然わからいと思っているんで。この歌詞で誰かが元気になるとか全然思っていないし「この人、色々考えているんだな」というくらいに思ってくれたらいいのかなと。
一生続けられる何かが欲しいと思った
前回のリリースした2007年から今に至るまでシゼンカイノオキテは活動を続けていますが、音楽に対するモチベーションはこの11年間変わらなかったんですか?
そもそもモチベーション的な部分が切迫してやっているバンドではないので。「やらなきゃ、表現しなきゃどうしようもない」とか「売れたい!」ではなく「曲を作るならこの3人が一番良いし、そういうのが続くのが良いな」と思っていて。
「表現することない」「売れたい気持ちもない」となると、なぜ3人で音楽を続けていられるんでしょうか。
僕は若い頃からプロじゃないのに何かできる人がすごく好きで、一生続けられる何かが欲しいと思ったんです。
このバンドがその何かに値するものだと。
佐野:そうですね。僕が学生の頃に聴いていたバンドは仕事をしながらライヴやったり、音源をリリースをしてたんですね。そういうのを見てて、それ一本ではないけど何か人に誇れるものがあると良いなと思ったんです。そしてそれがこのバンドになった、という意識はありますね。
吾妻さんと花田さんはどうですか。
バンドは生活の一部だと思っています。確かにお金も時間もかかるし、体力的にも辛いですが、それがないと気持ち悪いというか、やっているのが当たり前な感じになっていますね。確かにバンドが無くても生きていけますが、それは寂しいかなとは思います
私はただ何となく続けていますね。大学でサークルに入り、バンド活動を始めて、そのまま辞めるきっかけがないままバンドをやっている感じです。
辞めるきっかけがなかったのは結構大きいかもね。誰かが仕事で海外出張に行くということもなかったし。
私もそれは大きいですね。大学の卒業や就職したりでバンド辞めると思ったら、2人がそういうスタンスで行くんで「え!?」と最初は思いましたけど(笑)
大きな転機とかはありましたか。解散の話が出たりとか。
それはなかったかな。でも、一時期ツアーで東京とか頻繁に行っていた時にみんな疲弊はしている感じがあったんで、リリースとツアーをべースにやっていくのは嫌だなとは思いましたね。演奏したあとの疲労感とかは良いですけど、曲作りとか曲を演奏すること以外では疲れたくないですね。
多くのバンドが「売れないと続けられない」と考えている中で、シゼンカイノオキテは続けるのが当たり前で、外部からの圧やストレスになる要因を極力排除しているように感じます。
ちょっとでも、しんどいと思ったら良くないからね。
シゼンカイノオキテ以外のバンドでもサポート等でドラムやっていますが、他のバンドでハードなことがあった時はこのバンドで癒していますね。
最後に今後の目標と、改めてシゼンカイノオキテが15年続けられた理由を教えてください。
辞める理由がなかったのと、辞める理由をそれぞれが作らなかったこと。それにメンバーそれぞれの曲作りの方向のウマが合ったことが一番大きく、この状態で色んな曲を作りたいというのが今のモチベーションです。ギター・ロックという今や死に絶えつつある編成でどれだけ戦えるのか。まだまだ面白いアイデアは出てくるんで、それを一個、一個ちゃんと形にしていきたいですね。
今後の目標としてはもう少し短いスパンで音源を作りたいと思います。いくつかできている曲もあるんで、本作くらいのボリュームになったら出したいとは思っています。さすがに次は11年は空かないとは思いますが(笑)
シゼンカイノオキテ『話を続けよう』
発売日 | 2018年9月12日 |
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価格 | ¥1,500(税込) |
レーベル | syaQsym |
収録曲 | 1.Youth must be served |
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関西インディーズの水先案内人。音楽ライターとして関西のインディーズバンドを中心にレビューやインタビュー、コラムを書いたりしてます。
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