REVIEW
独り言
阿佐ヶ谷ロマンティクス
MUSIC 2020.03.05 Written By 峯 大貴

終わりのない日々に向けて、今再び彼らのポップ・ミュージックに灯がともる……東京を拠点に活動するバンド、阿佐ヶ谷ロマンティクスが3曲入りのEPを配信限定でリリース。2018年の2ndアルバム『灯がともる頃には』以来の新曲であり、本間玲(Ba / Mach Four)が正式メンバーとなった5人編成としては初作品となる。

 

 

2014年の結成より複数の意匠を折衷することでもって、オリジナリティを見出してきたグループだ。ニューミュージック~J-POPに基づいた歌をロックステディ、ラヴァーズロック、ミナス・サウンドなどのフレーバーで消化するひねりの効いたポップ・ソング。しかしそのリズムやサウンドはジャンルの融合によるフレッシュな音像を求めたものでも、ルーツ・ミュージックの復権を狙うものではない。貴志朋矢(Gt / Cho)が描く素朴で生活感の滲む詞・メロディと、有坂朋恵(Vo)の無垢な声と伴って共鳴し、東京で生きる20代の心情のアンビバレンスさを表現するために機能しているのが大きな特徴であり、また魅力であった。

 

その点において1stシングル“春は遠く夕焼けに”(2015年)はやっぱり特別だ。古谷理恵(Dr)によるステッパーズ・ビートから始まり、その当時の引き出しを全て詰め込んだようにパートごとに切り変わるリズムパターン。リフレインするキャッチーなサビのメロディ。そして「その頃は終わりを迎えるモラトリアム」と有坂が名残惜しさを滲ませながら、青春時代に別れを告げる歌唱。大学生から社会人になるタイミングだったことによる不安定な心情が乗っかった、2015年の彼らだからこそ生まれたメモリアルな楽曲だったのだ。

そんなこれまでの歩みを踏まえ、久々に届いたこの3曲には80年代の歌謡曲やニューミュージックが取り入れられている。それによって彼ら自身が物語の当事者から引き剥がされ、普遍性がブーストされているのが、これまでの楽曲群とは大きく異なる点だ。

 

先行で公開された“独り言”では所在無げなギターリフが本作のムードを象徴しており、有坂の歌唱も研ナオコ“夏をあきらめて”のごとく黄昏ている。一方でタメのきいたキャッチーなサビには1986オメガトライブ“君は1000%”を思わせる、現代からトリップしたセピア色のメロディが小気味よい。続く“めぐり逢えたら”では前半にラヴァーズロックのビートが現れ、有坂の歌が跳ね回る点には、これまでの彼らのアンサンブルとの連続性が感じられる。しかし堀智史(Key)の大胆なシンセ・フレーズがサウンドの核を成しており、アウトロに向けて熱量が上がり壮大なエスケープが展開されるのが新鮮だ。そして終曲“ネオンサイン”は“所縁”、“君の待つ方へ”にも通じるホーンも導入したキャッチーなナンバー。煌びやかなサウンド・セクションの一方で「ついて消える 一時的な景色」と繰り返し歌われる儚さとの、表裏で魅せる彼らのベスト・メソッドだ。

いずれもドライで軽やかな日本のエレジー(哀歌)と言えるような仕上がり。その眼差しとしては〈歌謡曲と黎明期のニューミュージック〉がコンセプトであった見汐麻衣のソロ作『うそつきミシオ』(2017年)と近しい姿勢を感じる。決して懐古主義なのではなく、自らの物語を表現するだけにとらわれない、時代を超えた普遍性を会得するためのアプローチだ。阿佐ヶ谷ロマンティクスが描く日本語ポップスは、今大きく曲がり角を迎えている。

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