“東京”に対する敬愛が生んだ25年目のオマージュ
京都のバンド、オートコード。その1stシングル『京都』がなかなかいい。メンバーはOasisやWeezerからの影響を公言しているが、サウンドは初期のASIAN KUNG-FU GENERATIONやGOING UNDER GROUNDが持っていた音を想起させる。言い換えれば90年代のパワーポップやオルタナティブロックの影響を受けつつ、そこから換骨奪胎して日本語ロックへと落とし込んだ音がオートコードにも感じられるのだ。本作はスピード感のある抜けのいいサウンドが気持ちいい“BAD TUNING SHE”、ひと夏の淡い恋を重厚感のあるギターロックサウンドでドラマチックに仕上げた”夏の終わり”も素晴らしいが、その流れを受けての表題曲である”京都”が絶品だ。
そのタイトル、ギターの独奏からバンド演奏に入る構成、ギターのフレーズ、Radioheadの“Creep”みたいな「ガガッ ガガ」というギターのブラッシング、雨の情景の中で孤独や焦燥感をテーマとした歌詞含め、くるりの“東京”へのオマージュを感じた。だが、くるりの“東京”は地元に残した恋心を描いたのに対して、この曲には電話をかける相手すら存在しない。雨に打たれながら自らの寂しさや虚しさを洗い流してほしいと願い、その思いが強くなればなるほど、エモーショナルにバンドサウンドが熱を帯びてゆく。
そういえばまだ音源には収録されてはいないのだが、彼らには“ウィーザーは僕の日々を歌う”という楽曲もあるようだ。“京都”でのオマージュを含め、敬愛するアーティストをてらいなしに出す姿勢を考えると、オートコードはナードマグネットや愛はズボーンと並べて語られるべきアーティストであるのかもしれない。
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京都
アーティスト:オートコード
仕様:配信 / CD
価格:¥770(税込)
発売:2023年8月9日(水)
販売:https://holiday2014.thebase.in/items/76695005
収録曲
1.BAD TUNING SHE
2.夏の終わり
3.京都
オートコード
L⇒R ジュンジュニオール(Gt)大島 匠冬(Dr)轟 龍二(Vo / Gt)ミナ(Ba)
22年京都発の現役学生バンド。
斉藤和義やくるりに影響を受けた轟(Vo,Gt)の日記のような心象描写と、洋楽を中心にさまざまなルーツを持つメンバーとの化学反応により、アップデートされたサウンドの中に京都の風景が浮かぶ、新たな懐かしさを感じられるバンド。
X(旧Twitter):https://twitter.com/autocord_
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関西インディーズの水先案内人。音楽ライターとして関西のインディーズバンドを中心にレビューやインタビュー、コラムを書いたりしてます。
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