REVIEW
down in the valley
秘密のミーニーズ
MUSIC 2021.07.08 Written By 峯 大貴

和製ウエスト・コーストの姿勢は到達点を迎えて、その先へ

多層的なコーラスワークを武器とし、いなたさのあるウエスト・コースト・サウンドを現代的に解釈した日本語ロックを展開するバンド・秘密のミーニーズ。1stフル・アルバム『It’s no secret』(2017年)の発表以降、大瀧詠一のトリビュート・アルバムへの参加(2018年)や、菅野みち子(Vo / Gt)のソロ・アルバム『銀杏並木』(2020年)のリリースを経て、3年9か月ぶりに発表されたのが5曲入りEPの本作だ。

 

ここには菅野・渡辺たもつ(Vo / Gt)と共にミーニーズの看板である三声コーラスを担っていた淡路遼もいなければ、キーボードとして支えてきたサポートの藤木コージ(現ヨットヘヴン)もいない。残された5人で次の指針に向かっていった轍を記録したような作品だ。

 

その象徴が冒頭を飾る“フォーク、ブルース&リバイバル”。ミーニーズのこれまでの姿勢を潔くも大胆に記すタイトルで、「クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング(CSN&Y)」のもじりも、「クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(CCR)」への目線も感じられる。グイッとLに定位を寄せたあまりに硬質なアコギのストロークから始まり、菅野と渡辺、そして淡路に代わって青木利文(Gt)がソロパートもなしに全編三声で歌い切る。その構成には明確な“Carry On”(CSN&Y)からの参照を感じつつも、音像はオルタナティブ・ロックに近い迫力を感じるのだ。また最後の約1分半に渡るサイケデリックなジャムセッション・パートも含めて、これまでのミーニーズの魅力を全て発揮したようなクロニクルであり、10年間の活動を通して叩き出した到達点と言えるだろう。

 

しかしその後の4曲は一転、菅野が3曲・渡辺が1曲でボーカルをとり三声のコーラスも出てこなければ、ダイナミックなソロパートも控えめ。歌の物語やパーソナリティを際立たせるような、普遍性を求めたオーセンティックなアレンジにいずれも舵を切っている。中でも“走るあなたの光”は菅野の『銀杏並木』収録曲のミーニーズ版。原曲は Joni Mitchell 由来の軽やかなテンポとフォーキーなサウンドだったが、こちらでは雄大で落ち着いたアレンジに様変わり。菅野の伸びやかな声も相まって、晴れやかだがどこか寂寥感が滲む印象だ。菅野ソロの手ごたえがバンドにも影響しており、「和製ウエスト・コースト」という当初のコンセプトの先を行く視座が感じられる。

じっくり作り込まれた謹製の5曲と言うべき充実っぷり。「ここからミーニーズは新たな地平へ!」と期待をかけたいところだが、本作を持って菅野が音楽活動休止。またここから新たな模索が彼らには待ち受けている。またアートワークはこれまで1stミニ・アルバムの増補盤『おはなフェスタ〜past masters〜 』(2018年)で THE BAND の『MOONDOG MATINEE』、『It’s no secret』で Neil Young の『On the Beach(渚にて)』と名盤にオマージュを捧げてきた。本作では過去ほどあからさまな引用は感じられないが、丘を描いたイラストを眺めて筆者が思い浮かんだのは Brian Wilson と Van Dyke Parks の共作アルバム『Orange Crate Art』。Van Dyke は The Beach Boys の『SMiLE』にも参加してしており、長らくの時を経て久々に再度コラボレーションを果たした作品だ。ここにはいつか時が来たらまた一緒に音楽を、という菅野への餞が込められている……と考えるのは深読みのしすぎだろうか。

down in the valley

 

アーティスト:秘密のミーニーズ
仕様:CD
発売:2021年6月23日
価格:¥1,800(税込)

 

収録曲

1.フォーク、ブルース&リバイバル

2.まちぼうけ

3.マスト灯

4.やさしいことば

5.走るあなたの光

 

Webサイト:https://secretmeanies.jimdofree.com/

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