REVIEW
Ducky
みらん

22歳の今しか表現できないことを歌っている、理想的なデビュー作

1999年生まれ、兵庫在住のシンガー・ソングライターみらんを取り巻く環境が、昨年8月に発表したEP『モモイロペリカンと遊んだ日』から、たった半年ほどでガラっと変わっている。これまでライブはほぼ弾き語り、録音も主に一人で GarageBand を駆使して行なってきたが、以前から切望していたバンドセットを本格的に始動。ハユル(Gt / ザ・リラクシンズ)、ハナッペ(Ba / CAT ATE HOTDOGS)、澤井悠人(Ba / 猫戦)、田中陽一郎(Dr / ムノーノモーゼス)という、みらんと共に成長していけそうな関西のミュージシャンたちとライブを行うようになった。そして曽我部恵一(サニーデイ・サービス)によるプロデュースで、映画『愛なのに』の主題歌として書き下ろした“低い飛行機”も発表。周りからの支えを受け、一挙に活動の幅を拡げることになった。

そして本作がいよいよ全国に打って出るデビュー・アルバムとなる。8曲全てバンドでのスタジオ録音。演奏陣は上述のメンバーに加え、小玉亮輔(Gt / ムノーノモーゼス)と黒田のぞ美(トランペット)が参加。メンバーの意見も多聞に取り入れながらわいわいとアレンジをしていった跡が随所に感じられる。“ダッキーちゃん”ではガレージロック調の歪み切ったリフを軸としていたり、“ミラノサローネ”ではハユルが所属するリラクシンズのサウンドを移植したような直球のロックンロール・パートが挟まることで楽曲に緩急をつけている。“手紙の言葉”なんてサビに入った途端に演奏がフェードアウトし、みらんが弾き語りを続けたままアウトロまで戻ってこないという一瞬戸惑うような仕掛けまで施されているのだ。確立されたメソッドや作為的な部分もないそれらの試行錯誤は、始動して間もない、みらんバンドの成長過程そのもののようで瑞々しく響いてくる。

とはいえ何よりの魅力はみらんの歌いっぷりだ。もちろん“あたたかい光”や“低い飛行機”で聴かせる真心を込めたほっこりする歌唱にも惹きつけられるのだが、真価が発揮されるのは艶を出したり、無垢になったり、コブシを効かせてまくしたてたりと、憑依的に歌に表情をつけていく楽曲の方だと感じている。川本真琴や小島麻由美にも連なるような、とことん開放的でスッキリとしているのにとても濃厚な色合いを放つ声の所作が愛らしい。

 

中でも自身の名前を冠した“美藍”での全体重を乗っけて歌い倒していく、大胆不敵さは本作一番のハイライト。10代のころに作った曲ということだが〈削られて尖って困ることなんかない まだまだいけると思う 若い僕らは〉と胸を張って歌えることの眩しさに加えて、頼もしい仲間と共に歩み出そうとする勇ましさも伴っている。今22歳のみらんがこの起点のタイミングでしか表現できないことを歌おうとしているのだ。ありあまる魅力の萌芽が伺える、理想的なデビュー作である。


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その他サービス:https://p-vine.lnk.to/Bdqc2w

Ducky

 

発売:2022年3月16日

フォーマット:CD

価格:¥2,400(税抜)

品番:PCD-94089

 

収録曲

1.あたたかい光
2.ダッキーちゃん
3.手紙の言葉
4.低い飛行機
5.美藍
6.そこで僕はミルクを思い浮かべて
7.町中華の歌
8.ミラノサローネ

みらん

 

1999年生まれ、兵庫県在住。 犬がめっちゃ好きなシンガーソングライター。 包容力のある歌声と可憐さと鋭さが共存したソングライティングが魅力。2021年にはシュウタネギ(WANG GUNG BAND、ex.バレーボウイズ)とのEPや1stアルバム『帆風』のCD化、EP『モモイロペリカンと遊んだ日』、猫戦のボーカリスト・美桜との共作カセットシングルなど精力的にリリースを重ねる。2022年3月16日に、監督:城定秀夫×脚本:今泉力哉、映画『愛なのに』の主題歌“低い飛行機”(プロデューサー:曽我部恵一)を含むデビューアルバム『Ducky』をリリース。

 

Twitter:https://twitter.com/m11ram_5

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