INTERVIEW

伝道と更新を目指すアコースティック・サウンド – たけとんぼインタビュー

MUSIC 2022.08.14 Written By 峯 大貴

ついつい凸凹コンビという安易な表現を使ってしまいそうな、一度見たら忘れられないキャラクターだ。1994年生まれの平松稜大(Gt / Vo)と1996年生まれのきむらさとし(Dr / Vo)の二人による、東京を中心に活動しているフォークロック・バンドたけとんぼ。

 

アコースティックギターと美しいコーラスワークを軸にしたアンサンブルは、70年代のウエストコースト・ロックを受け継いでいる。また平松の作る歌謡性の高いメロディとソフトな歌声には、ガロ(GARO)やかぐや姫、チューリップなどの日本のフォークやロック、ニューミュージックからの影響も大きい。しかしノスタルジーには捉われず、現在に響くサウンドに再構築して鳴らそうとする意地を強く感じるのだ。そして自分たちの好きな音楽たちを一緒に楽しんでくれる人たちが必ずどこかにいるはずという、ピュアな自己開示と確かな誇りもある。

 

本格的な活動開始から約6年を経て、1stアルバム『たけとんぼ』が曽我部恵一(サニーデイ・サービス)が主宰する〈ROSE RECORDS(以下 ROSE)〉からリリースを果たす。今までを総括する名刺代わりの作品をようやく作り上げたこのタイミングで、平松・きむらにたけとんぼで目指すアコースティック・サウンドの伝道と更新について語ってもらった。また約5年間在籍していたきむらがこの度卒業。この二人で答えてもらう最初で最後のインタビューとして記録しておく。

 

写真:

配信リンク:https://linkco.re/2DFhPxCc

目指すは全員シンガーでありソングライターの集団

──

たけとんぼはどういう経緯で生まれたバンドなんですか?

平松

2015年3月にCrosby, Stills & Nash(クロスビー、スティルス&ナッシュ / 以下CSN)が来日して、〈東京国際フォーラム〉にコンサートを観に行ったんですよ。お客さんはかなり年上の方ばっかりでしたが、歳が近そうな人を一人だけ見つけて。休憩中にちょっと話したら、1歳上のその人も僕と一緒で、ギターをやっていたんです。それで翌日に池袋でお茶しようということになって、その方がメンバー募集で知り合ったというベースの人を一緒に連れてきました。僕はウエストコースト・ロックが好きで、そのギターの方は戦前ブルース、一緒に来たベースはBert Jansch(バート・ヤンシュ)やFairport Convention(フェアポート・コンベンション)とかブリティッシュ・フォーク好き。CSNは3人とも共通して好きだったから、そこで一緒にバンドやろうとなりました。

きむら

渋、渋、渋な3人が集まったんだね。

平松

そうしているうちにドラムも入って4人になる。ベースがすばらしかとつながっていて、彼らが出入りしている渋谷の〈喫茶SMiLE〉だったらライブができるらしいと聴きつけたので、その年の12月に初めてライブをしました。バンド名はまだなくて「平松稜大バンド」。その後にはボーカルも入ったので5人組の時期もありました。

──

どんなバンドにしたいと思っていたんですか?

平松

この時はまだ自分がフロントマンという形にはしたくなくて。CSNとかEagles(イーグルス)みたいな全員が曲を作るし、全員が歌える、一人一人の個性が立っているバンドにしたかったんですよ。でも自分以外は曲を作ってこないし、バンド名のアイデアもなかなか出なくて。

──

では「たけとんぼ」になったのはなぜ?

平松

アルファベットやカタカナだとバンド名がずらっと並んだ時に埋もれそうだし、漢字はちょっとかっこつけすぎるなとは思っていて。

きむら

外道とか?

平松

村八分とかね。あと亜無亜危異。

──

だいぶ極端な例ですけどね!(笑)

平松

だからゴールデン街の〈ナベサン〉でひらがなの案を色々出しながら飲んでいたら、そこの店主が言ってくれた「たけとんぼ」をもらいました。

平松稜大(Gt / Vo)
──

きむらさんもまだいないし5人組だし、今とは全然違う体制なんですね。

平松

そこから徐々に自分以外のメンバーは音楽性の違いや音信不通になったりして抜けていくんです。だからとにかく知り合いやライブができる場所を増やしたいなと思っていたのが、2016年から17年にかけてのことです。〈SMiLE〉に出入りしていたので、そこで知り合った人が別の場所でライブをする時を狙って行きまくってた。その中でクララズさんとか三輪卓也さん(アポンタイム)、さっちゃん(THE FOWLS / ヨットヘヴン)とか、今に繋がる人脈ができました。

 

あと新宿ALTAの〈HMV record shop〉ですばらしかとバレーボウイズのインストアイベントがあって、そこにも僕は観に行って初めてバレーボウイズのネギちゃん(シュウタネギ / 現WANG GUNG BANDU_A_MI)と出会ったことも、重要な出来事です。

──

人脈は広がるがメンバーはどんどん辞めていくと。ではきむらさんと平松さんが出会ったのは?

きむら

ちょうど同じ時期で2017年3月11日の〈高円寺U-hA〉です。僕がサポートで入っていた棚木竜介と図書館のライブに平松さんが観に来てた。そこで挨拶して、次に当時僕がメインでやっていた鳥人間ズのライブにも来てくれて。

きむらさとし(Dr / Vo)
平松

〈渋谷LUSH〉だったね。その時きむらくんがドラムを叩きながらハモっている曲があったんですよ。自分はGraham William(グラハム・ナッシュ)みたいな上の3度、5度の音でハモってくれる人を探していたので「見つけた!」と思いました。

きむら

その後すぐに鳥人間ズは解散しちゃうんです。すっごく落ち込んでいたら、当時平松さんが働いていたバーに誘ってくれて。

平松

お客さんのおじさん、おばさんにかわいがられてね。

きむら

それでバンドに誘われて、まずはサポートからと軽い気持ちで参加しました。

アコースティック・サウンドの伝道師であり開拓使

──

きむらさんは、たけとんぼの音楽はどう捉えていたんですか?

きむら

父が岡林信康さん、友部正人さんとかURCが好きで。母は忌野清志郎さんや、THE BLUE HEARTSが好き。だから小さい頃から70~80年代のフォークやロックは身近にありました。平松さんは2歳上ですが、近しい世代でそんな音楽性が合う人は珍しかったし、一緒にやれるのは嬉しいなって感覚です。

──

きむらさんはぎがもえかバンド、棚木竜介と図書館、湾岸ソルティなど様々なバンドに参加されていますが、その中でたけとんぼのアンサンブルの特色や、他とは違う気を付けているポイントなどはありますか?

きむら

平松さんはアコギ使いなので、スネアのスナッピーから出る音と帯域が近いんですよね。気にせず叩いていたらアコギの音が埋もれてしまうんです。だからスネアのチューニングや叩き方を注意しながらアレンジしないといけないので、最初は苦労しました。あとはやっぱりコーラスが重要。平松さんはバンド内にソングライターを増やしたかったというのと、コーラスの感覚も身につくから自分で曲を書いた方がいいと言われて作り始めたことは、自分にとってすごく大きいです。鍛えられたおかげで、歌を支えられるドラマーと言ってもらえることも出てきましたし。

──

プロフィールでも「アコースティックサウンドを中心にしたバンド」と称してますし、アコギの存在はやはりたけとんぼの核ですか?

平松

たけとんぼをやっているモチベーションの大きな一つが、アコースティックギターを活かすことにあります。アコギはライブ会場だけじゃなくて、酒場や公園、どんなところでも鳴らせて、なんなら半強制的にその場にいる人たちを巻き込むことができる共有のツールなんです。〈アコースティック・バージョン〉のためのもの、素朴さやしっとりさせるためだけに使うものではない。激しいロックだってできることも、これまでの歴史が証明しているし、楽器というものへのこだわりはありますね。

──

見方を変えれば、いわゆる四畳半的な日本のフォーク特有の懐かしさに対する抗いもありますよね?あくまで現代の音楽としてやろうとしていることの自覚が、年々出てきているような気がするのですが。

平松

昭和レトロとされることとの戦いですね。自分はたまたま好きになった音楽が70年代のウエストコーストとかフォークだったから。

きむら

古いから好きじゃなくって、好きな音楽がある時代に集まっていたという感覚。「昭和だね」と言われることもあるし、結果的にそういう一面を持っているバンドではあるけど、古い音楽をやっているとは思っていない。

──

自分もたけとんぼを最初に見た2018年頃は、正直ちょっとノスタルジックな印象もあったんです。でも徐々にリズムが多彩になったり、ライブの熱量がどんどん高くなってきて、固定観念から解き放たれた印象があります。

きむら

わかります。“今夜町をでよう”とか“恋をするなら”みたいな最初の頃からあった平松さんの曲は、メロディも詞もきれいなものが多かった。でも彼には意地の悪い部分もあるし、イライラしてることもある。その部分もだんだんと正直に出てくるようになってからおもしろくなってきた気もします。昨年出したCD-R『夏のコントラスト』に入っている“不快指数”とかは、ものすごく普段の平松さんらしさが出て「これこれ!」って思った曲です。「ムカつくことが多いし、暑くて蒸し蒸ししてサイアク!」みたいな。しかも僕は本来パワー系のドラマーなので、気持ちも入れやすいんですよ。

 

今回のアルバムに入っている曲では“紙飛行機”もメロディはきれいなんだけど、どこか独りよがりなところが出ている。そういう自分の汚い面、隠したい面も曲にできるようになってきたことには、平松さんのシンガーソングライターとしての成長が見られるかもしれません。

平松

あと周りの環境もありますよね。バレーボウイズとか、ゆうらん船、いちやなぎを聴いている人がたけとんぼも好きになってくれたりするし、「懐かしい」という見られ方は前ほどされなくなってきた。

──

たしかに同世代のバンドや世界的な潮流を見ても、たけとんぼの音楽はすごく今にフィットしてきている気がします。その一方でちゃんと上の世代の方から、学んだり受け継ごうとする姿勢が、活動内容にも出ていますよね。ライブのメンバーに一世代上のヒロヒサカトーさん(Gt / 井乃頭畜音団)を迎えて活動を共にしたり、日本のフォークのオリジネイター世代の斉藤哲夫さんと共演したり。

平松

世代が受け継がれていくのは当たり前ですけど、何が好きで何に影響を受けているかは、行動や発言や表現として示さないと、失われるものがいっぱいあると思うんですよ。ましてや今とんでもない世の中だから、先輩方がどう考えて活動してきたのか、どう歌っていこうとされているのかは積極的に学びたいんですよね。

──

ここまでの話の中でも人脈を広げたり、人を巻き込める共有ツールとしてアコギの強みを挙げていたり、音楽を通して人と関わることにこそ喜びを見出している気がしました。

平松

確かにもう一つの大きなモチベーションとして、僕は同好の士が欲しいんです。こういうのが好きだから、よかったら友達になりましょうと言っていたい。自分で音楽を表現することでその意思を伝えているのですが、そうすることで上の世代の素晴らしい方ともつながれるんだってことにだんだん気づいてきました。だから今度は自分の周りの同世代や、ゆくゆくは下の世代と混ぜていくようなことが起きたらいいですよね。おこがましいけど、そういうことを目的に音楽をやっているやつが一人くらいいてもいいはず。

きむら

でも実際に、サポートメンバーの和泉眞生さん(Gt / バンジョー)がサニーデイ・サービスの“おみやげを持って”に参加したり、たけとんぼがきっかけで他の人の機会が生まれているのは嬉しい。

平松

そうだね。あれはちょっと羨ましかったけど……(笑)

きむら

今回のアルバムも、自分たちだけでは絶対できなかった。平松さんがいわゆる同世代の音楽仲間だけじゃなくて、年上の方や、ちゃんと仕事として音楽をやっている人にもかわいがられながら、巻き込んでいったから実現したと思っていて。そこは本当に平松さんの才能だと思います。

MCまでおいしい、ライブのたけとんぼ

──

もう一つのたけとんぼの大きな魅力として、MCを含めてライブがおもしろいんですよね。以前、サポートの和泉さんが出番時間になってもステージにこないから勝手に演奏を始めて、ちょうど歌い出しのタイミングで和泉さんが焦って登場したら、全員でズッコケるとか。最高でした。

平松

あれは一種のハプニングでしたけど、MCはライブ前に考えていて、今は足元に置く紙には左側にセットリスト、右側に話すトピックを書いています。

きむら

平松さんは空気を作れる人だから。僕は機転が利くなぁと思いながら、その話題にただ乗っかっているだけです。決めすぎないことのおもしろさが出ていると思う。

──

平松・きむらで喋っていればなんかおもしろいって、ベテラン漫才師の領域ですよ(笑)

きむら

でも最初からできていたわけじゃないです。僕が加入した直後くらいのライブで、平松さんがMCの台本を書いてきたことがあって。「爆笑問題カーボーイ(TBSラジオ)のオープニングみたいなMCがしたいから、田中さんをやって。俺は太田さんをやる」って渡してきたんです。でも本番は足元の紙を読んでいるのがバレバレで大スベリ。あのライブは地獄でした(笑)

──

MCも楽しんでもらいたいというサービス精神が強いんですかね?

平松

もちろん音楽は聴いてほしいけど、ライブ全体で見てほしいです。MCが全くなくて、クールにやるのもかっこいいけど、「はい、どーもー!」っていうスタンスで楽しんでもらいながら、ちゃんと音楽を聴かせられるというのもかっこいいじゃないですか。

きむら

場がやわらかくなるから、音楽も聴いてもらいやすくなるよね。

平松

たまに曲に入れないこともある。この前のライブはちょうどきむらくんがボーカルの“花工場”の前のMCで、みんなニヤニヤしちゃって。

きむら

それで「ちょっとー!!歌えないじゃん!!」ってまたひと悶着して。

これまでの総決算!1stアルバム『たけとんぼ』

──

1stアルバム『たけとんぼ』ですが、カセットやCD-Rのリリースはあったものの、正式な音源作品としては2018年のEP『丘をこえて』以来。また初の全国流通盤です。このタイミングで制作に至った経緯は?

平松

曲自体はたくさんあるし、2019年あたりからずっと機は熟してた(笑)。でも曽我部恵一さんに出会ったことが大きいです。井乃頭畜音団のライブを〈渋谷B.Y.G〉に観に行った時に曽我部さんもいらしていたので、『丘をこえて』を渡したんです。そしたら「聴いてますよ」って言われてびっくり。その数日後に「〈ROSE〉と〈なりすレコード〉の共催イベント(すみだオモシロ文化祭)に出ませんか?」と誘ってもらったりして、まずお付き合いができました。

きむら

初めは「『丘をこえて』をレコードで〈ROSE〉から出そう」と話していたんですが、いずれはアルバムが作りたいとも喋っていて。そしたら曽我部さんも「たけとんぼにはアルバムが必要だね!」と快諾してくれたので、本格的に新作に向けて動き始めました。


Apple Musicはこちら

──

ライブでもサポートしていた和泉眞生さん、ヒロヒサカトーさん、菊地芳将さん(Ba / いーはとーゔ)に加えて、谷口雄さん(Pf / Key)も全面的に参加されていますね。

平松

谷口さんは僕の理想としているウエストコースト風の鍵盤が弾ける人ですし、森は生きているからずっと聴いていたので、是非ともお願いしたかったんです。ディレクターとかはいなかったですけど、レコーディング経験豊富な谷口さんとカトーさんが色々場を仕切ってくれたり、アレンジやボーカルにもアドバイスしてくれたのが本当にありがたかった。

──

曲はたくさんある中で、この10曲はどういうポイントで選びましたか?

平松

今までの活動の総決算ですね。たけとんぼはこういうバンドだというのを伝えようという視点で20曲くらいまで選んで、その中から曽我部さんに10曲を絞ってもらいました。

きむら

“今夜町を出よう”、“春はまだか”のような定番曲もあるし、自分の歌う“花工場”も入っていれば、ほとんどライブでやってない“想い出をたどって”のような曲もある。いいところ取りで選んでもらったよね。でも意外性もあって、中村ジョーさん(中村ジョー&イーストウッズ / exザ・ハッピーズ)が詞と曲を書いてくれた“あの夏”とかは、新鮮なアレンジだった。

 

平松

ライブの打ち上げでジョーさんと初めて話した時に、僕が一番敬愛しているバンド、America(アメリカ)の話で盛り上がったんですよ。それをジョーさんが酌んでくれたのか、すごくAmericaの雰囲気で書いてくれたんです。

 

実は直接的にオマージュするようなアレンジって、たけとんぼではあまりやってなくって。それはさっきも言った、懐古しているような感じに見られやすいからなんですけど。でもジョーさんがそこを狙って作ってくれたなら、いっそ全面的にやってみるかということで、Americaのアレンジを取り入れました。

──

確かに“Ventura Highway”への憧れをすごく感じるアレンジです。

きむら

でもたけとんぼを聴いてくれる、自分たちと近しい年齢の人たちには新しいものとして聴いてくれるはず。そこからAmericaにたどり着いて気に入ってもらえるのも嬉しいし。

 

──

他の人からの提供曲で言えば、“風と首飾り”はさっちゃん(THE FOWLS / ヨットヘヴン)の作ですね。

平松

さっちゃんには“ぼくはトマトくん”(『丘をこえて』収録)も作ってもらいましたが、実はこっちの方が先で2017年頃にはすでにあった曲。歌う人になりきって曲を書いてくれるので、すごく僕っぽいメロディとか雰囲気なんですよね。斉藤哲夫さんと共演させていただいた時も、褒めてくれたのはこの曲。

 

きむら

でも「マーマレード」「イヤリング」とかワードがかわいくて、平松さんにはない部分が出ている曲だと思います。

──

あと新曲となる“VBに捧ぐ”もこれまでのたけとんぼにない、前のめりな8ビートアレンジの楽曲ですね。

平松

この曲は2020年に仲が良かったバンドが解散した頃に書きました。この年はお世話になってる井乃頭畜音団も松尾よういちろうさんとJohnny Satoさんも退団されたり、仲間が去って、バンドが終わって、一度立ち止まるみたいなことを考えていたんです。だから特定のバンドに直接宛てたものというより、そこから自分が受けた感情が集まって書いたすごく私的な曲です。結果、今回きむらくんが抜けることになって、まさか自分たちにこのテーマが返ってくるとは思ってませんでした(笑)

きむら

これまでのたけとんぼからなるべく離れて、そのバンドの勢いある演奏を意識しました。今までやったことない曲調で、今回一番きつかった。

 

──

また所々で曲の始まりに、みなさんのやりとりが含まれているのもすごくいいですね。

平松

ここは今回エンジニアをしてくれた馬場友美さんに相談して、ぜひとも入れたかった部分です。2022年現在の演奏記録っぽさを出したくて。単に曲を集めただけじゃなくて、前後に漂う空気感も入れた方が、よりたけとんぼが伝わると思ったんです。ライブのMCとも同じ考えですね。

そして平松・きむらはそれぞれの道を行く

──

先ほど平松さんからもお話が出ましたが、このタイミングできむらさんが卒業されると伺いました。

きむら

5年ほど平松さんと二人でやってきたので、たけとんぼから離れるというのは自分にとってはすごくデカい決断で。でもたけとんぼとは違う自分の創作意欲が出てきたので、そこにちゃんと自分に向き合って価値をつくっていく時間がほしいと思ったんです。自分で自分のケツが持てるようになりたくて、独り立ちをすることにしました。

 

もちろんたけとんぼをやりながらでもできるかもしれない。でもたけとんぼがあるからできないと逃げ口にしちゃいそうな気もして、それは平松さんに対しても、自分に対しても失礼なことです。他のバンドのサポートは継続するし、今後も平松さんと関わることはあると思いますが、一旦ここで区切ることにしました。

平松

たけとんぼは、これまでもサポートしてくれていた和泉眞生くんが正式にメンバーになります。彼は曲も書けるし、選手交代という感じで、また変わっていくと思います。

──

平松・きむらのコンビという印象が強かったので、これは大きな分岐点になりそうですね。

平松

きむらくんと一緒にやるようになった当初は二人で色んなところに顔を出して、そこからそれぞれで人脈を広げていきました。だから最初の頃よりも、個々の存在感は際立ってきた気がしています。僕の目標であるCSNみたいな、個性の立った人と人が一緒にやることの良さは今後も求めていたいです。

きむら

ぼく自身も平松さんにすすめられて曲を書くことを始めたり、たけとんぼ以外のドラムサポートを経験していく内に、徐々にスタンスが変わってどんどん前に出れるようになった感覚があります。でもやっぱりたけとんぼのほとんどを担うのは平松さんなんですよ。

──

5年かけて二人がそれぞれ成長して、今回また一人一人の個に立ち返ることとなりましたが、たけとんぼの目指している個性の立った人との共同作業において、この出会いと別れは常に付いて回ることなのかもしれませんね。

平松

そうかもしれないですね。残る側の僕が置いていかれないようにしないと(笑)

平松稜大ときむらさとしによる、ミュージシャンとして影響を受けたアルバム5選はこちら

 

保護中: たけとんぼ 平松稜大・きむらさとしに影響を与えたアルバム5選

たけとんぼ

 

アーティスト:たけとんぼ
仕様:デジタル / CD / LP(詳細後日)
リリース:2022年7月27日
価格:¥2,750(税込)
レーベル:ROSE RECORDS

 

収録曲

1. 紙飛行機
2. 今夜町をでよう
3. 風と首飾り
4. 真夏日
5. VBに捧ぐ
6. 花工場
7. 恋をするなら
8. あの夏
9. 想い出をたどって
10. 春はまだか

 

配信リンク:https://linkco.re/2DFhPxCc

Twitter:https://twitter.com/Band_TakeTombo

Instagram:https://www.instagram.com/take_tombo2015/

WRITER

RECENT POST

INTERVIEW
新たな名曲がベランダを繋ぎとめた。 新作『Spirit』に至る6年間の紆余曲折を辿る
COLUMN
【2024年4月】今、東京のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト
REPORT
台湾インディーバンド3組に聞く、オリジナリティの育み方『浮現祭 Emerge Fest 2024』レ…
REPORT
観音廟の真向かいで最先端のジャズを。音楽と台中の生活が肩を寄せ合う『浮現祭 Emerge Fest …
INTERVIEW
孤独な青年の思春期が終わった、 LAIKA DAY DREAMなりのグランジ作品『Shun Ka S…
REVIEW
この先鋭的なバンドサウンドは、2020年代の京都音楽シーンを代表する-YUNOWA『Phantom』
INTERVIEW
Ribet townsは12人組プロジェクトチーム!? 現代社会を楽しく生き抜く処世術を歌う、新作に…
REVIEW
松井文『窓から』-歌い手としての自分を見つめ直した、3枚目の1stアルバム
REVIEW
畠山拓郎“September”-KANの遺伝子も感じるニューポップスターによるソウルバラード
REPORT
発令!アジアに向けた日本からの開国宣言-BiKN shibuya 2023 クロスレポートNo.1
INTERVIEW
「日本とアジアを混ぜっ返すんだ!」アジアン・ショーケース『BiKN shibuya』に至る衝動
REVIEW
劇伴音楽を経て、本格的にバンドとなったロマンたっぷりのロックサウンド-KiQ『空想』
INTERVIEW
「おせっかい」な京都のスタジオ、マザーシップ。エンジニア野村智仁が語る、人付きあいと音作り
REVIEW
Tocago『Wonder』- 沖ちづるの音楽にかける熱意に再び火が灯るまで
INTERVIEW
歌うたいは人たらし。小野雄大が仲間と共に自分の歌を見つけるまでの道程
COLUMN
〈Penguinmarket Records〉作品ガイド
INTERVIEW
「Music has no borders」を掲げ、京都から世界へ-Penguinmarket Re…
REVIEW
多様な可能性のごった煮状態という意味での“GUMBO”- 砂の壁『GUMBO』
INTERVIEW
ソー・バッド・レビューから続く道。 シンガーソングライター&ピアニスト / 翻訳家 チャールズ清水…
REPORT
『春一番 2023』後編 ー 平和を夢見る福岡風太が仕掛けた、音楽による革命の実験場
REPORT
『春一番 2023』前編 ー 「祝」でも「終」でもない、大阪名物野外コンサートのゆくえ
INTERVIEW
「大阪を代表するバンドになりたい」ショーウエムラ(アフターアワーズ)が語る、地元に育てられたバンドマ…
REVIEW
生活の設計『季節のつかまえ方』 ー 「自分の音楽ってこれかも!」と辿り着いた喫茶ロック作品
REVIEW
屋敷『仮眠』 – のんびりとした虚無感、幻想的だが後味の悪さもある、積層的なフォーク作品
REVIEW
FALL ASLEEP#3 全曲レビュー
REVIEW
幽体コミュニケーションズ『巡礼する季語』 – 言葉とサウンドをコラージュ的に組み合わせ、季節を描く京…
INTERVIEW
スーパーノアが語る、『ぬくもりはたしかに』に込めたリズムと歌の最適解
INTERVIEW
年鑑 石指拓朗 2022-世田谷ほっつき歩き編
REVIEW
Eri Nagami『ど​ち​ら​か​と​い​う​と​そ​う​思​う(Moderately Agre…
REVIEW
岡林風穂『刺激的な昼下がり』 – 岐阜拠点のシンガーによる、こそばゆい刺激に惹きつけられる作品
REPORT
ボロフェスタ2022 Day4(11/6)- クリープハイプ、リベンジ。過去2年を取り戻す気概の最終…
INTERVIEW
マーライオン、変わる!-もっとみんなに喜ばれる音楽をつくるための模索と研鑽
INTERVIEW
生活は変われど、再び日々を鳴らし始めた路地の『KOURO』
REVIEW
ヨットヘヴン『健康快樂』 – 今を楽しく生きようとする生活者の歌
REVIEW
ガリザベン『ほっぺのかんじ』 – シャイとユーモア、関西に息づくブルースが香り立つうた
COLUMN
たけとんぼ 平松稜大・きむらさとしに影響を与えたアルバム5選
REVIEW
kiss the gambler “ベルリンの森” – 自分の心の居場所はどこにある?
REVIEW
KiQ『FuU』ー多彩な仲間と共に漂着した、退屈な日々を彩るフォーク・ロック
INTERVIEW
音楽のアーキビスト、金野篤が体現する「売りたいモノは自分で作る」という生き方
REVIEW
kiss the gambler “台風のあとで” – 折り合いのつかない喪失感を歌う素直さに胸が打…
INTERVIEW
大石晴子が探る、これからの生きていく道とは ー『脈光』インタビュー&全曲解説
REVIEW
伏見◎Project “Dawn-town” – 京都伏見を冠するニュー・コンボによるムーディーな楽…
REVIEW
みらん『Ducky』 – 22歳の今しか表現できないことを歌っている、理想的なデビュー作
REVIEW
徳永憲『今バリアしてたもん』何重にもねじれたユーモアが満載、歌とアコギが主体の12作目
REVIEW
国でも建てるつもりなのか – グッナイ小形
REVIEW
NEKOSOGI – NEKOSOGI
REVIEW
たまき – 門脇沢庵
REVIEW
夢の日々 – ミチノヒ
COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる2021年の5曲 Part.2
COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる2021年の5曲 Part.1
INTERVIEW
年鑑 石指拓朗 2021-武蔵野散歩編
REVIEW
FALL ASLEEP#2 全曲レビュー
INTERVIEW
ぶっちゃけ上京ってどう?-ベランダ×ギリシャラブ×Crispy Camera Club 京都発・東京…
INTERVIEW
いちやなぎとひらまつ-平成6年生まれ、ウマが合う歌い手の2人
COLUMN
「シーン」から「モード」に移ろいゆく – 京都音楽私的大全
REPORT
峯大貴が見たボロフェスタ2021 Day3 – 2021.10.31
REPORT
峯大貴が見たボロフェスタ2021 Day2 – 2021.10.30
COLUMN
“ニュー・ニート”ゆうやけしはすが目論む、ローカルから興すロック・ルネッサンス
INTERVIEW
グローバルな視野を持って、ローカルから発信するーリクオが『リクオ&ピアノ2』で打ち出す連帯の姿勢
REVIEW
ズカイ – たくさん願い溢れて
INTERVIEW
みらんと話した日ー兵庫在住シンガー・ソングライターによる互いの気持ちを尊重する歌を探る
INTERVIEW
つくるひとが二人、はみ出す創作を語る-井戸健人×畠山健嗣 対談
REVIEW
秘密のミーニーズ – down in the valley
REVIEW
ラッキーオールドサン – うすらい
COLUMN
ご当地ソングからはみ出る方言詞|テーマで読み解く現代の歌詞
REVIEW
ベルマインツ – MOUNTAIN
INTERVIEW
もどかしくもシンプルを求めトガっていく。シャンモニカが語る『トゲトゲぽっぷ』
INTERVIEW
シンガーソングライターという自覚の芽生え – ぎがもえかインタビュー
REVIEW
たけとんぼ – 春はまだか / 旅の前
REVIEW
いちやなぎ – album
REVIEW
ショーウエムラ – 大阪の犬
INTERVIEW
2020年をポジティブに転化するために - 中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)が語る新作『ハビタブ…
REVIEW
かさねぎリストバンド – 踊れる
COLUMN
従来のイメージを跳ね返す、日本のフォークの変革 - 『#JAPANESE NEWEST FOLK』前…
INTERVIEW
年鑑 石指拓朗 2020
COLUMN
編集部員が選ぶ2020年ベスト記事
COLUMN
〈NEWFOLK〉作品ガイド
INTERVIEW
音楽のすそ野を広げる、影の歌の送り手 - 〈NEWFOLK〉主宰 須藤朋寿インタビュー
INTERVIEW
自分の言葉を持つ人の歌が、心に入ってくる - 浮(BUOY) インタビュー
REVIEW
クララズ – 台風18号
INTERVIEW
“2023”で次の扉を開いた3人のハイライト – ベルマインツ インタビュー
REVIEW
岡林信康 – 岡林信康アルバム第二集 見るまえに跳べ
REVIEW
田中ヤコブ – おさきにどうぞ
REVIEW
上田正樹と有山淳司 – ぼちぼちいこか
REVIEW
ザ・ディランⅡ – きのうの思い出に別れをつげるんだもの
REVIEW
Bagus! – 恋はうたかた
REVIEW
ベルマインツ – ハイライトシーン
REVIEW
ヤユヨ – ヤユヨ
INTERVIEW
清水煩悩との雑談(後編)– 天川村から新たな船出『IN,I’M PRAY SUN』
REVIEW
小野雄大 – 素粒子たち
INTERVIEW
覚悟が決まった第二章 – Easycome『レイドバック』インタビュー
INTERVIEW
生きている日が歌になる – ダイバーキリン『その美しさに涙が出る』インタビュー
REVIEW
のろしレコード – のろし
REVIEW
松井文 – ひっこし
REVIEW
gnkosaiBAND – 吸いきれない
REVIEW
イハラカンタロウ – C
REVIEW
折坂悠太 – トーチ
REVIEW
西洋彦 – fragments
REVIEW
クララズ – アメリカン
REVIEW
阿佐ヶ谷ロマンティクス – 独り言
REVIEW
平賀さち枝とホームカミングス – かがやき / New Song
REVIEW
TATEANAS-縄文人に相談だ/君と土偶と海岸で
REVIEW
ズカイ – 毎日が長すぎて
INTERVIEW
30代になった酩酊シンガーてらがRibet townsと鳴らす家族の歌
INTERVIEW
年鑑 石指拓朗 2019-『ナイトサークル』リリースインタビュー
INTERVIEW
年鑑 石指拓朗 2018
REPORT
峯大貴が見たボロフェスタ2019 3日目
INTERVIEW
キタが語る、オルタナティヴ・バンドthanの正史ー2ndアルバム『LINES』リリース・インタビュー
REPORT
峯大貴が見たボロフェスタ2019 2日目
REPORT
峯大貴が見たボロフェスタ2019 1日目
INTERVIEW
はちゃめちゃなエンタテインメントがやりたいーチャンポンタウン“Giant step”リリース・インタ…
INTERVIEW
3人で歌の本質を確かめる場所―のろしレコード(松井文、夜久一、折坂悠太)『OOPTH』リリース・イン…
INTERVIEW
清水煩悩との雑談(前編)-新MV“まほう”・“リリィ”を公開&クラウドファンディング始動
REVIEW
アフターアワーズ – ヘラヘラep / ガタガタep
REVIEW
河内宙夢&イマジナリーフレンズ – 河内宙夢&イマジナリーフレンズ
INTERVIEW
休日に音楽を続ける人たちのドキュメント-松ノ葉楽団3rdアルバム『Holiday』リリースインタビュ…
INTERVIEW
日常に散らばった、ささやかな幸せを愛でるー大石晴子 1st EP『賛美』インタビュー
REVIEW
THE HillAndon – 意図はない
REPORT
リクオ『Gradation World』スペシャル・ライヴat 代々木・Zher the ZOO レ…
REVIEW
Ribet towns – メリーゴーランド / CRUSH / みまちがい
REPORT
峯大貴が見た祝春一番2019
INTERVIEW
今また初期衝動に戻ってきた – リクオ『Gradation World』リリースインタビュー–
REVIEW
HoSoVoSo – 春を待つ2人
REPORT
峯大貴が見た第2回うたのゆくえ
INTERVIEW
ここから踏み出す、ギリシャラブの“イントロダクション” – 2nd Album『悪夢へようこそ!』リ…
INTERVIEW
その時見たもの、感じたことを記録していく – ダイバーキリン『忘れてしまうようなこと』リリースインタ…
REVIEW
チャンポンタウン – ごきげんよう
REVIEW
宵待 – NAGAME
INTERVIEW
cafe,bar & music アトリ
REVIEW
てら – 歌葬
REPORT
【峯大貴の見たボロフェスタ2018 / Day3】ULTRA CUB / Gateballers /…
REPORT
【峯大貴の見たボロフェスタ2018 / Day2】Homecomings / Moccobond /…
REPORT
【峯大貴の見たボロフェスタ2018 / Day1】ベランダ / Crispy Camera Club…
INTERVIEW
KONCOS:古川太一 × ボロフェスタ主催 / Livehouse nano店長:土龍対談 - 音…
REVIEW
ローホー – ASIA MEDIA
REVIEW
影野若葉 – 涙の謝肉祭
REVIEW
Pale Fruit – 世田谷エトセトラ
REVIEW
原田知世 – music & me
REVIEW
Traveller – Chris Stapleton

LATEST POSTS

COLUMN
【2024年4月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「大阪のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シーンを追…

REVIEW
aieum『sangatsu』―絶えず姿形を変え動き続ける、その音の正体は果たして

沖縄出身の4人組バンド、aieumが初となるEP『sangatsu』を2024年3月20日にリリース…

INTERVIEW
新たな名曲がベランダを繋ぎとめた。 新作『Spirit』に至る6年間の紆余曲折を辿る

京都で結成されたバンド、ベランダが3rdアルバム『Spirit』を2024年4月17日にリリースした…

COLUMN
【2024年4月】今、東京のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「東京のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」京都、大阪の音楽シーンを追っ…

COLUMN
【2024年4月】今、京都のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「現在の京都のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シー…