INTERVIEW

歌うたいは人たらし。小野雄大が仲間と共に自分の歌を見つけるまでの道程

MUSIC 2023.08.22 Written By 峯 大貴

ひとたび声を発した瞬間ただモノではないことを直感する圧倒的な歌唱力と、そこに相対するような卑近で大らかで時折しみったれた生活感のある歌詞が、聴く者の心をわしづかみにする、人たらしの歌うたい。シンガーソングライター小野雄大の魅力を端的に言い当てるとしたらこんなところだろうか。

 

東京・神奈川が拠点ではあるが、ライブハウスだけではなく、カフェ、公民館、教会、路上、農園などなど「聴いてもらえる人との関わり、繋がりこそが力の源泉」と言わんばかりの姿勢で全国各地に赴き、歌を轟かせている。中でも出身地である新潟とのつながりは深く、国内最古の映画館の一つである上越市〈高田世界館〉での公演を3年連続で開催したり、地元を巻き込んでの主催イベントも精力的だ。

 

普段は弾き語りの活動が主体ではあるが、2020年に発表した1stフルアルバム『素粒子たち』の制作からband setが始動。アレンジャー / プロデューサーにトランペット奏者 山田丈造(Tp / Flugelhorn)を迎え、小野のために山田が声をかけた腕利きの同世代ミュージシャンたちが集結している。

 

その前後には活動してきた4人組男女混成アコースティックバンドうたたねを解散、また音楽だけで生きていくとサラリーマンも辞めた。band setという新たな武器を携え、新たな決意で邁進してきたのがここ3年半ほどのソロ活動なのである。

 

今年はband setで初の東名阪ツアーを実施。そして、この編成でレコーディングした楽曲も収録されている2ndミニアルバム『あこがれGOLDEN』も完成した。小野が歌い手として今どんなことを意識して活動しているのか、また徐々にライブ活動も精力的になっているband setにどんな手ごたえを感じているのかを訊くタイミングは今だと直感した。

 

そこで今回、急遽実現したインタビューでは小野雄大と共に、ここ数年活動を共にしている山田丈造にも同席してもらった。小野が取材場所に指定したのは東急電鉄東横線白楽駅すぐ近くの喫茶店〈Café doudou〉。せっかくだからとまずは町を歩いてみることから始めることに。各駅停車のみの風情ある下町だが、新潟での活動も熱心である彼の町に根を張る意識がうかがえた気がした。

 

写真:umihayato

ヤミ市に札幌遠征、band setの絆を強くした濃密なライブ経験

──

この場所にはどんな所縁があるのでしょうか?

小野雄大(以下、雄大)

サラリーマンをしていたころは東京に住んでいたんですけど、2019年末に辞めて、このあたりに引っ越してきました。そもそもは通っていた神奈川大学のキャンパスの最寄りが白楽駅で、大学生の頃から〈Café doudou〉にはお世話になっています。うたたね時代にも何度か弾き語りライブをさせてもらったり、今度自分の個展もここで開く予定。

──

商店街の雰囲気もすごくいいですね。

雄大

六角橋商店街は戦後から闇市として栄えていて、今も4月から10月に月1回『ドッキリヤミ市場』というライブやフリーマーケットが開かれるイベントで盛り上がっている。ここの商店街連合会会長はインタビューでも「東横線の中でも横浜、自由が丘、代官山とかオシャレでハイソな街には勝てないから、一番下を目指した」と話していて、エアスポット的に下町感が残っているんです。

──

そのヤミ市には雄大さんも今年5月に出演されていました。YouTubeで動画を観ることができますが、異様な盛り上がりで。

雄大

そうそう。盛り上がった~。いつもヤミ市を楽しみにしている人や、知らずに飲みに来た人、通りすがりの人もいっぱい集まってくれました。次の日また商店街にお礼がてら飲みに行ったら「昨日歌ってた人ですよね?めっちゃよかったっす!」なんていろんな人から声かけられたり、うれしかったですね。町の人が元気で、俺の話もいろいろ受け入れてくれるから、自分もここでイベントやれたらいいなと今考えています。アーケードの中でぽつぽつとミュージシャンがいて、町歩きしながら気になったら足を止めてもらうような投げ銭形式の町フェス。

──

この時もband setでのライブでしたが、8〜9月には東名阪ツアーも開催されます。今年はこの編成での活動が精力的ですね。

雄大

小野雄大band setが始動したのはアルバム『素粒子たち』(2020年)を作るタイミングからだったけど、コロナもあってなかなか東京以外ではライブができなくて。今回ようやくこのメンバーでツアーができるようになりました。


Apple Musicはこちら

小野雄大(Vo / Gt)、山田丈造(Tp / Flugelhorn)
──

去年の11月の札幌ライブもバンドでやっていましたよね?

雄大

それがband setとしては初めての遠征。短い期間だったけど、みんなで一緒に行動を共にした濃密な時間でしたね。

山田丈造(以下、丈造)

僕が札幌出身なので、地元のライブハウス〈Live&Dining JAMUSICA〉のオーナーに相談して決まった2デイズのワンマンライブだったんですけど、もうトラブル続出。現地に着いてからお店の方の事情でどうしても1日目を中止にせざるを得なくて。初雪が降るくらいの時期の札幌・大通公園で急遽路上ライブになった(笑)

雄大

めっちゃ寒かったし、アンプはあったけどマイクスタンドがないから、みんなが交代で俺のマイクをずっと持ってくれてて。

丈造

band setのメンバーの中で僕とタイヘイ(Dr)と井上惇志(Key / showmore)の3人がサポートしているZINが〈Zepp Sapporo〉のライブで札幌にいたから、「まだ残る!」と言ってDJのFKD(Yuki Fukuda)を連れてこっちに来たり。ポートランドに住んでいるクリエイティブディレクターのUNOちゃんも、演出を手掛けている舞台が阿寒でやっていたタイミングだったので「みんながいるなら!」つって、阿寒でタデクイってバンドをやっている下倉幹人を連れて札幌までやってくる。

──

緊急事態にたまたま北海道にいた仲間たちがどんどん集結してくると。

雄大

おかげで結構お客さんも集まってくれて盛り上がったんですよ。これはもう翌日のライブは2日間を凝縮したライブにしなければと思って、結局4時間くらいやってた。もう途中からゾーンに入って、全く疲れも来ないし、ずっと歌い続けられる不思議な日でしたね。

丈造

俺とタイヘイが「一回締めよ!」って言わなかったら、終わらなかったと思う。

雄大

最後の方にはZINくんや幹人にも歌ってもらって、本当に全部終わったのは深夜1時くらい(笑)。お客さんにはちゃんと二日分満足してもらいたかったんですよね。

母校の生徒と作り上げた特別な楽曲“あこがれ”

──

今回の東名阪ツアーと同じタイミングで新ミニアルバム『あこがれGOLDEN』を発表されますが、かなり突然発表しましたよね?

雄大

今回、ツアーの計画を進めて行く中で「これは新作もいけんじゃね?ミニアルバムを引っ提げたレコ発にしてしまおう!」という話になりました。だから4月に決まって、急ピッチで曲作りとバンドとのアレンジ、そして5月にレコーディング。

──

作品の方向性やコンセプトはありましたか?

雄大

元々の想定では“GOLDEN”をリードトラックとした8曲の想定だったんですが、6月にしっかりとした背景やストーリーがある“あこがれ”という曲ができてしまったので、急遽加えた全9曲になりました。だからタイトルは『あこがれGOLDEN』。

──

“あこがれ”はどのようにできたんですか?

雄大

6月に自分の地元、新潟市江南区で『陽緑帯』というイベントをやりまして。会場の〈酒屋町民乃家〉は小さい頃から地域の集まりとかで通っていた公民館。せっかくだから母校の両川中学校の生徒たちにも観てもらいたいと校長先生に伝えたら、ライブしに来るだけじゃなくて、総合学習として卒業生の立場から話をしてくれないかとお願いされたんです。

 

全校生徒が50人くらいの小さな学校なんですけど、俺に何ができるか考えた時にやっぱり音楽を通して生徒さんたちと一緒に何かやりたいなと。そこで3年生が19人いるから「両川のいいところは?」「嫌いなところは?」「いつか地元を離れたいと思っている?」「こんな町になったらいいなと思うことはある?」みたいなアンケートに答えてもらって、集まった回答から曲を作るというワークショップをすることにしました。さらにバンドメンバーにはその場で曲を聴いてもらって、アレンジして曲が完成するまでの過程も見てもらう。

──

おもしろそう!そのワークショップでどんなことを伝えたかったのでしょう?

雄大

みんなで一つのものを作ることとか、自分が出した意見が音楽という表現になる感覚を体験してもらえたらいいなと思った。自分が音楽を好きになったのがちょうど中学の頃で。やりたいと思ったけど、周りに環境がなくて、バンドがどういうものなのかすらわからなかった。だから生演奏を味わう機会は高校生になってライブハウスに行くようになってから。もっと前から身近に音楽に触れられるきっかけや環境があればよかったなとずっと思ってきました。だから自分が地元に今してあげられるとしたら、ドカンとband setでライブをするということと、その中で一緒に形にした曲を披露することなんじゃないかなと。

──

生徒さんたちの回答からどんなインスピレーションを受けて、曲を作りましたか?

雄大

アンケートを読むと、自分が中学生だった当時に感じていたこととあんまり変わらなかったんです。「自然が豊かで夕陽がきれい」「地域の人との交流が深い」「人が少ない」「もっといろんなお店がほしい」……そんな地元の風景と生徒たちの気持ちと、自分の当時の気持ちを重ねながら作りました。

丈造

町について歌っている詞なんですけど、サビの最後が1番は「ただ、今、キライ」で、2番は「教えて未来」で韻を踏んでいる。最初に聴いた時にグサッと来ました。当日はまず、雄大くんの“あこがれ”の弾き語りをメンバーが生徒たちと同じタイミングで聴いて、バンドアレンジにしていったんですけど、もう一撃でできちゃった。

雄大

メンバーが優秀過ぎて、途中式なしで答えが出てしまった(笑)。ワークショップが15分で終わっちゃって。

丈造

これしか考えられないようなストレートな曲だったから。その後の質問コーナー長くしたもんね。「本当にみなさん、初めて聴いたんですか?」「どうやって今出来たんですか?」ってずっと聞かれた(笑)

雄大

その後のライブ本番でも完成したばかりのこの曲を披露して、その時ワークショップに参加した生徒の中から有志でステージに上がってもらって一緒に歌ったんだよね。

丈造

本編最後に演奏したんだけど、もうメンバー全員グッときちゃって。演奏終わったら速攻で楽屋引っ込んで、あんなに泣いたの久しぶりってくらい号泣した。みんながこんな一所懸命に歌ってくれるなんて。

雄大

今ここに住んでいるみんなの気持ちをそのまま歌っている当事者性というか、この曲のパワーが倍増されて俺たちに返ってきた。

丈造

聴いてくれているおじいちゃん、おばあちゃんの様子もすごくよかったんだよ。表拍でしてくれる手拍子の感じも含めて。

雄大

自分たちが地元に何をしてあげられるだろうという考えが、なんとおこがましいことだと気づいた。今後の自分の活動にも影響されるくらい忘れられない日になったから、“あこがれ”はどうしてもこのタイミングで作品に入れたかったんです。

小野雄大の歌を信じてプロミュージシャンたちが集う「もう一回青春できるバンド」

──

band setのアレンジはどのように進めているのでしょうか?

雄大

band setのアレンジは全体的に丈造頼りですね。これは『素粒子たち』から変わらない。

丈造

でも『素粒子たち』の頃、雄大くんはまだ譜面が書けなかった。だからコードを押さえている手元を見て、僕が譜面に落としていたからイニシアチブを取ることが多かったんですけど、今は雄大くんがバンドでやるイメージも含めて譜面で共有してくれるようにもなったので、仕事量は相対的に少なくなりました。だからコードの整理とパートごとの役割分担くらいですね。

──

band setの演奏が収録されているのは『素粒子たち』、『くしゃくしゃに笑えベイビー!』に続いて3作目ですが、新たなトライアルはありましたか?

丈造

“GOLDEN”は今までとかなりやり方が違います。ここのプログラミングアレンジはタイヘイが仕切ってくれました。前作に収録された“無敵”とコード進行やリズムのテイストが近かったから大胆に変えようと相談して、ドラムはラストのバンドサウンドになるところまでは打ち込み。トランペットも一音ずつレコーディングしたものを繋ぎ合わせて、キーボードも2小節で切ったフレーズをループさせています。だから雄大くんの歌と三嶋(大輝)のベースだけが生音。パキっとした打ち込みのトラックの中でウッドベースだけが生き生きしている歪な感じがおもしろいサウンドになったと思います。


Apple Musicはこちら

──

山田さんはShunské G & The PeasやMAZIWARISとしての活動や、トランペット奏者として玉置浩二、あいみょん、SIRUPなどのライブ・レコーディングサポートなど様々なプロジェクトに参加されています。他のみなさんも多方面で活躍されているツワモノ揃いですが、小野雄大band setに取り組む上で他との違いを感じる部分はありますか?

丈造

メンバー全員が一応ミュージシャンとして生活していますし、僕が声をかけた人たちなので、互いのプレイヤーとしての個性も理解している。だから今更一から練習することはないし、“あこがれ”も一撃でできちゃう。でも他の仕事とはなんかちょっと違って……なんと言うか、同世代たちが集まってもう一回青春できるバンドなんですよ(笑)。全員小野雄大が素晴らしいシンガーソングライターだと信じて集まっているというのがデカい。だから札幌の路上でバカみたいに盛り上がるし、生徒たちが歌う“あこがれ”で号泣してしまう。一緒に熱くなれる兄弟、家族みたいな感覚になりつつありますね。

──

バンマス、アレンジャーとして雄大さんをこうしていきたいという狙いなどあります?

丈造

うーん……ないです(笑)。一回生で歌を聴いてもらえれば、並大抵のシンガーと積んでいるエンジンが違うことはわかってもらえる。トゥーマッチなくらいにガツンと来る人じゃないですか。だからバンドサウンドに落とし込む時のサポートをするまでです。

 

しいて言うならたまにブレるというか、歌が変になる時があるから、ちゃんと言うくらいですね。ストレートにいい歌を歌うことが難しいからみんな色んな工夫をするんですよ。雄大くんは真っすぐ165キロの剛速球が投げられる人なのに、たまに変な変化球を取り入れたりすることがあるので「この曲はその歌い方じゃないんじゃない?」と。

雄大

『くしゃくしゃに笑えベイビー!』のレコーディングの時、「なにそれ気持ち悪い」って言われた。自分では新しいテクニックを試して、また歌の表現が広がったと思っていたんですけどね(笑)。でもそうやって指摘してくれるおかげで、今回の歌のレコーディングは今までで一番楽しかったんですよ。普通にやればいいんだと気づいて肩の力を抜いてやれたし、初めて自分の歌を歌えた感覚。

丈造

ようやく気付いてもらえた。表現力は技術だけじゃなくて、その人のバックボーンや持っているストーリーも重要だから、この一年で色んなところでライブをしたり、自分たちband setとも一緒に過ごす機会が増えて、経験値が上がったんだと思います。

小野雄大弾き語り vs 小野雄大band set

──

『あこがれGOLDEN』にはband setでのレコーディングと弾き語り、どちらも収録されています。この振り分けの基準みたいなものってあるのでしょうか?

雄大

band setのメンバーにまず弾き語りを聴かせてみて、「イェー」って反応が来たらそのまま弾き語りでいく。

──

もうちょっと具体的にできます?(笑)

雄大

んんー……。『素粒子たち』の頃はバンドでやれることがうれしかったし、できることなら全部バンドアレンジがいいと思っていた。でも去年と今年、『小野雄大vs小野雄大band set』というライブをやったことで、弾き語りとband setでうまく分かれたような感覚があるというか。この曲はバンドセットよりも弾き語りの方が力を発揮できるんじゃないかというのが出てきたんですよね。

──

普段の弾き語りに対してバンドが上位概念としてプラスオンされるのではなく、それぞれ別の強みを持った対となるアウトプットになったような。

雄大

そうそう。だから『くしゃくしゃに笑えベイビー!』からは曲によってband setか弾き語りを使い分けるようになっていて。

丈造

本作でも“魂の夜明け”は勢いが凄すぎるから、多少荒いけど弾き語りのライブ音源をそのまま収録していますし、“光源”も自在にタイムが揺れていて、そこに歌が乗ることで合間に絶妙なフェイクが入ったりする。この揺らぎの部分がバンドだと制御されちゃうので、弾き語りだからこそできる表現になっているんですよね。

 

だから“ラブモーション”とか“GOLDEN”みたいなバンドアレンジに小野雄大という稀代のボーカリストが入ってもらう曲と、“あこがれ”のような小野雄大の弾き語りをバンドが補強する曲と、“魂の夜明け”みたいなバンドが入らず弾き語りだけの方がいい曲、3パターンあるような感覚です。

雄大

“体温”はバンドと弾き語り、どっちもよさが出せるから最後に(unplugged)として弾き語りverも収録しました。今回はアルバムに向けて短期間でアレンジした曲ばかりで、band setではライブでやったことない曲がほとんど。また新潟とか、いろんなところでライブしながら馴染んでいくんだと思います。

「伝達速度の遅さ」と「つながりの太さ」を武器に小野雄大は死ぬまで歌う

──

新潟で生まれた“あこがれ”の話もありましたが、国内最古の映画館の一つである上越市〈高田世界館〉での最終公演を中心に据えた『IMARGINE』ツアーを2020年から毎年続けているなど、地元での活動を大切にされている印象があります。ここ白楽でも何かやろうとされていることも含め、ローカルな視点について意識していることはありますか?

雄大

コロナの影響で遅れてはいるけど、サラリーマンを辞めて音楽に絞ることを決めた時から、関東と新潟2軸での活動は確かに考えていて。故郷があることはすごくありがたいし、新潟でもっと活動したいし、仲間を見つけたい。自分が新潟にいたころは音楽をやっている人が周りに少なくて、大学からは関東だけど卒業したら会社に就職するのが当たり前。音楽は趣味で続けられたらいいなという考えで生きてきた。でも30歳が近づくにつれて「これでいいのか?」という想いが爆発しそうになって脱サラして、4年目を迎えました。もし新潟にいる下の世代で悩んでいる人がいたら「俺もなんとかやってるから大丈夫だよ」って道を作っておきたいんですよね。

──

音楽で生きていくという選択肢が持ちえない環境をなんとかしたいということですね。

雄大

そう。だから数年前に地元のアーティストを自分のイベントのオープニングアクトで出てもらったり、東京に呼んで機会を作ったり、支援しようとしたこともあったんだけど、あんまりうまくいかなくて。そもそもそういう人を育てるためには、文化的に盛り上がっているコミュニティや場所が新潟にもっとたくさん必要なんだと思います。その考えが今回の『陽緑帯』にもつながっていて、まずは自分が地元でイベントをやって、その日だけでも現地の人を巻き込んで盛り上がれる場所を作っていく。これは継続的にやっていきたいと思っています。

──

その地元に対する考え方も含めて、雄大さんは自身の音楽の広がり方にも理想や狙いがあるのではないかと思っていて。これほど類まれな歌い手でありながら、いわゆるオーバーグラウンドを目指していく姿勢とちょっと違って、大きな資本を頼らず人と交流しながら自分の幅を広げているように思っているのですが、いかがでしょうか?

雄大

このband setを始めたころは、仕事も辞めて「これからやっていくぞ」というタイミングでコロナもあったし、売れるためにはどうしたらいいかすごく考えていた。でも丈造やタイヘイは「ゆっくりで大丈夫だから」ってスタンスだから、最初意見が合わない時期も正直あって。

丈造

サポートの仕事を通して爆発的にブレイクしたアーティストやバンドも見てきましたけど、雄大くんの凄さは売れる、バズるとかじゃないんですよね。死ぬまで歌っててほしい人だから、全然急がなくていい。

雄大

その意味がちょっと前までわからなかったんです。でも最近は自分の音楽の伝達速度の遅さを気に入っている(笑)。ちょっとずつ弾き語りでツアーできる状況になってきて、各土地の会場に来てくれた一人一人と話しながらお酒飲みながら、ライブを続けていると、ちゃんと広がっているんですよ。ペースこそゆっくりだけど、一度関わってくれた人の熱量が本当に高くて広めてくれてるなって感じる。そういう機会が増えてくると今やっていることは最高なんだって思えるし、ようやく丈造たちが言っていることも咀嚼できるようになってきた。

丈造

「伝達速度の遅さ」と言いましたけど「つながりの太さ」とも言い換えられると思います。こんなに一度出会えば仲良くなっている人、なんかあった時に手を貸したくなる人いないんですよね。だからずっと今の感じで“金があったら”とか、「一度は売れてみたいな 飛び切りのファンサしたいな」(“光源”)みたいな曲を歌っててほしいんですよね(笑)

雄大

最近メンバーは「売れてほしいけど、売れてほしくない」とか言うんですよ。いや、俺は売れたい気持ちでずっとやっていますからね!

あこがれGOLDEN

 

アーティスト:小野雄大

仕様:CD

発売:2023年8月18日

価格:¥2,500(税抜)

※300枚限定

※CD取扱はライブ会場のみ

 

収録曲

1.あこがれ
2.アンブレラ
3.魂の夜明け
4.ラブモーション
5.体温
6.理由
7.光源
8.GOLDEN
9.体温(unplugged)

WRITER

RECENT POST

COLUMN
【2024年4月】今、東京のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト
REPORT
台湾インディーバンド3組に聞く、オリジナリティの育み方『浮現祭 Emerge Fest 2024』レ…
REPORT
観音廟の真向かいで最先端のジャズを。音楽と台中の生活が肩を寄せ合う『浮現祭 Emerge Fest …
INTERVIEW
孤独な青年の思春期が終わった、 LAIKA DAY DREAMなりのグランジ作品『Shun Ka S…
REVIEW
この先鋭的なバンドサウンドは、2020年代の京都音楽シーンを代表する-YUNOWA『Phantom』
INTERVIEW
Ribet townsは12人組プロジェクトチーム!? 現代社会を楽しく生き抜く処世術を歌う、新作に…
REVIEW
松井文『窓から』-歌い手としての自分を見つめ直した、3枚目の1stアルバム
REVIEW
畠山拓郎“September”-KANの遺伝子も感じるニューポップスターによるソウルバラード
REPORT
発令!アジアに向けた日本からの開国宣言-BiKN shibuya 2023 クロスレポートNo.1
INTERVIEW
「日本とアジアを混ぜっ返すんだ!」アジアン・ショーケース『BiKN shibuya』に至る衝動
REVIEW
劇伴音楽を経て、本格的にバンドとなったロマンたっぷりのロックサウンド-KiQ『空想』
INTERVIEW
「おせっかい」な京都のスタジオ、マザーシップ。エンジニア野村智仁が語る、人付きあいと音作り
REVIEW
Tocago『Wonder』- 沖ちづるの音楽にかける熱意に再び火が灯るまで
COLUMN
〈Penguinmarket Records〉作品ガイド
INTERVIEW
「Music has no borders」を掲げ、京都から世界へ-Penguinmarket Re…
REVIEW
多様な可能性のごった煮状態という意味での“GUMBO”- 砂の壁『GUMBO』
INTERVIEW
ソー・バッド・レビューから続く道。 シンガーソングライター&ピアニスト / 翻訳家 チャールズ清水…
REPORT
『春一番 2023』後編 ー 平和を夢見る福岡風太が仕掛けた、音楽による革命の実験場
REPORT
『春一番 2023』前編 ー 「祝」でも「終」でもない、大阪名物野外コンサートのゆくえ
INTERVIEW
「大阪を代表するバンドになりたい」ショーウエムラ(アフターアワーズ)が語る、地元に育てられたバンドマ…
REVIEW
生活の設計『季節のつかまえ方』 ー 「自分の音楽ってこれかも!」と辿り着いた喫茶ロック作品
REVIEW
屋敷『仮眠』 – のんびりとした虚無感、幻想的だが後味の悪さもある、積層的なフォーク作品
REVIEW
FALL ASLEEP#3 全曲レビュー
REVIEW
幽体コミュニケーションズ『巡礼する季語』 – 言葉とサウンドをコラージュ的に組み合わせ、季節を描く京…
INTERVIEW
スーパーノアが語る、『ぬくもりはたしかに』に込めたリズムと歌の最適解
INTERVIEW
年鑑 石指拓朗 2022-世田谷ほっつき歩き編
REVIEW
Eri Nagami『ど​ち​ら​か​と​い​う​と​そ​う​思​う(Moderately Agre…
REVIEW
岡林風穂『刺激的な昼下がり』 – 岐阜拠点のシンガーによる、こそばゆい刺激に惹きつけられる作品
REPORT
ボロフェスタ2022 Day4(11/6)- クリープハイプ、リベンジ。過去2年を取り戻す気概の最終…
INTERVIEW
マーライオン、変わる!-もっとみんなに喜ばれる音楽をつくるための模索と研鑽
INTERVIEW
生活は変われど、再び日々を鳴らし始めた路地の『KOURO』
REVIEW
ヨットヘヴン『健康快樂』 – 今を楽しく生きようとする生活者の歌
REVIEW
ガリザベン『ほっぺのかんじ』 – シャイとユーモア、関西に息づくブルースが香り立つうた
COLUMN
たけとんぼ 平松稜大・きむらさとしに影響を与えたアルバム5選
INTERVIEW
伝道と更新を目指すアコースティック・サウンド – たけとんぼインタビュー
REVIEW
kiss the gambler “ベルリンの森” – 自分の心の居場所はどこにある?
REVIEW
KiQ『FuU』ー多彩な仲間と共に漂着した、退屈な日々を彩るフォーク・ロック
INTERVIEW
音楽のアーキビスト、金野篤が体現する「売りたいモノは自分で作る」という生き方
REVIEW
kiss the gambler “台風のあとで” – 折り合いのつかない喪失感を歌う素直さに胸が打…
INTERVIEW
大石晴子が探る、これからの生きていく道とは ー『脈光』インタビュー&全曲解説
REVIEW
伏見◎Project “Dawn-town” – 京都伏見を冠するニュー・コンボによるムーディーな楽…
REVIEW
みらん『Ducky』 – 22歳の今しか表現できないことを歌っている、理想的なデビュー作
REVIEW
徳永憲『今バリアしてたもん』何重にもねじれたユーモアが満載、歌とアコギが主体の12作目
REVIEW
国でも建てるつもりなのか – グッナイ小形
REVIEW
NEKOSOGI – NEKOSOGI
REVIEW
たまき – 門脇沢庵
REVIEW
夢の日々 – ミチノヒ
COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる2021年の5曲 Part.2
COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる2021年の5曲 Part.1
INTERVIEW
年鑑 石指拓朗 2021-武蔵野散歩編
REVIEW
FALL ASLEEP#2 全曲レビュー
INTERVIEW
ぶっちゃけ上京ってどう?-ベランダ×ギリシャラブ×Crispy Camera Club 京都発・東京…
INTERVIEW
いちやなぎとひらまつ-平成6年生まれ、ウマが合う歌い手の2人
COLUMN
「シーン」から「モード」に移ろいゆく – 京都音楽私的大全
REPORT
峯大貴が見たボロフェスタ2021 Day3 – 2021.10.31
REPORT
峯大貴が見たボロフェスタ2021 Day2 – 2021.10.30
COLUMN
“ニュー・ニート”ゆうやけしはすが目論む、ローカルから興すロック・ルネッサンス
INTERVIEW
グローバルな視野を持って、ローカルから発信するーリクオが『リクオ&ピアノ2』で打ち出す連帯の姿勢
REVIEW
ズカイ – たくさん願い溢れて
INTERVIEW
みらんと話した日ー兵庫在住シンガー・ソングライターによる互いの気持ちを尊重する歌を探る
INTERVIEW
つくるひとが二人、はみ出す創作を語る-井戸健人×畠山健嗣 対談
REVIEW
秘密のミーニーズ – down in the valley
REVIEW
ラッキーオールドサン – うすらい
COLUMN
ご当地ソングからはみ出る方言詞|テーマで読み解く現代の歌詞
REVIEW
ベルマインツ – MOUNTAIN
INTERVIEW
もどかしくもシンプルを求めトガっていく。シャンモニカが語る『トゲトゲぽっぷ』
INTERVIEW
シンガーソングライターという自覚の芽生え – ぎがもえかインタビュー
REVIEW
たけとんぼ – 春はまだか / 旅の前
REVIEW
いちやなぎ – album
REVIEW
ショーウエムラ – 大阪の犬
INTERVIEW
2020年をポジティブに転化するために - 中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)が語る新作『ハビタブ…
REVIEW
かさねぎリストバンド – 踊れる
COLUMN
従来のイメージを跳ね返す、日本のフォークの変革 - 『#JAPANESE NEWEST FOLK』前…
INTERVIEW
年鑑 石指拓朗 2020
COLUMN
編集部員が選ぶ2020年ベスト記事
COLUMN
〈NEWFOLK〉作品ガイド
INTERVIEW
音楽のすそ野を広げる、影の歌の送り手 - 〈NEWFOLK〉主宰 須藤朋寿インタビュー
INTERVIEW
自分の言葉を持つ人の歌が、心に入ってくる - 浮(BUOY) インタビュー
REVIEW
クララズ – 台風18号
INTERVIEW
“2023”で次の扉を開いた3人のハイライト – ベルマインツ インタビュー
REVIEW
岡林信康 – 岡林信康アルバム第二集 見るまえに跳べ
REVIEW
田中ヤコブ – おさきにどうぞ
REVIEW
上田正樹と有山淳司 – ぼちぼちいこか
REVIEW
ザ・ディランⅡ – きのうの思い出に別れをつげるんだもの
REVIEW
Bagus! – 恋はうたかた
REVIEW
ベルマインツ – ハイライトシーン
REVIEW
ヤユヨ – ヤユヨ
INTERVIEW
清水煩悩との雑談(後編)– 天川村から新たな船出『IN,I’M PRAY SUN』
REVIEW
小野雄大 – 素粒子たち
INTERVIEW
覚悟が決まった第二章 – Easycome『レイドバック』インタビュー
INTERVIEW
生きている日が歌になる – ダイバーキリン『その美しさに涙が出る』インタビュー
REVIEW
のろしレコード – のろし
REVIEW
松井文 – ひっこし
REVIEW
gnkosaiBAND – 吸いきれない
REVIEW
イハラカンタロウ – C
REVIEW
折坂悠太 – トーチ
REVIEW
西洋彦 – fragments
REVIEW
クララズ – アメリカン
REVIEW
阿佐ヶ谷ロマンティクス – 独り言
REVIEW
平賀さち枝とホームカミングス – かがやき / New Song
REVIEW
TATEANAS-縄文人に相談だ/君と土偶と海岸で
REVIEW
ズカイ – 毎日が長すぎて
INTERVIEW
30代になった酩酊シンガーてらがRibet townsと鳴らす家族の歌
INTERVIEW
年鑑 石指拓朗 2019-『ナイトサークル』リリースインタビュー
INTERVIEW
年鑑 石指拓朗 2018
REPORT
峯大貴が見たボロフェスタ2019 3日目
INTERVIEW
キタが語る、オルタナティヴ・バンドthanの正史ー2ndアルバム『LINES』リリース・インタビュー
REPORT
峯大貴が見たボロフェスタ2019 2日目
REPORT
峯大貴が見たボロフェスタ2019 1日目
INTERVIEW
はちゃめちゃなエンタテインメントがやりたいーチャンポンタウン“Giant step”リリース・インタ…
INTERVIEW
3人で歌の本質を確かめる場所―のろしレコード(松井文、夜久一、折坂悠太)『OOPTH』リリース・イン…
INTERVIEW
清水煩悩との雑談(前編)-新MV“まほう”・“リリィ”を公開&クラウドファンディング始動
REVIEW
アフターアワーズ – ヘラヘラep / ガタガタep
REVIEW
河内宙夢&イマジナリーフレンズ – 河内宙夢&イマジナリーフレンズ
INTERVIEW
休日に音楽を続ける人たちのドキュメント-松ノ葉楽団3rdアルバム『Holiday』リリースインタビュ…
INTERVIEW
日常に散らばった、ささやかな幸せを愛でるー大石晴子 1st EP『賛美』インタビュー
REVIEW
THE HillAndon – 意図はない
REPORT
リクオ『Gradation World』スペシャル・ライヴat 代々木・Zher the ZOO レ…
REVIEW
Ribet towns – メリーゴーランド / CRUSH / みまちがい
REPORT
峯大貴が見た祝春一番2019
INTERVIEW
今また初期衝動に戻ってきた – リクオ『Gradation World』リリースインタビュー–
REVIEW
HoSoVoSo – 春を待つ2人
REPORT
峯大貴が見た第2回うたのゆくえ
INTERVIEW
ここから踏み出す、ギリシャラブの“イントロダクション” – 2nd Album『悪夢へようこそ!』リ…
INTERVIEW
その時見たもの、感じたことを記録していく – ダイバーキリン『忘れてしまうようなこと』リリースインタ…
REVIEW
チャンポンタウン – ごきげんよう
REVIEW
宵待 – NAGAME
INTERVIEW
cafe,bar & music アトリ
REVIEW
てら – 歌葬
REPORT
【峯大貴の見たボロフェスタ2018 / Day3】ULTRA CUB / Gateballers /…
REPORT
【峯大貴の見たボロフェスタ2018 / Day2】Homecomings / Moccobond /…
REPORT
【峯大貴の見たボロフェスタ2018 / Day1】ベランダ / Crispy Camera Club…
INTERVIEW
KONCOS:古川太一 × ボロフェスタ主催 / Livehouse nano店長:土龍対談 - 音…
REVIEW
ローホー – ASIA MEDIA
REVIEW
影野若葉 – 涙の謝肉祭
REVIEW
Pale Fruit – 世田谷エトセトラ
REVIEW
原田知世 – music & me
REVIEW
Traveller – Chris Stapleton

LATEST POSTS

COLUMN
【2024年4月】今、東京のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「東京のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」京都、大阪の音楽シーンを追っ…

COLUMN
【2024年4月】今、京都のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「現在の京都のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シー…

REVIEW
「キテレツで王様になる」SuperBack『Pwave』のキュートなダンディズムに震撼せよ

2017年に結成、京都に現れた異形の二人組ニューウェーブ・ダンスバンドSuperBack。1st ア…

REPORT
台湾インディーバンド3組に聞く、オリジナリティの育み方『浮現祭 Emerge Fest 2024』レポート(後編)

2019年から台湾・台中市で開催され、今年5回目を迎えた『浮現祭 Emerge Fest』。本稿では…

REPORT
観音廟の真向かいで最先端のジャズを。音楽と台中の生活が肩を寄せ合う『浮現祭 Emerge Fest 2024』レポート(前編)

2019年から台湾・台中市で開催され、今年5回目を迎えた『浮現祭 Emerge Fest』。イベント…