INTERVIEW

僕のEasycomeから、僕らのEasycomeへ – 無理をせず、楽しみ作った最新アルバムについて語る –

MUSIC 2019.08.04 Written By マーガレット 安井

めっちゃ悲しいことがあった時の方が、いい歌が歌えるんです

──

Easycomeの歌詞も落合さんが書いていますが、この2年間で歌詞についてなにか変わったことはありますか?

落合

正直わからないです。「毎回、これしか俺はかけない」と思っているので。

──

ちーかまは2年間で落合さんが書く歌詞は変わったと思いますか?

ちーかま

変わってないと思います。むしろ落合は同じようなテーマを基に作った歌詞が多いように感じます。過去を振り返ったり、あてのない旅をずっとしてたり。昔は女性的な言葉遣いや、私を宛書したと想像できるような歌詞が多かったんですが、最近は歌詞に落合自身を投影しているような気がします。

落合

ははは(苦笑)。でも、個人的なことしか書かなくなってきていますね。

──

なんで個人的なことしか書かなくなったのですか?

落合

なんでだろう……ただ最近は良いこととか、悪いこととかがあれば、日記を書き留めていて、それを元に歌詞を書くので自分が出るのだと思います。ただ歌詞を書くときにテーマを思い描いたりは全くしなくて。いま言われて「俺って何かを思い返しているんだ」とか感じました。

──

ちーかまは歌入れするときは何を考えていますか?

ちーかま

言葉の意味は置いといて、まずは「上手くメロディーに歌詞がハマっているか」だけを考えます。メロディーに言葉が上手く乗っていないと、感情が込められないので。歌詞ではなくメロディに感情を入れることもあります。同じテーマでも明るい曲調と、悲しい曲調では感情の込め方も変わってくるので。例えば“想い出にさよならも”は悲しい歌詞ではあるけど、後半にいくにつれて、光が差してくるような前向きさも感じる曲調になっているので、悲しみを乗り越えるような気持ちで歌っています。

──

ちーかまはこの2年間で歌に対しての向き合い方は変わりましたか?

ちーかま

歌い方というより、表現の仕方について意識するようになりました。今までは、上手に歌うことを心掛けていましたが、2年間の中で、歌が自分でもわかるくらいよくなったタイミングがあって、それが“悲しい気持ち”の時だったんです。

──

悲しい気持ち?

ちーかま

自分がリアルで感じていることをそのまま歌に乗せた時、歌の技術だけを気にして歌っていたころにはない歌の手応えを感じました。それからは歌い方だけではなく、その時に感じていることを大切にして、その気持ちを歌に乗せることを意識するようになりました。日常で悲しい出来事があっても、それを作品に活かせることは表現者としての特権だと思うので。

これからも無理なく楽しく活動できたらなと思います

──

FREE MEDIA ZINEのSPICEでのインタビューで「売れることを意識すると上手くいかなかった」と語っていましたね。アルバムがタワレコメンに選ばれて、これからますますメディアとかに取り上げられる機会とかも多くなると思います。売れるために何かしようと意識されたりしてますか?

コダマ

もちろん売れたい気持ちはありますし、大きな舞台にも立ちたいです。でもこれまで自分たちだけですくすく育って来た中で、いろんな人からアドバイスを受けることがあって。「こういうジャンルはどうかな?」「こんな歌詞にしたら?」とか。その時に良いと思うものは取り入れるけど、僕らには向かないと思うことは無理にはしないです。それが今のEasycomeにつながっていると思うし、これからもその都度、自分たちで考えていくことがEasycomeに合った活動につながると思います。

──

本当にガツガツしていないですよね。ただそれがEasycomeの魅力なのかもしれないですね。

johnny僕は後から入った身なので、客観的に観てることが多いのですが聴く人も増えて、Easycome自体の演奏スキルや熱量も年々上がってきている。活動も無理をしてないので、ほんまに良い調子だと思いますね。

ちーかま

私も無理してやっていないことが大きいです。メンバーとも仲良くやれてるし、仕事もしても活動できているし。周りから「仲いいバンドですね」と言われたり。

コダマ

「スタジオ後にメンバー全員でご飯食べるんですか?」とか「車移動ではしゃいでるですか?」とめっちゃ驚かれるよね。

落合

「わざわざ集まって飲みに行くんですか?」とか、このあいだ言われた。

ちーかま

それが私たちには普通ですし、自分たちは「メンバー全員で集まって何かする」がメインのバンドなんで。遠征に行っても、遊びに行くような感じですね。好きな人たちと遠くに行って遊ぶの楽しいじゃないですか。これからも無理なく楽しく活動できたらなと思います。

作品情報

 

 

アーティスト:Easycome
タイトル:Easycome
発売日:2019年07月17日
価格:¥2,200 (税抜き)

 

収録曲

 

01.旅気候

02.Caravan

03. Night Skip

04. 想い出にさよなら

05. 雨を待つ

06. パラシュート

07. 夢中にならないで

08. ルフラン

09. something

10. 春になったら

Easycome

 

 

L→R

johnny(Dr)

落合(Gt)

ちーかま(Vo / Gt)

コダマ(Ba)

 

2015年結成、夏ごろからライブに出始める。12月、初音源「夢中にならないで/crispy cryspy」をyoutube、soundcloudで公開。ライブ会場でも無料音源として配布。 2016年に1st mini album「風の便りを教えて」、2017年に2nd mini album 「お天気でした」発売。りんご音楽祭、FM802 MINAMI WHEEL、Morning River Summitに参加。 現在は大阪を中心に活動中。 2019年7月17日に、1st full album 「Easycome」発売、タワーレコードが話題になる前のアーティストをいち早くピックアップする企画<タワレコメン>に選出。

 

公式HP:https://easycome-band.jimdo.com/

WRITER

RECENT POST

INTERVIEW
地元愛と刺激に満ちた音楽祭 – ボギーが語るボロフェスタの魅力と自身のライブの見せ方
INTERVIEW
ボロフェスタがバンドマンたちに与える、常識外の「カッコよさ」とは?
REPORT
ナノボロ2024 Day2(9/1)― オルタナティブな一日で感じた、「カッコいい」に忠実だからこそ…
REPORT
ナノボロ2024 Day1(8/31)― 京都の旬を体感!インディーズの魅力が詰まった一日
REVIEW
ゼロ年代から続く邦楽ロックの末裔たちが作り上げた一作-コロブチカ『ワンダーアラウンド 』
COLUMN
『まちの映画館 踊るマサラシネマ』 – 人生が上手く行かないあなたに贈る、映画館の奮闘記
COLUMN
【2024年6月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト
INTERVIEW
南堀江Knaveに人が集まる理由 – 真面目と誠実さが生んだライブハウスの在り方
REVIEW
トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代 – 加藤和彦がトノバンらしく生きた時代の記録
INTERVIEW
全員が「ヤバい」と思える音楽に向かって – 愛はズボーンが語る、理想とパーソナルがにじみ…
REVIEW
THE HAMIDA SHE’S『純情讃歌』 – 京都の新星が放つ、荒々しい…
REVIEW
大槻美奈『LAND』-愛で自身の問いに終止符を打つ、集大成としての『LAND』
INTERVIEW
今はまだ夢の途中 – AIRCRAFTが語る『MY FLIGHT』までの轍
COLUMN
編集部員が選ぶ2023年ベスト記事
REVIEW
Qoodow『水槽から』 – 「複雑さ」すらも味にする、やりたいを貫くオルタナティヴな作…
REVIEW
The Slumbers『黄金のまどろみ』 – 先人たちのエッセンスを今へと引き継ぐ、昭…
COLUMN
サステナブルな理想を追い求めるバンド – (夜と)SAMPOが会社員でありながらバンドを…
REPORT
ボロフェスタ2023 Day2(11/4)- タコツボを壊して坩堝へ。ボロフェスタが創造するカオス
REPORT
ボロフェスタ2023 Day1(11/3) – 蓄積で形成される狂気と奇跡の音楽祭
INTERVIEW
物語が生み出すブッキング – 夜の本気ダンス×『ボロフェスタ』主宰・土龍が語る音楽フェス…
INTERVIEW
自発性とカオスが育む祭 – 22年続く音楽フェス『ボロフェスタ』の独自性とは?
REVIEW
てら『太陽は昼寝』 – 人間の内面を描く、陽だまりのような初バンド編成アルバム
REPORT
ナノボロ2023 Day2(8/27)‐ コロナからの呪縛から解放され、あるべき姿に戻ったナノボロ…
REVIEW
鈴木実貴子ズ『ファッキンミュージック』- 自分ではなく、好きになってくれたあなたに向けられた音楽
REVIEW
オートコード『京都』 – “東京”に対する敬愛が生んだ25年目のオマージュ
INTERVIEW
Nagakumoがポップスを作る理由 – 実験精神を貫き、大衆性にこだわった最新作『JU…
INTERVIEW
町のみんなと共生しながら独自性を紡ぐ。支配人なきシアター、元町映画館が考える固定観念の崩し方
INTERVIEW
つながりと問題のなかで灯を守り続ける – シネ・ヌーヴォの2023年
INTERVIEW
壁を壊して、枠組みを広げる映画館 – あなたの身近なテーマパーク〈塚口サンサン劇場〉とは…
REVIEW
ここで生きてるず“彗星ミサイル” – 愚直ながらも、手法を変えて人生を肯定し続けるバンド…
REPORT
坩堝ではなく、共生する園苑(そのその) – 『KOBE SONO SONO’23』ライブ…
INTERVIEW
僕らがフリージアンになるまで – リスペクトと遠回りの末に生まれたバンドの軌跡
REVIEW
パンクを手放し、自己をさらけ出すことで手にした 成長の証 – ムノーノモーゼス『ハイパー…
REPORT
感情が技術を上回る日 – 『“ステエションズ ” 2nd Album “ST-2” Re…
REVIEW
oOo『New Jeans』- 陰と陽が織りなすイノセントなセカイ
REVIEW
ステエションズ『ST‐2』 - 千変万化でありながら、それを感じさせない強靭なポップネス
REVIEW
揺らぎ『Here I Stand』- 型にはまらない姿勢を貫く、どこにも属さない揺らぎの一作目
REVIEW
くつした『コズミックディスク』 - 変わらずに歌い続けた空想の世界
REVIEW
台風クラブ『アルバム第二集』 - 逃避から対峙へ、孤独と絶望を抱えながらも前進するロックンロール
INTERVIEW
経験の蓄積から生まれた理想郷 ー ASR RECORDS 野津知宏の半生と〈D×Q〉のこれから
REPORT
ボロフェスタ2022 Day3(11/5)-積み重ねが具現化した、“生き様”という名のライブ
REVIEW
ベルマインツ『風を頼りに』- 成長を形に変える、新しい起点としての1枚
REVIEW
ズカイ『ちゃちな夢中をくぐるのさ』 – ネガティブなあまのじゃくが歌う「今日を生きて」
REVIEW
帝国喫茶『帝国喫茶』 – 三者三様の作家性が融合した、帝国喫茶の青春
REVIEW
糞八『らくご』 – 後ろ向きな私に寄り添う、あるがままを認める音楽
REPORT
マーガレット安井の見たナノボロ2022 day2
INTERVIEW
おとぼけビ〜バ〜 × 奥羽自慢 - 日本酒の固定観念を崩す男が生み出した純米大吟醸『おとぼけビ〜バ〜…
INTERVIEW
僕の音楽から誰かのための音楽へ – YMBが語る最新作『Tender』とバンドとしての成…
INTERVIEW
失意の底から「最高の人生にしようぜ」と言えるまで – ナードマグネット須田亮太インタビュー
REVIEW
Noranekoguts『wander packs』シリーズ – 向き合うことで拡張していく音楽
REVIEW
真舟とわ『ルルルのその先』 – 曖昧の先にある、誰かとのつながり
REVIEW
ナードマグネット/Subway Daydream『Re:ACTION』 – 青春と青春が交わった交差…
REVIEW
AIRCRAFT『MAGNOLIA』 – 何者でもなれる可能性を体現した、青春の音楽
REVIEW
Nagakumo – EXPO
REVIEW
水平線 – stove
INTERVIEW
(夜と)SAMPOの生き様。理想と挫折から生まれた『はだかの世界』
INTERVIEW
自然体と無意識が生み出した、表出する音楽 – 猫戦インタビュー
REVIEW
藤山拓 – girl
REPORT
マーガレット安井が見たボロフェスタ2021Day4 – 2021.11.5
INTERVIEW
地球から2ミリ浮いてる人たちが語る、点を見つめ直してできた私たちの形
REVIEW
西村中毒バンド – ハローイッツミー
INTERVIEW
移民ラッパー Moment Joon の愚直な肖像 – 絶望でも言葉の力を信じ続ける理由
INTERVIEW
「逃れられない」をいかに楽しむか – 京都ドーナッツクラブ野村雅夫が考える翻訳
COLUMN
“水星”が更新される日~ニュータウンの音楽~|テーマで読み解く現代の歌詞
INTERVIEW
批評誌『痙攣』が伝える「ないものを探す」という批評の在り方
REVIEW
Nagakumo – PLAN e.p.
INTERVIEW
HOOK UP RECORDS
COLUMN
『永遠のなつやすみ』からの卒業 - バレーボウイズ解散によせて
REVIEW
EGO-WRAPPIN’ – 満ち汐のロマンス
REVIEW
ローザ・ルクセンブルグ – ぷりぷり
REVIEW
(夜と)SAMPO – 夜と散歩
REVIEW
羅針盤 – らご
REVIEW
竹村延和 – こどもと魔法
COLUMN
Dig!Dug!Asia! Vol.4 イ・ラン
INTERVIEW
Live Bar FANDANGO
INTERVIEW
扇町para-dice
INTERVIEW
寺田町Fireloop
REVIEW
MASS OF THE FERMENTING DREGS – You / うたを歌えば
REVIEW
FALL ASLEEP 全曲レビュー
REVIEW
ニーハオ!!!! – FOUR!!!!
INTERVIEW
ネガティブが生んだポジティブなマインド – ゆ~すほすてるが語る僕らの音楽
REVIEW
大槻美奈 – BIRD
REVIEW
YMB-ラララ
REPORT
京音 -KYOTO- vol.13 ライブレポート
INTERVIEW
感情という名の歌。鈴木実貴子ズが歌う、あなたに向けられていない音楽
INTERVIEW
□□□ん家(ダレカンチ)
INTERVIEW
こだわりと他者性を遊泳するバンド - ペペッターズ『KUCD』リリースインタビュー
REPORT
ネクスト・ステージに向かうための集大成 Easycome初のワンマンライブでみせた圧倒的なホーム感
INTERVIEW
更なる深みを目指してーザ・リラクシンズ『morning call from THE RELAXINʼ…
INTERVIEW
忖度されたハッピーエンドより変わらぬ絶望。葉山久瑠実が出す空白の結論
REPORT
マーガレット安井が見たボロフェスタ2019 3日目
REPORT
マーガレット安井が見たボロフェスタ2019 2日目
REVIEW
ベルマインツ – 透明の花ep
REPORT
集大成という名のスタートライン-ナードマグネット主催フェス『ULTRA SOULMATE 2019』…
INTERVIEW
永遠の夏休みの終わりと始まり – バレーボウイズが語る自身の成長と自主企画『ブルーハワイ…
INTERVIEW
時代の変革が生んだ「愛」と「憂い」の音楽、ナードマグネット須田亮太が語る『透明になったあなたへ』
INTERVIEW
your choiceコーナー仕掛け人に聴く、今だからこそ出来る面白いこと~タワーレコード梅田大阪マ…
REPORT
マーガレット安井が見た第2回うたのゆくえ
INTERVIEW
やるなら、より面白い方へ。おとぼけビ~バ~が語る、いままでの私たちと、そこから始まるシーズン2。
REVIEW
花柄ランタン『まっくらくらね、とってもきれいね。』
REVIEW
ペペッターズ『materia=material』
INTERVIEW
捻くれたポップネスと気の抜けたマッドネスが生み出した珠玉のポップソング。YMBが語る、僕らの音楽。
INTERVIEW
挫折と葛藤の中で生まれた、愛と開き直りの音楽 - Superfriends塩原×ナードマグネット須田…
REVIEW
Homecomings – WHALE LIVING
REPORT
【マーガレット安井の見たボロフェスタ2018 / Day1】ナードマグネット / King gnu …
INTERVIEW
私たちがバンドを続ける理由。シゼンカイノオキテが語る、15年間と今について。
REVIEW
Easycome – お天気でした
REVIEW
相米慎二 – 台風クラブ
COLUMN
脚本の妙から先へと向かう傑作 今こそ『カメラを止めるな!』を観なければならない理由
REVIEW
CAMERA TALK – FLIPPER’S GUITAR
REVIEW
Guppy – Charly Bliss
REVIEW
Down To Earth Soundtrack (SNOOP DOGG「Gin and juice…

LATEST POSTS

INTERVIEW
あの頃、下北沢Zemでリトル・ウォルターを聴いていた ー武田信輝、永田純、岡地曙裕が語る、1975年のブルース

吾妻光良& The Swinging BoppersをはじめブレイクダウンやBO GUMBOS、ペン…

COLUMN
【2024年11月】今、東京のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「東京のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」京都、大阪の音楽シーンを追っ…

REPORT
これまでの軌跡をつなぎ、次なる序曲へ – 『京都音楽博覧会2024』Day2ライブレポート

晴天の霹靂とはこのことだろう。オープニングのアナウンスで『京都音博』の司会を務めるFM COCOLO…

REPORT
壁も境目もない音楽の旅へ‐『京都音楽博覧会2024』Day1ライブレポート

10月12日(土)13日(日)、晴れわたる青空が広がる〈梅小路公園〉にて、昨年に引き続き2日間にわた…

REPORT
自由のために、自由に踊れ!日常を生きるために生まれた祭り – 京都学生狂奏祭2024

寮生の想いから生まれたイベント『京都学生狂奏祭』 …