音源を聴き終えて、まるでライブを観た後のような高揚感を覚えた。ニーハオ!!!!の4枚目となるフル・アルバム『FOUR!!!!』は「エモーショナル」という言葉が似合う作品だ。
2000年にツインベース+ドラムの3ピース・バンドとして結成したニーハオ!!!!は2004年、山本精一が主宰するUMMO RECORDSより『RED』、『BLUE』の2枚連作ミニアルバムをリリース。2005年にはJohn Zorn(ジョン・ゾーン)のレーベルTZADIKから1stアルバム『GORGEOUS』、2011年に2ndアルバム『MARVELOUS』を発売する。メンバーチェンジを経て現在は、RED ARIKOとBLUE YUKARI(Limited Express (has gone?) )、YELLOW MIWAKO(ex.THE LET’S GO’s)、PURPLE KAORI(LisaloomeR)の4人で活動している。
ニーハオ!!!!は何者にも束縛されず、初期衝動のまま突き進む。それは本作『FOUR!!!!』でも変わらない。ローファイでざらついた音質を残し、プリミティブで力強いビートと、ノイジーなサウンドが特徴的だ。打算的な楽曲構成ではなく、唐突に拍子が変わることもあるし、“Can’t stop“のように歌詞すらなく一語をひたすら叫ぶナンバーもある。また特殊ロックンローラー、クラーク内藤のトラックを使った“MATSURI-SHAKE”は盆踊りのビートにSkrillex(スクリレックス)のようなワブルベースをバリっと効かせたサウンドで、メンバー全員で「ええじゃないか」のような祝福ムードとあわよくばの期待に胸を膨らませた歌詞が秀逸だ。同じく内藤のトラックを使った“FUTURE”ではトラップ的なビートと、ギターノイズが靄のようにおおいつくすサウンドスケープの中でYUKARIとMIWAKOがラップを披露する。
一言でいってしまえば無秩序だ。盆踊り、ヒップホップ、パンクロック、ノイズといったありとあらゆる音楽をがむしゃらに演奏するニーハオ!!!!がいる。しかもその多種多様な音楽とエモーションを1~2分に凝縮したことで、作品を聴くたびおびただしい熱量がリスナーへと伝播し、目を閉じると暴れながら演奏する姿が瞼の裏に表れるだろう。ではなぜ彼女たちはそんな初期衝動を求めようとするのか。それは「常に自由でありたい」という心の表れではないだろうか。
例えばドラム。今回の作品でもよく聴けばドラムとシンバルが歪な部分が見受けられる。それはドラムパートをフロアタムがYUKARI、スネアとハイハットがARIKOと、メンバーが分担しているからだ。これにより一人で叩くことでは生まれない新鮮なリズムが生み出される。この試みは前作『NO RESPECT』から行っているが、その頃の演奏を聴くと発想的には素晴らしいが、ややドライブ感に欠け、作品内であまり上手く機能していない印象であった。しかし本作では発想が血肉化し、1人のプレイヤーでは出来ない歪ながらも推進力のあるビートが楽しめる。特に『NO RESPECT』と『FOUR!!!!』の両方に収録されている“Can’t stop”をそれぞれ聴き比べると、「ドライブ感が増した」という言葉の意味が分かるはずだ。
では、なぜ彼女たちは自由であろうとするのか。本作のインタビューでYUKARIが「自分たちが自由に生きていくための手段としてニーハオ!!!!という装置を動かしていくような感じが出てきたかもしれない」と語っていたが、だからこそ彼女たちはバンドという固定概念を崩し、「こんな面白いこともありじゃないですか?」を提案するのではないか。14曲でたった24分。彼女たちの初期衝動を魅せるにはジャストの時間設定だし、パンクバンドのライブを見た後のような興奮と胸の高鳴りを体験できる。この作品で誰もが「ライブで彼女達のステージを見たい」と思うに違いない。COVID-19が終息し、いつかライブ行けるようになったときには、ニーハオ!!!!があなたを最高の音楽で出迎えてくれるはずだ。
ニーハオ!!!!『FOUR!!!!』
発売日 : 2020年4月29日(水)
品番 : NHO-002
税抜価格 : 2000円(税別)
発売元 : NI-HAO IS HERE
購入:ゆかり商店
収録曲
1. CHECK ON WEBSITE
2. Whole Life
3. ちょちょちょちょ
4. きみはButterCup
5. う!あ!
6. MATSURI-SHAKE
7. No Time
8. What I want
9. Can’t stop
10. FUTURE
11. My proud
12. 攻撃の要
13. ステラ・ルー
14. SPIDER13
公式Webサイト:https://ni-hao-ni-hao.jimdofree.com/
You May Also Like
WRITER
-
関西インディーズの水先案内人。音楽ライターとして関西のインディーズバンドを中心にレビューやインタビュー、コラムを書いたりしてます。
OTHER POSTS
toyoki123@gmail.com