ネクスト・ステージに向かうための集大成 Easycome初のワンマンライブでみせた圧倒的なホーム感
いい歌を聴かせてくれるバンドが大阪にいる。サウンドは70年代のルーツミュージック、80年代のシティポップ、90年代の渋谷系、10年代の東京インディーなどをミックスし、変拍子やテクニカルなフレーズは一切なく、シンプルな構成。そして明るい曲では華やかに、しっとりとした曲では艶やかさのあるボーカリングが絶品。そのバンドの名前はEasycome、大阪のインディーズバンドだ。
と、Easycomeの音楽性を語ったが、彼らのよさは別のところにある。シンプルな曲調で歌が上手いバンドは世の中には沢山いるだろう。私がEasycomeに出会ったのは今から3年前。当時大阪・南堀江knaveというキャパ250のライヴハウスで、20人も満たない観客の前で演奏していた。ライブを見た私は「特に技術が上手いわけではないが、魅力的なバンドだ」と感じた。彼らのチャームは打算的ではなく、音楽に取り組む姿勢が自然体なのである。アンテナでも以前、インタビューを掲載した。そこでは「向かないと思うことは無理にはしない」と語った。ウケを狙うことや、疲弊することは極力行わず、純粋に自分たちが楽しい方へ舵をとる。だから彼らのライブを見ると、メンバー全員が本当に楽しく音楽を奏でている。
そのEasycomeの全てが詰め込まれていたのが2019年12月14日に開催された初のワンマンライブであった。場所は初めてライブをした場所である南堀江knave。開演時間の少し前に会場に入ると、私が初めて観た時の10倍以上の観客の姿が目に入る。本人たちに聴けば、1ヶ月前にはソールドアウトしたとのこと。この動員が今のEasycomeの人気を示している。その内会場が暗転した後、ステージに光が当たりTHE BANDの“Ophelia”が流れる。そしてjohnny (Dr)、 落合(Gt) 、ちーかま(Vo / Gt)、コダマ(Ba)の4人と、コーラスゲストとしてYMBのいとっちとEasycomeの全作品に携わったスタジオエンジニア、MORGのangieの2人が登場。
Photo:阪東美音
全員が持ち場につき、颯爽と1曲目に鳴らされたのは今年発売された1stフル・アルバム『Easycome』から“パラシュート”。ちーかまのしなやかな歌声と軽快なサウンド、そして優しいコーラスが混じり合い、会場には清々しい空気が流れ込む。その後、ライブ定番曲となっている“strange”、“旅気候”の2曲を披露。「今回は初期の曲もたくさんやります」とちーかまが語った後には1stミニ・アルバム『風の便りをおしえて』(2015年)から”知らない街”。久々に演奏されるナンバーだけあってか、ギターが鳴らされた瞬間に会場からは歓声が上がった。
「ここでゲストを呼びます」とちーかまに呼びこまれたのは、ベルマインツの盆丸一生。以前、盆丸が企画した弾き語りライブで共演して以来、デュエットにハマっているちーかま。そこで2ndミニ・アルバム『お天気でした』(2016年)から表題曲の“お天気でした”を歌い交わした。Easycomeはギターの落合が主に作詞、作曲を担当しているが、この曲はちーかまが作詞、作曲を担当したナンバー。二人の素敵なハーモニーが会場を包み込む。そして2曲目は荒井由実の“中央フリーウェイ”をカバー。ちーかまの艶のある歌声と、盆丸の堂々としながら色気を感じる歌声に、会場はムーディーな様相を呈する。
Photo:阪東美音
終盤戦に入ったところで、ちーかまが今回のライブを「Easycomeの集大成をみせ、第1章を終わらせる」というテーマで挑んだと語る。そして自分が歌うこと、メンバーとの仲の良さ、Easycomeの歌が好き。その3つはこれからも変わらないが、今よりも大きなステージへ行きたいと語る彼ら。「好きなことを好きであり続けるために、今の自分たちに満足はしません。これからも皆さんの斜め上から予想を超えていきたいと思います」と宣言。観客にこれから更なる成長を約束し、“想い出にさよなら”を演奏。失恋から立ち直り新しい道へ進もうとする曲だが、今日ばかりは第一章を終わらせ更なる成長の道へ進む、自らへの餞の言葉のように聴こえてきた。
活動初期から演奏し続けてきた“風の便りをおしえて”を演奏し、ライブ本編は終了。だが会場からは彼らの演奏を聴きたい観客の拍手が鳴りやまず、再びEasycome4人といとっち、angieが登場。「私たちの大切にしている曲です」とちーかまが言い、アンコールとして披露されたのは“夢中にならないで”と“Crispy Crispy”。この2曲は正式音源以前のCD-R音源に収録されていたナンバーだ。第1章を終わらせるため、最後は自分たちの原点とも言える曲でワンマンライブを締めた。
Photo:阪東美音
終演後、メンバーは「ホーム感がすごくあって、楽しかった」と語っていた。思えば今回のワンマンライブは活動開始からの4年間が詰め込まれていた。セットリストは今まで発売されたアルバムから選りすぐられた曲たちで、南堀江Kneveは初ライブの場所で、活動初期から彼らを推してきたライブハウスだ。
そして今日集められたゲストも、活動してきた中で得られた仲間たちである。盆丸一生はちーかまと共演した弾き語りライブ以降、盆丸のバンド・ベルマインツと何度も対バンを行っている。また今年8月のアルバム『Easycome』リリースツアーのファイナルでもコーラスとして彼らをサポートした。また公私ともに仲の良いYMBのいとっち、そして彼らの作品全てを担当したサウンドエンジニアのangieをこの日のコーラスに起用。他にも物販では以前アンテナでも紹介した浦野光広が物販スタッフとして参加していた。(彼とEasycomeとの関係性はこの記事を参照してほしい)。
このワンマンはEasycomeにとって「私たちの今まで」を提示する、集大成であった。ここから、また新しい一歩を踏み出す。現状に甘えず、常に予想を超えることがしたい。彼らが新しい目標を自分たちに課した以上、今まで以上に無理をする瞬間が出てくるかもしれない。でも、彼らには4年間の活動期間で得たかけがえのない財産がある。第1章は終わった。Easycomeの第2章が今から始まる。
ライブ情報
日時 | 2020年2月15日(土) |
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会場 | 下北沢BASEMENT BAR |
出演 | Easycome |
料金 | 前売り ¥2,500 / 当日 未定 (+1ドリンク代別途) |
チケット |
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関西インディーズの水先案内人。音楽ライターとして関西のインディーズバンドを中心にレビューやインタビュー、コラムを書いたりしてます。
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