ルーツ志向を促したフィクサー
テネシー州メンフィスで育ちながらも長年R&Bやヒップホップを起点としたポップフィールドでスターになっていったティンバーレイクにとって、カントリーは確固たるルーツではあるが距離感としてはどこか“憧れ”と捉えていたサウンドだったように思える。そんな中自身のルーツに取り組んだ今回の『Man of the Woods』の方向性を象徴している楽曲が、昨年のグラミー賞でも3冠を受賞し現在のアメリカ南部カントリー最前線であるクリス・ステイプルトンを客演に迎えた「Say Something」だろう。交互にボーカルを取りつつ、ラストに向けてゴスペルのプロダクションに展開する。ここでのステイプルトンの男臭いヴォイスはティンバーレイクをポップスターの役割から解放し、まるで等身大でルーツに向かう振る舞いを後押しするフィクサーのような立ち回りだ。またそもそもティンバーレイクがルーツに向き合う契機となったのも2015年のCMAアワードでステイプルトンのソロ1stとなる本作が数々の賞を受賞した際のステージで共演したことが大きい。この時披露されたのは収録されているジョージ・ジョーンズのカントリー・スタンダード「Tennessee Whiskey」と、ティンバーレイク2013年の双子アルバム『The 20/20 Experience』収録のアーシーな温もりを感じさせる「Drink You Away」。このステージ以降この2曲の間を狙うようなカントリーへの取り組みをメディアに徐々にほのめかしていく。本作の存在が『Man of the Woods』の方向性を決定づけたと言えるだろう。
第一回 :Justin Timberlake - Man Of The Woods
選定者:ki-ft
WRITER
- 峯 大貴
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1991年生まれ。大阪北摂出身、東京高円寺→世田谷線に引っ越しました。
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ANTENNAに在籍しつつミュージックマガジン、Mikikiなどにも寄稿。
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