INTERVIEW

清水煩悩との雑談(後編)– 天川村から新たな船出『IN,I’M PRAY SUN』

MUSIC 2020.07.29 Written By 峯 大貴

シンガー・ソングライター清水煩悩が「天の国」「木の国」「川の国」と称される奈良県天川村の美しい自然景観の中でのアルバム・レコーディングを目論見、“まほう”のMV製作費も合わせたクラウドファンディングを開始したのが昨2019年9月。その翌月に実施した今回の前編ともいえるインタビューではこのクラウドファンディングに至った経緯と、その時点で完成していた新曲“まほう”、“リリィ”について語ってもらった。

 

以降、ライブハウスを始め様々な店舗に足を運んで宣伝ポスターを貼ったり、radioDTMでの連載『煩算』を企画して様々な人と対談をしたり……支援を募るための活動であるのはもちろんだが、仲間を探す航海のようにドキュメンタリーとして見せていく。2019年に彼が起こした一連の行動は、アルバムというフォーマットを超えた本作の一部でもあったのだ。そして2020年3月、無事に天川村でのレコーディングを完遂し、この度3rdアルバム『IN,I’M PRAY SUN』が発売を迎える。

 

さぁここで9か月越しのインタビュー後編といこうじゃないか。アルバムを完成させた彼に天川村レコーディングの様子と本作の手ごたえについて語ってもらった。ほぼ一人の制作だった宅録スタイルの過去2作とは大きく舵を切り、チャンポンタウンのゴルゴスとこまるあかね、soto、佐藤守晃、そしてたけとんぼの平松凌太と、気心知れた個性豊かな仲間たちとワイワイと生み出された全7曲。わらべ歌、サイケ・フォーク、アンビエントと多彩な音像に浸ったジュブナイルな歌が“新たな船出”を告げる汽笛となる。「悪童・煩悩、世にはばかる」と彼を評して1年半。清水煩悩の新世界が、『IN,I’M PRAY SUN』でついに全貌公開だ。

清水煩悩、いざ奈良県天川村へ

──

しばらく東京を離れて、地元の和歌山に帰っていたそうですね。

清水煩悩(以下 煩悩)

結果的に2か月くらい帰っていたんですよ。ちょっとの間の帰省のつもりだったのに、東京に戻ろうとしたタイミングで緊急事態宣言(4月7日)が出てしまって、あちゃ~って。

──

前回のインタビューの時には池袋の中華料理屋<新珍味>の上に住んでいたけど、もう引き払っているの?

煩悩

そうそう。新珍味を出た後、家がないまま奈良県天川村のレコーディングに行って、しばらく大阪でミックスまで完成させて、それからは一旦地元に戻っていたんです。この東京に戻る6月のタイミングで新しいところを見つけて改めて引っ越した。自粛期間中はもちろん新珍味も閉めていたし、今も全然行けてない。

清水煩悩
──

和歌山の実家では何をしていた?

煩悩

めっちゃいい時間でしたよ。レコーディングしたアルバムの曲を聴きながら、中学の時に通っていた道を歩いてみたり、思い付きでラジオやってみたり。ふらっと歩きながら、町の中で鳴っている音を録音したり。自分の作業を黙々とする時間でした。

──

のんびりも出来たようで。

煩悩

みんなコロナの影響で自粛しているのに、いつも通り春はやってきていて草木がちゃんと芽吹いていることに感動したり、学生の時は気づかなかったけどめっちゃ山が近いことに圧倒されたり。当たり前のことを色々見直した。和歌山に住んでいた頃とは自分の視点も変わっている気がする。

──

今回の『IN,I’M PRAY SUN』は奈良県の天川村でレコーディングするというのが当初から大きなテーマにあったけど、そこにコロナの影響が出なかったのは本当によかった。

煩悩

ホンマにそう。3月19日から行ってきたんですけど、まだ「ちょっとヤバいかもしれないなぁ」くらいの時期でした。最終日に録音場所を貸してくれた管理人さんのところにお別れの挨拶をした時、言っていたんですけど、奥さんと「本当はこの時期に10人くらい東京・大阪から人がやって来るのは大丈夫なのか」と迷っていたって。でも不特定多数のお客さんをがくるイベントとかではないからと奥さんを説得してくれたみたい。だから「本当は録音しているところも見に行きたかったけど関わるのは最低限に控えた」と聞いて、感慨深いものがありました。スケジュールがあと1週間遅かったらダメになっていたようで、ギリギリでした。

──

レコーディングしたのはどういう場所?

煩悩

<てんかわ天和の里>っていう施設で元々は学校だったらしい。教室とか体育館がそのまま残っていて、普段は学校の校外学習に使ったり、夏場はバーベキュー場としても使えるレクリエーション施設。

──

天川村でレコーディングしたいと思い立った時からここを想定していたの?

煩悩

いや、かなり追々でした。今回のレコーディングにも同行してくれたカメラマンのゼニさん(銭谷優貴)のお父さんが天川村に所縁のある人で、ここならレコーディング出来そうと情報をもらって。

──

いい巡り合わせやったね。そもそもこのアルバムと“まほう”のMVの制作費を募るクラウドファンディングが終わったのは昨年の12月でしたが、そこからどういう風に制作は進んでいきました?

煩悩

大きくはまず曲作りでした。“まほう”、“リリィ”、“あめあめふれとらりるれら”は元々ほぼ完成していて、“天ノ子”はサビ部分だけ。残りの曲は未着手で、作りはじめたのは年明けから。

──

収録されている7曲を作っていったと。

煩悩

いや、実は天川村には8曲持って行った。でもいざ着いて、実際に感じる空気感とか、音を鳴らしてみた時の響きも踏まえて、1曲合わなくて削りました。単純に時間も厳しかったし。

──

天川村に行ったのはどれくらいの期間?

煩悩

向こうにいたのは実質4日。本当に空気が澄んでいて、レコーディングスタジオの感覚とは全然違うんですよ。初日は機材の設置とか環境を整える準備でしたけど、前半2日間はみんな気持ちよくなってしまって、全然ペースが上がらなかった。でもそれも身体を天川村に馴染ませる時間として必要やったと思う。だから実質、残りの2日間で追い込んだ録音になりましたね。

声を合わせることがしたかった

──

天川村で録音する目的は「スタジオではなく、森の音などを取り入れながら気持ちいい環境で制作してみたい」ということだったよね。そもそもアルバムとしてはどういう作品を作りたかった?

煩悩

まず一人で作っていた過去2作※と大きく違うのは人数で、入っている音数を増やしたかったのもあるけど、とにかく声を合わせるということをやりたかった。“天ノ子”はそのために作ったところもある。

※1stアルバム『みちゅしまひかり』(2017年)、2ndアルバム『ひろしゅえりょうこ』(2018年)

──

コーラスというか合唱っぽい歌ですね。

煩悩

この曲はハモリでもなく一声です。だから“天ノ子”は声が重なったら楽しそうなメロディを制作時に足したりもした。元は学校だった雰囲気もあって、歌っている内にみんなが学生の合唱コンクールみたいな歌い方になっていって、素直な声が出せたと思う。

──

どこか古くからある童謡というか子守歌みたいな感じもする。前回のインタビューでも上げていたデヴィッド・ダーリング(David Darling & the Wulu Bunun)とか、この前BASEMENT BARの配信ライブでカバーしていたYamasukiに通じるものもあるし。

煩悩

そうそう。曲単体としては男の子の妄想というか、夢の中にある未来の日本の田舎みたいな世界で小学生が歌っているイメージ。歌詞に出てくる「明易(あけやす)」なんかその年齢ではきっと意味は知らないけど、言葉の響きだけ気に入って「あけやすあけやす~」と言いたがっているのも想像できる。

 

 

──

作品全体のコンセプトみたいなものはあったの?

煩悩

頭の中のイメージはある一つの町、村を描こうとしていて、今回のジャケットがイメージそのものなんです。どこにあるかは不詳で“CITY”というより“TOWN”の方が近いちょっとした田舎。去年“リリィ”と“まほう”を作った時も舞台はその場所だったから、その周辺のお話とか景色が元になっているのは全曲共通で。

──

曲同士で繋がっている部分もあると。

煩悩

うん。でもいちいちこの曲とこの曲はこういうストーリーで繋がっているという演出はしていない。“天ノ子”に出てくる「港」が“IMAGINE IS THE PORT”にも出てくる。“あどべんちや”に出てくる「船」はその港から出てきて、一方のある家の中で“あめあめふれとらりるれら”をらんらんらんと歌っている人がいて、その傍にあるお墓の近くにいる人は“lullaby”を歌っている……みたいな同じ場所にいる感じ。

──

物語がつながっているわけではないけど、同じ景色とか空気感を共有しているみたいな。

煩悩

そうですね。あとなんとなく夏のアルバムにしたいとは思っていたなぁ……。

──

煩ちゃんのこれまでの曲にも夏は登場しますよね。“新南国ソン”とか“ブッダ常夏キリスト富士山”

煩悩

うわ、ほんまや。やっぱり夏が一年の中で一番好きなのかも(笑)。

──

でも今回明確に夏が出てくる曲はないですよね。どういう夏を描こうとしたのでしょうか?

煩悩

うーん、明確な爽やかな夏ではなくて、自分の中の想像上の夏というか虚像の夏というか……。絵本の中の夏みたいなものに近い。そもそも出発点は“リリィ”と“まほう”が出来たからアルバムを作ろうと思って『IN,I’M PRAY SUN』とタイトルをつけたんですね。これは谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』からつけたのは前も話したと思う。ここで書かれている光と影を対比する概念にインスピレーションを受けて、太陽に意識が行ったんですよ。それで陽がサンサンと出ていて影も伸びている、太陽に触れている時間が長い季節としての夏というのは心理的なイメージにあったのかも。

 

でも多分、出発点の“リリィ”の雰囲気に引っ張られたんだと思う。このアルバム全部が“リリィ”から派生している。

──

“リリィ”が出来たことでアルバム作ろうと思えるくらいの手ごたえは、この曲のどういうところから得たんでしょうね。

煩悩

この曲は詞もうまく書けたし、本当に好き。極端に言うと未だに自分でもわからない部分が残っているのがすごく楽しい。余白があるから、もっとこの世界で遊べるなと思って他の曲も作っていったのかな。

──

言葉の並びが不思議で面白いけど、自分はそここそ煩ちゃんの楽曲の魅力やと思う。口ずさんでいても気持ちいし。

煩悩

あぁーそれはありますね。今気づいたけどこれまでの曲よりテンポが早いんですよ。リズミカル。

──

去年の時点では新曲としてあったのが“リリィ”、“まほう”の2曲だったから、こういう歌にフォーカスした作品になったのはちょっと意外で。天川村で録音したいという話の時も細野晴臣さんの話が出ていたから、環境音楽、アンビエント色の強い作品になるのかと想像していた。

煩悩

これはよく言われる(笑)。実際に普段聴いているのはそういう音楽だから、今回も僕一人で作ったらそうなっていた気がする。でもとにかく周りにも何もないから防音せずに大きな音が出せることが楽しかったり、空気そのものが気持ちいいからわざわざ「天川村の音です!」みたいなフィールドレコーディングをする必要もないなって思った。

──

天川村の音を入れようとするのではなく、この場所で録音すると勝手に天川村の音になる。

煩悩

そんな感じ。あとは参加してくれたみんながいることありきのレコーディングだったから、しっかり歌に向き合えたアルバムになったと思う。ゴスくん(ゴルゴス / チャンポンタウン)にアレンジ考えてもらったり、ひらまつくん(平松稜大 / たけとんぼ)にここのギター弾いてもらおうとか、(佐藤)守晃くんにここのノイズ、sotoちゃんにここのコーラスとリコーダー……とか考えていたら、整理されて自然とこの仕上がりに行きついた。

ゴルゴス(チャンポンタウン)
──

特に“あどべんちや”は振り切ってキャッチーな仕上がりで、聴いていて楽しくなっちゃう。

煩悩

ストーリーがありますからね。船に乗って冒険に出て、たまたま漂着したところでお坊さんが並んでいて念仏を唱えて、起承転結がある。

──

「ユシベリアンマンモスンジトビダル号ハネリャキットネ」の部分ですね。だいぶぶっ飛んだ念仏やけど(笑)。でも冒険もののアニメ主題歌で使われてもおかしくない。

煩悩

あ、でもこの曲は『映像研には手を出すな!』と、そこでも出てくる『未来少年コナン』がモチーフというか着想にあった。『映像研~』は女子高生3人がアニメを作る話なんですけど、「紙にペンで線を引く祈り」、「空にどんと舟浮かべ」の部分は作品の中で実際に絵を描いている映像が浮かんで書いた詞です。普段、自分でも絵をよく書いているから、『IN,I’M PRAY SUN』の舞台ともなんか重なるところがあった。

人と音楽をやることの感動が一番の収穫

──

今回演奏メンバーとして大阪からチャンポンタウンのゴルゴスくんとこまるあかねさん、シンガー・ソングライターのsotoちゃん、東京からたけとんぼのひらまつくん、名古屋から佐藤守晃さんが参加しています。なぜこのメンバーなのでしょうか?

煩悩

えー、僕が好きな人。

──

あかねさん以外はソングライター、ボーカルですね。

煩悩

現地でその話になって「ホンマや!」ってびっくりした。あとドラムがいないのもおもしろい。

こまるあかね(チャンポンタウン)
──

それはこういう作品が作りたいからとか、こういうプレイとか役割を必要としているから声をかけたというのではなく?

煩悩

本当に単純に一緒にやって楽しくできそうな人に声をかけて集まってくれたのが、この人たちだったんですよ。もちろんこういう音を入れてくれそうとは思っていたけど、フレーズを決めて伝えたり楽譜を渡したりはしてないし、楽典通りにレコーディングするというより、この場所にいる人たちの素直な声とか音が重なるということを重要視してたから、歌える人を集めたわけでもない。

──

助っ人のプロフェッショナルなサポートメンバーというより、楽しくレコーディングできることが大事だったと。

煩悩

そうです。でもみんな固定概念がなくて、フラットな感覚を持った人だから、この人たちなら自由な音楽が鳴らせそうとは思っていた。まぁとにかく固くならず、楽しくやりたかったんです(笑)。だからミンキッチンのみんちゃん(菊地愛美)に来てもらって合宿中のご飯作ってくれたり、ゼニさんや撮影のメンバーも来てレコーディングや天川村の風景を残してもらったり、一日遅れて内藤学くん(むこうぎしサウンド代表 / 映像ディレクター)が来てくれた途端に色々舵取りをしてくれて制作がテンポよく進められたり。ミュージシャンだけじゃなくて色んな人が入って一つの作品を作るってことがしたかった。

佐藤守晃
──

それぞれのメンバーの色はしっかり出ているよね。“IMAGINE IS THE PORT”のコーラスの入れ方はチャンポンタウンを感じる。

煩悩

この曲は天川村に行く1週間前に出来た最後の曲。ゴスくんが旅行でラオスから帰ってきたと思ったら、怪しげなリズムのトラックと適当にゴスくんが歌っている音源が送られてきて、僕が歌詞をつけて出来た。

──

この曲だけゴルゴスくんが作った曲なんですね。

煩悩

人が作ったメロディをちゃんと歌うのが初めてだったから難しかった。ボーカル・ディレクションもしてもらったけど、ゴスくんの中で鳴っている節回しが僕のメロディの解釈と違っていて。「もうちょっと丸く歌って!」とか感覚をすり合わせるのが不思議で面白かった。後半に入っているコーラスも体育館に3列に距離を空けてマイクを立てて、みんなで歌ったんですけど、人の声が校舎の壁にぶつかって響く音が気持ちよくてたまんなかった。

──

その次の“あめあめふれとらりるれら”もひらまつくんとのフォークギター主体のデュオみたい。

煩悩

この曲も僕とひらまつくんが2人で一発録音した後に、ゴスくんにエレキを入れてもらう予定だったけど、ゴスくんが「これ多分僕いらんと思う」ってやめたんですよ。天川村の雨の音を入れるアイデアもあったけど、2人だけでもう完成したものが出来ちゃった。

清水煩悩、平松稜大(たけとんぼ)
──

過去2作は一人だけの世界で完結していた中で、他者のアイデアが入ることって清水煩悩の音楽としてかなり大きな変化ですよね。

煩悩

人と音楽をやることの感動が今回一番の収穫かも。GarageBandでデモをざっくり作ってみんなに共有していたんですけど、いざ録音となって、一人で作った曲が自分以外の人たちと一緒に演奏した時に「あ~今、これはまさに音楽をやっているのだな~!」って思った。

 

“あどべんちや”の最初のパーン!と鳴る音も校舎にあったホウキを倒した時の音なんですけど、みんなで施設にあるものの中で「パーン!」探しをして。紙鉄砲作ったり、爆竹鳴らしたり、バケツ叩いてみたり、色々試したけど、ゴスくんがホウキを持ってきて倒したらもう完璧な「パーン!」。アルバム全体でみんなで遊んでいるような生音感も閉じ込められたのがよかったし、自由度が高いレコーディングだったのにちゃんと作品として締まったのがすごい。

──

アルバム制作はクラウドファンディングでの資金集めから始まっているけど、完成した作品だけでなくて、その遊びながら制作していく過程まるごと追っていくおもしろさがあると思う。

煩悩

レコーディングだけじゃなくて、今回のジャケット・歌詞カード・盤面と、今作っている“リリィ”のMVもsotoちゃんと組んだmetropolonicoっていうアートユニットで制作していますし、こういう部分も見てほしい。今フランスにいるsotoちゃんの弟もチームに加わったんですけど、これから3人で色々作っていく。

soto

「僕はここにいます!」と手を挙げていたい

──

完成した今、この作品はどういう手ごたえがある?

煩悩

ゴスくんとミックス作業をしている時にも言っていたのは、「この作品は船出だ」と。ついに僕の音楽の幕が開けた感じがする。過去2作をないがしろにするわけじゃなく、第一章の最終話でこれからまた第二章が始まっていく感覚もある。

──

その幕が開けたという感覚はどういうことから得られたもの?

煩悩

僕の曲が僕だけのオンリーワンじゃなく、みんなの曲になった。レコーディングに参加してくれた人、クラウドファンディングで支援してくれた人、宣伝のポスターを店に貼ってくれた人、色んな人の協力が濃縮されている。だから自信を持って「あとはみんなで楽しんでください」と言えるし、自分のもとから手離れしていく。そうしてるうちにもう次のアルバムの制作を始めてるし、また次の旅が始められる感じ。

──

なるほど。人と繋がりながら進めたこのプロジェクトもようやく完結ですね。

煩悩

まだ“まほう”のMVの撮影が残っているんですけどね。雪山で撮影する予定がコロナで延期になってしまったので、コロナ明け待ち、雪待ちで今年の冬に撮る準備をしている。

──

今回手ごたえを感じられたという自分の表現で人と繋がったり、巻き込んだ先に、煩ちゃんは何を期待していたり、目指している?

煩悩

うーん、むずかしいな。音楽で何かのメッセージを伝えたいというより、世界中の人に向けて「僕はここにいます!」と手を挙げていたいのかも。もしかしたらブラジルの田舎に住んでいる男の子が聴いてくれて、明日バイト頑張ろうと思ってくれるかもしれない。上海の高層マンションに住んでいるお金持ちが「この子いいね!もう一杯お酒飲もう」となるかもしれない。

──

どこかの誰かに自分の存在や表現が何かしら寄与することに興味がある感じ?

煩悩

そんな感じ。無意識に人は答えを探し始めるけど、そうではなくて、僕がこだわって何かをやると、誰かが元気になって、そうなったら僕も元気になる。その単純な人と人の連鎖とかコミュニケーションが好き。この前“リリィ”を先行配信したときにインドネシアの人から日本語で「ぼんちゃんの音楽が好きです!」と翻訳したメッセージを送ってきてくれたんですよ。だから僕もインドネシア語で翻訳ツール使って返信したらまた「嬉しい!」って日本語で言ってくれた。手を挙げていたら「僕はここにいるよ!」は届くんですよ。そうやってちょっとずつ、答えを見つけなくても旅ができる仲間を増やしていきたい。

──

なるほど。この作品自体が煩ちゃんのやりたいことに向かう新たな船出というのもわかった気がする。

煩悩

うんうん。確かに今回で仲間は増えましたしね。

──

じゃあ船出を果たした、この次にやりたいことはある?

煩悩

今回が楽しかったからもう一回、声にフォーカスした音楽を作りたい。上手い下手ではない「歌う」行為に対してもっと可能性ありそうな気がしていて。例えば、子供の声とか、100人でレコーディングとか、とにかくあの体育館で歌った時とか、野外で歌った時の人の声がぶつかるという原始的な体験が衝撃的やったから、また作品にしたいな。

IN,I’M PRAY SUN

 

 

アーティスト:清水煩悩

仕様:CD

発売:2020年7月29日

価格:¥2,500(税込)

 

収録曲:

1. リリィ

2. まほう

3. あどべんちや

4. IMAGINE IS THE PORT

5. 天ノ子

6. あめあめふれふとらりるれら

7. lullaby

 

Webサイト:https://www.shimizubonnou.com/

Twitter:https://twitter.com/shimizubonnou/

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