まちの映画館〈塚口サンサン劇場〉の奮闘を描いたノンフィクション本が発売
大阪と神戸の間、兵庫県尼崎市にある昭和の匂い残る昔ながらの駅前映画館、〈塚口サンサン劇場〉。一時期は閉館寸前だったにもかかわらず、今や全国から人が訪れるこの映画館のこれまでをつづったノンフィクション本『まちの映画館 踊るマサラシネマ』が2024年5月24日に発売された。
〈塚口サンサン劇場〉は映画上映という枠を飛び越えたエンターテイメントを提供する劇場だ。スタッフや観客がステージで踊る。紙吹雪とクラッカーが何キロも消費される。ゾンビメイクをした人が観客を襲う。待合室には見事な段ボールアートが並ぶ。それらの仕掛けは「観客に映画を観てもらうため」という1点に基づいている。なかでもインド映画の応援上映である「マサラ上映」は名物イベントだ。歌って踊って紙吹雪もクラッカーもOKの鑑賞スタイルであるが、〈塚口サンサン劇場〉ではインド映画だけでなく、洋画やアニメまでマサラ上映してしまう。その情熱はまるで大人の文化祭といってもいいだろう。
シネコンに囲まれ、動画配信サービスも続々と登場するなか、知恵をしぼり、とにかく思いついたことは何でもやる。今や全国各地に多くのファンを獲得している映画館、その奮闘が『まちの映画館 踊るマサラシネマ』には収められている。
また本書では著者であるこの映画館の営業スタッフである戸村文彦と〈小林書店〉の小林由美子との対談も掲載。〈小林書店〉は兵庫県尼崎市の立花駅前の商店街にある売り場十坪の小さな本屋で、さまざまな地域とのつながりをつくる催しや、阪神淡路大震災を語り継ぐ活動に取り組むことで多くの人から愛されてきた書店だ。2024年5月いっぱいで惜しまれつつ閉店するが、ドキュメンタリー映画『まちの本屋』(大小田直貴監督)や小説『仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ』(川上徹也著、ポプラ社刊)でも取り上げられ話題となった。まちで生き抜いてきた両者の対談は必見である。
まちの映画館 踊るマサラシネマ
著者:戸村 文彦(塚口サンサン劇場)
サイズ:四六判並製
頁数:208ページ
発刊日:2024年5月24日
ISBN:978-4-908443-41-1
詳細情報・購入はこちらから
http://www.jimotonohon.com/annai/a141_machino_eigakan.html
目次
プロローグ
第一章 閉館までのエンドロールが流れ始めた
第二章 崖っぷちから見えた希望の光
第三章 35ミリフィルムからデジタル化への決断
第四章 映画館という「場所」と、映画鑑賞という「体験」に価値を見出す
第五章 イベント上映は「大人の文化祭」
第六章 「音響」がすべてを変えた
第七章 映画館をテーマパークにする
第八章 最大の強みは人、そして町
第九章 映画鑑賞をショーにする
第十章 映画館がエンターテインメントを作る
第十一章 これまでのすべてを注ぎ込んだ2019年
第十二章 窮地に下を向かず、転機と捉えて上を向くエピローグ
[特別対談]
まちの映画館とまちの本屋さん
どっちも癖のもん、朝ごはんをたべるように来てほしい
塚口サンサン劇場 戸村文彦 × 小林書店 小林由美子
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関西インディーズの水先案内人。音楽ライターとして関西のインディーズバンドを中心にレビューやインタビュー、コラムを書いたりしてます。
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