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現代アイヌと若者の交流を描いた短編映画『cupki mawe(チュプキ マウェ)』がYouTubeで公開

MOVIE 2025.02.25 Written By マーガレット 安井

株式会社ロフトワークは北海道釧路市からの委託により、阿寒湖を舞台に現代アイヌ文化の魅力を伝える短編映画『cupki mawe』を制作。2025年2月18日に阿寒湖アイヌコタンの公式YouTubeチャンネルで公開された。

 

本作は、2024年9月に同チャンネルで公開した短編映画『urar suye(ウララ スエ)』の続編。真冬の阿寒湖という厳しくも美しい自然環境の中で、今なおカムイ(アイヌ語で、神)と共にある現代アイヌの姿を見つめながら、生きづらさから抜け出すための“希望の光”を見つける物語である。

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マイナス20度という極限の世界で、空から舞い降りる「ウパシ(アイヌ語で、雪)」が木々を白く染め上げる様子や、結氷した湖の上から見た朝焼けの景色など、冬でしか見られない阿寒湖畔の姿は観る者に自然の雄大さと恐ろしさ、そして自分という命の尊さを感じさせてくれる。

 

また阿寒湖アイヌコタンに住む人々の生活を通じて、アイヌの美術・工芸だけでなく、日常生活や周辺環境を含めた「生きたアイヌ文化」が詰め込まれた作品となっている。

 

監督は前作『urar suye』と同じく十川雅司が務める。

監督・出演者からメッセージ

監督:十川雅司

 

2024年の12月に、夏編『urar suye』の上映会のために阿寒湖を訪れた時、すでに街には雪が積もっていて、金色の冬の光が木々の隙間から差し込んでいました。その光の美しさを見て直感的に、冬編では「光」が重要なモチーフになると思いました。

 

この作品のタイトル『cupki mawe』は「光の気配」という意味ですが、僕がこの映画で一番描きたかったのは、主人公ユカリの人生に差し込む光です。先の見えない将来への不安や戸惑い、焦り。僕自身も常に抱いている気持ちですが、同世代である若い方たちも同じではないかと思いました。だからこそ、この冬編では、どうしても光(希望)を見出したかった。しかし、この難題を前に、脚本は難航しました。そんな中、気づきをくれたのは、阿寒湖の大自然とアイヌ文化、アイヌコタンの方々のお話でした。

 

私たち現代人はつい、インターネットやスマホからの情報ばかりに頼ってしまいます。しかし、本質的なことの多くは、自然から学ぶことができます。そして歴史や人生のことは、他者から学ぶことができます。僕自身、この映画を制作する中で出会った地元の方々からたくさんのことを学びましたし、励まされました。今では、それらが大切な宝物です。

 

本作品では、僕自身が阿寒湖アイヌコタンで受け取った優しさや気づきを、物語に込めさせてもらいました。この物語が、観てくださった方々の人生の光につながることを願っています。

 

プロフィール

徳島県出身。大学で演劇に没頭。卒業後は、映画制作に興味を持ち、深田晃司監督をはじめ、様々な監督のもとで助監督を務め映画づくりを学ぶ。傍ら、精力的に自主映画を監督。『駆け抜けたら、海。』(2023)が国内外22の映画祭にノミネート、賞を受賞。同作品がMIRRORLIAR FILMS season5の一つに選出され、日本全国15スクリーンで劇場公開を達成する。

主演:xiangyu(シャンユー)

 

撮影時の阿寒湖は厳しい冬の真っ只中で、誰もいない森の中や凍った湖の上は、本当に静かで美しく、そのまま飲み込まれてしまいそうな怖さがありました。

 

今まで馴染みのなかったアイヌ語、冬編の撮影では特に触れる機会が多く、なんて響きが美しい言葉なんだ!と思いました。

 

同じ”雪が降る”という表現でも、パラパラの雪なのか、吹雪なのかでも全然違う。その表現の細やかさが私は好きだと思ったし、もっともっと知りたくなりました。

 

何者かになりたくて、どこかに辿り着きたくて必死にもがいてる内に自分がどうやって呼吸していたのか忘れてしまう。この世界の泳ぎ方がどんどんわからなくなってしまう感覚によくなります。

 

でも厳しい冬を乗り越えるためには、無理にジタバタせず流れに身を任せてみることが大切なのだと、阿寒の雄大な自然が教えてくれました。身を任せることは勇気がいるけど、そうやって委ねてみて、肩の力が抜けた時にようやく、アイヌの方々がうたにしていた“ちいさな美しい瞬間”は、気づけるものだと思います。

 

何かに迷った時、いつだって私は阿寒の土地に帰りたい。そんな場所に出会えて心から幸せです。

 

プロフィール

2018年9月からライブ活動開始。 日本の女性ソロアーティスト。読み方はシャンユー。名前は本名が由来となっている。23年11月、gimgigamをサウンドプロデュースに迎えAmapiano、Gqomなどを取り入れ、町に落ちている「落とし物」を題材にしたコンセプトEP『OTO-SHIMONO』をリリース。24年は「遠慮の塊」をテーマに楽曲を制作。“ラスイチのピザ”“ずっといるトマト”ではボルチモアブレイクス、バイレファンキなどを取り入れた新しいサウンドを追求している。また最新曲“宇宙包(feat.Kuro)”ではTAMTAMのKuro(Vo)を迎えたfeat.ソングをリリース。

出演:西田正男

 

アイヌと和人は、ものに対する考え方、捉え方が違う。

 

例えば、和人にとっては川は海がゴールだが、アイヌにとっては海が始まりで、遡り、水が湧き出る湖がゴールになる。

 

氷に対する考え方も違う。和人なら氷は「水が凍ったもの」と考えるし、「氷が溶けると水になる」そう考える。

 

でもアイヌは違う。厳しい寒さの中に生きるアイヌにとっては「凍っていることが当たり前」だから、氷のことを「溶けるもの」と呼ぶ。アイヌにとって、厳しい冬を乗り越えて春が来るのは待ち遠しいことだった。だからこそ、氷が溶けると「春が来る」のだと考える。

 

この映画を通して、多くの人にアイヌと和人の考え方や捉え方の違いに触れ、感じてほしい。

 

アイヌコタンでは、アイヌの考え方や歴史が表現された古式舞踊や演目を行っている。阿寒の自然や、私たちが作ってきた演目を通して、アイヌ文化の真髄に触れてほしい。

 

プロフィール

明治18年釧路からセツリ川上流(現鶴居村)に強制移住させられた西田植吉氏のひ孫にあたり、昭和29年秋の阿寒湖アイヌコタン草創期より、養父秋辺三次郎氏、母カツミ氏のもと、アイヌ文化を生活の中で学ぶ。昭和48年にコタンの家を継ぎ、民芸品店を経営しながら阿寒アイヌ民族文化保存会、阿寒湖アイヌ協会の役員として本格的なアイヌ文化の活動に入る。

 

アイヌ古式舞踊の踊り手、ユーカラ劇の演者、アイヌ民話人形劇の演者などを務め、国内外での公演に積極的に参加。近年は地元のみならず、各地域のカムイノミの司祭主として、わかりやすい口調、所作で後輩への指導にあたり、アイヌ文化の後継者育成と普及啓発に努めアイヌ文化の振興に貢献している。

cupki mawe(チュプキ マウェ)

脚本・編集・監督

十川 雅司

出演

xiangyu / 西田正男 / 山本栄子 / 松田健治 / 秋辺 デボ / Koharu Hiyori / 山本 樹生

プロデューサー

伊達 善行 / 株式会社ロフトワーク

コ・プロデューサー

許 孟慈 / 株式会社ロフトワーク

撮影監督

西岡 空良

URL

https://youtu.be/SC5n7nuqLKk

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