消えゆく夏に折り合いつけて、クララズが今、次の季節を降らせる
湿っぽく幾重にも捻じれたセンチメンタルな気持ちを、ドライヤーで丁寧に梳かしていくようなクララズの歌。叙情も激情も多感に含みながら、ドライなまでにしたたかに、折り合いをつけて歌い込む。だからそのシンプルなギター・サウンドは、絡まることなくスッと心の中に届いて、ジワリと余韻を残しながら香りを放つのだろう。
シンガーソングライター山内光によるソロプロジェクト。4月にリリースした『アメリカン』に続く、2曲入りのカセット・シングルが到着した。表題曲“台風18号”は橋本あさ子(Dr)と、本曲のサウンドプロデュースも手掛けるアダチヨウスケ(Ba)という長らくクララズを支えるリズム隊に加え、渡瀬賢吾(Gt / roppen、bjons、Spoonful of Lovin’)、飯島はるか(Pf / に角すい、折坂悠太(合奏))が参加。渡瀬のスライドギターと、クララズの楽曲では初導入の飯島によるピアノが核となったバンド・サウンドだ。
“台風18号 季節外れの空気を運んで
風に鼻歌を送り込めば 君に届くでしょうか”
2020年の夏は例年と同じ匂いだけ放っていって、味わうすべなく横切った。彼女が想いを委ねたこの曲での台風は、もうとっくに夏は過ぎ去ってしまったのに、どことなくまだ時差ボケしているかのような感受性を元に戻すリセットボタンとして機能している。
一方でクララズ一人による、歌とギターのダビングで仕上げた“7月”。ディストーション・ギターのどっしりとしたストロークと、ラストに立ち昇るファズの効いたリフが、雨上がりのムワッとした空気を想起させる。それでも歌はやけに毅然でカラっとしていて、サウンドとの気圧差で艶やかにブローされるような心地になる。シンプルな楽曲ながらも情感の醸し方にはやはり彼女らしい息吹が感じられるのだ。
2曲表裏一体となって表現する、五感で味わう気候の移ろい。クララズが今、あなたの心の湿りに風を送り込み、次の季節を降らせる。
台風18号
収録曲
A. 台風18号
B. 7月
発売:2020年11月18日(水)
価格:880円(税込み)
取り扱い: オンラインショップ、ライブ会場、配信
オンラインショップ:https://clalas.thebase.in/items/34785451
■レコーディングメンバー
A面“台風18号”
作詞・作曲, Vocal, Guitar, Chorus:クララズ
Guitar:渡瀬賢吾(roppen、bjons、Spoonful of Lovin’)
Bass:アダチヨウスケ
Piano:飯島はるか(に角すい、折坂悠太(合奏))
Drums:橋本あさ子
Sound Produce:アダチヨウスケ
B面“7月”
作詞・作曲, Vocal, Guitar, Programming:クララズ
レコーディングスタジオ:スタジオハピネス、Studio A.D.C.
レコーディング・ミックスエンジニア:アダチヨウスケ、クララズ
クララズ
宅録活動を発端に結成された、東京を中心に活動するソロユニット・クララズ。 くるり、Teenage Fanclub、USインディーなどから影響を受けた、オルタナ感のあるザクっとしたギターに重なるハーモニー、そして親しみやすさとストレンジさが同居する詞世界が表現するのは、まさに“新世代ギターポップ”。 ソロやバンドと多彩な編成の中でも一貫して魅力を放つメロディセンスと、潔く伸びやかなボーカルに定評がある。また既発のCDやフライヤーのデザイン、イラストもすべて自身で手がけ、マルチな才能を発揮している。
Twitter:https://twitter.com/clalas_
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WRITER
- 峯 大貴
-
1991年生まれ。大阪北摂出身、東京高円寺→世田谷線に引っ越しました。
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ANTENNAに在籍しつつミュージックマガジン、Mikikiなどにも寄稿。
過去執筆履歴はnoteにまとめております。
min.kochi@gmail.com
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