チャンポンタウンはpsybavaや溺れたエビ!で活動していたゴルゴス(Vo / Gt)が自身の歌うバンドとしてken.ak(Key / Syn)らと共に2018年に結成した4人組。結成1年足らずだが、2019年1月には中崎町NOON+CAFÉでワンマンライヴを行うまでに精力的な活動を行っている。本作はそんな彼らの2作目となる4曲入りEPだ。彼らの“チャンポン”とはBO GUMBOSのゴッタ煮ガンボ・ミュージックを現代に引き継ぐものとの視座だろうか。そんなことも感じるほどサイケやフォーク、ニューオーリンズ音楽をも同居させたサウンドに、歌心溢れるメロディと溺れたエビ!譲りの素っ頓狂なリフが乗っかっていくスタイルがすでに確立されている。
中でも表題曲“ごきげんよう”の雄大で夢見心地な質感と冒頭の歌詞「死んだらこのまま天国へ 連れてってくれるかい」はBO GUMBOS“夢の中”の「この世の向こうへ 連れてっておくれ」と共鳴する響きを持つ。しかし絶望の淵に立っているかのようなどんとの絶唱に対して、ここでのゴルゴスは願い・悲しみこそあれど、全部を包み込みこんで平気な顔をして歌っている。面倒なことは後回しという屈託のなさこそが彼らの魅力だ。
そんな魅力はバンド名を冠した“チャンポンタウンのテーマ”でも存分に発揮されている。歌詞では不安や別れ、世知辛さを感じながら日々を生きる中、一転サビでは雨が止んで雲の流れをしばしの間眺めているような描写に場面が切り替わる。ふっと肩の力が緩まって、まったりとしたグルーヴについつい身体を預けてしまう。
この曲を聴いて思い出した記憶がある。筆者がまだ大学生だった2013年に大阪の祝春一番コンサートの有志スタッフをしていた時のこと。事務所で日暮れまで黙々と作業を行っていて、一たび休憩となればスマホを触るの繰り返し。そんな筆者に主催者・福岡風太は窓の外を眺めながら「今日のお月さん、どんなんか知ってるか?色んなことがわかってくるで」と言った(祝春一番HPの「ごあいさつ」2013年3月26日の箇所でも同様の要旨のメッセージを今でも読むことが出来る)。常に情報に触れる状態で、つい手元ばかりを見てしまいがちな現代。でもたまには空を眺めてリセットし、再び思考を巡らせ前に進んでいこうじゃないか。そんな太古から今の市井に至るまで変わらない根源的な安らぎが、“チャンポンタウンのテーマ”にも携わっているように思えた。
混沌としたこの世界。言い換えれば“チャンポンタウン”。本作には相手の無事を祈るごあいさつ『ごきげんよう』の思いやりに溢れていて、聴く者の心の詰まりを解きほぐす。
WRITER
- 峯 大貴
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1991年生まれ。大阪北摂出身、東京高円寺→世田谷線に引っ越しました。
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ANTENNAに在籍しつつミュージックマガジン、Mikikiなどにも寄稿。
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- 堤 大樹
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26歳で自我が芽生え、とうとう10歳に。「関西にこんなメディアがあればいいのに」でANTENNAをスタート。2021年からはPORTLA/OUT OF SIGHT!!!の編集長を務める。最近ようやく自分が持てる荷物の量を自覚した。自身のバンドAmia CalvaではGt/Voを担当。
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