折り合いのつかない喪失感を歌う素直さに胸が打たれる
この曲を聴くと、ふとした言葉で初めて友達を傷つけてしまった幼少時の記憶を掘り起こされた気分になる。はたまた長く付き合った恋人との同居を解消する光景も浮かんできた。いや、人生を共にしたパートナーとの永遠の別れかもしれない。お互いずっと仲良しでいたいと思っていたはずなのにね。そんな心が離れてしまった出来事のあとの「なんで?なんで?」と折り合いのつかない、あの感情。台風一過なんか来ることはないと嘆く心の振る舞いにシンガー・ソングライター kiss the gambler こと、かなふぁんは名前をつけた。“台風のあとで”と。
初アルバム『黙想』(2021年)以来の新曲となり、岩出拓十郎(Gt / 本日休演)をプロデューサーに迎え、岩出の自宅スタジオ〈仏間サウンズ〉でレコーディングされている。演奏陣には岩出に加え、普段のライブも支える屋敷(Gt)や櫻木勇人(Ba)、さらには樋口拓美(Dr / 本日休演)、河村勇之介(Key / THE ROMANS)、小池茅(Per)と、ミロクレコーズに関連深いミュージシャンたちが集っている。
胸が詰まるような感情が綴られてはいるが、ドラマチックな悲愴感は一切ない。ただ率直なメロディに乗せて、かなふぁんの愛くるしい歌が今感じていることをピアノ弾き語りでのんびりと並べていく。バンドはそれを見守るように演奏している。歌い終わったあとに続く、岩出拓十郎の静かにむせび泣くスライドギターが全ての感情を請け負っているみたいだ。
kiss the gamblerはその人を大事に思っていたことの証として、ただ真っすぐ喪失を歌っている。
配信リンクはこちら
台風のあとで
発売:2022年5月14日
フォーマット:デジタル
レーベル:ミロクレコーズ / City Bike Records
作詞・作曲 かなふぁん(kiss the gambler)
かなふぁん:Vo / Piano
岩出拓十郎:E.Gt
樋口拓美:Dr
櫻木勇人:Ba
河村勇之介:Key / Organ
屋敷:A.Gt
小池茅:Per
Produce/Mixing:岩出拓十郎
Mastering:風間萌(studio Chatri)
Recorded at 仏間サウンズ、アイオン音楽スタジオ
kiss the gambler
幼い日々の淡い記憶とセンシティヴな世界観を脳裏に秘めたオルタナフォーク系シンガーソングライター。2018年より東京を拠点に活動中。声変わり前の少年のようなイノセントで中性的な歌声に、幅広い解釈が可能な斬新でキャッチーなリリックと、軽快でメランコリックなメロディ、オルタナティヴなポップセンスが加わる。作曲面は、Fun.、Regina Spektor、KEANE、Lenka、VAMPIRE WEEKEND、Belle and Sebastian等の影響を受けており、爽快で耳に残るメロディーが特徴的。作詞面は、矢野顕子、松任谷由実のような人生に焼きつく言 葉との定評がある。
これまで、東京・下北沢を中心にピアノ弾き語りやバンドセットでのライブを行っており、 2021年8月に1stアルバム『黙想』を発表した。2022年4月8日には『Fresh』の7inch、2022 年4月23日(RECORD STORE DAY)には1stアルバム『黙想』のLPが、本秀康主宰の雷音レ コードより発表された。
今後は、2022年5月14日に、自主レーベルCity Bike Recordsから4thシングル“台風のあ とで”が配信限定でリリースされる他、2022年6月上旬に、JET SETから『ジンジャー』の 7inchをリリースする予定。 また、2022年5月から、岐阜のシンガーソングライター岡林風穂とのツーマンJAPAN TOURを開催する。
Webサイト:https://kissthegambler.net/
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WRITER
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1991年生まれ。大阪北摂出身、東京高円寺→世田谷線に引っ越しました。
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ANTENNAに在籍しつつミュージックマガジン、Mikikiなどにも寄稿。
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