REVIEW
メリーゴーランド / CRUSH / みまちがい
Ribet towns
MUSIC 2019.07.29 Written By 峯 大貴

京都の男女12人組ポップ・オルケスタ、Ribet townsが5月~7月にかけて“メリーゴーランド”、“CRUSH”、“みまちがい”と3か月連続配信シングルを発表した。昨年の初全国流通アルバム『ショーケース』、盟友バンドyuleとのコラボ企画『Movement』で今年1月にリリースした “I like your music” (作詞・作曲:yule)と、怒涛かつ新たな試みで新曲リリースを続けている彼ら。その動きに筆者はこれまでレビューインタビューなどを通して2016年の結成当初から伴走してきた。

 

“渋谷と北ヨーロッパへの憧れ”という旗印を元に、マンドリン、ピアニカ、グロッケン、トイピアノなど多彩な楽器を取り入た、アイリッシュ・トラッドやチェンバー・ポップを感じさせるアンプラクド主体のサウンド。そこに対して、J-POPど真ん中のメロディと飛び切りキャッチーなミヤチアサヨ(Vo)による歌が拮抗するという立て付けがRibet townsのポップス・メソッドである。異なる音楽的バックボーンをもった演奏メンバー10人によるフレーズが、目まぐるしく変わるビートの中でぎゅうぎゅうに同居しているアンサンブル。それを整理してポップ・ソングとして着地させる緻密さに目が行くことがこれまでは多かった。しかし『ショーケース』以降、彼らのスタイルは徐々に変化していく。ライヴでは複雑なアンサンブルよりも全員が一方向を目指して、ワッと遮二無二演奏する音圧とエモーションによって観客の心を引き込んでいくようになった。またアサヨの歌も曲の物語を様々な引き出しをもってキュートに演じることから、演奏と呼応するかのように自分らしさ、パワフルさを発揮するスタイルになってきている。

今回配信された3曲はそんな今のモードが如実に反映されている。複数の要素をうまくかけあわせていく結成当初からのメソッドを取っ払い、シンプルで力強いポップ・ソングを目指した仕上がりだ。第1段 “メリーゴーランド” は今後のRibet townsの自己紹介的役割を果たすようなストレートなポップ・チューン。ピアニカ3台のフレーズやツジヒロト(マンドリン / Gt)によるマンドリンが叙情的に熱を帯びていき、ノズエタカヒロ(E.Gt)のギターソロや、イシダユウキ(A.Gt)のアコギが前に出る面など大所帯ながらにメンバーそれぞれの個性が見える音の積み上げ方が面白い。一方でシンプルな構成と思いきやアウトロだけ5拍子になって終わっていくという彼ららしい天邪鬼な一ひねりもしっかり入っている。

第2弾 “CRUSH” はノズエの素っ頓狂なギターカッティング・フレーズを骨格とした楽曲。アンプラクド楽器が主体の中で、音圧のボトムアップ的役割が多かったRibet townsにおけるエレキギターだが、ノズエが並行して所属するAmia Calvaで発揮されているオルタナティブ・ロック畑の一面が大々的にフィーチャーされている。そこに呼応したサンバ・ビートがジェットコースターのように移調していく上でアサヨがまくし立てるように歌っていき、聴く側をブンブン振り回すソリッドな楽曲だ。

そして第3弾“みまちがい”は冒頭、エレキのブリッジミュート・フレーズで始まるストレートなロック・チューン。一曲通して8ビートで貫き通す点も、拍子を目まぐるしく変えることでダイナミズムを表現してきた彼らにとって異質だからこそキャッチーに映える。また前のめりで力強いアサヨの歌には木村カエラやSEBASTIAN Xをも思わせるポピュラリティーを感じるが、恋愛の歌詞テーマに対して「はくちょう座のK流星群」「You’re waiting for alians」と随所に登場する宇宙のメタファーがやけに壮大で盲目な雰囲気を醸す。しかしタイトルで“みまちがい”と一刀両断する斜に構えた視点こそRibet townsらしさでもあるのだ。

“渋谷と北ヨーロッパへの憧れ”から鮮やかに飛び立つ宣言のような3曲。まだ誰もやっていないJ-POPを、大所帯であることの無限大の可能性と掛け合わせて再び探していくフェーズに彼らは突入した!

タイトル

メリーゴーランド / CRUSH / みまちがい

収録曲

1, メリーゴーランド
2, CRUSH
3, みまちがい
4, ショートシネマ (heartbreak ver.)
5, ベッドタウン (heartbreak ver.)

 

※4,5曲目は本CDのみ収録のボーナストラック

価格

1000円

販売

・ライヴ会場
HOLIDAY! RECORDS

WRITER

Recent Posts

REVIEW
ベルマインツ – MOUNTAIN
INTERVIEW
もどかしくもシンプルを求めトガっていく。シャンモニカが語る『トゲトゲぽっぷ』
INTERVIEW
シンガーソングライターという自覚の芽生え – ぎがもえかインタビュー
REVIEW
たけとんぼ – 春はまだか / 旅の前
REVIEW
いちやなぎ – album
REVIEW
ショーウエムラ – 大阪の犬
INTERVIEW
2020年をポジティブに転化するために - 中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)が語る新作『ハビタブ…
REVIEW
かさねぎリストバンド – 踊れる
COLUMN
従来のイメージを跳ね返す、日本のフォークの変革 - 『#JAPANESE NEWEST FOLK』前…
INTERVIEW
年鑑 石指拓朗 2020
COLUMN
編集部員が選ぶ2020年ベスト記事
COLUMN
〈NEWFOLK〉作品ガイド
INTERVIEW
音楽のすそ野を広げる、影の歌の送り手 - 〈NEWFOLK〉主宰 須藤朋寿インタビュー
INTERVIEW
自分の言葉を持つ人の歌が、心に入ってくる - 浮(BUOY) インタビュー
REVIEW
クララズ – 台風18号
INTERVIEW
“2023”で次の扉を開いた3人のハイライト – ベルマインツ インタビュー
REVIEW
岡林信康 – 岡林信康アルバム第二集 見るまえに跳べ
REVIEW
田中ヤコブ – おさきにどうぞ
REVIEW
上田正樹と有山淳司 – ぼちぼちいこか
REVIEW
ザ・ディランⅡ – きのうの思い出に別れをつげるんだもの
REVIEW
Bagus! – 恋はうたかた
REVIEW
ベルマインツ – ハイライトシーン
REVIEW
ヤユヨ – ヤユヨ
INTERVIEW
清水煩悩との雑談(後編)– 天川村から新たな船出『IN,I’M PRAY SUN』
REVIEW
小野雄大 – 素粒子たち
INTERVIEW
覚悟が決まった第二章 – Easycome『レイドバック』インタビュー
INTERVIEW
生きている日が歌になる – ダイバーキリン『その美しさに涙が出る』インタビュー
REVIEW
のろしレコード – のろし
REVIEW
松井文 – ひっこし
REVIEW
gnkosaiBAND – 吸いきれない
REVIEW
イハラカンタロウ – C
REVIEW
折坂悠太 – トーチ
REVIEW
西洋彦 – fragments
REVIEW
クララズ – アメリカン
REVIEW
阿佐ヶ谷ロマンティクス – 独り言
REVIEW
平賀さち枝とホームカミングス – かがやき / New Song
REVIEW
TATEANAS-縄文人に相談だ/君と土偶と海岸で
REVIEW
ズカイ – 毎日が長すぎて
INTERVIEW
30代になった酩酊シンガーてらがRibet townsと鳴らす家族の歌
INTERVIEW
年鑑 石指拓朗 2019-『ナイトサークル』リリースインタビュー
INTERVIEW
年鑑 石指拓朗 2018
REPORT
峯大貴が見たボロフェスタ2019 3日目
INTERVIEW
キタが語る、オルタナティヴ・バンドthanの正史ー2ndアルバム『LINES』リリース・インタビュー
REPORT
峯大貴が見たボロフェスタ2019 2日目
REPORT
峯大貴が見たボロフェスタ2019 1日目
INTERVIEW
はちゃめちゃなエンタテインメントがやりたいーチャンポンタウン“Giant step”リリース・インタ…
INTERVIEW
3人で歌の本質を確かめる場所―のろしレコード(松井文、夜久一、折坂悠太)『OOPTH』リリース・イン…
INTERVIEW
清水煩悩との雑談(前編)-新MV“まほう”・“リリィ”を公開&クラウドファンディング始動
REVIEW
アフターアワーズ – ヘラヘラep / ガタガタep
REVIEW
河内宙夢&イマジナリーフレンズ – 河内宙夢&イマジナリーフレンズ
INTERVIEW
休日に音楽を続ける人たちのドキュメント-松ノ葉楽団3rdアルバム『Holiday』リリースインタビュ…
INTERVIEW
日常に散らばった、ささやかな幸せを愛でるー大石晴子 1st EP『賛美』インタビュー
REVIEW
THE HillAndon – 意図はない
REPORT
リクオ『Gradation World』スペシャル・ライヴat 代々木・Zher the ZOO レ…
REPORT
峯大貴が見た祝春一番2019
INTERVIEW
今また初期衝動に戻ってきた – リクオ『Gradation World』リリースインタビュー–
REVIEW
HoSoVoSo – 春を待つ2人
REPORT
峯大貴が見た第2回うたのゆくえ
INTERVIEW
ここから踏み出す、ギリシャラブの“イントロダクション” – 2nd Album『悪夢へようこそ!』リ…
INTERVIEW
その時見たもの、感じたことを記録していく – ダイバーキリン『忘れてしまうようなこと』リリースインタ…
REVIEW
チャンポンタウン – ごきげんよう
REVIEW
宵待 – NAGAME
SPOT
cafe,bar & music アトリ
REVIEW
てら – 歌葬
REPORT
【峯大貴の見たボロフェスタ2018 / Day3】ULTRA CUB / Gateballers /…
REPORT
【峯大貴の見たボロフェスタ2018 / Day2】Homecomings / Moccobond /…
REPORT
【峯大貴の見たボロフェスタ2018 / Day1】ベランダ / Crispy Camera Club…
INTERVIEW
KONCOS:古川太一 × ボロフェスタ主催 / Livehouse nano店長:土龍対談 - 音…
REVIEW
ローホー – ASIA MEDIA
REVIEW
影野若葉 – 涙の謝肉祭
REVIEW
Pale Fruit – 世田谷エトセトラ
REVIEW
原田知世 – music & me
REVIEW
Traveller – Chris Stapleton

LATEST POSTS

COLUMN
【2021年5月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「大阪のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シーンを追…

REVIEW
ベルマインツ – MOUNTAIN

2020年のベルマインツは石若駿や宮田“レフティ”リョウなど名だたるミュージシャンたちの力も借りつつ…

INTERVIEW
“エゴ”だけじゃ形にならない。『フリースタイルな僧侶たち』初代・三代目の編集長に聞く、いま、誰かと編集部に集うわけ。

銭湯の脱衣所でニュースを眺めていると、SNSのフォロワー数が就職活動でひとつの評価基準になることが話…

COLUMN
【2021年5月】今、京都のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「現在の京都のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シー…

REVIEW
CIFIKA – HANA

動き続けて、自分の在りかを射止めた第1章 動き続…