
“2023”で次の扉を開いた3人のハイライト – ベルマインツ インタビュー
まだ想像もできない距離を、ベルマインツはゆく!
兵庫・大阪を拠点に活動している3人組ポップバンド。盆丸一生(Vo / Gt)と小柳大介(Vo / Gt)、二人のソングライターを擁し、前田祥吾(Vo / Ba)も含めたハーモニーでポップに景観・情感を描いていく彼ら。8月に配信リリースされた“ハイライトシーン”のレビューでは歌詞を引用して、冒頭のような威勢のいいことを書いてしまった。痛快なほどキャッチーなメロディが並び、パートが矢継ぎ早にローリングストーンしていく複雑な構成だが、石若駿(Dr / Per)、千葉岳洋(P)、宮田“レフティ”リョウ(プログラミング / Syn)を迎え、剛腕に成立させてしまうアンサンブルを構築。メソッドから遥かに逸脱したポップ・アイデアがぎちぎちに詰まった奇跡みたいな楽曲だった。
しかしそんな“ハイライトシーン”も彼らのネクストステージのプロローグだったのだ。初の全国流通作品となるシングル“2023”は、淡くて儚いミディアム・バラッド。卑近な未来である2023年を追憶するような一見矛盾した時制と、アンビバレンスな心情が描き出す景色が心の琴線をじりじりと炙ってくる。“ハイライトシーン”と同じく参加している石若、レフティら豪華な布陣も「この曲のためだったのか!」と思わず膝を叩いてしまった。ハツラツと突き抜けるような歌で彩ってきたこれまでの彼らのポップスが、一段ステージが変わって捉え直したかのような新境地なのだ。また鈴木圭による曲の景色を一筆書きするようなクラリネットも象徴的で、井上花月(Cho / Laura day romance)、ミズグチハルキ(Per)も立体感のある色を添えている。
盆丸・小柳が10代から始めた弾き語りユニット・ミートボールズから、2018年にベルマインツへと改名して3年足らず。スピード感をもって活動を展開してきたが、“ハイライトシーン”と“2023”は間違いなく最大の分岐点となるだろう。例えるならばエレキ化した1978年頃のRCサクセション?『KING OF ROCK』と“サマーヌード”を発表した1995年の真心ブラザーズ?いや、新たな5人を迎えバンドとなった2013年のKIRINJIか?そのいずれも的の中心を射ている気はしないが、最後にこう未来を予言して、いざ本編。彼ら3人に行ったインタビューに突入しよう。
メタモルフォーゼ・ベルマインツ。2023年にもなれば、彼らの音楽は想像の先にいるだろう。
どんな時代でも、すっと入ってくるような音楽でありたい
盆丸さんと小柳さんが二人でやっていたユニット・ミートボールズから、ベルマインツに改名してバンドになったのが2018年の春ごろでしたよね。まず改名に至った背景を教えてもらえますか。
僕は関西学院大学の軽音楽部でバンドをしていましたが、小柳とはその前から二人でミートボールズとしてたまに弾き語りをしていて。それをバンドにしたいという気持ちはずっと持っていたんです。だから2017年の終わりに僕が軽音楽部を引退したタイミングで「いっぺんやってみよう」と。周りの同学年はそこから就活を始めるんですけど、自分は大学生として残された時間ぐらい、もうちょっと本格的に音楽を続けたかった。
だからすでに卒業していた先輩をサポートに誘ってミートボールズのバンドセットを作って、その初ライブで改名することを発表しました。ベルマインツの最初のシングル『流星タクシー/ケセラセラ』はミートボールズ時代の最後に僕と小柳がそれぞれ作った2曲で、このライブでもすでにやっていましたね。
盆丸さんが関学の軽音楽部でMr.Children、BUMP OF CHICKEN、bonobosなどのコピーバンドをしていた頃の動画を今でもYouTubeで見ることが出来ますが、この経験が今のベルマインツに活きているところはありますか?
コピーなので楽曲のアレンジを考えていたわけではないのですが、「ここはもっと前のめりで、ここは後ろでリズムをとる」みたいな細かいグルーヴ。バンドとしてのノリをつくることが重要なんだとはこの時に気付いたと思います。
再生数もかなり伸びた動画でしたが、それがモチベーションに繋がりましたか?
後押しになった部分はあります。「この動画で歌っている人はオリジナルをやっているのか?」とか「大学で音楽やめるんもったいない」みたいなコメントをいただいたり。
ではベルマインツとしてはどういう音楽をしようと?
ミートボールズの頃から小柳が言っていたのは、ジャンルは絞りたくないということと、政治的なことは言わないという、2つですかね。正直僕は最初、作詞・作曲の表現にあまりこだわりがなかったので、小柳の考えについていきました。
政治的なことは言わないというのは?
そういうメッセージを伝えることに音楽を使いたくなくて、もっと普遍的なことを歌いたい。
あともう一個ありました。その時代だけの流行りはやりたくない。どんな時代でも、すっと入ってくるような音楽でありたい。

ベルマインツの音楽に普遍性を追い求める姿勢はすごく感じられますが、今は聴き方や認知の広がり方も多様化して「お茶の間」すら存在しない時代ですよね。みなさんにとって普遍性を目指すことってどのように捉えていますか?
普遍性を目指すこと自体が確かに前時代的にはなってくるんでしょうけど、その「お茶の間」があった頃のイメージにすがっている部分はあると思います。やっぱり90年代の日本のポップスみたいなみんなが口ずさめる歌に憧れているんで、1曲でもいいからそういう曲がつくれたらいいなと。
どんなにCDが売れなくても、聴き方が変わっても、音楽はみんな聴くじゃないですか。自分で聴こうとしなくてもその辺でBGMとして流れている、巷で流れてきた歌がよかったらみんな聴いてくれるということをずっと信じているというか。
バンドでもありユニットでもある可変性
こういうところを目指したいという憧れがあるバンド、ミュージシャンはいますか?
ベルマインツの向いているベクトルで言えば、自分はキリンジと真心ブラザーズとかですね。バンドかと言えば間違いなくバンドだし、ユニットといえばユニットともとれる。
みなさんはアコースティック・ユニットぽいこともやりますし、もちろんライブハウスではロックバンドとしてやるという面で、真心やキリンジはすごく納得しました。
自分はQueen(クイーン)ですね(笑)。

クイーン!確かに普遍性においてはバツグンで、編成も柔軟。
バンド編成でいうとベルマインツ2018、ベルマインツ2019、ベルマインツ2020というくらい、変わっているんですよ。2018年は自分と小柳と、サポートにドラム、ベース、キーボード、パーカッションを入れた6人編成。2019年には前田が加入しましたが、その頃キーボードをどうアレンジするのかがわからなくて、このままサポートの方にお任せしているのはいかがなものかと考えていて。だからサポートはドラムのみにして、4人で出来るシンプルなことをとことんやろうとして出来たのが、『透明の花ep』です。これを経た次のアプローチとして、またキーボードや他の音を入れてみたくて作り始めたのが、今回の“2023”というざっくりした変遷。
“2023”からベルマインツ2020の第三形態に入ると。
初めからキーボードやストリングスも絶対入れたいと思っていて、曲が出来たタイミングや、お声がけいただいた事務所のチームがこの1年でググっとまとまって今回実現できました。
色んな編成を経て今3人ですが、今後ドラムや他のパートをメンバーとして迎える可能性もあるのですか?
全然あります。でも今の3人で動けるメリットも感じていて。例えばカフェで演奏するとなっても本来ドラムの人がカホンになったり、パートを削ったりせず、純度100%のベルマインツとして出来るのはすごくいいこと。それと曲に応じて、ドラムやキーボードに入っていただく方が変わるのも、今いい刺激になっています。

「V」の位置関係にいる3人それぞれの役割
なるほど。では昨年から前田さんが入ったことでバンドはどのように変化しました?
バンド内の雰囲気でいうと僕と前田が大学の先輩と後輩なんですが、小柳と前田は趣味の部分で話が合う。小柳と僕とじゃしない会話が増えました(笑)。
楽器や機材の話とか。
盆丸はギターのスペックとかシリーズには興味ないもんな。
あんまりよくわからないんですよね~……。だから前田がいると、三角形というか「V」のイメージで根本をつなげてくれる感じがします。小柳と自分はどちらも曲を作って、歌を歌う。でもバンドであることを意識するとソングライティングだけじゃない視点が必要なので。
ソングライター思考の2人に前田さんの第三者的な意見が入って、初めてベルマインツはバンドになるというか。
そうですね。単純に意見出す人間の頭数は2人より3人の方がいいし、ベースとドラムの内の1人が、僕らと同じレベルで曲作りに関わっているのは大きい。サポートドラムとの連携もスムーズですし。あと僕と盆丸は歌ってコーラスもしながら、ギターを弾いていることが多いので、印象的なフレーズをベースに飾ってもらうこともよくある。
2人の作る曲を受け止める側の前田さんは、持ってきた曲を聴いてどのように感じています?
曲を作った方が歌うというわけでもないので、曲と歌詞を見ると「この部分はこっちが歌う、ここは誰と誰がハモるパートやな」とわかるんです。3人で役割が振り分けられているというか、なんとなくこの曲のソロパートは誰が弾くというのが見えている感じ。

誰が作ったかというより、このパートは誰が担うという役割分担が3人で出来ているんですね。
確かに迷いがない。今回のギターソロは僕だなとかパッパと決まる。
“夜霧のしわざ”は作詞:小柳、作曲:小柳・盆丸ですが、盆丸さんが歌っていますし、作詞作曲:盆丸の“透明の花”はパートごとに歌い分けていて、メインで作った方が歌うというわけでもないですね。その役割分担の基準はどこにあるのでしょうか?
お互いの得意不得意を理解しているので、わざわざ言わなくてもわかっているんでしょうね。
自分はベルマインツの曲を作るという脳でいるので、3人の存在意義は考えています。ずっと僕が歌う曲でも、隣で小柳がしていることのイメージは常にあって、それがなけりゃベルマインツの曲じゃない。その意図がデモを聴かせた段階で言わずとも伝わっているのかな。
あと役割で言えば、アレンジやコーラスの面でも自分はどうしても普通じゃないことをしたいと考えてしまうので、「いや、ここはストレートに行った方がええやろ」と芯を通してジャッジしてくれるのは小柳です。
盆丸が持ってきた曲はいろんなアイデアが入っていて「もったいないから2~3曲に分けてきて」とよく言いますね。単純に複雑すぎて絶対ライブで歌いながら弾けないし、音源とライブのアレンジがあまりにかけ離れるから、少し現実的な方に寄せた方がいいとか。
演奏パート以外の部分も役割分担がうまくできていますね。今までの楽曲で一番、その3人の役割がバッチリかみ合った手ごたえのある曲をあげるとすればなんでしょう?
曲としてうまく行ったのは今回の“ハイライトシーン”と“2023”ですけど、特殊な作り方だったしなぁ……。「3人の存在意義」という意味で純度が高いのは“透明の花”なのかな。
純度というのはどういう意味?
それぞれが得意な部分を詰め合わせられた手ごたえがあるというか……。イントロから3人とも単音のフレーズを弾いていて、絡まることで気持ちいいというのが上手くいった。前田のベースは派手過ぎない曲の中で、逆に活きるんですよね。のっぺりしたノリの中で頭からベースラインが効いていますし、小柳との中域でのハモりも自信のある部分だし、ギターソロ・パートもないのに最後まで飽きずに展開していく。自分たちの中でのアイデアがよりどりみどり。
いろんなアイデアが入っているけど整理が行き届いていて、心地よく聴ける曲が作れたという実感があったと。
そうですね。これが前田加入後の1曲目にできたのも手ごたえがあった。
そこまで加入前にあった曲を弾いていたので、“透明の花”はここからが今のベルマインツと言えるような曲ですね。
豪華な協力者と共に完成した難曲“ハイライトシーン”
“2023”は『透明の花ep』の制作中から作り始めていた曲で、イメージが最初からしっかりあったので今年しっかりとした形で出そうと前から計画していて。それで今回レフティさんや、石若さん始め、理想の方たちと一緒にレコーディングできることになったんです。だからもう2曲くらい一緒にレコーディングしようと、必死に難しく考えて作った曲が“ハイライトシーン”です。
レコーディングは4月の初めに東京でしたんですけど、社会状況もあって完成までいかず、7月にもう一回行って。その間にもレフティさんとやりとりさせていただいてようやく完成しました。
“ハイライトシーン”は爽快な曲ですが、どういうイメージで作りましたか?
イメージがはっきりあった“2023”の逆で、とにかく変なことがしたかった(笑)。今までのベルマインツの匂いを残しつつ、また違う扉を開いてみるような、インパクトのあるもの。
自分も“2023”をばっちりいい形にするレコーディングという認識で。だから“ハイライトシーン”を先に出すとは思っていなくて、カップリング曲になるのかなというくらい変な曲だった。
「変」と仰いましたが、たしかに目まぐるしくリズムが変わっていく複雑な構成です。
メロディの動きも変わっているし、コード進行も今までの自分の中にはなかったもの。でも気持ちよく聴こえるというのがテーマでした。その時たまたま聴いていた矢野顕子さんの音楽を参考にしてみたり。噛み合っているのか、いないのかわからない突飛なメロをつなぎ合わせているので、3人の中では「これホンマにいけるんか?」と完成系が見えないままレコーディングに突入しました。
今回レフティさんにはデモからずっとやり取りさせていただいて、アレンジのアイデアを色々試してもらって。空間系や飛び道具的な音を入れてもらって「違うんや」とか、この音が入ると締まるなとか。それでも構成が複雑で馴染んでいない気がずっとしていて。
レコーディング段階でもみなさんの中ではまだこの曲の落としどころをつかめていなかったんですね。
はい。それでレコーディング後のポストプロダクションで、レフティさんのスタジオに行かせてもらった時に、Aメロのベースに重ねてシンセサイザーで低い音を入れてもらったんですよ。
ベースの1オクターブ下の音がブーーーーって鳴っているんです。
それが入ったアレンジを聴いた時にようやく完成形が見えた。

やっと噛み合った!
自分らの好奇心を詰め込んだ曲なので、変なところも良さだったんですけど、その時にようやく曲としてつながった感覚がありました。この3人やからできた種だったし、他の人に入ってもらって可能性が広がって完成したのが新鮮でした。
これまでアレンジのジャッジをしていた小柳さんとしてはこの曲の仕上がりについてはいかがでしょうか?
もはやライブでの再現性は捨てましたね(笑)。『透明の花ep』までは音を引き算する考え方で、あくまでライブで演奏することが軸でしたし、それしかやり方を知らなかった。じゃあ今回はどこまで音を入れて構築するのかをやってみたという感覚です。それならとことんやろうと“ハイライトシーン”は自分のギターだけで5本も入っています。
真心ブラザーズも“ENDLESS SUMMER NUDE”は大所帯でボカーンとやってますけど、たまにライブでベース・ドラムをだけ入れた4人だけでもやっているじゃないですか。「これでいいんや!」とシンプルさがかっこよく見える。だからこれからのライブではそういう幅も見せていきたい。
あと“ハイライトシーン”は作詞に初めてメンバー3人ともクレジットされていますよね。
メロディとコードは自分が作ったんですけど、どういう曲なのか見えなかったから歌詞が全然作れなくて。前田がAメロから「ここは“忘れてしまったまま”だと思う」と断片をくれたんです。そこを元に小柳が書き進めてくれて、最後に僕が足していった。だから3人で作ったけど、ディスカッションはそれほど多くなかったです。
示し合わせたのは「ポジティブに」というくらいです。
たしかに一貫したストーリーはない。
3人が示し合わすことなく書き足していった。その断片一つ一つがまさに「ハイライト」ですもんね。
そういう作り方しかなかったんですよ。曲の構成がコロコロ変わっていくので、ストーリーを作るのも違いましたし。
だから他の2人の考えはわからないけど、自分としてはコロナ禍も歌詞に影響しています。家から出られなくなった状況から、どうにか頑張り方を探そうと前向きに勇気づけるものにしたかった。具体的な描写はないけど、いつか外に飛び出そう、あのか細い光を追い求めようという感覚。だからこのタイミングでしか書けなかったし、当初予定で4月にレコーディングが終わっていたら、ボツにして違う曲に向かっていたかもしれない。
石若駿とのレコーディングと渾身のバラード“2023”
アレンジに関してレフティさんのお話が出ましたが、ドラムで参加された石若さんとのレコーディングはいかがでした?
人気のある方ですし、もう参加が決まった時点で「すげー!」という気持ちでしたが、本当にすごく前向きに自分たちと一緒に曲を作ってくれて。4月のレコーディングで石若さんとベーシックを録音したのもいい思い出です。
“ハイライトシーン”の2回目のBメロの後の拍子を4/5にしたのは石若さんのアイデア。予定していたテンポより速くしたり、ラストのサビは「2周行きましょうよ」という提案もしてくれました。絶対こっちの方がよくなっている(笑)。

最初に聞いたときは意外な組み合わせにも思えましたが、ベルマインツの音楽に石若さんが入ることでどういう期待をしていました?
どんなドラマーがベルマインツにとっていいのか、ずっとイメージしていたんですよ。日本のポップスがスパっと軽快にできて、でもガツンとロックもできて、その中にちょっとジャズやソウル、ヒップホップのノリもあって欲しいという3点が欲張りにもあって。そうなるとぼんやり石若さんが見えていたんです。『坂道のアポロン』で僕が最初に石若さんを知って、もちろんCRCK/LCKSとかAnswer to Remember、ソロの『Songbook』シリーズ、君島大空のサポート……常にジャズだけどポップスにも通じているし、わかりやすくて遊び心があるところがすごい。
特に今回の“2023”はこれまでのJ-POPの流れとは違う音とビートを入れたかった。そのニュアンスを出してくれるのは石若さんだろうなと期待していました。
なるほど。その真打ちとなる“2023”ですが、今までのベルマインツのイメージとは違って、エモーションは抑制されているし、感情の機微を繊細に描く歌にグッと来てしまいました。
書いた時からめちゃめちゃ好きで、ベルマインツとして出すべきバラードが出来たと思いました。でも『透明の花ep』を作っていた一年前の時点では、実際入っている音をイメージした時に、まだできないなと。だから早く次のステップに行きたいと、この曲が引っ張ってくれる感覚がどこかにあったんですよね。
まだ4人のシンプルさを突き詰めていた時ですもんね。
そうです。イントロが最初にできたんですがフルートか、トロンボーン、チェロとかをオクターブで重ねるイメージがありましたし。今回はレフティさんに色々パターンを作ってもらって、クラリネットとチェロに決めました。実際は鈴木圭さんにすごくいいクラリネットを入れてもらって、シンセのチェロを重ねています。
“2023”という近からず遠からずの未来をタイトルにしたテーマが興味深いです。
“2023”というテーマの元は完全に明言しないようにぼやかしますが、歌詞が半年ぐらいできなかったんです。その間に“透明の花”と“ロマンス・グッドバイ”のMVを作ってもらった寺本遥くんの制作展を見に行って。その時にぼんやりとした色だけあったこの曲に、すごくしっくりくる作品があったんです。日常が自分の意思ではないところで変えなければいけない状況になったドキュメンタリーがあって。寂しい気持ちでも前を向いていかなければならないことに対する、彼の優しさがすごく伝わってきて「うわ、こういうことを歌おう」と感銘を受けて仕上がりました。
具体的なイメージの元が寺本さんの作品にあるんですね。
だから今回のMVも絶対彼にお願いしたくて。“2023”はMVもあって完成するような感覚があります。
僕らが関わる音楽が全てベルマインツになる
お話を伺ってまだまだベルマインツの可能性を感じました。2018年から毎年スタイルを変えてきましたが、その次の第4形態はどういうところを目指していますか?
形態……角が生えるとかっすねえ。
じゃあ自分は、尻尾が生えるといいなあ……。

……いや、『シン・ゴジラ』ちゃうんすよ(笑)。
(笑)。正直なところは全く見えていないです。今この次の作品に向けて制作していますが、“ハイライトシーン”と“2023”は運のよさと周りのサポートがあって、ベストな環境で作ることが出来た。この幸せな経験を経て、次に出来るベルマインツの表現は何だろうということを考えています。
僕ら3人とサポートドラムだけで『透明の花ep』を作って、今回“ハイライトシーン”と“2023”ではすごく豪華に音を入れて。どちらのアプローチもやったので、次はどっちの方向にも行けるなとは思っています。色んな選択肢がある中で、次を考えるのがすごく楽しみです。
今回の2曲もかなりのトライアルで、今後も幅を広げていく中で、ここがあるからベルマインツの音楽たらしめているといえるものはありますか?
歌がよければなんでもありです。「僕らがやってればベルマインツです」って言えるようになりたい。例えば今までの曲は全部に盆丸と僕の声が入っているんですけど、僕がギターに徹していてもベルマインツだし、なんなら参加してなくても別にいいんじゃない?
うん、そこまでいけたら最高。曲作りだけとか。
3人が関わるものが全てベルマインツの音楽になる。
今、それをやるにはまだアイデアが足りない。自分が歌や演奏に関わらなくても、自分の存在を入れ込めるスキルをつけたいです。
今後は前田さんがメインで歌うかもしれませんしね。
それは2年以内には確実にあると思います。ステージの真ん中で帽子投げながら歌ってほしい。
沢田研二ね(笑)。大学時代にやってたやつ!

『2023』
アーティスト:ベルマインツ
仕様:CD
発売:2020年11月4日
価格:¥1,000(税抜)
配信リンク:https://lnk.to/3IOltW
収録曲
1.2023
2.雨
クレジット
1. 2023
作詞作曲:盆丸一生
編曲:ベルマインツ
Vocal, Guitar:盆丸一生
Guitar, Chorus:小柳大介
Bass, Chorus:前田祥吾
Drum, Percussion:石若 駿
Clarinet:鈴木 圭
Programming:宮田“レフティ”リョウ
Chorus:井上花月 (Laura day romance)
Percussion:ミズグチハルキ
Recording:Neeraj Khajanchi / 中 賢二郎 (NK SOUND TOKYO)
Mixing:Neeraj Khajanchi (NK SOUND TOKYO)
2. 雨
作詞作曲:盆丸一生
編曲:ベルマインツ
Vocal, Guitar:盆丸一生
Guitar, Chorus:小柳大介
Bass:前田祥吾
Drum:梅本浩亘 (bonobos)
Recording:畑田和大 (STUDIO UMI)
Mixing:藤井亮佑
Mastering:山崎 翼 (Flugel Mastering)
Art Direction & Design:盆丸一生
Jacket Photo:寺本 遥
ベルマインツ
左から
前田祥吾(Ba)
盆丸一生(Vo / Gt)
小柳大介(Vo / Gt)
2018年結成の3人組ポップスユニット。神戸・大阪を拠点に活動中。
2人のシンガーソングライター、盆丸・小柳のツインボーカルに前田のコーラスが加わったハーモニーを武器に、往年のポップス・ロックにリスペクトを感じる懐かしくも新鮮な楽曲が特徴。
Twitter:https://twitter.com/bellmainz
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- 副編集長
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1991年生まれ。大阪北摂出身、東京高円寺→世田谷線に引っ越しました。
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ANTENNAに在籍しつつミュージックマガジン、Mikikiなどにも寄稿。
過去執筆履歴はnoteにまとめております。
min.kochi@gmail.com