INTERVIEW

覚悟が決まった第二章 – Easycome『レイドバック』インタビュー

MUSIC 2020.07.15 Written By 峯 大貴

2016年に大阪で活動開始した4人組ポップ・バンド、Easycomeは友達みたいな音楽だ。ティン・パン・アレー界隈の日本のポップ・ミュージックや、そこから遡ったR&Bやソウルなど、彼らが丁寧に聴きこみ、のめり込んだ音楽を、時流や体系などお構いなしに自由な視点で取り入れていくピュアなサウンド。そして聴衆と対等な関係性でカジュアルに接してくるちーかま(Vo / Gt)の歌。本能的な「音楽って楽しいよね!」に溢れた、一緒にいて気の置けない存在として我々に歌ってくれる。

 

昨年の1stフルアルバム『Easycome』リリース時のインタビューでちーかまが「これからも無理なく楽しく活動できたらなと思います」と発言していた。確かにこの時までは彼らにとってもバンドとは、自分たちの日常を豊かにする内的な楽しみ、いわば友達みたいな創作活動だったはずだ。

 

しかし彼らの音楽がライブハウスを中心に広まっていくことに対する心からの喜びは、着実に積みあがっていったに違いない。昨年12月に初ライブの場所である大阪・南堀江knave、今年2月に東京・下北沢BASEMENT BARで開催された初のワンマン・ライブがいずれもソールドアウトし、その広がりは見事に可視化された。喜びの集積は確かな自信となり、内向きな楽しみから観客からの期待を引き受ける覚悟に変わったのだろう。ちーかまは大阪公演のMCで「今日でEasycomeの集大成をみせ、第一章を終わらせる」とネクスト・ステージに向かうことを宣言した。

 

そんな第二章の突入として届いたのが5曲入りのEP『レイドバック』だ。音楽性に大きな変化はないが、ちーかまの歌の表情が豊かになり、落合(Gt)の書く詞にはほんの少しストレートな熱量が伺えるようになった。レコーディングを支える協力者の輪が広がったことも含め、解像度がグッと上がった多彩な音像が収められている。

 

彼らのマインドの変化はバンドドリームなんて大層なものでもなければ、インディーからメジャー、もっと今の言葉で言えばライフワークからライスワークを目指すような資本主義的ステップアップも第一義ではないだろう。Easycomeの元に集まる観客に向けて、より大きな喜びを届けていきたいという素直な恩返しの精神。つまり友達みたいな音楽から、相互に支え合い、より連帯を求める「仲間みたいな音楽」へと美しい進化を遂げようとしている。

 

そんな『レイドバック』に込められた第二章への意気込みをEasycomeの4人にSkypeで話を伺った。

初フルアルバム、初ライブ・ツアーで得たもの

──

昨年7月にリリースされた1stフルアルバム『Easycome』から1年ぶりの新作となりますが、まず今振り返った時に『Easycome』はどういう作品だと言えますか?

コダマ(Ba)

周りの人に手伝っていただきながらですが、制作も発表までのスケジュールも自分たちで決めて10曲も完成させることが出来た。フルアルバムにはずっと憧れていたので、今でも満足度は高いですね。これまでの緩やかな活動ペースの中で自分たちがやってきた集大成というか。

 

──

なるほど。なぜ聞いたかというと、バンドにとって一度しか作ることが出来ない<ファーストアルバム>が初期衝動的ではなく、すでに一先ずの成熟が見える渋い仕上がりなのがEasycomeらしいなと改めて感じてしまったんですよ。

落合(Gt)

たしかに(笑)。初期衝動は『風の便りをおしえて』(1stミニアルバム / 2016年)で終わっているかも。

コダマ

いわゆる箸休めとなる曲も入れて、アルバム全体の流れをコンセプトに基づいて組み立てることは、実力的にまだ出来ないというのもありますが、自分たちの思うめっちゃいい曲で全曲揃えることを目指していていて。全部の曲を作っている落合がサニーデイ・サービスの1stアルバム(『若者たち』)みたいなものを作りたいと言っていた気がします。

落合

そんなこと言ってたっけ……(笑)。でもちゃんと作品として名盤にしたかった。

 

──

初の全国流通作品として絶好の自己紹介になったのではないでしょうか。

コダマ

その後のリリース・ツアーとか、大阪と東京でやった初のワンマン・ライブにもお客さんがたくさん来てくれて、届いていると実感しましたね。

落合

福岡とか名古屋はこれまであまりライブもやっていなかったんですけど、ちゃんとお客さんがいてくれて嬉しかった。

ちーかま(Vo / Gt)

これまでのリリースでは大阪で自主企画を打つだけだったので、初めて全国ツアーを組んだんですよ。行くまでは色んな場所を回れるなんて楽しいし「やったー!旅行だー!」という気持ちもありました。どれくらい体力や喉が消耗するかとか考えてなくて。でも名古屋でスリーマン、次の日東京でインストアライブ、その次の日も東京でツーマンと3日ライブが続いた時はかなり過酷でしたね。私は喉が強い方だと思っていたんですけど、枯れてしまいました。ちょうどお盆期間で移動の道も混んでいましたし。

落合

めっちゃ大変やったな。行く前は「名古屋では何食べよう?」とか話していたけど、そんな余裕も全くなくて、コンビニ飯しか食ってない。

コダマ

今回は主催バンドだから入り時間も早めだったし、ツアー自体にまだ慣れていないから余計に大変で。でもそれぞれの土地にちゃんとお客さんがいてくれたことがホッとしたし嬉しかったので、ただヘトヘトになっただけの思い出にはならずに済みました。

ちーかま

確かに。バンドとしてやっとツアーの大変さを経験できたのはよかった。

Photo:阪東美音
──

その後12月に大阪の南堀江knaveで行った初のワンマン・ライブではいとっちさん(YMB)、エンジニアのangieさん(MORG)をコーラスに迎え、ベルマインツの盆丸一生さんもゲストで登場した、特別なライブでしたね。

ちーかま

初ワンマンだったので、いつもと違う面白いことしたいとみんなで考えました。

コダマ

普段の30分ほどの持ち時間では出来ない曲も掘り返してセットリストを選んだら2時間を超えていて(笑)。周りの人にアドバイスをもらいながら精査していきました。

ちーかま

2月に東京でもワンマンをすることにはなっていたので、大阪と東京で振り分けて出来るだけたくさんの曲をしようとして。大阪では「これからは第二章です!」とMCで言ったので、第一章の最後を見せるために最初の2作、『風の便りをおしえて』と『お天気でした』(2ndミニアルバム / 2017年)からの曲を多くして、その分東京ではこれからの自分たちを見せるためにまずは『Easycome』の曲を中心にやろうと。

 

 

ちーかま、「第二章」突入宣言の真意

──

ツアーやワンマンも経験する中で普段のライブに対する意識は変化してきました?

落合

いやー……。まだまだ自分の演奏に必死で、どう魅せるか意識するまでは手が回っていないよな。

コダマ

でもちーかまはMCでお客さんに対して、何を話そうかをしっかり考えるようになったと思います。ライブが終わって物販に来てくれるお客さんから「MCが印象に残っている」と言われることも結構あって、演奏以外にもいいと思ってもらえる部分がEasycomeのライブにはあるんだと感じた。

──

MCで伝えることが変わったということでしょうか?

コダマ

変わったのが最近なのかはわかりませんが、最初の頃は「喋ることが下手なんですよ~」というスタンスだったと思う。でも今はこの曲の後にこういう話をしようという構成がちーかまの中にあると思うし、お客さんの心をつかむための言葉を考えている気がします。

johnny(Dr)それはツアー中でも感じましたね。福岡、名古屋は初めて観てくれるお客さんがたくさんいる中で、ちーかまがMCで巻き込んでいったのが印象に残っています。東京ワンマンの時も、初めて東京でライブをした時のことを振り返りながら話していて、後ろで聞いていてグッと来ました。

落合

俺ら3人はステージに立つと演奏で精いっぱいなんですけど、その分までお客さんと向き合ってくれている感じ。MCも含めて自分たちのステージを作ろうとしているんだなぁと思います。

──

ちーかまさんはどこかのタイミングでMCに対する意識が変わったのでしょうか?

ちーかま

2016年にMINAMI WHEELに出た時ですかね。最初はなんで私なんかがバンドをしているんだろうと思うくらい、人前に立つことに自信がなかったんです。だから一生懸命、熱いことを言うのが恥ずかしいから、へらへらしていたくて。

 

でもミナホに初めて出演した時、それまでにないくらいお客さんが来て。当時は本当にknaveでしかライブをしていなかったのに、たくさんの会場がある中で私たちを選んでくれることに、びっくりしたんです。だから恥ずかしさよりも、本当に嬉しいと感じたことを伝えたいという気持ちの方が大きくなって。そこからどうやったらみなさんにちゃんと伝わるんだろうとだんだんしっかり考えるようになりましたね。

──

そのミナホからも3年経って、今やknaveをワンマンでいっぱいに出来るバンドになっている。さらに伝える思いも大きくなっている心地はありますか?

ちーかま

めちゃめちゃあります。開催する1年ほど前にワンマンやることを決めたんですけど、その時はまだ「うちらにできるんかい!」という心境でしたし。だから大阪のワンマンでは、今までの感謝の気持ちを最上級の形でお客さんに伝えようと考えていました。

──

それが先ほど仰っていた「第二章」へ踏み出すことの宣言にもつながったのでしょうかね?

ちーかま

そうですね。もうこれからは自分たちが楽しいだけの活動ではなくて、エンターテイナー、ミュージシャンとしてお客さんに喜んでもらうためにどうすればいいかを考えていくための第二章にしたいという気持ちでした。

──

ミュージシャンとしての自覚が芽生えた感覚ですかね。これからは求められる音楽を作ろうと。

ちーかま

遅すぎますよね(笑)。ワンマンのMCを考えていて、初めは自分がやりたくてやっているバンドなのに、曲を好きでいてくれたり、ライブを楽しんでもらったり「こんな幸せなことがあっていいのだろうか!」と言おうと思っていたんですよ。でも「いや、待て待て、それでいいのか」と。それじゃ「自分がいい思いをしたことが、結果的に誰かにとってのいいことでもあってよかったね」で終わっている気がして。そんな状態ではダメだとやっと気付いたんですよ。

ちーかま(Vo / Gt)

これまでと同じでは、今以上にはなれない

──

なるほど。そんな中で第二章の1発目の作品となるのが『レイドバック』ですね。どういう構想で制作に至ったのでしょうか?

コダマ

今までワンマンを目標に進んでいたので、その後のスケジュールは何も決まっていなくて。全部終わって次は何をしようかと話し合った時に、EPを出そうと。

ちーかま

これまでは、いい曲が揃ってきたからそろそろ出そうかというスタンスだったんですけど、『風の便りをおしえて』から『お天気でした』までが1年、そこから『Easycome』までに2年かかっていて。だから第二章に入るにあたって、今までのスパンではいけないだろうと、リリースする日程を先に決めて制作しました(※)。ただこれもツアーと同じでスケジュールの計算が甘すぎた。苦しみましたねぇ。

※当初は6月3日(水)発売予定。新型コロナウイルスの影響で7月15日(水)に延期。

コダマ

実質年明けくらいから制作を始めて、3月には全部レコーディングを終えないといけないという、今までの自分たちではあり得ないスケジュールで。

Photo:Tsugumi Akimitsu
──

前回のインタビューでは「無理なく楽しく活動していたい」と仰っていましたが、覚悟を決めたんですね。

落合

これまでと同じようにやっていたら、今以上にはなれないという気持ちもちょっとあった。

ちーかま

ツアーを経験したらこんなに大変なんだと気づけたことと同じ感じ。自分たちを追い込んだ挑戦でしたが、それほど深刻ではなくて「やってみよ~」という感覚ですね。

コダマ

でも詞と曲を作るのは落合なので、彼が「やる」と言ってくれたのが大きい。

ちーかま

落合は今回本当に頑張った!

落合

かつてないペースで曲を仕上げたので、今回はみんな褒めてくれます(笑)。

──

どういう作品にしようという想定はありました?

落合

今回は特になかったかな。

コダマ

『Easycome』は10曲全て、70年代の雰囲気で統一しているイメージが落合の中であったと思います。今回はEPなのでコンセプトを設けるというよりは、それぞれ個性の違う5曲にしたいなとは話しましたね。

 

──

“描いた果実”は今までになく真っすぐなロック・チューンで特に新鮮に感じました。

落合

確かにこれまでの自分の中にない曲調とかアレンジの曲ですね。僕は70年代に活躍したギタリストのプレイに影響を受けがちだったり、アコースティックなアレンジに持っていくことが多いんですけど、“描いた果実”のフラットにシンプルなリフが繰り返されたり、歪んだギターが入っているアレンジは初めてでした。

──

ハイペースで曲を仕上げないといけない中で、今までとやり方を変えたところはありますか?

落合

今まで一人で歌詞を書いていたのですが、“スピーチ”はみんなにアドバイスをもらいましたね。でも新しいことをしようというより、歌の録音直前まで煮詰まって書いていたので「助けてや~」という感じ。だから自分だけで作ったものとは違う感じになったと思います。

──

その自分と違う感覚は具体的に説明できます?

落合

うーん。『Easycome』までは自分の中で築き上げてきた詞の作り方に頑なだったんですよ。以前から僕の歌詞はよく意味がわからないと、周りからは言われてきたんですけど、「何の不満もない!」と思っていて。でも今回“スピーチ”ではメンバーに聞いたり、“描いた果実”でも伝わるようにわかりやすく書いてみようとしたり。

──

頑なだったこだわりを捨てることが出来たと。

落合

はい。これまではそのわかりにくさも含めて自分らしさと思っていたんです。そもそも詞を書くのは自分の思いを吐き出す作業だし、外に向けて理解してもらうところまで考えていなかった。でもこれからは自分たちの曲をもっと世に出していきたいし、詞に対する考え方を変えるいい機会だから、ある程度わかりやすさにも意識しました。

落合(Gt)
──

他の3人から見て、落合さんの詞の変化はわかります?

コダマ

わかりにくいですけどねぇ~(笑)。でも今回は切羽詰まっていたので「AとBどっちがいいと思う?」と相談されることは詞も含めて増えたので、より理解できるものにはなっていると思います。

新作『レイドバック』での新たな試み

──

では詞以外には新たなトライアルはありますか?

ちーかま

お客さんに届くことに直結しているかと言われたら、まだ成功していないかもしれませんが、歌に関しては今までしてこなかった発声をしてみましたね。自分にしかわからないくらいの変化でも、ちゃんとステップアップしようと。

──

ぜひ具体的に教えてください。

ちーかま

以前から自分の歌をこう聴こえるようにしたいというイメージをしっかり持つようにしていて。これまでこのパートは何テイク目のものがいいとか、細かくディレクションしてきたんです。あと感情を込めすぎて、大げさな表現になってしまうことも避けていました。でも今回は1回のテイクで出る歌のよさを活かしたり、自分が臭いなと思わない程度にグっとくる感情表現を入れてみたんです。

 

それと今まで癖でビブラートを多用していたんですけど、今回特に“タペストリー”ではあえてビブラートを入れないことを意識しています。でも大げさにはならないように入れる場所を探ったり、ミックスボイスを意識したり。まだまだ自分の歌の可能性も探れるなと今後のヒントになった気がします。

johnnyドラムとしては今回ドラムテックに入っていただいたのが初の試みでした。『Easycome』では僕の好きなユーミン(松任谷由実)や、70年代の日本のポップ・ミュージックの音を研究したんですが、その追及が自己満足で終わっていないかというのは今でも考えていて。だから次の作品では自分もお客さんも一発聴いた時に、気持ちいいと思えるドラムにしたかった。やっぱりドラムは曲のパンチ力を決めるポイントになるので、ドラムテックによって、元々僕の好きな音と今のトレンドを取り入れた音の間を取ろうとしましたね。

──

ドラムテックとしてskillkillsのビートさとしさんが入られていますね。間をとるというのはどういう方向を目指しましたか?

johnnyこれまでの70年代の良さは残しながら、さとしさんがバックを務められている菅田将暉とか現代に馴染むビートの効いた音ですかね。機械的にもアナログにもなり切らない立体感を二人で相談しながら追及していきました。

johnny(Dr)
──

ビートさとしさん以外にもレコーディングに岩谷啓士郎さん、ミックスに日下貴世志さん、マスタリングに小泉由香さんと、本作にはたくさんの人が関わっていますね。

コダマ

今までエンジニアはMORGのangieさんと作ってきましたが、今回は色んな人と一緒にやろうというのも目標にありましたね。結果的にレコーディングしたのはMORGになりましたが。

──

それは今まで気心の知れた、いい意味での身内感から脱却しようという意図でしょうか?

コダマ

いや、今まで関わってくれた方々と離れるというよりは、むしろもっと身内が広がっていく感覚ですかね。

ちーかま

angieさんもお子さんが出来たり、コロナもあったのでレコーディングには入っていないですが、私は録った音源を送ってアドバイスをもらったり、今でも関わってくれています。

──

あとぜひ伺っておきたいのは活動初期からあった“crispy crispy”をこのタイミングで音源化しようと思ったのはなぜでしょうか。

コダマ

最初のデモ音源に入っていたもう1曲の“夢中にならないで”は雰囲気が合っていたので、満を持して『Easycome』に入れられたんですけど、“crispy crispy”は「今や!」というタイミングは永遠に来ないと思っていて(笑)。でも今回の作品は個性の違う5曲を入れると決めていたので、その中での1曲として入っているのはすごくいいと思ったんですよね。

デモ音源収録の“crispy crispy”(2015年)

──

永遠にタイミングが来ないというのは?

コダマ

“crispy crispy”はEasycomeと名乗る前からある曲で、歌詞とメロディは僕が作っているんです。だから落合を中心に曲を作る今のスタイルになっていくにつれて、Easycomeのイメージとは合わないなと思っていたんですよ。明るくて単純明快な曲ですし。でも大阪のワンマンで演奏した時にすごく盛り上がって。

落合

ライブではやるたびに好きですって言ってくれる人も多い。

コダマ

なのでそう言われているうちに出しておこうとなりました。でも今回改めてアレンジし直したら今の好みに合った仕上がりになったんですよ。結果的にこれだったら今までの作品にも入れられたなと思えるくらい。

コダマ(Ba)

等身大で変わっていくEasycome

──

ではこの作品のタイトルを『レイドバック』としたのは?

落合

僕のインスピレーションでザコみたいなタイトル案をいっぱい出した中から、ちーかまが選んだんやっけ?

ちーかま

ちがうんすよ(笑)。こういう意味を込めたいなと思ったものを英語ではどう言うのか調べたら「レイドバック」が出てきて。その後に落合のリストを見ても「レイドバック」があったんです。どういう意味やっけ……。

落合

「能天気」みたいな意味じゃなかった?

──

「ゆったりとリラックスしたリズム」という音楽的な意味もありますよね。

johnnyなんか色々LINEで話し合ったような……。

コダマ

(グループLINEを読み上げる)「後ろに寄り掛かるという意味があるから、前のめり過ぎない私たちって感じがする」。

ちーかま

あーそうだそうだ。

コダマ

ちーかまの言っているニュアンスをなんとなく解説しますね(笑)。僕たち自身はインドアな志向なんですけど、気持ちいい風が吹いているようなイメージをEasycomeに持ってくれている人が多くて。その、のんびりで能天気な雰囲気が出た自分たちの音楽に「レイドバック」という言葉が合いそうだとなりました。

ちーかま

それと今回はタイトルよりもジャケットが先に完成したんですよ。ジャケットのデザインが都会の中にピクニックの机があるというもので。それを見て、流行りなどにとらわれず、マイペースに自分たちの好きな音楽をする私たちのイメージと重なる部分があると思って「能天気」という言葉が浮かんで調べました。

『レイドバック』ジャケット
──

前のめり過ぎないという意味ですが、聴いてくれる人のイメージを引き受ける覚悟も感じるタイトルですね。

コダマ

今までその作品に入っている曲名かセルフタイトルだったから、アルバムにタイトルをつけること自体が初めてでした。

──

みなさんの中で大きくマインドが変化していることがお話を伺って伝わってきました。この作品でスタートを切った第二章では何を成し遂げたいですか?

落合

音楽に関しては大きくテンションは変えないまま作っていくだけですけど……でも、音楽で食べていけるようになりたいですね(笑)。それは本格的に考えるようになってきました。

コダマ

落合がここまで言うのは考えているんだと思います。年末に3月までに5曲録音する話になった時に僕たちは「やろか!」と気合がありましたけど、彼は暗かったんですよ。でもこれからは好きな時に曲を作るだけではいけないと気合いを入れてたんじゃないかな。

落合

でもホンマにやりたくなかったらやらないし、俺がバンドをもっと動かしたいと思っているのであれば、俺がやるしかないんで。

コダマjohnnyちーかまかっこいい~!

──

その考えも昨年からの大きな変化ですね。頼もしいです。

ちーかま

でもこの自粛期間に入るまでは本当にバンド・バンド・バンドの生活で。だから今、久々にバンドをする前の感覚を取り戻してきていて、改めてこれからの私を考えていたんですよ。今までライブでは真っ赤のワンピースを着ていたんですけど、普段の自分は地味で黒い服を着ることが多いんです。黒い服を着る私も本当の私なんだから、今後はバンドにも黒い服を着る私を出していきたくなってきました。

──

ある種、赤のワンピースは「Easycomeのちーかま」という別人格に切り替えるための戦闘服だったけど、切り替えずに普段の自分をさらけ出したいという意識が出てきたということですかね。

ちーかま

そうですね。本当の自分もバンドに注いで馴染ませられたら、もっとEasycomeを聴いてくれる人の共感を得ることができるかもしれない。変わっていきながら、より等身大でありたいですね。

『レイドバック』

 

 

アーティスト:Easycome

仕様:CD 発売:2020年7月15日
価格:¥1,450(税抜)

 

収録曲

1.スピーチ

2.タペストリー

3.pass you by

4.描いた果実

5.crispy crispy

Easycome

 

 

1stミニアルバム『風の便りをおしえて』(2016.9)を会場限定販売と一部の店舗での販売開始。ドラムが就職のため脱退(2017.3)。以降、Vo・Gtの「ふたりEasycome」とサポートドラマーを加えたバンド活動を継続。そんな中、2ndミニアルバム『お天気でした』(2017.8)をリリース。

 

2018年12月にはサポートドラマーとして参加していたjohnny(Dr)が正式メンバー加入し、1st アルバムのレコーディングがスタート。2019 年 7 月ついに 1st アルバム「Easycome」をリリースしタワレコメンにも選出される。そして初ツアーを全国 5ヵ所で開催。 東京・名古屋・大阪・徳島はSOLD OUT。初のワンマンライブ大阪(2019.12)、東京(2020.2)もSOLD OUT。

 

2020年7月15日EP『レイドバック』をリリース。

 

Webサイト:https://easycome-band.jimdofree.com/

Twitter:https://twitter.com/Easycome55

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峯大貴が見たボロフェスタ2019 1日目
INTERVIEW
はちゃめちゃなエンタテインメントがやりたいーチャンポンタウン“Giant step”リリース・インタ…
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3人で歌の本質を確かめる場所―のろしレコード(松井文、夜久一、折坂悠太)『OOPTH』リリース・イン…
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清水煩悩との雑談(前編)-新MV“まほう”・“リリィ”を公開&クラウドファンディング始動
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アフターアワーズ – ヘラヘラep / ガタガタep
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河内宙夢&イマジナリーフレンズ – 河内宙夢&イマジナリーフレンズ
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休日に音楽を続ける人たちのドキュメント-松ノ葉楽団3rdアルバム『Holiday』リリースインタビュ…
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日常に散らばった、ささやかな幸せを愛でるー大石晴子 1st EP『賛美』インタビュー
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THE HillAndon – 意図はない
REPORT
リクオ『Gradation World』スペシャル・ライヴat 代々木・Zher the ZOO レ…
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Ribet towns – メリーゴーランド / CRUSH / みまちがい
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峯大貴が見た祝春一番2019
INTERVIEW
今また初期衝動に戻ってきた – リクオ『Gradation World』リリースインタビュー–
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HoSoVoSo – 春を待つ2人
REPORT
峯大貴が見た第2回うたのゆくえ
INTERVIEW
ここから踏み出す、ギリシャラブの“イントロダクション” – 2nd Album『悪夢へようこそ!』リ…
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その時見たもの、感じたことを記録していく – ダイバーキリン『忘れてしまうようなこと』リリースインタ…
REVIEW
チャンポンタウン – ごきげんよう
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宵待 – NAGAME
INTERVIEW
cafe,bar & music アトリ
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てら – 歌葬
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【峯大貴の見たボロフェスタ2018 / Day3】ULTRA CUB / Gateballers /…
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【峯大貴の見たボロフェスタ2018 / Day2】Homecomings / Moccobond /…
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【峯大貴の見たボロフェスタ2018 / Day1】ベランダ / Crispy Camera Club…
INTERVIEW
KONCOS:古川太一 × ボロフェスタ主催 / Livehouse nano店長:土龍対談 - 音…
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ローホー – ASIA MEDIA
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影野若葉 – 涙の謝肉祭
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Pale Fruit – 世田谷エトセトラ
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原田知世 – music & me
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Traveller – Chris Stapleton

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新たな名曲がベランダを繋ぎとめた。 新作『Spirit』に至る6年間の紆余曲折を辿る

京都で結成されたバンド、ベランダが3rdアルバム『Spirit』を2024年4月17日にリリースした…

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【2024年4月】今、東京のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「東京のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」京都、大阪の音楽シーンを追っ…

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【2024年4月】今、京都のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

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