やるなら、より面白い方へ。おとぼけビ~バ~が語る、いままでの私たちと、そこから始まるシーズン2。
「私の曲に共感したらヤバいで」とは思っています
おとぼけビ〜バ〜と言えば歌詞も面白いですよね。“あなたわたし抱いたあとよめのめし”の「セックス・柴漬け・ロックンロール」とか非常に印象的です。
あの言葉はあっこちゃんから、めっちゃ暗い態度で「きいてや~」と電話がかかってきて。「うわ、長くなるな……」と思いながら、1時間経過した頃に「結局、セックス・柴漬け・ロックンロールやな」と言いだして。「え?なにそれ!」となったんですが、あっこちゃんは何を言ったか、覚えていなくて(笑)
そのエピソードを聞くと、あっこさんが作る歌詞は感覚に寄り添っているのかなと思うんですが。
そうですね。突然思いつくことが多いですが、自分の中で「これしかない」っていうキラーフレーズがでてくるまではメンバーに出しません。言葉はメチャクチャ大事にしていて、語呂とかリズム感とか、字面にもこだわってます。
ただ毎回「私だけが面白いのかな」と思って、メチャクチャ怖いですね。いまだに新曲出すとき「あのさ……」と照れながら出しますし。正直、お客さんに出すより、メンバーに出す方が緊張するんです。ギターもうまくないし、曲を書く役割でこのバンドにいるのに「ダサい曲出したら、私存在価値ないやん」と思っていて。
曲を書くときに、頭の中で誰かに聞かれるといったイメージされることはありますか。
誰に見せるとかはあまり考えてないです。この気持ちをどう自分らしく表現するか、どう叫んでやろうか、自分らをどうみせようか、しか考えてないですね。
それは観客へ共感を求めている、ということですか。
いや、ただ言いたいし、表現したいだけです。曲は自分の気持ちを吐き出す場所ではありますが、書いてもスッキリせずに同じようなことで悩み続けているので。正直「私の曲に共感したらヤバいで」とは思っていますね(笑)。ただこんだけ男に怒ってる曲書いてるのに、この間インスタのフォロワーが8割男なのがわかって「なんでなんかな?」とは思いましたが。
ただ、おとぼけビ~バ~の歌詞って、女性は素直に「はいそうです」とは言えない感じですよね。
そうなんですかね?実際の男の人の前では言えなかったことを、関係ない人に八つ当たりしてるだけですからね。だからインタビューとかで「おとぼけの歌詞は女性からの憤りを代弁しているのでは」と質問されたりしますが、「いや、単に私がムカついてるだけなんで」と答えてますね。あと海外の音楽サイトとかで「強い女性」と書かれていたりするんですけど「私メンタルめちゃめちゃ弱いんやけどな」と思ったり。
曲を書く原動力は「怒り」と「悲しみ」ならどちらが強いんでしょうか。
悲しみかな……いや答えられないですね。私の人間性、めっちゃめんどくさいんで。自分の根っこにある気持ちは一生ついて回るものじゃないですか。今でも昔のトラウマとか、性格のゆがみみたいなものが週1ぐらいでウァーって襲ってくるので。
昔と今では歌詞の内容は変わりましたか。
変わりますね。昔は本当の自分を出すのではなく、おとぼけビ~バ~ぽくしないといけないと思っていたので。デモの『あなたの愛で満室中』なんか、バンド名がラブホテルの名前だから無理くり作ったし。それに恋愛の事でも「ちょいエロ」みたいなことしか書いていなかった。多分、大学の時はちょっとモテたかったと思うんですよね。だから今のように、赤裸々には言ってなかったかも。今は全くモテたいと思う気持ちはないですね。
それはなぜ変化したんでしょうか?
昔の私には何もなかったので、無意識に女として男に求められることの価値に重きをおいてたんです。だから自分をさらけ出すのが怖くて。ただバンドで人前に立つうちに、自分自身のやりたいことをやったり、表現することが楽しくて、マイナスの感情も私の個性と受け入れられたような気がします。だからなにも気にせずひどいキレ顔で歌ったりもできるようになったし、より素直に歌に感情をぶつけるようになってきましたね。まだ怖い部分はありますけど。
ジャルジャルの漫才を見て「めっちゃええ曲や。勝てない」と思った
今回アレンジもこだわっているなと感じます。“あなたわたし抱いたあとよめのめし”の「セックス・柴漬け・ロックンロール」のサラウンド的なアレンジとか、“週6はきつい”の終盤でのボイスチェンジなど、以前ではやらなかったアプローチが見られますよね。
まあ、前よりこだわりはあるかな。昔は思いつきもしなかったんですけど、年が進むにつれて、アイディアが増えてきただけで。
このようなアイディアはどこから生まれるのですか。
ライヴハウスでバンド見たり、コーチェラで自分たちで感じたことだったり。
大学生のころは曲を作るときに音楽を参考にするのではなく、「なんか思いつくかなー」と思って、バスで終点の車庫まで乗る人たちの会話を聴くためだけに乗っていました。今だとライヴを観て「あのはじまり方カッコよかったな」「あのバスドラはカッコよかった」と、無意識に影響されている部分はあります。
でも能動的に自分から楽曲を聴いて、曲を作ることはなくて。「楽曲制作時にどんな音楽を聴いていましたか?」とかインタビューで聞かれたりもしますが、なにかを聴くとその音楽に引っ張られてしまうので、全く聴かないようにしています。
それは何かの音楽にインスパイアを受けた、みたいなこともほとんどないのということですか?
そういう作り方はしたことないですね。私は音楽を聴かな過ぎて、みんなからビックリされてるんで。でも音楽ではなく、お笑いを参考にしているところはあります。
お笑い?
お笑いの掛け合いとか、突っ込むタイミング。あと間の取り方にはめちゃめちゃ影響を受けています。ジャルジャルの漫才なんかを見ては「めっちゃ良い曲やん。絶対勝てない」といつも思ってて、悔しいですね。
お笑い以外に影響受けて楽曲を製作されたことはありますか
そうですね。ライヴのステージングとかかな。この間、あるバンドのフロントマンがマイクを持ち横揺れで踊っていて。「この踊りがやりたい!」と思い、かほちゃんに「これが出来るようなビートやって」とお願いしたりしました。
あれBPM計ったら305でしたよ。
はっや(笑)。でも、やっぱりどこかでどん詰まると思うので、最近はクセとか変えていくためにも、音楽聴こうとは思いますけどね。みんなめっちゃ音楽聴いてるから、やっぱりそこの劣等感は感じますし。あんま音楽聴いてないやつらが作ってるっていうよさもあると思ってるんですけど。
私も、同じ気持ちです。
海外に行くにつれて「もうちょっとやりたい!」という気持ちがではじめてきた
ブログで「シーズン2」と書いていましたが、それは単にメンバーチェンジを表していたのですか?
いえ。ひろちゃんが入り、どういう音楽をやろうか模索しながらやってきて。そしてようやく固まり出してきた段階で、かほちゃんが入り、本格的に活動を行う意図で書きました。
昔と比べて、スタンスは変わりましたか?
学生の初心者で右も左も分からない状態の頃から比べると、スタンスは全然違っていると思います。
思ってもいなかった波に乗ってきているので。最初はよしえちゃんが戻ってきた段階で、音楽を長く続けるスタンスだったのですが、次に海外に話が来て「自分らの音楽を認められた」と感じてて。それまであんまり自分たちの音楽を評価された実感がなかったんで、今は「好きな事をやっていいんだ。もうちょっとやりたい!」という気持ちが出始めています。
それに今までは社会人をやりながらライヴ活動をやっていたのですが、休みが取れず、海外のライヴを断り続けていたんです。でも2019年のSXSWで自分たちのレーベル(Damnably)から「どのくらい出せば、生活は大丈夫か?」と聴かれて。
「今、支援するのは無理だけど、いずれ可能性はあるだろう」と言われて。正直、自分たちの音楽が収入になると思っていなかったので「そういう道があるかもしれない」と希望を持ちました。でも「私が曲書けなかったら、ほかのメンバーに影響するのはしんどいな」「活動が止まったらどうしよう」とか色々考えてしまい、「みんなで一緒にやっていこう」とはメンバーに言えなかったんです。でも、よしえちゃんが「あっこちゃんが行くなら、私も仕事辞めて行くで」と背中を押してくれて。
あっこちゃんは未来のことを考えると、まず最初に不安やリスクを考えるので。ただその不安のせいで「せっかく来ているチャンスを潰すのはもったいない」と感じてて。たしかに収入を全部なくして、海外に行くのはリスクがあると思います。でもそんな人生みんな歩んでいないし、海外でツアーできる人なんて限られている。ならば「面白い方へ行こう。後悔しない方を選ぼう」と思ったので。
色々不安もありますけど、でも将来、同時期に活動してたバンドをテレビで見ながら「あのとき私たちももっとやってたら、もっといけたかもな」とか言っているのが一番嫌やなと感じています。
私も、将来お金が無くなりゲームオーバーになるよりか、そっちの方が嫌やね。それにお金が無くなっても、それはゲームオーバーじゃないと思うし。そもそも、私はおとぼけビ~バ~をやるために、一度仕事辞めてるので、今のキャリア捨てることに、なんも抵抗ないんで。かほちゃんはどない?
私も同じです。
小学生か(笑)。
ひろちゃんは?
元々、仕事を続けることにこだわりとかないし。それに別にバンドしなかったらあんまり働かなくてもいいとすら思っているし。
ひろちゃんなんかは新しいところに飛び込むタイプではないので、全く喋った事がない私たちの所に応募してくれて、今になってめちゃくちゃ愛を感じています。かほちゃんも、私たちに付いていくという事は、人生変えちゃうわけじゃないですか。それに応えてくれているので、今一番いい体制というか、相思相愛でやれてる感じ
最後に、おとぼけビ~バ~の最終目標を教えてもらってもよいでしょうか?
目標なんて元々ないんですよ。「一緒にやろうよ」と言ってそのやりたい事をドンドン積み重ねていっているのが現状です。そもそも最終目標って「みんななんであるの?」と思うんです。たまに「売れなかったら辞める」とかいうバンドとか、いるじゃないですか。それを見てると「自分の目標を勝手に決めて、そこで終わっちゃうのでいいの?」と思うんです。それより、そのタイミングで面白いと感じることをドンドンやっていく方が良いと思うので。
視野って、どんどん広がっているし、今の視野だけで決めたらもったいない。それこそ、今私たちも「グラストンベリーとか出たい」とか、「ウェンブリスタジアムでワンマンやりたい」とか目標がありますけど、それは最終目標ではなくって、やりたい面白い事のひとつにすぎないと思っています。
とりあえず今は曲を作って、ライヴをやっていきたいですね。あと音楽的に今後はノージャンルを目指したいと思っています。今は「パンクバンド」と言われているけど、それだけじゃなくてポップな曲も作りたいし、なんならピアノ弾くのもアリかなと思うんです。わたしは弾きたくないですけど(笑) なんでも、その時に面白いと思ったことを4人でやりたいので。それでどこに行けるかは未知数ですけどね。
作品情報
アーティスト:おとぼけビ~バ~
タイトル:いてこまヒッツ
レーベル:Damnably
発売日:2019年04月26日
価格:2,268円(税込)
品番:DAMNABLY080
収録曲
01.脱・日陰の女
02.あきまへんか
03.シルブプレ
04.愛の暴露本
05.いまさらわたしに話ってなんえ
06.親族に紹介して
07.ラブ・イズ・ショート
08.大殺界
09.ハートに火をつけたならばちゃんと消して帰って
10.週6はきつい
11.暴飲暴食過食症
12.もうその話なんべんもきいた
13.あなたわたし抱いたあとよめのめし
14.いけず
おとぼけビ~バ~
モットーは「セックス・しば漬け・ロックンロール」2009年結成。恋のルサンチマンをショートチューンで八つ当たりする いてこまスマッシュ・ヒステリックハートビート・どすどすどすえ系バンド。流暢な京都スラングとカタコトの英語でワールドワイドに活動中。アメリカテキサス州オースティンで開催される大見本市SXSWに2019年3月二度目の出演を果たすも、ライブハウスの人の機嫌が悪くめちゃくちゃ怒られて電気をすべて消されアメリカにて人生初めての出禁を食らう。
おとぼけビ~バ~『ITEKOMA HITS』リリースJAPAN TOUR
5/26(日):『いつまでも世界は…』@京都
6/15(土):『YATSUI FESTIVAL!』@渋谷
7/6(土):@新宿レッドクロス w/日本マドンナ
7/21(日):@難波べアーズ
8/24(土,昼):@下北沢シェルター
9/21(土):@京都拾得
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関西インディーズの水先案内人。音楽ライターとして関西のインディーズバンドを中心にレビューやインタビュー、コラムを書いたりしてます。
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