INTERVIEW

更なる深みを目指してーザ・リラクシンズ『morning call from THE RELAXINʼS 』リリースインタビュー

MUSIC 2019.12.28 Written By マーガレット 安井

西宮に活きの良いロックンロール・バンドがいる。名前はザ・リラクシンズ。普段は笑顔が素敵な優しい青年たちだが、いざステージに立つと凄まじい熱量とパワーで常に会場を掌握。サウンドはザ・ルースターズからOKAMOTO’Sまで引き継がれる日本語ロックンロールをエモーショナルにかき鳴らし、舞台上では初期衝動に任せて縦横無尽にはしゃぎまわる。また彼らはライブ外でもフリーペーパー『21世紀ボンブ』の監修・刊行や、『西宮ロックンロール研究所』というロックンロールをひも解く勉強会的イベントの開催など、ロックンロールを広める活動を展開している。

 

そんな彼らが2019年11月27日(火)に2ndフル・アルバム​『morning call from THE RELAXIN’S』をリリースする。本作では1年以上の間、活動休止をしていたユースケ(Gt)が参加。シンプルで熱量高いロックンロールが思う存分、楽しめる作品となっている。アンテナでは転換点を迎えようとするザ・リラクシンズのハユル(Gt / Vo)とユースケ(Gt)にインタビューを実施。彼らの結成経緯から、ZINEで発信する理由。そしてロックンロールに対する敬愛などを語ってくれた。今年の最後に、アンテナが自信を持ってお送りする至極のロックンロールバンド、ザ・リラクシンズの声を受け取ってもらいたい。

掘り下げて自分たちの物にすれば、濃いロックンロールが出来るのでは

──

まずはザ・リラクシンズ結成の経緯から聴かせてください。

ユースケ

僕は高校の頃に「THE HIGH-LOWSやTHE BLUE HEARTSのカバーバンドをやりたい」と思い、地元西宮の〈モンジャクシン〉というスタジオの店主であるモンジャクシン篠原とバンド活動をしていました。でも、ある時にドラムが辞めたんです。それで今までボーカルやっていた篠原さんがドラムになり、代わりのボーカルとしてやって来たのがハユルでした。

ハユル

僕は別のバンドでギターとして活動してました。だけど結成して2回目のライブで、僕以外のメンバー全員が「ライブに出ない」と言い出して、仕方なく弾き語りを始めました。ある日、西宮の音楽イベントでTHE BLUE HEARTSの曲を弾き語りしていると歌い終わった後に、篠原さんがやってきて「ボーカル探している」と話しかけられました。最初はあまり乗り気ではありませんでしたが、ユースケのバンドがTHE BLUE HEARTSの梶原徹也さんと、イベントで共演することが決まっていて。「ボーカルで入ってくれたら、梶くんと共演できるよ」と言われて参加しました。

ユースケ

それでメンバーも変わったので「バンド名も変えよう」という話になって、飲み会がてらバンド名を皆で考えていたんです。でも、全く決まらなくて。たまたま僕がTHE HIGH-LOWS『Relaxin’ツアー』のTシャツを着ていたのでリラクシンズに決まりました。

ハユル(Gt / Vo)
──

ザ・リラクシンズはTHE HIGH-LOWSみたいなバンドを目指されていたのですか?

ハユル

いいえ。最初の頃は甲本ヒロトや真島昌利は意識せずに音楽をやっていました。だけど、編成からして僕がピン・ボーカルで、ユースケがマーシー的な黄色のギターを持っていたので当初は「ザ・リラクシンズはTHE HIGH-LOWSのパクリ!」と言われることがすごく多かったです。そこから「自分たちのオリジナリティは何か?」と考えて、よりロックンロールを掘り下げるために、好きだったマーシーやヒロトの音源を遠ざけてた時期もありました。

ユースケ

元々、ヒロトやマーシーのインタビューなどを読み漁って、影響受けた音楽を聴いてはいました。だけど、バンドを始めてからは自然と今まで以上にルーツを掘り下げて、古い音源を聴きました。遡ってみると「マーシーやヒロトの曲にも元ネタとなった音楽がある」いうことが徐々に分かってきて。そこで掘り下げた音楽を聴いて自分たちの物にすれば、THE HIGH-LOWSよりも濃いロックンロールが出来るのではないか、と考えたんです。

──

濃いロックンロール?

ハユル

例えばブルースもEric Clapton(エリック・クラプトン)を聴いてエッセンスを抽出するよりかは、さらにロックンロールの原点に近いElmore James(エルモア・ジェイムズ)やRobert Johnson(ロバート・ジョンソン)を聴いて、自分たちの曲として昇華した方が純度の高いロックンロールが出来上がると思うんです。

──

ちなみに先程からロックンロールと言っていますが、それはロックとは違うのですか?

ハユル

しっくりくるかどうか、が大きいかな。例えば「リラクシンズはロックバンド」といえば僕はあまりしっくりこないんです。あと過去のロックンロールに対して、ルーツ理解やリスペクトがあるかどうかも大きいのかも。例えばロックンロールへの理解がないまま“Jumpin’ Jack Flash”を弾いてても、ロックンロールの音にはならないし。

──

なるほど。ロックンロールを掘り下げる話が出ましたが、ザ・リラクシンズは掘り下げることで知ったアーティストや知識を『21世紀ボンブ』というZINEで紹介されてますよね。これはどういう経緯で作られたのですか?

ユースケ

70年代から80年代に日本の色んなバンドがZINEのはしりみたいなものを作っていました。例えば僕の父親は亜無亜危異(アナーキー)が好きで、父の実家に行くと会報みたいな冊子が沢山でてきたんです。他にも色々調べると東京ロッカーズが機関誌を作って、自分たちの価値観を広めていたことも知って。だから自分たちも、ZINEを作ってみたいと思ったんです。

※東京ロッカーズ
1970年代後半に〈S-KEN STUDIO〉、〈下北沢ロフト〉を中心として活躍していたバンドの総称。代表的なバンドとしてはFRICTION、LIZARD、Mr.KITE、MIRRORS、S-KENなど。1979年にコンピレーション・アルバム『東京ROCKERS』をリリース。

──

それはその70年代のバンドに近づきたいという憧れからくるものですか?

ハユル

いや「発信したい」という気持ちの方が強いです。バンド組んだ時、周りに全くロックンロールをやっているバンドがいなかった。だから自分たちが好きな音楽を発信して、ロックンロールを広めたかった。それに発信だけでなく、自分たちの知識や理解を深めたい。そういう思いもあり『21世紀ボンブ』だけでなく、定期的にお客さんも招いて『西宮ロックンロール研究所』というレコードを聴く会も行っています。

ユースケ

僕らをを観に来たお客さんの中にはElmore JamesやRobert Johnsonを知らない人もいる。だからザ・リラクシンズを知ることで、ロックンロールを知ってほしいと思います。僕らは、THE HIGH-LOWSを知ることで、音楽を掘り起こす楽しさを覚えた。自分たちが誰かの、新しい音楽を知るきっかけになれたら嬉しいです。

「バンドをする人生と、しない人生。どちらを取れば後悔はしないか?」と考え時に、バンドだなと思った

ユースケ(Gt)
──

そもそも、4人編成であったザ・リラクシンズですがユースケさんは今年の夏まで、1年以上活動を休止されていましたね。

ユースケ

大学を卒業して、就職したんです。でも仕事が忙しく、バンド活動が出来ない状況が続いて、1年半くらい活動休止をしていました。

ハユル

普通のバンドなら一人のメンバーが休止したた時点で、バンド全体の活動も止まると思うんです。またユースケが活動出来なくなったタイミングで、前のドラマーの町屋菊一も抜けることになったので、「なんとなく1年くらいは休止かな」と思っていました。でもそれからすぐに今のドラマー、おりばー(Dr)に出会ったんです。ドラムソロでライブをしていたのですがとにかく衝撃的で。それで僕とトモスエ(Ba)の3人でセッションすると感触も良くて、「あ、ライブしたいな」と思ったんです(笑)。

──

ははは(笑)。

ハユル

それで今までの曲のアレンジを変更し、3人で出来る曲を作りました。そしてユースケ無しで、3人でライブ活動を再開しました。そしたらどんどんライブが決まって、引くに引けず、気がついたらアーティスト写真も3人で撮ってました(笑)。

おりばー(Dr)
トモスエ(Ba)
──

それに対してユースケ君はどんなことを思っていましたか?

ユースケ

「3人でやることにした」「アー写3人で撮った」とか節目で連絡はありました。だけど嫉妬心とか、悔しさみたいなものは一切無かった。普通に3人で撮ったMVをみて「カッコいい」と思っていましたし。ただ休止してから「バンドをする人生」と「しない人生」の間でずっと葛藤してて。

ハユル

それで3人で活動してから1年ぐらいたった時に、「本来4人組なのに3人で活動って、おかしくないか?」と急に思ったんです。それで他のバンドマンやライブハウスの人に、いまの活動形態について話したら、全員口そろえて「おかしい!」と言われて。それで自主企画の「すきやき」というイベントの時だけ、ユースケに参加出来そうなら出てもらいました。そして十三ファンダンゴのワンマンの段階で、バンド活動を再開するかどうかを決めてもらいました。

ユースケ

僕はバンドに参加することを選びました。色々迷いましたが、「どっち取ったら、後悔のない人生か?」と考え時に、バンドだなと思ったんです。会社には辞める意思を伝えて、今は一緒にツアーを回っています。

(最新アルバムは)今まで溜め込んできたアイデアが一気に爆発して作った作品

──

最新アルバム『morning call from THE RELAXINʼS 』には過去に発売されていたEPからのナンバーも多く収録されています。なぜ改めて、フル・アルバムとして作品を出そうと考えたのですか?

ハユル

今回のアルバムはユースケも戻って「ここから新しいリラクシンズが始まる」という挨拶代わりの1枚にしたかった。だから前のEP『ユーモア』では3人編成で収録されていた、“B.N.S”とか“止まらない何か”といったライブの定番曲も入れようと思いました。改めてユースケを入れて4人でやったら、同じ曲でもモノクロからカラフルに変わるくらい、サウンドが一気に立体的になった。

──

4人で形を残す。というなら、EPとかシングルでも良いのでは?

ユースケ

僕らアルバムが好きなんです。ミニ・アルバムやEPだと物足りなくて。それはたぶん僕らはシングル単位でなく、アルバム単位で音楽を聴いていることが影響してると思います。例えばクラッシュだったら『London Calling(ロンドン・コーリング)』の話はするが、シングルの話はしない。だからアルバム作るのは、自然な流れでした。

ハユル

ただ定番曲は入れたけど、半分は誰も聴いたことがない曲も入れようと思って、大急ぎで作りました。

──

新曲はどれくらいの期間で作られたんですか?

ハユル

2〜3週間で作りました。ただ間に合わせで慌てて作ったわけではなくて、今まで溜め込んできたアイデアが爆発して、一気に作りました。

ユースケ

ボツにした曲とかもあったよね。

──

1曲目の“ハムエッグ”は明るいサウンドですが友達が亡くなった話を話題にしています。どういう経緯でこの曲を書かれたのでしょうか?

ハユル

僕は普段「ハムエッグ」というより「ベーコンエッグ」という言葉を使います。だから自分になじみのない「ハムエッグ」という言葉を聞くと、よそよそしい、浮ついた感じがして。この曲は僕にとってはそういう印象です。「日常的だけど、どこか違和感がある」みたいな。

 

僕は藤子不二雄Aのブラックユーモア集みたいな奇妙な話がとても好きで、それとこの曲を書いていた頃にたまたま、レイモンド・カーヴァーの短編小説とかを読んだのも影響したのかなと思います。日常の風景を描きながらもリスナーの想像力を働かせる。そんな曲が書きたいと考え、悲しい歌詞なのに、明るいサウンドを乗せて違和感を感じるような作りにしました。

──

3曲目“冬の始まり”は初期のザ・リラクシンズを意識されたとのことですが。

ハユル

3人になって僕のギターの比重が大きくなり、バンドのサウンドが変わりました。ユースケが復帰してからは、僕とユースケのギター比重が半々になるぐらいの曲を作り、バンドのサウンドはさらに変わっています。ただこの曲は昔のリラクシンズの編成の通りに、ユースケのギターだけで、僕がマイク持って演奏できるナンバーを作りました。

 

ルーツを深めたことで、もうTHE HIGH-LOWSのモノマネとか言われなくなりました。それでレコーディング期間中に、久しぶりにTHE HIGH-LOWSを聴いたら、見事にハマって。音楽を深く掘ったことで、昔の自分たちには見えてこなかった部分が色々と見えてきました。それで今ならリスペクトとして、最初の頃みたいな曲を書いても良いのかなと思ったんです。

ユースケ

「離れよう、離れよう」と思いながら演奏するのはすごく不自然じゃないですか。それを一回取っ払って、ストレートでやってみたい。そういう思いから、この曲は収録しました。

これからもロックンロールを壊して作っていきます。

──

ロックンロールとはそもそもダンスミュージック的な意味合いが強いのですが、“ロックンロール”という曲では孤独・暗さをテーマにしていますね。

ハユル

ロックンロールの一つの価値観として「下に行けば行くほど輝ける。情けなければ、情けないほどいい」というのがあると思います。だから、どんだけ情けなくても「それでいいじゃん、ロックンロールだし」と自分を言い聞かせる、という曲にしました。

ユースケ

ロックンロールは運動ができない人でも、勉強ができない人でも、何の取り柄がなくてもできるし、輝ける可能性がある。そういう意味ではロックンロールって、誰でも輝くことが出来る魔法の呪文なんです。

ハユル

ラストナンバーの“こわしてつくる”は西宮のブルースマンであるコニォさんの言葉からインスパイアされて作りました。ロックンロールの歴史はいつも壊しては創るという連続で常に新しくなっていくんです。僕らも新しいロックンロールを作りたい気持ちがあるし、これからもロックンロールを壊して作っていきます。

──

今後のやりたいことはありますか?

ハユル

4人でしかできないサウンドを追求して、いい音楽を作りたいですね。それとアナログ・レコーディングをして、レコードを作りたいですね。

ユースケ

僕は良い作品が出来たと思うのでツアー回って、色んな人にリラクシンズのことを知ってもらいたいです。

作品情報

 

 

アーティスト:ザ・リラクシンズ

タイトル:morning call from THE RELAXIN’S

発売日:2019年11月27日

価格:2300円(税別)

 

収録曲

01. ハムエッグ

02. ローリン(再録)

03. 冬のはじまり

04. VITALITY BLUES

05. ロックンロール

06. メイキン倶楽部

07. 止まらない何か(再録)

08. 目が覚めてon the road

09. ガソリンスタンド

10. 8ビートについて

11. スタンダードナンバー

12. B.N.S(再録)

13. こわしてつくる

ライブ情報

 

 

ザ・リラクシンズ presents

“SUKIYAKI” 2man series

「ザ・リラクシンズ VS. 錯乱前戦」

日時:2020年2月22日(土)

open 18:00 / start 18:30

場所:下北沢BASEMENTBAR

出演:ザ・リラクシンズ / 錯乱前戦 /(O.A. ) ハシリコミーズ
料金:前売り 2,400円 / 当日 2,900円 (+1ドリンク 600円)
ティーンネイジャー割有り(500円割引)

チケット:ライブハウス店頭販売、e+、メール取り置き予約

 

ザ・リラクシンズ presents

“SUKIYAKI” 2man series

「ザ・リラクシンズ VS. KING BROTHERS 〜第一回西宮頂上決戦〜」

日時:2020年3月28日(土)

open 18:00 / start 18:30

場所:堺FANDANGO

出演:ザ・リラクシンズ / KING BROTHERS
料金:前売り 2,800円 / 当日 3,300円 (+1ドリンク 500円)
学割有り(当日証明書提示で1,000円キャッシュバック)

チケット:手売りチケット(12月28日から発売)、ライブハウス店頭販売、e+、ローチケ(2020年1月5日から発売)、メール取り置き予約

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