ゼロ年代から続く邦楽ロックの末裔たちが作り上げた一作
京都にコロブチカというバンドが存在する。くるり、おとぼけビ〜バ〜などを輩出した立命館大学の名門軽音サークル『Rock Commune』に在籍中で、音楽活動を始めてまだ1年程度。しかしながらその実力は確かであり、FM802が主催するショーケース・ライブサーキット『MINAMI WHEEL』の学生を対象としたオーディション『MINAMI WHEEL 2024 -New Age-』では決勝まで残り、出演アーティストの一組として選ばれた。先日開催されたANTENNA主催のライブイベント『Fight Club Vol.1』でも素晴らしい演奏を披露したのは記憶に新しいところ。サブマリン、THE HAMIDA SHE’S、オートコード、Akane Streaking Crowdなど若いバンドが次々と生まれている京都のバンドシーンにおいて、一目置かれている。
そんな彼らが9月2日にリリースした1st EP『ワンダーアラウンド』はゼロ年代以降の邦楽ロックの要素が結晶化されたような作品だ。例えば“シャーリーテンプル”におけるダーティーさをはびこらせたサウンドと攻撃的なギターリフは『デッセンクルー』時代のハヌマーンを、泥臭く己の生き様を描くスタイルは銀杏BOYZを思い起こす。さらに“Teenage Riot”でSuperchunkやNUMBER GIRLを引き合いに出す明け透けな語り口は、神聖かまってちゃんの“ロックンロールは鳴り止まないっ”を想起させるし、ASIAN KUNG-FU GENERATIONにあった重厚ながら爽快感あるメロディラインや、LOSTAGEのような衝動をぶつけたサウンドも感じるだろう。
さまざまなバンドを例に挙げたが、重要なのはこれらの要素を持ちながらも、全体を俯瞰した時はどれにも当てはまらない点だ。例えば“シャーリーテンプル”における背伸びをしない素直さを持った歌詞は文学的表現をいり混ぜながら、孤独と生々しさを綴ったハヌマーンとはまったく違う。“Teenage Riot”での熱量が高くメロディアスなオルタナティブサウンドは神聖かまってちゃんには存在しない。同時に「背伸びをしない素直さを持った歌詞」と「熱量高くメロディアスなオルタナティブサウンド」はコロブチカの軸でもある。なので先に書いたバンド群の影響は受けていても、この揺らがない部分によって作為的なものをまったく感じないのだ。
何度も言うが、彼らは音楽活動を始めて1年程度である。それでこの仕上がりは「末恐ろしい」と言ってもいい。ゼロ年代から続く邦楽ロックの末裔たちが今を生きる僕らの音楽として昇華させた『ワンダーアラウンド』。 今後、京都を代表するバンドへと成長するであろう彼らの今を体現できる一作だ。
ワンダーアラウンド
アーティスト:コロブチカ
仕様:CD / デジタル
発売:2024年9月2日(CD)
価格:¥1,000(税込)
収録曲
1.シャーリーテンプル
2.ユーズド・ユース
3.酔醒
4.Teenage Riot
5.夜のせい(demo)※CD限定収録
6.ワンダーランド(demo)※CD限定収録
コロブチカ
2022年、立命館大学の音楽サークル『Rock Commune』にて結成。北原圭悟(Vo / Gt)、平田歩(Ba)を中心にサポートメンバーを迎えて京都や大阪をメインに活動中。
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関西インディーズの水先案内人。音楽ライターとして関西のインディーズバンドを中心にレビューやインタビュー、コラムを書いたりしてます。
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