ワイキキと雨のお花見コンサート【出演者コメント付き】
1999年の立ち上げからポップミュージックをリリースし続けるインディペンデント・レーベル《WaikikiRecord》と、新宿歌舞伎町に店を構える〈Bar雨〉による野外イベント、『ワイキキと雨のお花見コンサート』が、2024年3月30日(土)に〈上野恩賜公園野外ステージ〉で開催される。
《WaikikiRecord》のオーナーのサカモトが率いるパーティーバンド、ELEKIBASSがホストとなって出演者に声をかけていく形でのんびりと開催されている本コンサート。今回はアメリカからJulian KosterとRobbie CucchiaroによるOrbiting Human Circusから、大ベテランあがた森魚まで、このレーベルの歴史と縁と人脈を感じる出演者計8組が並ぶ。
開催に際して主催者サカモトから届いた各出演者の紹介文と、出演者自身のコメントを以下のインフォメーションの次から一挙掲載!じっくりご覧いただき、お花見がてらのコンサートに行ってみてはいかがでしょうか。なおチケットはe+より発売中。
ワイキキと雨のお花見コンサート
日時 | 2024年3月30日(土) |
---|---|
会場 | |
出演 | あがた森魚 / ELEKIBASS / Orbiting Human Circus featuring THE MUSIC TAPES / 田所せいじ with からすぐち / 渚十吾 with Watermelon Sugar / 夢見る港
Bar雨ステージ:ナカヒラミキヒト / 法橋ハジメ |
料金 | ¥3,800(+1ドリンク代別途) |
チケット |
メールチケット予約:waikikirecord@gmail.com
※全席自由・整理番号順入場 |
詳細 |
レーベルオーナー サカモト(ELEKIBASS)による紹介+出演者コメント
ELEKIBASS
田所せいじ with からすぐち
レーベルオーナー サカモト(ELEKIBASS)による紹介
《WaikikiRecord》を名乗り始めてCDというものを初めてリリースしたのは、2001年の田所せいじ『アルバム』という作品でした。田所くんと一緒に新宿のマスタリングスタジオに行って30分に満たないこのアルバムの完成を迎えたことは今でも覚えています。その時のアルバムを今回は、からすぐち(ヨシンバ吉井さんと、本アルバムのプロデュースをした五目亭ひじきさんのユニット)を迎えて再現ライブをしてくれるという。なんとも嬉しいじゃないか。嬉しさをお裾分けするためにも、このアルバムのサブスクの配信を開始しました。事前に一聴してからこの日のライブをご覧いただくと、楽しさが倍増です。
田所せいじ
23周年の『アルバム』へ寄せて
本当は25年とか区切りのいい方がよかったけど
人間の23年でいえば新入社員か、まだ大学生か、そうでもないか
まだまだ大切な人達が居た
まぎれもなく大事な人が居た
言われなくてもわかってる
遠い遠い昔の話
僕はきみが大好きだった
ほんとにきみが大好きでした
心底、尊敬しておりました
遠い遠い昔の話
本当はもうこれっきりにした方がよかったけど
僕の46年といえば
いや、そこにはふれない方がいい、のかでもないのか
まだまだやれることはある
無論、出来ないこともある
言われなくてもわかってます
無理だけはするな
今はきみが大好きです
そんなことから逃れられない
心底、恐れることを知らず
愛だけはあるな
吉井功(ヨシンバ / からすぐち)
こないだ田所と荘田で
このアルバムを全曲演奏してみた
「若い」という言葉が頭によぎった
うん、若い青葉の匂いがした
ぼくもエンジニア崩れの録音係で
その青さを記録した
もう23年ですか
いろいろありましたね
もう青くはないけど
かれは阿佐ヶ谷で歌ってる
集まる皆は
よく飲み、よく笑い、よく泣く
そして「ことりちゃん」は
変わらず歌われているよ
五目亭ひじき(ミチマチガエタズ / からすぐち)
ついに文章にするときがきたか(笑)
田所せいじの『アルバム』をプロデュース。その昔、世を忍ぶ仮の名前のような本名で、アタシはナニをしたんだっけ?あんまし思い出せないし、なんにもしなかったんじゃないかしら。プロデューサーとは名ばかりってヤツ。
西山達郎(初恋の嵐)が「ぜひ紹介したい」と連れてきたのが田所せいじ。自作の唄を収録したカセットテープを聴いてみた。
なんだ?コイツ……。この年齢で、こんな演りかた……。まずは嫉妬を隠し(笑)、距離を近づけるために「せいちゃん」と呼んだ。
年上として、ちょっとエラソーにふるまうしかできなかったけど、ヘンな色に染めないように。壊さぬように。(それは余計な心配だったけど)
やきとり屋の2階の部屋で暮らしてたころ。せいちゃんが来て『アルバム』のジャケットについて話し合ったのをおぼえてる。そのときちょっと背伸びしたアイデアをひらめいた。当時のアタシは斉藤哲夫さんのバックバンドでよくツアーに出ていて、旅先ではフォーク界のレジェンドのかたたちとお話する機会がたくさんあった。
2001年5月。たしか諫早の野外イベントだったかな。加川良さんも出演されてたっけ。打ち上げの席で高田渡さんに『アルバム』の推薦文をお願いした。イヤホンで聴いてくださって、翌朝、原稿をいただいた。ブックレットの最終ページに掲載するには勿体ないような、ちょっと物足りないような、不思議な第一印象。当時のせいちゃんとアタシには身分相応の文章。先頭ページに掲載された玉川裕高さんによる推薦文とのコントラストも味わい深い。渡さんからの粋な推薦文は、その後、メロディがついた。
せいちゃんは、よくウチに泊まってた。当時、バイト先も一緒だったから(出版社の倉庫番)、一緒に出かけて一緒に帰ってきたり。なにかを「思い出さないように」、ふたりで焼酎を呑んでいた。疎遠になるまでは。
純粋で生意気でハートフルな『アルバム』がリリースされて20年以上たった。収録された唄たちも、チョット悪いコトをしたがる年齢か。アタシのことを本名で呼ぶ連中が、疎遠になってたアタシを優しく迎えてくれた。昔の仲間が、現在(ルビ:いま)の仲間になって今こうして一緒に演奏できるなんて。あんときのまんまを再現したり、イタズラしながら偽再現したり。ニヤニヤしちゃうよ。
書いておきたい話題がもっとあるけれど、ライブのときにしゃべったほうがオモロいかもね。
で、プロデューサーって、なにするんだっけ?
渚十吾
レーベルオーナー サカモト(ELEKIBASS)による紹介
渚さんの存在を知ったのは「明日の旋律のための言葉を探そう!暮らしのA to Z」と謳い文句のあった書籍『ブルーベリー・ディクショナリー』(2001年)にて。その後、洋楽アーティストのライナーノーツでお見かけしたりしつつ、知り合ってからはザ・キンクスの『ひねくれ者たちの肖像』(ジョニー・ローガン著)をいただいたり、レコードを持ち寄りお茶する会を催したりする、音楽の師匠となっております。
そんな渚さんの音楽は《WaikikiRecord》として3枚リリースさせてもらっています。今回、2010年リリース『きみの口笛は大空に-your song,my song-』のストリーミング配信が始まりました。そして、今回はぜひバンド編成で出演をお願いしました。桜の咲く上野の野外ステージで、楽団と共に鳴らされる渚さんの音楽が楽しみでなりません。
渚十吾
キンクスの“Rainy Day In June”か、いやELEKIBASSの“Rainy Day at the End of March”か。『きみに口笛は大空に』から13年だって?ついこの前のような気がする。ELEKIBASS、坂本くんとの会話は。
「今回、バンドで演りますか」の誘いに乗って参加。雨の日か、快晴の三月最後の午後か。
いつ響いても最高、HALIFANIEの二人。ハリー(張替智広)のドラムスと、さっちん(小貫早智子)のVoice。KOSMICのまるでKevin Ayersに参加した時のMike Oldfieldのようなベース。もうひとりのELEKIBASS、JPのマスウェル・ヒルビリー・ギターは深夜のバーでの友人とスコッチを酌み交わしてるようだし、OraNoaのVoiceとリコーダーは暖かい昼下がり、一緒に京都を旅してるような心地よさ。そんななかで歌っているとまるで西瓜糖(すいかとう)の村の住人になったよう……。そう、甘すぎないWatermelon Sugar。
バンド、Watermelon Sugarとのひととき。Joy of a Toy、おもちゃの喜び、三月終わり。そんな気分が味わえそう。
夢見る港
レーベルオーナー サカモト(ELEKIBASS)による紹介
夢見る港のボーカル、長坂くんは前身バンド、Chiki Soundsで知り合い、田所せいじくん同様ほぼ同い年同士の友人であり、この20年来の音楽仲間であります。縁あって、夢見る港の2ndアルバム『やあ、おはよう』を《WaikikiRecord》より2023年にリリースしました。メンバーたちの音楽に対する情熱やスタンスにはリスペクトを感じています。今回サポートも含めた8人での出演ということも含めて、お見逃しなく。
長坂雅司(夢見る港)
上野恩賜公園内のステージ
野外である(屋根はついてる)
きっと桜が咲いている(と願う)
自分で言うのもあれだが
夢見る港の曲は春が似合う
お膳立てはバッチリ
Orbiting Human Circus featuring THE MUSIC TAPES
レーベルオーナー サカモト(ELEKIBASS)による紹介
アメリカのサイケデリック・インディポップ・シーンのElephant 6が大好きで、初めてELEKIBASSでアメリカツアーに行った2001年に、Neutral Milk HotelやThe Olivia Tremor Controlのメンバーでもあり、自身のユニットThe Music Tapesとして活動していたJulian Kosterと知り合うことになります。その後なぜか日本でちょこちょこと食事に行ったり、アメリカにツアーに行けばふらっとライブ会場にいたり、いつもフラフラと自由気ままに音楽をやっているJulianですが、彼とNana GrizolのRobbie Cucchiaro、そしてサーカス小屋にいる白熊のぬいぐるみと一緒にツアーを周り、表現しているユニットがOrbiting Human Circusです。
なんせ名義がいっぱいあるんで、名前が長いのなんの……彼らのこの春の来日ツアーのタイトルが
【Orbiting Human Circus JAPAN TOUR 2024】 -featuring THE MUSIC TAPES with JULIAN KOSTER (Elephant 6, Neutral Milk Hotel), and ROBBIE CUCCHIARO (Nana Grizol)
なんですよ(笑)。
でも2023年11月にはアルバム『Quartet Plus Two』をリリースしたばかりで、その音楽を聴けばもうこの来日を見逃せないことがわかってもらえるはず。来日ツアーの前に、お花見コンサートにも参加してもらえることになりました。Orbiting Human Circusが上野で、しかも野外ステージで!。こんなことは滅多にないですよ。お楽しみに。
Julian Koster (Elephant 6, Neutral Milk Hotel)
We love Tokyo so much and are so excited to perform as part of Sakura! It’s like a nice dream we and the audience will all get to share together!
あがた森魚
レーベルオーナー サカモト(ELEKIBASS)による紹介
そしてなんといっても今回のヘッドライナーと言っても過言でないアーティスト、あがた森魚さんです。《WaikikiRecord》のリリースで直接絡んだことはないのですが、バイタリティの強いあがたさん。私の同世代のミュージシャンたちとも積極的に絡んでいる姿はよく拝見してて、いわゆるフォークシンガーのイメージではなく、ロックで、ニューウェイブで、まさに音で「表現」するアーティストだと強烈に感じました。ただの音楽ジャンルにとどまらず、全体で表現をしている最年長出演者になります。
今回自分は紹介文に「フォークシンガーのあがたさん」、いや違うな「ロックミュージシャンのあがたさん」?ううん、違うな。昔も今も変わらず音楽家でいる「現代音楽家のあがた森魚さん」でどうだろう?と思い提案したら「『現代冒険音楽家』はどうだろう?」と逆提案をもらいました。さらに歌手なのだから「現代冒険歌手」?さもなくば「冒険音楽歌手」?とやり取りありつつ、回り回って「現代音楽冒険家のあがた森魚さん」という紹介文に落ち着いたのです。その時にこの人は常に考え、常に表現したい人なんだと、思ったのを覚えています。
今回出演を快諾していただいて感謝しております。
あがた森魚
臆して臆しておじけておじけて秘して秘してそれでも打って打って打って出て打って出ようと思った。小学校二年の時、映画『海底二万哩』の海底の孤独な哲学者キャプテン・ネモに憧れた。小学校五年生の時、映画『風の又三郎』でガラスのマントを着て去っていく転校生に出会った。高校二年の時に、“ライク・ア・ローリング・ストーン”を歌う、ボブ・ディランに出会った。その頃、学校の図書館で、稲垣足穂に出会った。それから、半世紀以上たって今年になって、相撲取りをやめてしまった逸ノ城は、魯鈍と求道の兄弟なんだということがわかった。まだまだいろんなことがあったが、それらがどれもまるで昨日の出来事かのような今75歳。彼らはみな、実は近い将来の、引き続き愛すべき大事な兄弟たちであることがわかってきたのだ。
ナカヒラミキヒト / 法橋ハジメ(Bar雨ステージ出演)
レーベルオーナー サカモト(ELEKIBASS)による紹介
そして今回タイトルにもある「雨」の由来は新宿の〈Bar雨〉。ここのマスター芝田正俊さんは音楽のライブにも絵画の展示にもよく訪れる人で、〈Bar雨〉でも生歌のライブや、アーティストによる個展とかも行われている。そんな〈Bar雨〉おすすめのアーティストに2組参加してもらいます。そんな芝田さんのおすすめコメントがこちら。
ナカヒラミキヒトについて
ライブが始まり曲が進むごとにまるで異世界や中世の西洋の酒場にいるような錯覚に陥っていく。個人的に付き合いも長く人間としても渋い男です。
法橋ハジメについて
初めて店で歌ってもらった時に1曲目と最後の曲を今でもよく覚えている、旅を続けその街を人をよく見つめていなければ生まれない歌詞、曲たち。知りうる限り最高の歌うたい。数少ない本物のシンガーだと思う。
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WRITER
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1991年生まれ。大阪北摂出身、東京高円寺→世田谷線に引っ越しました。
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ANTENNAに在籍しつつミュージックマガジン、Mikikiなどにも寄稿。
過去執筆履歴はnoteにまとめております。
min.kochi@gmail.com