万華鏡的な面白さを放つ、Nagakumoのオリジナリティ
大阪を拠点に活動するギターポップバンドNagakumoから、とびっきりにパワフルで新鮮な作品がリリースされた。博覧会という意味を持ったタイトルのミニアルバム『EXPO』は分単位で楽曲の色彩をガラッと変えてしまう曲が集まった、万華鏡的な作品である。
本作の特徴は、とにかく展開が多いことだ。例えば1曲目、“思いがけず雨”はコモノサヤ(Vo / Gt)が歌う後ろで、ネオアコなサウンドからフュージョン、ジャズ、オルタナティブロックと、さまざまな要素が顔を出す。更に中盤ではスキャットや、ドラムソロまでも入り、同じ展開の繰り返しがない楽曲になっている。驚きなのはこの1曲だけでなく、ほぼ全編にわたり工夫を凝らして、おもちゃ箱をひっくり返したような作品へと仕上がった。
その片鱗は1st EP『PLAN ep』にもあったが、本作ではより能動的だ。特に今までコモノ1人だったボーカルが、ホオニシレイジ(Cho / Gt)も歌っている点は大きい。グループサウンズのような人なつっこいサウンドとギターポップのマリアージュが楽しい“渚のメモリーズ”ではコモノとホオニシのデュエットからはじまり、前半ではコモノ、後半ではホオニシと歌い手を交代していく。クールで凛とした歌声のコモノと、素朴で優し気な歌声のホオニシが相反する響きをもたらすことで、フックとして機能している。
もちろん展開が多く、男女ツインボーカルのバンドなんて世の中には山ほどいる。にもかかわらず、私がこのバンドを面白いと思うのは、展開を情熱の赴くままに無理やり収めようとしているのではなく、小粋なポップソングとしてのたたずまいを崩していない点である。それは幾重に発展しても、ギターポップが持つクリーンなサウンドと洒落たコード進行が軸となっているからだ。そのためどの曲を聴いても、シックで軽やかなポップサウンドが常に顔を出している。
ギターポップの小宇宙を縦横無尽に遊泳するNagakumo。『EXPO』は自身の独自性を発揮させた、バラエティに富んだ作品だ。
EXPO
発売:2022年3月9日(水)
フォーマット:デジタル
レーベル:FRIENDSHIP.
配信リンク:https://friendship.lnk.to/EXPO
収録曲
1. 思いかけず雨
2. Awayokuba
3. Birthday
4. イン・ザ・ジオラマ
5. 渚のメモリーズ
6. Friends
Nagakumo
2021年1月1日活動開始のネオネオアコ・バンド。
1999年〜2001年生まれの4人のメンバーが独自の感性で鳴らす渋谷系・ネオアコギターポップサウンドを「ネオネオアコ」と名づける。
2021年2月17日に1st ep 『PLAN e.p.』をリリース。関西を拠点にマイペースに活動中。
HP:https://nagakumo.jimdosite.com
Twitter:https://twitter.com/ngkm_band
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関西インディーズの水先案内人。音楽ライターとして関西のインディーズバンドを中心にレビューやインタビュー、コラムを書いたりしてます。
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