「複雑さ」すらも味にする、やりたいを貫くオルタナティヴな作品
彼らの音楽は展開が読めない。不協和音・不規則なフレーズ等を盛り込み、何度も転調を行い、時折即興的なギターソロが入る。そんな音楽に対して福田稜大(Vo / Gt)は淡く、アンビエントに溶け込むような歌声で寄り添う。関西を中心に活動をするバンド、Qoodowが今年リリースした1stEP作品『水槽から』。これを聴けば今述べたこともわかるだろう。ポップに慣れ親しんだ人にとっては時に飲み込みづらさすら感じてしまうくらい、予定調和ではない複雑さを感じる音楽だ。
ただ聴くのを止めてしまうくらい複雑かと言われれば、そうではない。確かに彼らの音楽は難解な部分を兼ね備えているが、キャッチーさもあり、メロディアスでもある。例えば“水槽”の冒頭部分や、“徘徊”のラストは思わずアンセムのように声をあげて歌ってしまうような仕上がりだ。“エスパー通り”に関しても不規則なギターフレーズに耳が捕らわれがちではあるが、サビでは耳なじみのいいメロディが顔を出し、テンポ変化や変拍子を使わないなど、キャッチーに作られている部分もある。
彼らの魅力はこの複雑な部分とシンプルでキャッチーなメロディのバランスにある。このバランスの良さは、『OK Computer』のころのRadiohead(レディオヘッド)を彷彿とさせる。複雑さを見せないようにして楽曲をポップに昇華させるバンドはたくさんいる。だが複雑さを見せながら、それを自分たちの音楽の味わいに変化させるバンドはそう多くない。そしてQoodowはその「そう多くないバンド」の一組であることは間違いがない。さらにポップであることを避けて、純粋に自分のやりたいロックを貫くその姿勢は「オルタナティヴ」という言葉がよく似合うバンドだ。
水槽から
アーティスト:Qoodow
仕様:デジタル
発売:2023年3月22日
配信リンク:https://friendship.lnk.to/FromaFishTank
収録曲
1.水槽
2.エスパー通り
3.18:00
4.ドライブイン
5.徘徊
Qoodow
福田稜大(Vo / Gt)、藤岡拓未(Gt)、上河直柔(Ba)の3人にサポートメンバーpyon(Dr)を加えた4人で関西を中心に活動しています。 毒を持ちながら、グッとくる音楽を目指しています。
WRITER
- マーガレット 安井
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関西インディーズの水先案内人。音楽ライターとして関西のインディーズバンドを中心にレビューやインタビュー、コラムを書いたりしてます。
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- 乾 和代
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奈良県出身。京都在住。この街で流れる音楽のことなどを書き留めたい。
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